「どうせ派遣だから」と気持ちを飲み込むあなたへ
非正規で働く人の感情の言語化
朝、出社すると、正社員のメンバーだけが会議室に入っていく。自分には届かなかった社内メールの内容を、あとから「あ、聞いてなかった?」と言われる。歓送迎会の案内は、いつも回ってこない。それでも「どうせ派遣だから」「契約社員だし、仕方ない」と、気持ちを飲み込んで笑う。働く人の約4割が非正規雇用という時代に、多くの人が職場の「見えない線」の向こう側で、言葉にならない疎外感と、契約更新への不安を抱えています。その感情は、飲み込み続けるうちに凍りつき、「何も感じない」「どうでもいい」に変わっていきます。アドラー心理学と感情の言語化の視点から、凍った気持ちのほどき方をお伝えします。
結論:「どうせ派遣だから」は、あきらめではなく凍った感情のサイン
結論からお伝えします。「どうせ派遣だから」「契約社員だし」という言葉は、単なるあきらめではありません。疎外感やさみしさ、悔しさ、不安といった感情を、何度も飲み込むうちに凍らせてしまったときに出てくる、心のサインであることが多いのです。
この記事のポイントは3つです。
- 職場の「見えない線」は、所属感を傷つける。呼ばれない会議、届かない情報、名前ではなく「派遣さん」と呼ばれること。小さな出来事の積み重ねが、「自分はここにいていいのか」という根っこの感覚を揺らす。
- 「言っても無駄」は、性格ではなく学習されたもの。心理学でいう「学習性無力感」は、小さな「言えた」「変わった」の経験で、少しずつほどくことができる。
- 感情を言葉にすると、選択肢が見える。凍った気持ちを「事実+希望」の言葉にすると、派遣元への相談や、キャリアの次の一歩が具体的になる。
背景にあるのは、心理学でアレキシサイミア(失感情症)と呼ばれる状態です。感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態のことで、病名ではなく、一般の人の約10〜16%に強い傾向が見られる特性の濃淡です。中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』では、こうした状態にある人を「感情迷子さん」と呼んでいます。基本についてはアレキシサイミア(失感情症)とはをご覧ください。
もともと感情を言葉にするのが苦手ではなかった人でも、「言っても変わらない」「言ったら契約に響くかもしれない」という状況に長くいると、心を守るために感じないようにするスイッチが入りやすくなります。強いストレスから心を守るための一時的な反応は、専門的には「2次性アレキシサイミア」と呼ばれます。気持ちが凍っていくのは、あなたが弱いからではなく、心があなたを守ろうとしてきた結果なのです。
数字で見る非正規雇用と「言っても無駄」の心理
非正規で働くことは、いまや一部の人の特別な働き方ではありません。押さえておきたい数字と研究を整理します。
| 知見 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 学習性無力感 | 自分の行動で状況を変えられない経験をくり返すと、変えられる場面でも行動しなくなる | マーティン・セリグマンらの研究(1960年代後半〜) |
| 感情のラベリング | 感情に名前をつけると、不安や恐れに関わる扁桃体の活動が下がる | Lieberman et al.(2007) |
| 筆記開示 | つらい体験について感情を含めて書き出すことが、心身の健康によい影響を与えうる | Pennebaker の一連の研究 |
| 約10〜16% | 一般の人のうち、アレキシサイミア傾向が強いとされる人の割合 | TAS-20等を用いた複数の疫学研究 |
雇用者の約4割が非正規ということは、職場で隣に座っている人の何人かに一人は、同じように契約更新を気にしながら働いているかもしれない、ということです。それでも、非正規で働く人の感情は、職場の中で語られることがほとんどありません。「契約で決まっていることだから」「本人が選んだ働き方だから」。そうした言葉で、感情の問題は見えなくされがちです。
けれども、非正規という働き方を自分で選んだ人にも、そうせざるをえなかった人にも、働く中で生まれる感情は確かにあります。この記事では、その感情に光を当てます。
職場の「見えない線」|呼ばれない会議、届かない情報
ただ、いつも線の外にいる感じがして」
職場の「見えない線」は、はっきりした差別やいじめとは違い、誰か一人の悪意で生まれるものではないことが多いものです。だからこそ、傷ついていても「傷ついた」と言いにくいのです。次のような場面に、心当たりはないでしょうか。
- 正社員だけが参加する会議や打ち合わせがあり、決まったことをあとから知る
- 社内の連絡や共有フォルダ、チャットのグループに、自分だけ入っていない
- 名前ではなく「派遣さん」「契約の人」と呼ばれる
- 飲み会や歓送迎会、社内イベントの案内が回ってこない
- 仕事の改善を提案しても、「そこは社員で決めるから」と流される
- 長く働いているのに、職場の人の顔と名前が一致しないと言われる
一つひとつは小さな出来事です。けれども、こうした出来事が積み重なると、「自分はここにいていいのか」という、人として根っこの感覚が揺らいでいきます。そして、その揺らぎを感じるたびに「仕方ない」と打ち消していると、感情はだんだん凍りついていきます。
契約更新の前に、心が凍る理由
派遣社員や契約社員の多くは、数か月から1年ごとに契約更新の時期を迎えます。更新の時期が近づくと、「次はあるのだろうか」という不安が、毎日の仕事の背景にずっと流れ続けます。
不安が、感情を止める
契約更新への不安には、独特の苦しさがあります。それは、不安を感じても、自分の力ではどうにもできない部分が大きいことです。どれだけ頑張っても、会社の事情で契約が終わることがある。だからこそ、心は「感じても仕方ないことは、感じないでおこう」と、不安にふたをしようとします。
ところが、感情は選んで止めることができません。不安にふたをすると、一緒にうれしさや楽しさ、やりがいまで感じにくくなります。「仕事に何も感じない」「休みの日も楽しくない」。それは、不安から身を守るために、心全体の感度を下げている状態かもしれません。
更新前に出やすい体と心のサイン
- 更新の面談が近づくと、眠りが浅くなる、食欲が落ちる
- 上司や派遣先の担当者の表情や一言を、必要以上に気にしてしまう
- 小さなミスをすると、「これで契約が切られるかも」と考えてしまう
- 本当は困っていることがあっても、「印象が悪くなるから」と言えない
- 有給休暇を取ることや、体調不良で休むことに強い罪悪感がある
- 先のことを考えると、何も考えたくなくなる
こうしたサインに気づいたら、まずは「いま、私は契約のことで不安なんだ」と、言葉にしてみてください。不安を消す必要はありません。名前をつけるだけで、不安は「正体のわからない大きなもの」から「扱える大きさのもの」に変わります。感情に名前をつけると扁桃体の活動が下がるという研究(Lieberman et al., 2007)があるように、言葉にすること自体に、心を落ち着かせる働きがあるのです。
眠れない、食欲がない、気分の落ち込みが2週間以上続くといった場合は、心身の不調のサインかもしれません。我慢を続けず、医療機関に相談してください。
「言っても無駄」は学んだもの|学習性無力感から抜け出す
1960年代後半、アメリカの心理学者マーティン・セリグマンらは、自分の行動では状況を変えられない経験をくり返すと、変えられる場面になっても行動しなくなるという現象を実験で示しました。これは「学習性無力感」と呼ばれ、のちに人の抑うつや無気力を理解する手がかりとして広く研究されるようになりました。
非正規で働く人が口にする「言っても無駄」は、この学習性無力感とよく似ています。改善を提案しても流された。困っていることを伝えても変わらなかった。そうした経験を重ねるうちに、「言っても無駄」は性格ではなく、経験から学んだ結論になっていくのです。
大切なのは「小さなコントロール感」
学習性無力感の研究からわかるのは、裏を返せば、「自分の行動で何かが変わった」という経験を積み直すことで、無力感はほどけていくということです。いきなり大きなことを変えようとする必要はありません。
自分の業務の中で、一つだけ工夫してみる
ファイルの名前の付け方、作業の順番、引き継ぎメモの書き方。自分の裁量で変えられる小さなことを一つ変え、「やりやすくなった」と感じたら、それを言葉にして自分に伝えます。
「お願い」を一つだけ口にしてみる
「会議で決まったことを、あとで共有していただけると助かります」。批判ではなく、具体的なお願いとして伝えます。それが一度でも通ると、「言っても無駄」という結論が少しずつ書きかわっていきます。
変わらなかったときも、「言えた自分」を認める
相手がどう応じるかは、最終的には相手の課題です。結果がどうであれ、「私は自分の気持ちを言葉にできた」という事実は残ります。その経験が、次に言葉にする力になります。
こうした小さな「できた」の積み重ねは、自己肯定感の「6つの感」のうち、木の枝にあたる「自己効力感」、つまり「自分にはできる」という感覚を育てます。自己効力感は、大きな成功だけで育つものではありません。小さな行動と、その結果を自分で確かめる経験の中で、少しずつ枝を伸ばしていくのです。
中島輝より一言
私は小学生の頃、理由もわからないまま涙が流れることがありました。悲しいのか、悔しいのか、自分でもわからない。ただ、言っても仕方がないと思っていたので、誰にも話しませんでした。いま振り返ると、あの涙は、言葉にできなかった気持ちが外に出ようとしていたのだと思います。「言っても無駄」と思っているときほど、心の中には言葉を待っている気持ちがあります。誰かに言う前に、まず自分に向かって言ってあげてください。「本当は、さみしかったんだね」と。
正社員と比べてしまうとき|劣等感を「理想との差」に変える
同じような仕事をしているのに、給与や賞与、福利厚生、任される仕事の範囲が違う。年齢の近い正社員が昇進していくのを見ると、「自分は何をしているんだろう」という思いがこみ上げる。正社員との比較は、非正規で働く人の多くが経験する、言葉にしにくい苦しさです。
私は長年、アドラー心理学をベースにカウンセリングを行ってきました。オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラー(1870〜1937)は、劣等感そのものは悪いものではないと考えました。「もっとよくなりたい」という目標があるからこそ生まれる感情であり、人を成長させるバネにもなるからです。
比べる相手を「他人」から「理想の自分」へ
アドラー心理学では、健全な劣等感は、他人との比較ではなく、「理想の自分」との比較から生まれると考えます。他人との比較から生まれる劣等感は、「どうせ自分なんて」という劣等コンプレックスに変わりやすく、行動する力を奪っていきます。
| 他人との比較(苦しくなる) | 理想の自分との比較(前に進める) |
|---|---|
| 「同い年の正社員は、もう主任になっている」 | 「私は、どんな仕事を任される人になりたいだろう」 |
| 「どうせ派遣だから、頑張っても意味がない」 | 「いまの仕事で、半年後にできるようになりたいことは何だろう」 |
| 「正社員の人たちは、私より価値がある」 | 「雇用形態と、私という人の価値は別のもの」 |
ここで大切なのは、待遇の違いに怒りや悔しさを感じることは、まったく自然なことだということです。その感情を「比べてはいけない」と打ち消す必要はありません。むしろ、悔しさに名前をつけることで、「では、自分はどうしたいのか」という問いが立ち上がります。2020年から順次始まった「同一労働同一賃金」のルールのように、不合理な待遇の差をなくすための制度も整えられてきました。待遇について疑問があるときは、後で紹介する相談先も頼ってください。
比べてしまう自分を責めるのではなく、比べたときに動いた気持ちを、自分の理想を知る手がかりにする。それが、劣等感を成長のバネに変えるアドラー流の使い方です。転職を含めて働き方そのものを考えたい方は、「なんとなく辞めたい」は何のサイン?もあわせてご覧ください。
「ここにいていい」という感覚|所属感と共同体感覚
アドラー心理学では、人が幸せに生きるための大切な感覚として「共同体感覚」を挙げます。自分は共同体の一員であり、そこに居場所があり(所属感)、誰かの役に立っている(貢献感)と感じられる感覚のことです。そしてアドラー心理学では、「すべての悩みは対人関係の悩みである」と考えます。
職場の「見えない線」がつらいのは、この所属感が傷つけられるからです。契約の上では職場の一員として働いているのに、心の上では「よそ者」のように扱われる。働いているのに、所属している感覚が持てない。それは、人にとって根源的な苦しさです。
所属感は、職場だけで満たさなくていい
ここで知っておいてほしいのは、アドラーのいう共同体は、いまいる職場だけを指すのではないということです。家族、友人、地域、趣味の仲間、同じ派遣元で働く仲間、そしてもっと広い社会。所属できる場所は一つではありません。いまの職場で所属感を持ちにくいときは、ほかの場所で「ここにいていい」と感じられる時間を意識的に持つことが、心の根を守ります。
職場で「貢献感」を自分で確かめる
一方で、職場の中でも、自分で確かめられる感覚があります。それが貢献感です。「今日、自分の仕事が誰かの役に立ったこと」を一つだけ思い出してみてください。あなたが作った資料で会議が進んだ。あなたの電話対応で取引先が助かった。正社員かどうかに関係なく、あなたの仕事は確かに誰かの役に立っています。
ただし、注意したいこともあります。所属感を得ようとして、頼まれた仕事を断れずに抱え込んだり、無理に明るくふるまったりするのは、自分を消耗させてしまいます。貢献感は、自分をすり減らして得るものではありません。自分ができる範囲で役に立ち、それを自分で認めることが大切です。
自己肯定感の「6つの感」を一本の木にたとえると、所属感が傷ついたときにいちばん揺らぐのは、木の根にあたる「自尊心≒自己存在感」です。「自分はここにいていい」「自分には価値がある」という、すべての土台となる感覚です。雇用形態は、あなたの働き方の一つの形であって、あなたという人の存在の価値を決めるものではありません。そのことを、何度でも自分に言い聞かせてあげてください。
派遣元担当者への伝え方|気持ちを「事実+希望」の言葉にする
派遣社員の場合、困りごとを相談する窓口の一つが、派遣元(派遣会社)の担当者です。派遣元には、派遣社員からの苦情や相談に対応する責任者が置かれています。けれども、「言ったら派遣先に悪く伝わるかもしれない」「次の仕事を紹介してもらえなくなるかもしれない」と、相談をためらう人は少なくありません。
気持ちを伝えるときは、感情をそのままぶつけるのでも、感情を消して事実だけを話すのでもなく、「事実+気持ち+希望」の形にすると、相手も受けとりやすくなります。
| 伝える順番 | 例 |
|---|---|
| ① 事実 | 「ここ3か月、業務の進め方を決める打ち合わせに参加しておらず、変更をあとから知ることが続いています」 |
| ② 気持ち | 「そのたびに作業のやり直しが出て、正直、困っていますし、少し悔しい気持ちもあります」 |
| ③ 希望 | 「決まったことを早めに共有してもらえるよう、派遣先に相談していただけないでしょうか」 |
②の「気持ち」を一言添えることには、意味があります。気持ちが伝わると、相手は「これは本人にとって大事な問題なのだ」と理解しやすくなります。また、自分の気持ちを言葉にして人に伝えたという経験そのものが、凍っていた感情をほどくきっかけになります。
伝える前の準備
- 気になる出来事を、日付と事実でメモしておく
- そのときの気持ちを一語で書き添えておく(「困った」「悔しい」「不安」)
- 「どうなったらうれしいか」という希望を、一つに絞っておく
- 契約更新の意向や、今後の働き方の希望も、言える範囲で整理しておく
派遣元・派遣先だけで解決しないときは
契約や待遇、職場での扱いについて、派遣元や勤め先に相談しても解決しないときは、都道府県労働局や労働基準監督署などに設けられている「総合労働相談コーナー」に相談することができます。派遣社員、契約社員、パート・アルバイトなど、雇用形態に関係なく、労働に関する相談を無料で受け付けています。一人で抱え込まず、第三者の力を借りることも、自分を守る大切な選択です。
感情からキャリアの選択肢を考える|自尊心≒自己存在感と自己効力感を育てるワーク
「このままでいいのだろうか」と思いながらも、何から考えればいいのかわからない。そんなときは、条件や制度から考える前に、自分の感情から考えてみることをおすすめします。感情は、自分が何を大切にしているかを教えてくれる手がかりだからです。
非正規で働く人のキャリアの選択肢
非正規で働く人の次の一歩には、たとえば次のような選択肢があります。
- いまの職場で契約を更新し、任される仕事の幅を広げていく
- 派遣元に相談し、別の派遣先や、希望に合う仕事を紹介してもらう
- 一定期間の派遣を経て直接雇用をめざす「紹介予定派遣」を検討する
- 同じ勤め先との有期契約が通算5年を超えた場合に、無期雇用への転換を申し込める「無期転換ルール」を確かめる
- 勤め先の正社員登用制度の有無や条件を確かめる
- 資格の取得や学び直しをして、次の仕事の選択肢を広げる
- 非正規という働き方を、自分の生活に合った選択として続ける
どれが正解ということはありません。制度の細かな条件は働き方によって異なるため、派遣元や勤め先、総合労働相談コーナーなどで確かめてください。大切なのは、「どうせ」で選択肢を閉じてしまわないこと、そして、自分の気持ちに合った選択をすることです。書籍原稿のワークを、非正規で働く人の場面に合わせてアレンジして紹介します。
心の体温チェック:出社前と退社後に測る
出社前と退社後に、胸に手を当てて「いまの私は何度くらい?」と問いかけます。「朝は低め、夕方はさらに冷えた」「打ち合わせに呼ばれた日は少し温かい」。1週間続けると、どんな場面で心が冷え、どんな場面で温まるのかが見えてきます。それが、次の働き方を選ぶ手がかりになります。
感情が動いた瞬間日記:「うれしかった仕事」を集める
一日の終わりに、仕事の中で心が少しでも動いた瞬間を一つ書きます。特に、「ありがとうと言われてうれしかった」「この作業は没頭できた」といった、前向きな気持ちを集めるのがポイントです。凍っていた感情の中にも、あなたが大切にしたいものが必ず眠っています。
今日のオノマトペ:言葉にならない気持ちを音で表す
気持ちを言葉にしにくいときは、「もやもや」「ずーん」「ちくちく」「ふわっ」と、音で表してみます。正確な感情の名前がわからなくても、音にするだけで、凍っていた気持ちが少し動きはじめます。
未来日記:1年後の「働いている気持ち」を書く
「1年後、私はどんな気持ちで働いていたいか」を書きます。職種や雇用形態より先に、「チームの一員として意見を言えている安心感」「自分のペースで働けている穏やかさ」のように、望む気持ちを書くのがポイントです。望む気持ちがわかると、どの選択肢がそれに近いかを考えやすくなります。
「どうせ」の手前にある気持ちに、
名前をつけてあげる。
そこから、あなたの次の一歩が見えてくる。
こうしたワークは、木の根にあたる自尊心≒自己存在感と、枝にあたる自己効力感の両方を育てます。自分の気持ちに気づき、それを大切に扱うことが根を太くし、小さな一歩を踏み出して「できた」と確かめることが枝を伸ばしていくのです。
よくあるご質問
「本当は、どう感じている?」
その問いから、凍った気持ちが動きはじめます。
あなたという人の価値を決めるものではありません。
自分を大切にしよう
働く人の約4割が非正規雇用という時代に、多くの人が職場の「見えない線」の向こう側で、疎外感や契約更新への不安を抱えながら働いています。呼ばれない会議、届かない情報、「派遣さん」という呼び方。一つひとつは小さな出来事でも、積み重なると「自分はここにいていいのか」という根っこの感覚を揺らし、感情を凍らせていきます。「どうせ派遣だから」という言葉は、そうして凍った感情のサインです。
「言っても無駄」は、性格ではなく経験から学んだ結論です。だからこそ、小さな工夫や小さなお願いで「変わった」「言えた」という経験を積み直すことで、少しずつほどいていくことができます。正社員と比べてしまうときは、他人ではなく理想の自分と比べる。所属感は職場だけで満たそうとせず、貢献感は自分で確かめる。派遣元には「事実+気持ち+希望」で伝え、解決しないときは総合労働相談コーナーも頼る。その小さな言葉の積み重ねが、自尊心≒自己存在感の根を守り、自己効力感の枝を伸ばしていきます。
見えない線の外側で、それでも毎日きちんと仕事を続けてきたあなたは、本当によく頑張っています。その頑張りを、「どうせ」で片づけないでください。「今日は会議に呼ばれなくて、さみしかった。でも、自分の仕事はちゃんとやった」。その一言で十分です。自分を大切にしよう。あなたの価値は、雇用形態で決まるものではありません。
労働に関する相談:都道府県労働局・労働基準監督署などの「総合労働相談コーナー」
働く人のこころの相談:厚生労働省「こころの耳」
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
よりそいホットライン 0120-279-338(24時間)
本記事の参考資料・科学的根拠
- 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)原稿
- 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料
- Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation: Alexithymia in Medical and Psychiatric Illness. Cambridge University Press.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
- 総務省統計局「労働力調査」
- Seligman, M.E.P., & Maier, S.F. (1967). Failure to escape traumatic shock. Journal of Experimental Psychology, 74, 1-9.
- Lieberman, M.D. et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18, 421-428.
- Pennebaker, J.W. (1997). Writing about emotional experiences as a therapeutic process. Psychological Science, 8, 162-166.
- アルフレッド・アドラー『人生の意味の心理学』
- 岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)
- 厚生労働省「総合労働相談コーナー」、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」

自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。







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