言葉の壁の向こうで飲み込まれる気持ち
外国人労働者と地域と感情の言語化
朝礼で「わかりましたか?」と聞くと、全員が笑顔で「はい、大丈夫です」。ところが作業が始まると、指示とは違う手順で進んでいる。注意すると、また笑顔で「すみません、大丈夫です」。休憩室ではスマートフォンを見つめたまま、誰とも話さない。ある日、何の前ぶれもなく「国に帰りたい」と言われる。受け入れる事業所の担当者も、地域の住民も、「何を考えているのかわからない」と戸惑いながら、自分の気持ちも言葉にできずにいるのではないでしょうか。言葉の壁で本当に失われているのは、情報より「気持ち」です。技能実習生や特定技能で働く人と、受け入れる地域とのあいだで起きる感情のすれ違いを、研究とアドラー心理学から読み解きます。
結論:言葉の壁で失われるのは、情報より「気持ち」
結論からお伝えします。外国人労働者の受け入れで起きるトラブルの多くは、仕事の手順や規則が伝わらないことだけが原因ではありません。不安、困りごと、疲れ、ホームシック、そして「もっと役に立ちたい」という気持ち。そうした感情が言葉の壁の向こうで飲み込まれ、行き場をなくしたまま積み重なっていくことが、誤解や孤立、突然の離職の背景にあります。
この記事のポイントは3つです。
- 母語でない言葉では、感情はさらに言いにくくなる。日本語で「大丈夫です」が口ぐせになるのは、それが一番安全な言葉だから。言えないことは、ないことではない。
- 受け入れる側にも、言葉にならない感情がある。戸惑い、いら立ち、責任の重さ、住民としての不安。こちらの感情を整理しないまま関わると、誤解は深まる。
- 「同じ職場・同じ地域の仲間」として横の関係を結ぶことが、感情を伝え合う土台になる。役に立っている実感(自己有用感)は、言葉の壁を越えて届く。
ここで手がかりになるのが、アレキシサイミア(失感情症)という心理学の言葉です。感情がないのではなく、感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態をいいます。病名ではなく、一般の人の約10〜16%に強い傾向が見られる、誰もが持つ特性の濃淡です。基本はアレキシサイミア(失感情症)とはでまとめています。中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』では、こうした状態にある人を「感情迷子さん」と呼んでいます。
異国で働く人の場合、もともとの特性とは別に、慣れない環境の強いストレスから心を守るために感じる回路が絞られることがあります。これは専門的には「2次性アレキシサイミア」と呼ばれる一時的な反応です。さらに、感情を伝えるための言葉そのものが不足している。二重の壁があるからこそ、感情は迷子になりやすいのです。
急に辞めたいと言われて」
数字と制度で見る外国人労働者|技能実習から育成就労へ
日本で働く外国人は、この十数年で大きく増えました。製造業、建設、農業、介護、食品加工、宿泊・外食など、地域の産業を支える場面で、外国人労働者の存在はすでに欠かせないものになっています。押さえておきたい制度と研究を整理します。
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 200万人超 | 事業主から届け出のあった外国人労働者数が、2023年10月末時点で初めて200万人を超え、過去最多を更新 | 厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ |
| 2019年 | 人手不足の分野で一定の技能を持つ人を受け入れる在留資格「特定技能」を創設 | 出入国在留管理庁 |
| 2024年 | 技能実習制度に代わる「育成就労制度」を設ける改正法が成立。人材の育成と確保を目的に、制度が移行することが決まっている | 出入国在留管理庁・厚生労働省 |
| 2020年 | 「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」を作成。外国人に伝わりやすい日本語の使い方を示す | 出入国在留管理庁・文化庁 |
| 4つの型 | 異文化に移り住んだ人の適応のしかたを「統合・同化・分離・周辺化」に整理。周辺化(どちらの文化ともつながれない状態)はストレスが高いとされる | Berry(文化変容の研究) |
| 約10〜16% | 一般の人のうち、アレキシサイミア傾向が強いとされる人の割合 | TAS-20等を用いた複数の疫学研究 |
技能実習制度は、もともと「技能を学んで母国に持ち帰る国際貢献」を目的としてきました。しかし実際には人手不足を補う役割を担っていること、職場を自由に変えにくいこと、来日前の借金などが問題として指摘されてきました。こうした課題をふまえて、育成就労制度への移行が決まっています。制度の細かな運用は今後も変わっていくため、最新の情報は出入国在留管理庁や厚生労働省、監理団体などで確認してください。
制度がどう変わっても、変わらないことがあります。それは、働く一人ひとりが感情を持った人間であり、受け入れる地域の人たちもまた感情を持った人間だということです。カナダの心理学者ジョン・W・ベリー(Berry)は、異文化に移り住んだ人が出身の文化と新しい文化の両方とつながれる「統合」の状態のとき、心の負担が比較的小さいと整理しました。逆に、どちらともつながれない「周辺化」の状態は、孤立と強いストレスを生みやすい。地域の側の関わり方が、働く人の心の状態を左右するのです。
「大丈夫です」は、
日本語で言える、いちばん安全な言葉。
言えないことは、ないことではない。
「はい、大丈夫です」の奥|働く人が飲み込む感情
外国人労働者が「大丈夫です」「はい」「すみません」をくり返すのには、いくつもの理由があります。まず、母語でない言葉で感情を表すことは、母語よりもずっと難しいということです。「疲れた」「寂しい」は言えても、「ミスをして恥ずかしかったけれど、怒られるのが怖くて言い出せなかった」のような混ざった気持ちを、外国語で説明するのは大変です。
次に、立場の弱さがあります。職場を変えにくい、在留資格が仕事と結びついている、母国の家族が仕送りを待っている。そうした状況では、不満や困りごとを口にすることは「問題のある人」と見られるリスクにつながります。本音を言わないことは、自分を守るための合理的な選択でもあるのです。
| 表に出る言葉・行動 | 奥にあるかもしれない感情 | 体や行動のサイン |
|---|---|---|
| 「はい、大丈夫です」 | わからないと言う恥ずかしさ、聞き返す申し訳なさ | 説明のあと、隣の人の手元をじっと見る |
| 「すみません」をくり返す | 怒られる怖さ、仕事を失う不安 | 注意されると固まる、目を合わせない |
| 笑顔で黙っている | 困っていることをどう言えばいいかわからない戸惑い | 休憩中に一人でいる、食欲が落ちる |
| 「残業したい」「休みはいらない」 | 仕送りのプレッシャー、借金への焦り | 疲れが顔に出ている、ミスが増える |
| 突然の「帰りたい」 | 積み重なった孤独、家族への思い、限界 | それまでの「大丈夫」の連続 |
さらに、異国での生活には喪失がつきものです。家族や友人と離れること、母語で冗談を言い合える時間を失うこと、慣れた食べ物や季節の行事から遠ざかること。こうした喪失の悲しみは、本人も「みんな同じだから」「選んで来たのだから」と押し込めがちです。悲しみが言葉にならないまま続くと、頭痛や胃の不調、眠れなさといった体の訴えとして出てくることがあります。
「大丈夫です」の奥を知るために、大切なのは「わかりましたか?」と聞かないことです。この質問には「はい」以外の答えが言いにくいからです。かわりに、「やってみせてください」「次に何をしますか?」と、行動で確かめる。そして感情については、「今日は疲れましたか? 1から5で言うと?」と、数字や表情の絵で選べる形にする。言葉を少なくすると、かえって気持ちは伝わりやすくなります。
職場の誤解はこうして生まれる|感情の「見え方」の違い
受け入れる職場でよく聞くのが、「注意したのに笑っていた」「反省しているように見えない」「急に怒り出した」という戸惑いです。こうした誤解の背景には、感情の「見せ方」のルールが人によって、育った文化や家庭によって違うという事実があります。
心理学者のポール・エクマン(Ekman)とウォレス・フリーゼン(Friesen)は1969年、どんな場面でどの感情をどの程度表に出してよいかという社会的な決まりを「表示規則(display rules)」と呼びました。たとえば、目上の人に注意されたとき、困っていることを示すためにほほえむ人もいれば、黙って下を向く人もいます。同じ「申し訳ない」という感情でも、表に出る形は人によって違うのです。
ここで注意したいのは、「〇〇の国の人はこういう性格だ」と決めつけないことです。表示規則は国だけでなく、地域、世代、家庭、そして一人ひとりの性格によっても違います。同じ国から来た人でも、感情の出し方はさまざまです。大切なのは、相手を国のイメージで理解しようとするのではなく、目の前のその人に「今、どんな気持ち?」と聞いてみることです。
もう一つの誤解の種が、仕事の「当たり前」の違いです。休憩の取り方、報告のタイミング、上司との距離感、時間の感覚。日本の職場で暗黙のうちに共有されているルールは、言葉にしないと伝わりません。そして、ルールが伝わっていないことで注意を受けると、働く人は「なぜ怒られたのかわからない」という戸惑いと恥ずかしさを抱えます。ルールを言葉と図で示すことは、そのまま相手の感情を守ることでもあるのです。
受け入れる側の感情|戸惑い・不安・疲れを言葉に
外国人労働者の心を理解しようとするとき、見落とされがちなのが受け入れる側の感情です。現場の指導役になった社員、寮の世話をする担当者、生活の相談にのる地域のボランティア、隣に住む住民。それぞれが、言葉にならない感情を抱えています。
- 何度説明しても伝わらず、いら立ってしまう自分が嫌になる
- 「ちゃんと面倒を見なければ」という責任の重さで疲れている
- 本人の事情や家族のことを思うと、注意しにくい
- ゴミ出しや騒音など、生活の習慣の違いに戸惑っているが、言い出せない
- 「差別していると思われたくない」と、本音を飲み込んでいる
- 社内で「外国人のことは〇〇さんに任せればいい」と押しつけられている
これらは、どれも自然な感情です。とくに、「差別していると思われたくない」という思いから戸惑いや不満を言葉にしないでいると、感情はかえって態度ににじみ出ます。声のトーンがきつくなる、必要なこと以外話しかけなくなる、目を合わせなくなる。言葉の壁があるからこそ、働く人はこうした態度の変化に敏感です。
受け入れる側の感情は、なかったことにするのではなく、安全な場所で言葉にして整理することが大切です。社内の担当者どうしで「最近、正直こういうところで困っている」と話す時間をつくる。監理団体や登録支援機関の担当者に、具体的な場面を伝えて相談する。地域の国際交流協会の集まりで、ほかの事業所の経験を聞く。感情を整理してから関わると、「あなたのことが嫌いなのではなく、この点で困っている」と、行動と人を分けて伝えられるようになります。
きつく言うのも違う気がして」
地域の住民にとっても同じです。近所に外国人の寮ができた、子どもの学校に外国ルーツの子が増えた。そのとき湧いてくる不安や戸惑いを、心の中で「これは偏見だから」と押し込めるだけでは、距離は縮まりません。アメリカの心理学者ゴードン・オルポート(Allport)は1954年の著書『偏見の心理』で、対等な立場で、共通の目標に向かって関わる接触が、集団どうしの偏見を減らしやすいと論じました(接触仮説)。お祭りの準備、防災訓練、清掃活動。同じ地域の仲間として一緒に何かをする場面が、感情の壁を低くしていきます。
アドラー心理学で見る|共同体感覚と横の関係
私は長年、アドラー心理学をベースにカウンセリングを行ってきました。オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラー(1870〜1937)は、人の悩みの多くは対人関係から生まれると考え、人と人とのつながりの感覚を何より大切にしました。外国人労働者と地域の関係を考えるうえで、二つの考え方が手がかりになります。
共同体感覚|「ここは自分の居場所だ」と思える感覚
アドラー心理学の中心にあるのが共同体感覚です。他者を仲間だと感じ、自分はその共同体に居場所があると感じ、仲間のために貢献したいと思える感覚のことです。アドラーは、共同体を家族や職場だけでなく、もっと広いものとして考えていました。国籍や言葉が違っても、同じ職場で働き、同じ地域で暮らす人どうしは、ひとつの共同体の仲間になりえます。
共同体感覚が持てないとき、人は孤立し、心を閉ざします。異国で働く人にとって、「ここでは自分はただの労働力でしかない」と感じることは、とてもつらいことです。逆に、名前で呼ばれ、「あなたがいてくれて助かっている」と伝えられ、職場の行事や地域の集まりに仲間として招かれる。そうした経験が、「ここは自分の居場所だ」という感覚を育て、気持ちを口にする勇気につながります。
横の関係|「教える人」と「教わる人」だけにしない
アドラー心理学では、人と人との関係を、上下の縦の関係ではなく、対等な横の関係で築くことをすすめます。技能を教える場面では、どうしても「教える側」と「教わる側」の上下が生まれがちです。日本語ができないことで、相手を子どものように扱ってしまうこともあります。けれど、相手は母国で暮らしを営み、家族を支え、勇気を出して海を渡ってきた一人の大人です。
| 場面 | 縦の関係の言葉 | 横の関係の言葉 |
|---|---|---|
| 作業を覚えた | 「よくできました、えらいね」 | 「この作業を任せられて助かります」 |
| ミスがあった | 「何度言えばわかるの」 | 「どこがわかりにくかったか、一緒に確認しましょう」 |
| 元気がない | 「元気出して、頑張って」 | 「疲れているように見えて、心配しています」 |
| 母国の話をしてくれた | (聞き流す) | 「教えてくれてありがとう。もっと知りたいです」 |
横の関係を築くいちばん簡単な方法は、こちらも教わる側になることです。母国の言葉で「ありがとう」を教えてもらう、料理の作り方を聞く、家族の写真を見せてもらう。教わることで、相手は「自分にも人に与えられるものがある」と感じられます。それは、感情を言葉にするための安心の土台にもなります。
実を育てる|自己有用感と、言葉の壁を越える感情の言語化ワーク
自己肯定感の「6つの感」を木にたとえると、根の自尊心≒自己存在感、幹の自己受容感、枝の自己効力感、葉の自己信頼感、花の自己決定感の先に実るのが、実にあたる「自己有用感」です。自分は誰かの役に立っている、必要とされていると感じられる感覚のことです。
外国人労働者の多くは、家族のため、将来のために、役に立ちたいという強い思いを持って来日しています。ところが、言葉が通じない職場では、自分の働きが認められているのか、役に立っているのかがわからない。叱られる言葉は伝わっても、感謝の言葉は届きにくい。自己有用感の実がならないまま働き続けることは、心をすり減らします。
受け入れる側にとっても、自己有用感は大切です。「教えても伝わらない」「感謝されない」と感じる日が続くと、指導役の心もしおれていきます。双方が「役に立っている」と感じられる関係をつくることが、職場全体の空気を変えていきます。
ここからは、中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』で紹介しているワークを、言葉の壁がある職場向けに作り直しました。
3段階温度計を「絵と数字」で
朝礼で、晴れ・くもり・雨の三つの絵(または1〜3の数字)を見せ、今日の体と心の調子を指さしてもらいます。言葉はいりません。「雨」を選んだ人には、あとで個別に「どうしましたか?」と声をかけます。リーダーも自分の調子を選んで見せます。毎日続けると、本人も自分の調子に気づく習慣ができ、周りも変化に気づきやすくなります。
感謝を「具体的なひとこと」で伝える
「ありがとう」に、何が助かったのかを一つだけ添えます。「箱を全部並べてくれて、ありがとう。助かりました」。やさしい日本語で、短く、具体的に。何が役に立ったのかがわかると、自己有用感の実は確かに育ちます。翻訳アプリを使ってもかまいません。大切なのは、言葉の正確さより、伝えようとする姿勢です。
感情ことば帳を「二つの言葉」でつくる
「うれしい」「つかれた」「こまった」「さびしい」「こわい」など、感情の言葉を日本語と母語の両方で書いた小さな表をつくり、休憩室に貼っておきます。職場のみんなで母語の感情語を教わるのもよい方法です。「さびしい」を相手の言葉で言えるようになると、それだけで距離が縮まります。
5秒ルールで自分の感情を確かめる
ミスを見つけて注意する前に、5秒だけ止まって「今の私は、怒っている? 心配している? 焦っている?」と自分に聞きます。感情に名前をつけると、扁桃体の反応がおだやかになることが、リーバーマンら(Lieberman et al., 2007)の研究で示されています。「心配している」と気づけたら、「あなたがけがをしないか心配です」と、気持ちを主語にして伝えられます。
中島輝より一言
カウンセリングでは、言葉にならない気持ちを抱えた方に、「今の気持ちに近い色はどれですか?」「1から10で言うと、つらさはどれくらい?」と尋ねることがあります。言葉がうまく出なくても、色や数字なら選べることは多いのです。言葉の壁がある相手との関わりも、同じです。完璧な言葉で通じ合うことより、「あなたの気持ちを知りたい」という姿勢が伝わることのほうが、ずっと大切です。その姿勢は、どんな言葉の壁も越えて届きます。
相談先と地域のつながり|一人にしない仕組み
外国人労働者が困りごとを抱えたとき、職場の外に相談できる場所があることはとても大切です。職場の中の人には言いにくいこと、たとえば職場での扱いへの不満や、人間関係の悩みもあるからです。受け入れる側も、すべてを自分たちだけで抱える必要はありません。
| 相談先の例 | 話しやすいこと |
|---|---|
| 監理団体・登録支援機関(受け入れの仕組みにより異なる) | 職場や生活の困りごと、受け入れ側の悩み |
| 外国人技能実習機構(OTIT)の母国語相談 | 技能実習生本人の悩み、職場での扱いへの不安 |
| 外国人在留支援センター(FRESC)・自治体の多言語相談窓口 | 在留資格、生活、行政手続きなどの相談 |
| 都道府県労働局の総合労働相談コーナー、労働基準監督署 | 賃金、労働時間、ハラスメントなど労働条件の問題 |
| 地域の国際交流協会、日本語教室 | 日本語の学習、地域の人との交流、孤立の予防 |
| 医療機関(通訳の手配ができる病院を含む) | 眠れない、食べられない、体の不調が続く |
窓口の名前や対応言語は、制度の変更や地域によって変わることがあります。受け入れ前に、本人が使える相談先を母語で一覧にして渡しておくことをおすすめします。相談先を知っているだけで、「困ったときに行ける場所がある」という安心が生まれます。
眠れない、食欲がない、体の不調が続く、表情がなくなったといった変化が2週間以上続く場合は、医療機関への相談を考えてください。医学的な判断は医師にゆだねることが大切です。母国の言葉で話せる場所につなぐことも、大きな支えになります。
地域ができることもたくさんあります。日本語教室は、言葉を学ぶ場であると同時に、気持ちを話せる数少ない場所になっていることが少なくありません。そこで「最近どう?」と聞いてもらえることが、異国で暮らす人の心を支えています。外国にルーツを持つ家族の心については多文化家庭と感情の言語化、日本で学ぶ留学生については留学生と感情の言語化でも扱っています。
よくあるご質問
「あなたの気持ちを知りたい」は、どんな言葉より届く。
同じ職場、同じ地域の仲間として。
受け入れるあなたの戸惑いにも、名前をつけて。
自分を大切にしよう
外国人労働者と受け入れる地域のあいだで起きるすれ違いの多くは、手順や規則が伝わらないことだけでなく、不安や孤独、恥ずかしさ、役に立ちたいという気持ちが、言葉の壁の向こうで飲み込まれていくことから生まれます。母語でない言葉では、感情はさらに言いにくくなります。「はい、大丈夫です」は、言えることの中でいちばん安全な言葉なのかもしれません。そして受け入れる側にも、戸惑い、いら立ち、責任の重さという、言葉にならない感情があります。
アドラー心理学は、国籍や言葉の違いを越えて、同じ共同体の仲間として横の関係を結ぶことの大切さを教えてくれます。絵と数字の3段階温度計、具体的な感謝のひとこと、二つの言葉の感情ことば帳、注意する前の5秒ルール。小さな工夫を重ねるたびに、「ここで役に立っている」という自己有用感の実が、働く人の中にも、受け入れるあなたの中にも、少しずつ実っていきます。
完璧に通じ合わなくてもかまいません。伝えようとすること、知ろうとすることを、やめないでください。そして、相手を思うあまり自分の疲れを見ないふりをしないでください。自分を大切にしよう。あなたが自分の気持ちを言葉にできたとき、言葉の壁の向こうにいる人の気持ちにも、きっと手が届きやすくなります。
本記事の参考資料・科学的根拠
- 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)原稿
- 厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(2023年10月末現在)
- 出入国在留管理庁「特定技能制度」「育成就労制度」関係資料
- 出入国在留管理庁・文化庁「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」(2020年)
- Berry, J.W. (1997). Immigration, acculturation, and adaptation. Applied Psychology, 46(1), 5-34.
- Ekman, P., & Friesen, W.V. (1969). The repertoire of nonverbal behavior: Categories, origins, usage, and coding. Semiotica, 1, 49-98.
- Allport, G.W. (1954). The Nature of Prejudice. Addison-Wesley.(邦訳『偏見の心理』培風館)
- Lieberman, M.D. et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421-428.
- Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
- アルフレッド・アドラー『人生の意味の心理学』
- 岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)
- 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料

自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。







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