みんなが知り合いの島で本音を隠して暮らす|離島・過疎地と感情の言語化

みんなが知り合いの島で本音を隠して暮らす|離島・過疎地と感情の言語化

みんなが知り合いの島で本音を隠して暮らす
離島・過疎地と感情の言語化

スーパーのレジで「昨日、診療所に行ってたでしょう」と声をかけられる。役場の窓口に座る人は同級生の母親で、診療所の看護師は親戚。夕方の船着き場では、誰が島を出て誰が帰ってきたか、みんなが知っている。だから、しんどいときほど「元気だよ」と笑ってしまう。離島や過疎地の濃い人間関係は、困ったときの支えであると同時に、本音を言えなくする壁にもなります。研究とアドラー心理学の視点から、顔見知りの社会で心を守り、自分を信じて暮らすための方法をお伝えします。

中島 輝(中島輝)
心理カウンセラー/自己肯定感アカデミー会長/「6つの感」理論創始者/著書累計77万部/15,000人臨床/『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる自己肯定感の教科書』(SBクリエイティブ・累計32刷)『働く人のための自己肯定感』著者

結論:島の息苦しさは「人の少なさ」ではなく「逃げ場のなさ」から来る

結論からお伝えします。離島や過疎地で本音が言えなくなるのは、人が冷たいからでも、自分が弱いからでもありません。一人ひとりが何役も兼ねる、匿名性のない人間関係の構造そのものが、感情を言葉にする場所を少なくしているのです。都会なら、職場の愚痴は職場と関係のない友人に話せます。島では、その友人が職場の取引先であり、子どもの同級生の親であり、親戚であることも珍しくありません。

この記事のポイントは3つです。

  • 顔見知りだけの社会では、「弱いつながり」が少ない。社会学の研究では、少し距離のある知り合いこそが、新しい情報や逃げ場をもたらすとされている。
  • 感情を隠し続けると、自分の気持ちが自分でもわからなくなる。人前で「元気」を演じる時間が長いほど、本音は言葉になる前に消えていく。
  • 本音を置ける場所を、島の中と外に分けて持つ。それが、自分の感覚を信じる自己信頼感を守る。

ここで手がかりになるのが、アレキシサイミア(失感情症)という心理学の言葉です。感情がないのではなく、感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態をいいます。病名ではなく、一般の人の約10〜16%に強い傾向が見られる、誰もが持つ特性の濃淡です。基本はアレキシサイミア(失感情症)とはにまとめています。中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』では、こうした状態にある人を「感情迷子さん」と呼んでいます。迷子という言葉には、帰る場所があるという前提が含まれています。

よくある相談の典型例
「島では、弱音を吐いたら
次の日にはみんなが知ってるんです」
場面30代の女性。人口千人ほどの島で生まれ育ち、いったん本土で就職したあと、親の事情で島に戻って役場で働いている。仕事にも人にも大きな不満はない。けれど夜になると理由のわからない動悸がして、本土の友人とのビデオ通話だけが、息をつける時間になっている。
これは、いくつもの相談に共通する要素を組み合わせた典型例です。「不満はない」という言葉の下には、常に見られている緊張、誰にも本音を言えないさみしさ、ここで一生を過ごすのかという迷いが、名前をつけられないまま積み重なっています。夜の動悸は、昼間に抑え込んだ感情が体を通して出てきた声かもしれません。

数字と研究で見る|「全員が顔見知り」の社会で起きること

まず、離島や過疎地をめぐる基本的な数字と、人間関係について押さえておきたい研究を整理します。

数字・概念内容出典
14,125日本の島の数。2023年に数え直され、それまでの6,852から大きく増えた国土地理院(2023年公表)
1953年離島の生活基盤や医療を支えるための離島振興法が制定された年離島振興法
約半数過疎地域に指定されている市町村の、全国の市町村に占める割合総務省(過疎地域の指定状況)
約150人人が安定した関係を保てる人数の目安とされる「ダンバー数」ロビン・ダンバー(Dunbar, 1992)
弱い紐帯の強さ新しい情報や機会は、親しい人より「少し距離のある知り合い」からもたらされやすいマーク・グラノヴェッター(Granovetter, 1973)

イギリスの人類学者ロビン・ダンバーは、人が顔と名前を知り、安定した関係を保てる人数には限りがあり、その目安はおよそ150人だと考えました。小さな島や集落では、暮らしている人の多くが、この「顔の見える範囲」に入ってしまいます。誰もが誰かを知っていて、誰かについての話は、すぐに共有されます。

一方、アメリカの社会学者マーク・グラノヴェッターは1973年の論文で、「弱い紐帯の強さ」という考え方を示しました。転職の情報などの新しい機会は、家族や親友のような強いつながりより、ときどき会う程度の知り合いからもたらされやすい、というものです。

これを感情の面から考えると、大切なことが見えてきます。弱いつながりは、本音の「逃げ場」にもなるのです。職場と関係のない趣味の仲間、行きつけの店の店主、たまに会う昔の同級生。そうした相手には、利害を気にせず愚痴をこぼせます。全員が強いつながりで結ばれている社会では、この逃げ場がつくりにくいのです。

本音が言えないのは、
あなたが閉じているからではない。
本音を置ける「少し遠い人」が、近くにいないだけ。

「あの家の誰々さん」として生きる|匿名性のない暮らしと本音

島や小さな集落では、人は個人である前に「あの家の娘さん」「漁協の誰々さんの息子」「診療所の看護師さん」として見られます。その安心感がある一方で、役割から外れた自分を見せにくくなります。

一人の人に、いくつもの役割が重なる 島や過疎地では、同じ相手と何通りもの関係で結ばれやすい Aさん 役場の同僚 消防団の先輩 夜の訓練で毎週会う 子どもの同級生の親 学校行事は全家庭参加 遠い親戚 法事や祭りで顔を合わせる 店のお客さん 家業の商店の常連 一つの関係でこじれると、ほかの関係にも響く → 本音を飲み込みやすい
▲ 都市では「職場の人」「近所の人」「親戚」は別々の人であることが多いのに対し、島や過疎地では同じ人と何重にも結ばれやすくなります。一つの場面で本音を言うと、ほかのすべての関係に影響しそうに感じるため、感情を飲み込む習慣がつきやすくなります。

関係が何重にも重なっていると、一つの場面で感情を出すことのリスクが、何倍にも感じられます。職場で上司に不満を言えば、その上司とは消防団でも会い、子どもの運動会でも隣に座る。怒りや悲しみを出すより、黙って笑っておくほうが安全だ。そう学習するのは、むしろ自然なことです。

「感情を出さない」が続くと、感情が見えなくなる

問題は、その習慣が長く続いたときです。人前で感情を抑えることを繰り返すと、やがて一人でいるときにも、自分が何を感じているのかがわからなくなることがあります。アレキシサイミアの4つのタイプで言えば、出来事や段取りにばかり目を向けて気持ちに関心を向けなくなるタイプ3「感情に興味がない」の状態に近づいていきます。

「行事の段取りは完璧に覚えている。でも、自分がその行事を楽しんでいるのかどうかはわからない」。こうした感覚は、地域の役割をたくさん担っている人ほど持ちやすいものです。地域の人間関係の疲れについてはご近所・地域の人間関係に疲れる理由も参考にしてください。

相談したくても、相談先も顔見知り|医療と相談の少なさ

離島や過疎地では、医療機関や相談窓口そのものが限られています。診療所が一つだけ、心療内科や精神科は船や車で何時間もかかる本土の病院まで行かなければならない、という地域もあります。

そして、数の少なさ以上に大きいのが、「相談先の人も顔見知り」という壁です。保健師さんは子どもの頃からの知り合い。診療所の待合室では、近所の人と隣り合わせになる。役場の福祉の窓口に行けば、誰かに見られるかもしれない。心の不調を相談することへのためらいは、都市よりもずっと強くなりがちです。

地方や農村部では、心の不調について助けを求めることへの抵抗感や偏見が強く、相談につながりにくいことを指摘する研究が、国内外にあります。「相談しない」のは、その人の弱さではなく、相談しにくい環境があるからだと捉えることが大切です。

顔を知られずに話せる窓口を知っておく

だからこそ、島や過疎地で暮らす人には、電話やSNSで、顔も名前も知られずに話せる相談先を知っておいてほしいのです。

顔を知られずに話せる相談窓口
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
よりそいホットライン 0120-279-338(24時間)
厚生労働省「まもろうよ こころ」でSNS相談先を探せます

また、地域によってはオンライン診療やオンラインのカウンセリングを利用できる場合もあります。心や体の不調が続くときは、本土の医療機関も含めて、医師に相談してください。医学的な判断は医師にゆだねることが大切です。

中島輝より一言

小さな町や島に暮らす方からのご相談で、とても多いのが「地元の人には絶対に知られたくない」という言葉です。私はその気持ちを、決して大げさだとは思いません。本音を守りたいという気持ちは、自分を守る大切な感覚です。だからこそ、地元の外に一つ、本音を置ける場所をつくってほしいのです。電話一本、メッセージ一通からでかまいません。

島を出ていく若者、見送る大人|流出と残る側の感情

多くの島や過疎地には、高校や大学、働く場が限られているという現実があります。15歳や18歳で島を出ていく子どもたちを、毎年春に船着き場で見送る。島の春は、出会いの季節であると同時に、別れの季節でもあります。

見送る親や地域の大人は、「頑張ってこいよ」と笑顔で手を振ります。けれど、その笑顔の下には、誇らしさ、さみしさ、心配、そして「もう戻ってこないかもしれない」というあきらめが混ざっています。若者が出ていくことは、地域の未来が細っていくことでもあり、その喪失感は、個人の別れを超えた大きなものになります。

立場表に出す言葉その下にあるかもしれない感情
出ていく若者「楽しみ」「早く都会に行きたい」不安/島を捨てるような後ろめたさ/親を置いていく心配
見送る親「頑張ってこいよ」さみしさ/誇らしさ/戻ってきてほしいという本音
残る同世代「自分は島が好きだから」取り残された感じ/比べてしまう気持ち/選ばなかった道への迷い
地域の年長者「若いもんはみんな出ていく」地域が消えていく喪失感/自分たちが守ってきたものへの悲しみ

表のように、同じ「別れ」の場面でも、立場ごとに違う感情が、別の言葉の下に隠れています。とくに島に残った同世代の若者は、「残った」ことを選択として語りながら、どこかで比べてしまう自分に気づいていることがあります。どちらの道にも、それぞれのさみしさと誇りがあるのです。

見送る側の大人に試してほしいのは、笑顔の「頑張れ」に、一言だけ本音を足すことです。「さみしくなるな」「いつでも帰ってきていいからな」。その一言があるだけで、出ていく若者は「島を捨てた」のではなく「島に送り出された」と感じられます。

赴任してきた人へ|「よそから来た先生」の孤独

離島や過疎地には、教員、医師、看護師、駐在の警察官、役場や企業の転勤者など、数年の任期でやってくる人がいます。島の暮らしを支える大切な存在でありながら、その人たち自身の感情は見過ごされがちです。

よくある相談の典型例
「休みの日も、どこに行っても
『先生』なんです」
場面20代後半の男性教員。初めての赴任先が、全校児童が十数人の島の小学校だった。島の人は親切で、魚や野菜をよく分けてもらう。けれど休日に釣りをしていても、商店で買い物をしていても、子どもや保護者に会う。疲れた顔を見せてはいけない気がして、家の中でもくつろげなくなってきた。
これは、いくつもの相談に共通する要素を組み合わせた典型例です。「先生」という役割を脱げる時間がないことが、少しずつ心をすり減らしています。親切にされるほど「弱音を吐くのは申し訳ない」と感じ、さみしさや疲れが言葉にならなくなっていきます。

赴任してきた人は、「よそ者」と「地域の大事な人」という二つの立場を同時に生きています。地域の行事に呼ばれる一方で、本当の意味では輪の中に入れていない気がする。数年で去ることがわかっているから、深く関わりすぎないようにする。その中途半端さが、独特の孤独を生みます。

赴任者が自分を守るための3つのこと

  • 役割を脱げる時間と場所をつくる。月に一度は本土に渡る、オンラインで趣味の仲間と話すなど、「先生」「看護師さん」ではない自分でいられる時間を予定に入れる。
  • 同じ立場の人とつながる。ほかの島や過疎地に赴任している同業者、前任者と話すと、「自分だけではない」と思える。
  • 受け入れる側の地域は、「ありがとう」に一言足す。「いつも助かってます。でも、休みの日はゆっくりしてね」。その一言が、赴任者の肩の力を抜く。

アドラー心理学で見る|共同体感覚は「同調」ではない

私は長年、アドラー心理学をベースにカウンセリングをしてきました。オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラー(1870〜1937)の考え方の中から、島や過疎地で暮らす人の助けになる2つを紹介します。

共同体感覚|目の前の共同体だけがすべてではない

アドラーが人の心の健康の土台として重視したのが、「共同体感覚」です。自分は共同体の一員であり、居場所がある(所属感)、仲間を信頼できる、自分は誰かの役に立っている(貢献感)と感じられる感覚をいいます。

島や集落は、共同体感覚が育ちやすい場所でもあります。祭りや漁、災害のときの助け合いには、都市では得にくい深い所属感があります。けれど、ここで一つ誤解しやすい点があります。共同体感覚とは、周りに合わせて本音を隠す「同調」のことではありません。

アドラーのいう共同体は、家族や地域にとどまらず、もっと大きな広がりを持つものとして考えられています。岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』でも、目の前の小さな共同体の中で行き詰まったときは、より大きな共同体の声に耳を傾ければよい、という考え方が紹介されています。島の外の友人、同じ趣味を持つオンラインの仲間、相談窓口の人。島の中で本音が言えなくても、あなたが所属できる場所は、島の外にも広がっているのです。

課題の分離|噂をするかどうかは、相手の課題

もう一つが、「課題の分離」です。それは誰の課題か、を見分け、他人の課題には踏み込まないという整理です。

島の暮らしで本音を言えない大きな理由の一つは、「噂になるのが怖い」という気持ちです。けれど、あなたの話を聞いた人がそれを誰かに話すかどうか、あなたのことをどう思うかは、相手の課題であり、あなたがコントロールできることではありません。あなたの課題は、誰に、どこまで話すかを自分で選ぶことです。

これは「噂を気にするな」という意味ではありません。噂が気になるのは自然なことです。そのうえで、「この人には話す」「この話は島の外の人に話す」と、話す相手と中身を自分で選び分けることができれば、本音を守りながら、本音を手放さずにすみます。

本音を置ける「3つの場所」を持つ 話す相手と中身を、自分で選び分ける ① 島の中の一人 口のかたい友人・家族 日々の小さな気持ち 「今日は疲れた」 「あれはうれしかった」 ② 島の外のつながり 本土の友人・同業者 オンラインの仲間 島の人間関係の愚痴 将来への迷い ③ 匿名の相談先 電話・SNSの相談窓口 オンラインの専門家 誰にも言えない苦しさ 心や体の不調 一か所に全部を置かなくていい。分けて置くと、本音は守られる
▲ 本音を置く場所を、島の中の信頼できる一人、島の外のつながり、匿名の相談先の3つに分けておくと、噂を恐れて全部を飲み込む必要がなくなります。どの話をどこに置くかを決めるのは、あなた自身です。

葉を茂らせる|自己信頼感を育てる感情の言語化ワーク

自己肯定感の「6つの感」は、木にたとえることができます。根にあたる自尊心≒自己存在感、幹にあたる自己受容感、枝にあたる自己効力感、葉にあたる自己信頼感、花にあたる自己決定感、実にあたる自己有用感です。

顔見知りの社会で揺らぎやすいのが、「自分の感じ方を信じていい」という自己信頼感です。いつも周りの目を基準にしていると、「みんながいいと言うからいい」「波風を立てないほうがいい」と、自分の感覚よりも周囲の評価を優先するようになります。すると、自分が本当はどう感じているのかを信じられなくなっていきます。葉が茂るには、自分の感覚を自分で確かめる時間が必要です。

ワーク1|5秒
5秒ルールで「今の気持ち」を拾う

誰かと別れて一人になった瞬間、5秒だけ「今、どんな気持ち?」と自分に聞きます。船着き場からの帰り道、商店を出たあと、行事の片づけが終わったとき。「ほっとした」「ちょっと疲れた」「もやもや」。答えは一語でかまいません。人前で閉じていた感情の扉を、一人の時間に少しだけ開ける練習です。

ワーク2|3秒×3回
感情タイムアウトで、笑顔の前に一呼吸

本音と違うことを言いそうになったとき、3秒の呼吸を3回してから返事をします。その間に「本当は、ちょっと嫌だな」と心の中で言葉にします。口に出す必要はありません。自分の本音を自分だけは知っている、という感覚が、自己信頼感の葉を守ります。

ワーク3|30秒
共感の一言を、まず自分に

一日の終わりに、「今日もよく笑ってたね。本当は疲れてたよね」と、友人にかけるような言葉を自分にかけます。周りの気持ちを察することに長けた人ほど、自分の気持ちへの共感が後回しになりがちです。

ワーク4|2分
感情だけ日記を、島の外に置く

出来事や人の名前は書かず、今日感じた感情の言葉だけを3つ、ノートやスマートフォンに書きます。「緊張、安心、少しさみしい」。人の名前を書かないので、誰かに見られる心配も減ります。続けていくと、どんな場面で自分の心が動くのかが見え、自分の感覚を信じる手がかりになります。

周りの目を気にするのは、悪いことではない。
でも、自分の気持ちを知っているのは、自分だけでいい。
そこから、自分を信じる力が育っていく。

地域の側にできること

最後に、自治体や地域の担い手の方へ。小さな地域で心の相談をしやすくするには、「相談したことが知られない」仕組みが欠かせません。島外の専門家によるオンライン相談、電話やSNSの窓口の周知、待合室で顔を合わせないための予約の工夫。そして、日ごろから「最近どう?」と、役割ではなくその人自身に声をかけること。漁業や農業など一次産業の現場の心については一次産業の現場と感情の言語化も参考にしてください。

よくあるご質問

島で心の不調を相談したいのですが、知られるのが怖いです。
その気持ちは自然なもので、自分を守るための大切な感覚です。まずは、こころの健康相談統一ダイヤルやよりそいホットライン、厚生労働省「まもろうよ こころ」から探せるSNS相談など、顔や名前を知られずに話せる窓口を使ってみてください。体や心の不調が続くときは、本土の医療機関やオンライン診療も含めて、医師に相談することをおすすめします。
本音を隠しているうちに、自分が何を感じているのかわからなくなりました。
人前で感情を抑える時間が長く続くと、一人のときにも感情が見えにくくなることがあります。それは心が冷たくなったのではなく、身を守るために身につけた習慣です。一人になった瞬間に5秒だけ気持ちを確かめる、感情の言葉だけを3つ書く日記など、小さな練習から感情の入り口を開いていけます。
子どもが高校進学で島を出ます。笑顔で送り出すべきでしょうか。
笑顔で送り出したい気持ちも、さみしい気持ちも、どちらも本当の気持ちです。「頑張ってこいよ」に、「さみしくなるな」「いつでも帰ってきていいからな」と一言足してみてください。親が気持ちを言葉にする姿は、子どもにとっても、自分の不安やさみしさを言葉にしていいというメッセージになります。
赴任先の島で、休日もくつろげません。
役割を脱げる時間がない状態は、知らず知らずのうちに心をすり減らします。月に一度は島の外に出る、オンラインで趣味の仲間と話すなど、役割から離れられる時間を予定に入れてください。同じように小さな地域に赴任している同業者とつながることも、孤独をやわらげる助けになります。
島の人間関係が息苦しい、と感じる自分は島に向いていないのでしょうか。
そうとは限りません。息苦しさは、島そのものではなく、本音を置ける場所が少ないことから生まれている場合が多いのです。島の中の信頼できる一人、島の外のつながり、匿名の相談先と、本音を置く場所を分けて持つと、島の良さを感じながら暮らせるようになることがあります。
みんなが知り合いの場所で暮らすあなたへ。
本音を隠すのは、弱さではなく知恵。
でも、本音を置ける場所を一つ持とう。
あなたが所属できる場所は、島の外にも広がっている。
自分の気持ちを知っている自分を、信じていこう。

自分を大切にしよう

離島や過疎地の濃い人間関係は、困ったときの大きな支えであると同時に、本音を言えなくする壁にもなります。ダンバーが示した「顔の見える範囲」に暮らす人の多くが入り、グラノヴェッターのいう「弱いつながり」が少ない社会では、本音を置ける「少し遠い人」が見つけにくいのです。人前で感情を抑える時間が長く続くと、やがて自分でも何を感じているのかわからなくなることがあります。それはあなたの弱さではなく、環境に合わせて身につけた知恵です。

アドラー心理学の共同体感覚は、周りに合わせることではなく、もっと大きな広がりの中に自分の居場所を見つけることを教えてくれます。課題の分離は、噂をするかどうかは相手の課題であり、誰に何を話すかを選ぶのは自分の課題だと整理する手がかりになります。5秒ルール、感情タイムアウト、自分への共感の一言、感情だけ日記。自分の気持ちを自分で確かめるたびに、自己信頼感という葉が少しずつ茂っていきます。

島で生まれ育った人も、島を出ていく人も、島にやってきた人も、それぞれのさみしさと誇りを抱えています。自分を大切にしよう。みんなが知り合いの場所でも、あなたの本音は、あなたが守っていいものです。

本記事の参考資料・科学的根拠

  • 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)原稿
  • 国土地理院「日本の島の数」(2023年公表)
  • 離島振興法(1953年制定)
  • 総務省「過疎地域の指定状況」(過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法)
  • Dunbar, R.I.M. (1992). Neocortex size as a constraint on group size in primates. Journal of Human Evolution, 22(6), 469-493.
  • Granovetter, M.S. (1973). The strength of weak ties. American Journal of Sociology, 78(6), 1360-1380.
  • Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
  • アルフレッド・アドラー『人生の意味の心理学』
  • 岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)
  • 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料
監修|中島 輝
心理カウンセラー・自己肯定感アカデミー会長・「6つの感」理論創始者
著書累計77万部・15,000人臨床・回復率95%
本記事は心理学的知見に基づく一般情報です。医学的診断や治療の代わりにはなりません。心身に不調を感じる場合は、医療機関・専門家へのご相談をおすすめします。

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