評価面談の前夜に胃が痛む管理職へ
人事評価と感情の言語化
明日は、期末の評価面談。部下の一人には「期待を下回る」という評価を伝えなければならない。評価シートの所見欄を何度も書き直し、言い回しを考えているうちに日付が変わる。布団に入っても、胃のあたりが重く、相手の表情ばかりが浮かぶ。評価を伝えるのがつらいのは、あなたが管理職に向いていないからではありません。人事評価には、評価する側の感情が入り込む構造があり、その感情に名前がついていないと、面談はさらに重くなります。評価の研究とアドラー心理学から、評価者の心を言葉にし、納得感のある面談にするための方法をお伝えします。
結論:評価面談がつらいのは、評価者の感情に置き場がないから
結論からお伝えします。評価面談の前に胃が痛むのは、管理職としての力不足ではありません。人事評価は「客観的な仕組み」として設計されているのに、実際には評価する人の感情が深く関わっている。その感情を言葉にする場所が、評価の制度のどこにも用意されていないことが、つらさの正体です。
この記事のポイントは3つです。
- 評価者の「好き・苦手」「申し訳なさ」「怖さ」は、気づかないうちに点数をゆがめる。ハロー効果などの評価者バイアスは、感情に名前がついていないときほど強く働く。
- 部下の納得感は、点数の高さよりも「どう決まり、どう伝えられたか」で決まる。手続きの公正さと、面談の言葉が鍵になる。
- 評価者が自分の感情を言葉にできると、面談は「裁く場」から「一緒に次を考える場」に変わる。それが、自分の判断を信じる自己信頼感を育てる。
ここで役に立つのが、アレキシサイミア(失感情症)という心理学の言葉です。感情がないのではなく、感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態をいいます。病名ではなく、一般の人の約10〜16%に強い傾向が見られる、誰もが持っている特性の濃淡です。中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』では、こうした状態にある人を「感情迷子さん」と呼んでいます。迷子という言葉には、帰る場所があるという前提が含まれています。基本はアレキシサイミア(失感情症)とはでまとめています。
管理職の多くは、仕事の場で「感情を持ち込まない」ことを長く求められてきました。とくに評価は「公平でなければならない」場面なので、自分の感情は消しておくべきものだと考えがちです。けれど、感情は消そうとしても消えません。名前をつけられないまま、胃の痛み、眠れなさ、所見欄の言い回しの迷いとして表に出てきます。
なぜか毎回、前の晩に眠れないんです」
数字と研究で見る人事評価|評価は思っているほど客観的ではない
人事評価の研究は、100年ほど前から続いています。そこで繰り返し示されてきたのは、評価には評価する人の心のクセが入り込むという事実です。押さえておきたい知見を整理します。
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| ハロー効果 | 一つの目立つ特徴の印象が、ほかの評価項目にまで広がってしまう傾向。軍の上官による部下の評価で、項目どうしが不自然に似通うことから名づけられた | Thorndike(1920, Journal of Applied Psychology) |
| 半分以上 | 上司などによる業績評価のばらつきのうち、半分以上が「評価される人の実績」ではなく「評価する人ごとの癖」で説明された | Scullen, Mount & Goff(2000, Journal of Applied Psychology) |
| 約3分の1 | フィードバックの効果を調べた研究をまとめると、約3分の1のケースで、フィードバックのあとにかえって成績が下がっていた | Kluger & DeNisi(1996, Psychological Bulletin) |
| 手続きの公正 | 評価の結果だけでなく、決め方や伝え方が公正だと感じられるかどうかが、納得感や組織への信頼に関わる | Greenberg(1986)、Folger & Konovsky(1989)ほか組織的公正の研究 |
| 約10〜16% | 一般の人のうち、アレキシサイミア傾向が強いとされる人の割合 | TAS-20等を用いた複数の疫学研究 |
アメリカの心理学者エドワード・ソーンダイクが1920年に名づけたハロー効果は、いまでも評価者研修の定番です。そして、スカレンらの研究が示したのは、もっと耳の痛い事実でした。評価の点数は、評価される人について語っている以上に、評価する人について語っているということです。同じ部下でも、評価者が変われば点数が変わる。これは評価者が不誠実だからではなく、人が人を評価するときに避けられない性質です。
もう一つ注目したいのが、クルーガーとデニシのメタ分析です。フィードバックは成長のために行うものなのに、伝え方によっては、かえってやる気や成績を下げてしまう。彼らは、フィードバックの注意が「仕事そのもの」から「自分という人間の価値」へ向かうと、逆効果になりやすいと考えました。評価面談で部下が「自分が否定された」と感じると、次の期の行動にはつながりにくいのです。
評価は、評価される人を映すと同時に、
評価する人の心も映している。
だから、評価者の感情を見ることから始める。
評価者バイアスの下にある感情|ハロー効果は「好き・苦手」から始まる
評価者研修では、ハロー効果、寛大化傾向、中心化傾向、直近効果(期末に近い出来事が強く印象に残る)、対比誤差(自分と比べて評価してしまう)といった評価者バイアスを学びます。名前を知ることは大切です。けれど、知っているだけでは防げません。なぜなら、バイアスの多くは、名前のついていない感情から生まれるからです。
ハロー効果の下にある「この人は話しやすい」
たとえば、報告がこまめで、会議でも感じよく反応してくれる部下がいるとします。評価者の中には「この人といると安心する」「話しやすい」という好ましさが生まれます。その感情に気づかないまま評価すると、数字の未達や細かなミスが目に入りにくくなる。これがハロー効果の入り口です。
逆に、こちらの指示に一度反論してきた部下に対しては、「扱いにくい」「また何か言われるかもしれない」という警戒心が生まれます。この感情が、本来は評価すべき成果まで小さく見せてしまうことがあります。
寛大化・中心化の下にある「嫌われたくない」「怖い」
全員に甘めの点をつける寛大化傾向や、全員を真ん中の評価に寄せる中心化傾向も、技術の問題というより感情の問題であることが多いものです。その下にあるのは、「部下に嫌われたくない」「低い評価を伝えたら関係が壊れる」「反論されたら答えられないかもしれない」という怖さです。
大切なのは、こうした感情を持つこと自体を責めないことです。好き・苦手、怖い、申し訳ないは、人として自然な反応です。問題は感情があることではなく、感情に気づかないまま点数に流れ込ませてしまうことです。感情に名前がつけば、「私はこの人を話しやすいと感じている。だからこそ、数字の事実を先に確認しよう」と、自分で手当てができます。
低い評価を伝える前夜|胃の痛みを言葉にほどく
評価面談でいちばん重いのは、期待に届かなかった部下に、そのことを伝える場面です。前夜の胃の痛み、所見欄を書いては消す手、繰り返し頭の中で練習する言い回し。これらは、言葉にならない感情が体と行動に出ているサインです。
「憂うつ」「気が重い」という言葉でひとまとめにしている感情を、ていねいに分けてみましょう。
| 表に出る言葉 | その下にある感情 | 体や行動のサイン |
|---|---|---|
| 「気が重い」 | 相手をがっかりさせる申し訳なさ | 胃が重い、ため息が増える |
| 「うまく言えるか不安」 | 反論や涙への怖さ | 頭の中で何度も練習する、寝つけない |
| 「自分の指導も悪かった」 | 育てきれなかった後ろめたさ | 所見欄の表現を必要以上にやわらげる |
| 「会社の制度だから仕方ない」 | 相対評価への納得できなさ、怒り | 肩のこわばり、制度の説明だけで終わらせたくなる |
| 「早く終わらせたい」 | その場から逃げたい気持ち | 面談の時間を短く設定する、目を合わせにくい |
感情を分けると、それぞれへの対処が見えてきます。申し訳なさがあるなら、それは部下を大切に思っている証拠でもあります。怖さがあるなら、反論されたときの答えを準備しておけばいい。後ろめたさがあるなら、それは評価とは別に「来期、自分はどう支援するか」として扱えばいい。制度への不満があるなら、それは部下にぶつけるのではなく、人事に伝えるべきことです。
リーバーマンら(Lieberman et al., 2007)の研究では、感情に言葉でラベルをつけると、不安や恐れに関わる扁桃体の反応がおだやかになることが示されています。前夜に「私は、彼をがっかりさせるのが申し訳ないし、反論されるのが少し怖い」と紙に書くだけで、胃の痛みが少し引くことがあります。感情に名前がつくと、感情に振り回されずに準備ができるのです。
中島輝より一言
管理職の方のカウンセリングで、「評価面談がつらい」という相談はとても多いものです。私がよくお聞きするのは、「その部下に、本当はどうなってほしいと思っていますか?」という質問です。すると多くの方が、「もっと力を出せる人だと思っている」「辞めてほしくない」と答えます。評価がつらいのは、相手を大切に思っているからこそです。その気持ちを言葉にできると、面談で伝えるべきことの軸が定まっていきます。
納得感は点数ではなく「プロセス」から生まれる
部下が評価に納得するかどうかは、点数の高さだけでは決まりません。組織の公正さの研究では、結果の公正さ(分配的公正)に加えて、決め方の公正さ(手続き的公正)と、伝え方の公正さ(相互作用的公正:敬意をもって、理由を説明してもらえたか)が、納得感や組織への信頼に関わることが示されてきました。
つまり、同じ「B」という評価でも、どんな基準で、どんな事実をもとに決まったのかが説明され、自分の話も聞いてもらえたと感じられれば、部下は受けとめやすくなります。反対に、高めの評価でも、理由がわからず一方的に伝えられれば、不信感が残ります。
納得感を生む面談の4つの要素
期初の目標と基準に立ち返る
評価は、期末に突然つけるものではなく、期初に合意した目標と基準の「答え合わせ」です。面談の冒頭で、期初に何を目指したかを一緒に確認すると、評価が「上司の好き嫌い」ではなく「約束したことの振り返り」になります。
事実と評価と感情を分けて話す
「〇月の案件で、納期が2週間遅れた」(事実)、「この点は、期待していた水準に届かなかったと判断した」(評価)、「私としても、もっと早く相談に乗れればよかったと思っている」(感情)。三つを混ぜずに分けて話すと、相手は受けとめやすくなり、評価者自身も話しやすくなります。
相手の言い分を最後まで聞く
評価を伝えたあと、「この評価について、あなたはどう感じていますか」と聞き、反論があっても途中でさえぎらずに聞きます。評価を変えるかどうかとは別に、「聞いてもらえた」という経験そのものが、手続きの公正さを支えます。
来期の「一緒にやること」で終える
面談の最後は、点数ではなく来期に向けて、部下が取り組むこと、上司が支援することを一つずつ確認して終えます。評価面談が「判決の言い渡し」ではなく「次の作戦会議」として終わると、部下の気持ちは前を向きやすくなります。
日々の対話の場としての1on1の進め方は1on1が「業務報告会」で終わる理由で詳しく扱っています。評価面談は年に数回の特別な場ですが、ふだんの対話で感情を言葉にし合えている職場ほど、評価面談も落ち着いたものになります。
アドラー心理学で見る|ほめる・叱るではなく勇気づけ、縦ではなく横の関係
私は長年、アドラー心理学をベースにカウンセリングをしてきました。オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラー(1870〜1937)の考え方は、人事評価という仕組みを見直すうえでも大きなヒントになります。ここでは2つを紹介します。
ほめる・叱るではなく、勇気づけ
アドラー心理学では、ほめることも叱ることも、相手を上から操作しようとする関わりだと考えます。「よくやった」とほめるのも、「なぜできないのか」と叱るのも、評価する側が上に立って、相手を望む方向に動かそうとしている点では同じです。ほめられるために働く人は、ほめられないと動けなくなり、叱られないために働く人は、失敗を隠すようになります。
かわりにアドラーが大切にしたのが勇気づけです。勇気づけとは、困難に向き合う力を相手の中に育てる関わりのことで、結果だけでなく過程や工夫に目を向け、「ありがとう」「助かった」と、横の関係から気持ちを伝えることが中心になります。
| ほめる・叱る | 勇気づけ | |
|---|---|---|
| 立ち位置 | 上から評価を下す | 横に並んで一緒に振り返る |
| 注目する点 | 結果、できた・できなかった | 過程、工夫、次に生かせること |
| 言葉の例 | 「さすがだね」「どうしてできないの」 | 「あの調整は助かった」「どこで詰まったか一緒に見よう」 |
| 部下に残るもの | 評価への依存、または失敗を隠すクセ | 「次はこうしてみよう」という自分の力 |
人事評価には点数がある以上、評価すること自体はなくせません。けれど、面談での言葉を「ほめる・叱る」から「勇気づけ」に変えることはできます。クルーガーとデニシの研究が示した「フィードバックが自分の価値に向かうと逆効果になりやすい」という知見は、アドラーの考え方とよく重なっています。
縦の関係ではなく、横の関係
アドラー心理学では、人間関係を縦の関係(上と下、評価する側とされる側)ではなく、横の関係(役割は違っても、人として対等)で捉えることを大切にします。評価面談は、制度のうえでは明らかに縦の関係です。だからこそ、評価者が意識して「役割として評価はするけれど、人として上にいるわけではない」という姿勢を持つことに意味があります。
横の関係に立つと、評価者の感情も言葉にしやすくなります。「この評価を伝えるのは、私にとってもつらい」「私の支援が足りなかった部分もあると思っている」。上に立って裁く人は、こうした言葉を口にできません。横に並ぶ人だけが、自分の感情を開くことができます。そしてその姿は、部下にも「ここでは本音を話していい」というメッセージとして届きます。
評価という縦の仕組みの中でも、
言葉は横の関係から選べる。
それが、評価を「成長の場」に変える。
葉を茂らせる|自己信頼感を育てる評価者のための感情の言語化ワーク
自己肯定感の「6つの感」は、木にたとえることができます。根にあたる自尊心≒自己存在感、幹にあたる自己受容感、枝にあたる自己効力感、葉にあたる自己信頼感、花にあたる自己決定感、実にあたる自己有用感です。
評価者の心でいちばん揺らぎやすいのが、「自分の判断を信じられる」という自己信頼感の葉です。「この点数で本当に正しいのか」「えこひいきだと思われないか」「反論されたら答えられないのではないか」。評価のたびに迷いが生まれ、所見欄を何度も書き直すのは、葉がしおれかけているサインです。
自己信頼感は、「自分は絶対に正しい」と思い込むことではありません。自分の感情と判断の根拠を自分で把握していて、「私はこう感じ、こういう事実からこう判断した」と説明できること。それが、評価者としての自己信頼感です。感情を言葉にするワークは、そのまま葉を茂らせる練習になります。
評価シートを開く前の「心の体温チェック」
評価シートを開く前に3秒だけ手を止めて、「いまの心の温度は、冷たい・ふつう・熱い、のどれ?」と自分に聞きます。疲れて冷えているときや、何かにいら立って熱いときは、評価がぶれやすくなります。温度が極端なときは、その日は事実の整理だけにして、点数は翌朝つけると決めておきます。
部下一人ずつの「感情ことば帳」
部下の名前を並べ、一人ずつ、いま自分がその人に感じていることを一語で書きます。「安心」「期待」「物足りない」「少し苦手」「申し訳ない」。誰にも見せないメモです。感情が見えると、「苦手と感じている人ほど、事実の記録を丁寧に見直そう」というように、バイアスに自分で手を打てます。
3段階温度計で「伝えにくさ」を測る
面談の予定表を見ながら、部下ごとに伝えにくさを弱・中・強の3段階でつけます。「強」の面談については、なぜ強いのか(申し訳なさ?怖さ?制度への不満?)を一言書き添えます。理由がわかれば、準備すべきことが具体的になります。
面談のあとの「感情だけ日記」
面談が終わったら、内容ではなく自分の感情だけを短く書きます。「ほっとした」「思ったより穏やかに聞いてくれて、うれしかった」「最後の一言を言いすぎたかもしれず、気になる」。評価の季節ごとに読み返すと、自分がどんな場面で揺れやすいかがわかり、次の面談の準備に生かせます。
迷いながら評価していい。
迷いの中身を言葉にできれば、
それは評価者としての誠実さになる。
面談で使えるフィードバックの言葉|言い換えの例
最後に、評価面談でそのまま使える言葉を紹介します。ポイントは、人格ではなく行動と事実について話すこと、評価者自身の感情はIメッセージ(私は〜と感じている)で伝えること、そして未来の話で終えることです。
| つい言ってしまう言葉 | 言い換えの例 |
|---|---|
| 「今期は残念だったね」 | 「期初に決めた目標に対して、今期はここまで届かなかった。まず、その事実を一緒に確認させてほしい」 |
| 「もっと頑張ってくれないと」 | 「どこで一番苦労したか、教えてもらえる?私の側でできた支援も一緒に考えたい」 |
| 「会社の決まりだから仕方ない」 | 「相対評価の仕組みの中で、この判断になった。私としても伝えるのはつらいけれど、根拠はきちんと説明したい」 |
| 「君ならできると思っていたのに」 | 「あなたの力は、〇〇の場面で確かに見えていた。来期はそれを数字につなげる方法を一緒に考えたい」 |
| 「何か言いたいことある?」 | 「この評価を聞いて、いまどんな気持ち?納得できないところがあれば、そのまま言ってほしい」 |
| 「さすが、よくやった」(高評価のとき) | 「〇〇の調整のおかげで、チームが本当に助かった。ありがとう」 |
高い評価を伝える場面でも、「さすが」と上からほめるより、何が、誰にとって、どう助かったのかを具体的に伝えるほうが、部下の中に「次もこうしよう」という力が残ります。これがアドラーのいう勇気づけです。
部下が泣いたり、怒ったりしたとき
低い評価を伝えると、部下が涙ぐんだり、強く反論したりすることがあります。そのとき大切なのは、感情をすぐに止めようとしないことです。「泣かなくていいから」「冷静に話そう」と言いたくなりますが、まずは「悔しいよね」「納得できない気持ちがあるんだね」と、相手の感情を言葉にして受けとめます。
評価を変えるかどうかは、感情が落ち着いてから事実をもとに判断することです。その場で結論を出さず、「今日聞いた話を、もう一度確認して返事をするね」と時間をとってもかまいません。感情を受けとめることと、評価をゆがめないことは、両立できます。部下の感情にどう向き合うかについては、中間管理職と感情の言語化も参考にしてください。
よくあるご質問
その痛みは、部下を大切に思う気持ちの裏返し。
感情に名前をつけて、自分の判断を信じよう。
評価者の言葉が変わると、面談が変わる。
自分を大切にしよう
評価面談の前夜に胃が痛むのは、管理職として力が足りないからではありません。人事評価は客観的な仕組みとして設計されていても、実際には評価する人の感情が深く関わっています。ハロー効果や寛大化傾向といった評価者バイアスの下には、好ましさや苦手意識、嫌われたくない怖さ、申し訳なさといった名前のついていない感情があります。そして研究は、評価の点数が、評価される人だけでなく評価する人の癖も映していることを示してきました。
部下の納得感は、点数の高さよりも、期初の目標に立ち返り、事実と評価と感情を分けて話し、相手の言い分を最後まで聞き、来期の「一緒にやること」で終えるというプロセスから生まれます。アドラー心理学は、ほめる・叱るではなく勇気づけを、縦ではなく横の関係を教えてくれます。心の体温チェック、感情ことば帳、3段階温度計、感情だけ日記。小さなワークで自分の感情を言葉にするたびに、「私はこう感じ、こういう事実からこう判断した」と言える自己信頼感の葉が茂っていきます。
人を評価するという重い役割を、あなたは毎期、誠実に引き受けています。迷うのは、真剣だからです。自分を大切にしよう。部下の気持ちを受けとめるあなた自身の気持ちにも、言葉にしていい場所と、休んでいい時間が、ちゃんと必要です。
本記事の参考資料・科学的根拠
- 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)原稿
- Thorndike, E.L. (1920). A constant error in psychological ratings. Journal of Applied Psychology, 4(1), 25-29.
- Scullen, S.E., Mount, M.K., & Goff, M. (2000). Understanding the latent structure of job performance ratings. Journal of Applied Psychology, 85(6), 956-970.
- Kluger, A.N., & DeNisi, A. (1996). The effects of feedback interventions on performance: A historical review, a meta-analysis, and a preliminary feedback intervention theory. Psychological Bulletin, 119(2), 254-284.
- Greenberg, J. (1986). Determinants of perceived fairness of performance evaluations. Journal of Applied Psychology, 71(2), 340-342.
- Folger, R., & Konovsky, M.A. (1989). Effects of procedural and distributive justice on reactions to pay raise decisions. Academy of Management Journal, 32(1), 115-130.
- Lieberman, M.D. et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421-428.
- Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
- アルフレッド・アドラー『人生の意味の心理学』
- 岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)
- 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料

自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。







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