天気にも値段にも振り回される農家の心
一次産業の現場と感情の言語化
夜中に雨の音で目が覚め、ハウスが気になって眠れない。手間をかけて育てた野菜に、思っていた半分の値しかつかない。燃料代は上がるのに、魚は獲れない。それでも朝になれば畑へ、海へ出る。家族に聞かれても「まあ、こんなもんだ」としか言わない――。天気と値段という「自分では決められないもの」に毎年振り回されることは、それだけで心に大きな負担をかけます。けれど一次産業の現場では、その負担を言葉にする機会がほとんどありません。この記事では、農家・漁業者の方とそのご家族に向けて、言葉にならない気持ちのほどき方をお伝えします。
結論:「どうにもならない」の中に、言葉にできる感情がある
最初に結論をお伝えします。天気や市場価格は、どれだけ努力してもコントロールできません。けれど、それに振り回されている自分の気持ちは、言葉にすることができます。そして言葉にできると、「どうにもならない」とひとかたまりだった重さが、「悔しい」「怖い」「情けない」「それでも続けたい」といったいくつかの感情に分かれ、少しだけ扱いやすくなります。
一次産業の現場では、「愚痴を言っても雨はやまない」「黙って手を動かせ」という考え方が根強くあります。それは長い年月をかけて身につけてきた、厳しい自然と向きあうための知恵でもあります。ただ、その知恵が「感じないようにする」ことにまで広がると、心は静かにすり減っていきます。
何も感じなかったんです」
このように、自分の感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態を、心理学ではアレキシサイミア(失感情症)と呼びます。感情がないのではなく、感情は動いているのに、言葉にたどり着く前に迷子になっている状態です。私はこれを「感情迷子さん」と呼んでいます。中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』の言葉で、「迷子という言葉には、帰る場所があるという前提が含まれています」。全体像はアレキシサイミア(失感情症)とはでくわしく解説しています。
災害や大きな損失のあと、心を守るために感情が平板になる状態は「2次性アレキシサイミア」と呼ばれ、臨床書『心身症の診断と治療』でも紹介されています。毎年のように天候不順や価格の変動にさらされる仕事は、この「小さなシャットダウン」をくり返しやすい仕事だといえるかもしれません。
天気は変えられない。値段も決められない。
でも、振り回されている自分の気持ちには、
名前をつけることができる。
数字で見る、一次産業の現場
まず、農業の担い手をめぐる状況を数字で確かめておきます。農林水産省の「2020年農林業センサス」では、ふだん仕事として主に自営農業に従事している基幹的農業従事者は約136万人で、5年前の約176万人から2割以上減りました。平均年齢は67歳を超えています。漁業でも、就業者の減少と高齢化が続いていることが水産白書などで報告されています。
| 数字・研究で見る | わかっていること |
|---|---|
| 約136万人 農林水産省「2020年農林業センサス」 | 基幹的農業従事者の数。5年前から2割以上減った。一人ひとりが担う面積と責任は大きくなっている。 |
| 67歳超 同センサス・平均年齢 | 担い手の多くが60代以上。体力の衰えと後継ぎの不安を、同時に抱える人が多い。 |
| 約10人に1人 (研究により約10〜16%) | 一般の人のうち、感情を言葉にしにくい傾向(アレキシサイミア傾向)が強い人の割合。どの地域、どの職業にもいる。 |
| 2005年ごろ グレン・アルブレヒト | オーストラリアの哲学者アルブレヒトが、住み慣れた土地の環境が変わっていくことへの苦しみを「ソラスタルジア」と名づけた。干ばつや鉱山開発で風景が変わった地域の人々の聞き取りから生まれた言葉。 |
| 2007年 Lieberman ら(UCLA) | 感情に名前をつける(感情ラベリング)と、不安や恐れに関わる脳の扁桃体の活動が下がることを示した。 |
この表から見えてくるのは、一人あたりの負担が重くなる一方で、その重さを分かち合う人は減っているという現実です。担い手が少なく高齢になれば、「自分が倒れたら終わりだ」という緊張は強くなります。緊張が強い人ほど、弱音を吐く余裕はなくなります。
一方で、感情に名前をつけるだけで脳の警報が少し静まるという研究は、希望でもあります。天気を変えることはできなくても、天気に揺さぶられた心を落ち着かせる方法はあるということだからです。
天気と値段に振り回される心|「あきらめ」の下にあるもの
農業や漁業の方からよく聞く言葉に、「天気には勝てん」「相場は相場だ」というものがあります。一見、達観しているように聞こえます。けれどカウンセリングで時間をかけて話を聞いていくと、その「あきらめ」の下には、いくつもの感情が重なっていることがわかります。
無力感・やりきれなさ
半年かけて育てた作物が、一晩の雹(ひょう)で傷物になる。どれだけ手をかけても、結果を左右するのは空の機嫌。努力と結果がつながらない経験がくり返されると、人は「何をしても同じだ」という感覚を抱きやすくなります。
悔しさ・怒り
豊作で値が崩れたとき、店頭では安売りされ、手元にはほとんど残らない。燃料や肥料、飼料の値は上がるのに、売値には反映できない。「誰に怒ればいいのかわからない怒り」は、行き場をなくして家族へのいら立ちや、自分を責める気持ちに変わりやすいものです。
不安・恐れ
「来年も同じ気候とは限らない」「借入れを返せるだろうか」。先の見えない不安は、夜中に目が覚める、天気予報を何度も確かめるといった形で表れます。不安は体を常に身構えさせ、疲れているのに休めない状態をつくります。
喪失感・さみしさ
子どものころから見てきた浜の景色が変わる。いつも獲れていた魚が来なくなる。周りの畑が一枚、また一枚と耕作放棄地になっていく。アルブレヒトが「ソラスタルジア」と呼んだのは、故郷を離れていないのに、故郷を失っていくような感覚です。この感情には名前がついていないことが多く、だからこそ迷子になりやすいのです。
これらの感情は、一つずつなら言葉にできるかもしれません。けれど同時に、しかも毎年のように押し寄せると、心はまとめて「あきらめ」というふたをかぶせてしまいます。あきらめは、たくさんの感情をいっぺんに感じないための、心の工夫でもあるのです。気候の変化と「何も感じない」心の関係は、環境問題と感情のマヒの記事でも取り上げています。
家族経営の近さが、感情を言わせない
日本の農業や沿岸漁業の多くは、家族で営まれています。親子、夫婦、ときには三世代が、同じ家に住み、同じ畑や船で働く。職場と家庭が同じであることは、強い絆を生む一方で、感情の逃げ場をなくすこともあります。
「上司」が親で、「同僚」が配偶者
会社員であれば、職場の不満は家で話し、家の悩みは職場の同僚に話すことができます。けれど家族経営では、仕事のいら立ちを向けたい相手が、夕食の席にも座っています。言えば家の空気が悪くなる。言わなければ自分の中にたまる。多くの人は、言わないほうを選びます。
とくに、嫁いできて家業に加わった女性や、婿として入った男性は、「よそから来た自分が口を出すべきではない」と感じやすい立場にいます。作業のやり方、お金の使い道、休みの取り方。意見があっても、それを伝える言葉の前に「遠慮」が立ちふさがるのです。
お金と休みが「見えない」
家族経営では、誰がいくら稼いだか、誰がどれだけ働いたかがはっきりしないことがよくあります。無給に近い形で働いている家族もいます。見えない労働は、見えない不公平感を生みます。不公平感は、言葉にしにくい感情の代表です。「自分ばかり」と口にすると、わがままだと思われそうだからです。
農林水産省は、家族一人ひとりの役割や報酬、休日などを話し合って取り決める「家族経営協定」を推進しています。協定そのものは契約の形をとりますが、その本当の価値は、ふだん言葉にされない家族の気持ちを、話し合いのテーブルにのせるきっかけになることにあると私は考えています。
作業の段取りを決める場で、気持ちの話を持ちこむと、話が混乱しがちです。たとえば月に一度、作業の話をしない「家族の30分」をつくり、「この1か月で一番しんどかったこと」「一番うれしかったこと」を一人ずつ話してみてください。評価も反論もしない時間にするのがポイントです。
後継ぎ問題|「継げ」と言えない親、「継ぎたい」と言えない子
一次産業の家族が抱えるもっとも大きな、そして言葉にされにくいテーマが、後継ぎです。そこには、親と子の双方に、表に出しにくい感情が渦巻いています。
言えるわけがないでしょう」
一方、子どもの側にも言葉にできない感情があります。「継ぎたい気持ちはあるけれど、親と一緒に働く自信がない」「継がないと決めたら、親をがっかりさせる」「先祖代々の土地を自分の代で手放すことになったら」。罪悪感と責任感と迷いがからまり、どの気持ちが本当なのか自分でもわからなくなることがあります。
| 口に出る言葉 | その下にあるかもしれない感情 |
|---|---|
| 親「好きにすればいい」 | 本当は継いでほしい。でも頼んで断られるのが怖い。苦労させる罪悪感もある。 |
| 親「うちの代で終わりだ」 | さみしさ、悔しさ、先祖への申し訳なさ。あきらめることで、期待して傷つくのを避けている。 |
| 子「考えておく」 | 迷い、不安、親への遠慮。決めることで誰かを失望させる怖さ。 |
| 子「農業は割に合わない」 | 親の苦労を見てきた悲しみ。自分にできるかという不安を、理屈で覆っている。 |
後継ぎの話がこじれるのは、多くの場合、結論の話から始めてしまうからです。「継ぐのか、継がないのか」と迫る前に、「この仕事をどう思っているか」「この土地や海にどんな思い出があるか」を互いに話す。気持ちの話を先にすると、結論は思いがけない形で見えてくることがあります。第三者に継ぐ、法人化する、規模を縮めて続けるなど、選択肢は「継ぐか、やめるか」の二つだけではありません。
家業の承継で起きる親子の感情については、先代と比べられ続ける後継者への記事も参考にしてください。
相談しにくい地域性|「弱音は外に出さない」
農村や漁村の多くは、人と人とのつながりが濃い地域です。困ったときに助け合う力は、都市部よりずっと強いかもしれません。けれど、そのつながりの濃さが、心の相談をためらわせることもあります。
- 心療内科やカウンセリングに通うと、すぐに噂になりそうで行けない
- 「あそこの家は大変らしい」と思われるのが一番つらい
- 集落の役や祭りの準備は、体調が悪くても断れない
- 同業者は仲間であると同時に、比べられる相手でもある
- 相談できる専門の窓口が、車で1時間以上かかるところにしかない
- 家族以外に、自分の気持ちを話したことがほとんどない
こうした環境で育ち、働いてきた人にとって、「つらい」と口にすることは、家の評判や自分の立場を危うくすることのように感じられます。とくに男性は、「男は弱音を吐くな」と言われて育った世代が多く、悲しみや不安を言葉にする回路が、もともと細くなっていることがあります。心理学者ロナルド・レヴァントは、こうした男性の育ち方から生まれる傾向を「規範的男性アレキシサイミア」と呼びました。
だからこそ、相談の入り口は「心の相談」でなくてもかまいません。農業であれば、地域の農協(JA)、都道府県の農業普及指導センター、市町村の農政担当。漁業であれば漁協。経営や技術、補助金の相談をする中で、「最近、眠れていなくて」と一言添えるだけでも、話の流れは変わります。市町村の保健センターの保健師は、地域の事情をよく知っていて、秘密を守る立場の専門職です。
弱音を吐ける場所は、遠くなくていい。
いつもの相談のついでに、
「最近、眠れなくて」と言ってみる。
変えられるもの・変えられないもの|アドラーの課題の分離と共同体感覚
私はカウンセリングで、オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラー(1870〜1937)の心理学をベースにしてきました。天気や値段に振り回される心を整えるうえで、アドラー心理学の二つの考え方が役に立ちます。
課題の分離|「それは誰が決めることか」
アドラー心理学の課題の分離は、ある問題について「最終的にその結末を引き受けるのは誰か」を考え、自分の課題と他者の課題を分けて整理する考え方です。岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』で広く知られるようになりました。
本来は人と人との関係で使う考え方ですが、一次産業の現場では、「自分が決められること」と「自分には決められないこと」を分けることに応用できます。雨を降らせるかどうかは空が決めること。市場の値段は、無数の買い手と売り手が決めること。来年の漁獲は、海が決めること。それを自分の課題として背負いこむと、どれだけ頑張っても「自分が足りなかった」という結論になってしまいます。
ここで大切なのは、課題の分離は「どうせ変えられないから何も感じるな」という意味ではないということです。むしろ逆です。決められないことに対して湧いてくる悔しさや不安を、「感じて当然のもの」として言葉にする。そのうえで、「では自分にできることは何か」に目を向ける。感情を飛ばして行動だけを切り替えようとすると、置き去りにされた感情が、あとで体や家族関係に出てきます。
共同体感覚|自分は「つながりの中」にいる
アドラー心理学のもう一つの柱が共同体感覚です。自分は家族や地域、社会という共同体の一員であり、その中に居場所があり、誰かの役に立っているという感覚のことです。
農業や漁業は、もともと共同体感覚の強い仕事です。水路を共同で守り、漁場のルールをみんなで決め、自分が育てたものが誰かの食卓にのぼる。自分の仕事は、顔の見えない誰かの暮らしを支えている。値段が思うようにつかない年にも、その事実は変わりません。
天気や相場に振り回されて「自分のやっていることに意味があるのか」と感じたときは、「誰かの役に立っている」という感覚にもう一度触れてみることが助けになります。直売所で「去年のが美味しかったから」と声をかけてくれたお客さん。給食に使われている地元の野菜。仲間と力を合わせて乗り越えた不漁の年。それらを思い出して言葉にすることは、気休めではなく、心の土台を確かめ直す作業です。
6つの感で見る|揺らいだ自己信頼感を取り戻す
自己肯定感の「6つの感」は、木にたとえて説明できます。根が自尊心≒自己存在感、幹が自己受容感、枝が自己効力感、葉が自己信頼感、花が自己決定感、実が自己有用感です。一次産業の現場で、とくに揺らぎやすいのが葉にあたる「自己信頼感」です。
自己信頼感とは、「自分の判断や感覚を信じていい」という感覚のことです。長年の経験で培った勘は、一次産業の担い手にとって最大の財産です。空の色、風のにおい、潮の流れ、土の手ざわり。ところが気候の変化で、「これまでの経験が通用しない」年が増えてきました。いつもの時期に植えたら暑さでやられた。いつもの漁場に魚がいない。経験が裏切られる体験は、自分の判断そのものへの信頼を揺るがします。
こんな状態になっていませんか
天気予報や相場の情報を何度も確かめずにいられない。ほかの家のやり方が気になって、自分の判断に自信が持てない。「どうせ自分がやっても」と、新しい工夫をする気になれない。こうした状態は、あなたの能力が落ちたのではなく、葉が強い風にさらされている状態です。
うまくいったこと、乗り越えたことを言葉にする
自己信頼感を取り戻す近道は、過去に自分の判断で乗り越えた場面を思い出し、そのときの気持ちとセットで言葉にすることです。「あの年の冷夏は、品種を変えて乗り切った。あのときは怖かったけど、決めてよかったと思った」。出来事だけでなく、そのときの「怖かった」「ほっとした」まで言葉にすると、経験が自分を支える力に変わります。
葉の下には、ほかの感も関わっています。「自分はここにいていい」という根(自尊心≒自己存在感)、「うまくいかない自分も認める」幹(自己受容感)。そして共同体感覚とつながる実(自己有用感)――「誰かの役に立っている」という感覚が実ると、葉が多少散っても、木そのものは倒れません。
中島輝より一言
自然を相手に働く方のお話を聞いていると、「仕方がない」という言葉が、まるで口ぐせのように出てくることに気づきます。それは強さの言葉でもあります。けれど、その「仕方がない」の前に、ほんの一言でいいので、「悔しかった」「怖かった」を置いてみてください。感情を認めてから「仕方がない」と言うのと、感情を飛ばして「仕方がない」と言うのとでは、心に残る重さがまったく違います。
作業の合間にできる感情の言語化ワーク
一次産業の仕事は、朝が早く、繁忙期には休む暇もありません。ここでは、中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』で紹介しているワークを、作業の合間にできる形に作り直して紹介します。
「心の体温チェック」を空模様と一緒に
朝、空を見上げて天気を確かめるとき、ついでに自分の心の空模様も確かめます。「晴れ・くもり・雨・嵐」の4つから一つ選ぶだけ。天気を毎朝確かめる習慣がある方ほど、続けやすいワークです。「今日は外は晴れでも、心はくもりだな」と気づけたら十分です。
「3段階温度計」で、気がかりの大きさを測る
気になっていることを一つ思い浮かべ、その気持ちの強さを「1:少し気になる」「2:かなり気になる」「3:頭から離れない」の3段階で測ります。3が続くものは、ひとりで抱えずに誰かに話すサインです。数字にするだけで、漠然とした不安に輪郭ができます。
「比喩レッスン」で、言いにくい気持ちを言う
「つらい」と言いにくければ、たとえで言ってみます。「長雨のあとの畑みたいな気分」「凪(なぎ)で船が進まない感じ」。仕事の言葉を使った比喩は、同じ仕事をしている家族や仲間に、驚くほどよく伝わります。
「感情が動いた瞬間日記」を作業日誌の隅に
作業日誌や出荷の記録をつけている方は、その隅に一行だけ、その日の気持ちを書き足してください。「収穫量○kg。思ったより少なくて悔しい」「出荷先の人にほめられた。うれしい」。数字の記録に感情の記録が並ぶと、1年後に見返したとき、自分がどんな年を乗り越えてきたのかがよくわかります。書くことで気持ちを整える方法は、心理学者ペネベーカーの筆記開示(エクスプレッシブ・ライティング)の研究でも支持されています。
家族にかける一言
家族が黙りこんでいるとき、「どうしたの」「何を考えているの」と聞くと、かえって口を閉ざしてしまうことがあります。そんなときは、こちらが感じたことを差し出す言い方を試してみてください。
- 「あの雨のあとだから、疲れたよね」(体の状態から)
- 「せっかく育てたのに、悔しいよね」(感情の候補を差し出す)
- 「私は正直、ちょっと不安。あなたはどう?」(自分の気持ちを先に言う)
- 「今年も、よくここまでやってきたね」(結果ではなく過程に目を向ける)
最後の一言は、アドラー心理学でいう勇気づけの言葉です。結果を評価するのではなく、その人が重ねてきた過程や存在そのものに目を向ける。値段がつかなかった年にも、手をかけてきた日々は確かにそこにあります。
よくあるご質問
でも、振り回された心に名前をつけることはできる。
「仕方がない」の前に、「悔しかった」を一言。
手をかけて育てていい大切な畑です。
自分を大切にしよう
農業や漁業など一次産業の現場は、天候や災害、市場の値段といった自分では決められないものに、毎年のように振り回される仕事です。「天気には勝てん」「相場は相場だ」というあきらめの言葉の下には、無力感、悔しさ、不安、そして変わっていく故郷への喪失感が重なっていることがあります。感情にふたをして働き続けると、それは眠れなさや胸の重さ、酒量の増加、家族へのいら立ちといった形で表に出てきます。
家族経営の近さは、感情の逃げ場をなくし、後継ぎの話は「言えない願い」と「言えない迷い」をすれ違わせます。人のつながりが濃い地域では、弱音を吐くこと自体がためらわれます。だからこそ、アドラー心理学の課題の分離で「自分が決められること」と「決められないこと」を分け、決められないことへの感情は言葉にして手放し、決められることに力を戻していきましょう。そして共同体感覚――自分の仕事が誰かの食卓と暮らしを支えているという事実に、もう一度触れてみてください。それは揺らいだ自己信頼感の葉を、もう一度茂らせる力になります。
朝の空を見上げるついでに、自分の心の空模様も確かめる。作業日誌の隅に、一行だけ気持ちを書く。いつもの相談のついでに「最近、眠れなくて」と言ってみる。小さな言葉の積み重ねが、厳しい自然と向きあい続けるあなたを支えます。自分を大切にしよう。土や海を大切にしてきたあなたは、自分の心も同じように大切にしてよい人です。
暮らしとこころの相談先
・お住まいの市町村の保健センター(保健師への相談)
・地域の農協(JA)・漁協、都道府県の農業普及指導センター(経営や技術の相談のついでに)
・こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
・よりそいホットライン 0120-279-338(24時間)
・命の危険が迫っているときは、迷わず119番・110番へ
本記事の参考資料・科学的根拠
- 農林水産省「2020年農林業センサス」(基幹的農業従事者数・平均年齢)
- 水産庁『水産白書』(漁業就業者の動向)
- 農林水産省「家族経営協定」に関する資料
- Albrecht, G. (2005). ‘Solastalgia’: A new concept in health and identity. PAN: Philosophy Activism Nature, 3.
- Lieberman, M.D. et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5).
- Levant, R.F. (1992). Toward the reconstruction of masculinity. Journal of Family Psychology.(規範的男性アレキシサイミア)
- Pennebaker, J.W. (1997). Writing about emotional experiences as a therapeutic process. Psychological Science.
- A.N.シン「心身症とアレキシサイミア(失感情症)」永田勝太郎ほか訳、『心身症の診断と治療』所収
- Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation: Alexithymia in Medical and Psychiatric Illness. Cambridge University Press.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
- アルフレッド・アドラー『人生の意味の心理学』
- 岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)
- 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)
- 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料

自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。







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