家族の世話で「自分の気持ち」を後回しにする子どもたち|ヤングケアラーと感情の言語化

家族の世話で「自分の気持ち」を後回しにする子どもたち|ヤングケアラーと感情の言語化

家族の世話で「自分の気持ち」を後回しにする子どもたち
ヤングケアラーと感情の言語化

遅刻が増えた。宿題を出さない。授業中に居眠りをする。担任として注意しようとしたその生徒が、実は毎朝、病気の母親の代わりに弟を保育園に送ってから登校していた。そんな話は、決して珍しくありません。しかも本人は「家の手伝いをしているだけ」と思っていて、つらいとも、助けてほしいとも言いません。ヤングケアラーが見えにくいのは、隠しているからではなく、本人が自分の負担と気持ちに気づいていないからです。この記事では、教員や地域の大人、保護者の方に向けて、子どもの「言葉にならない気持ち」に気づき、受けとめるための視点をお伝えします。

中島 輝(中島輝)
心理カウンセラー/自己肯定感アカデミー会長/「6つの感」理論創始者/著書累計77万部/15,000人臨床/『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる自己肯定感の教科書』(SBクリエイティブ・累計32刷)『働く人のための自己肯定感』著者

ヤングケアラーが見えにくいのは「本人も気づいていない」から

結論から書きます。ヤングケアラーへの支援で最初の壁になるのは、制度や窓口の少なさよりも、子ども自身が「自分はケアを担っている」「自分はしんどい」と認識していないことです。

家族の世話は、多くの子どもにとって物心ついたころから続く「当たり前の日常」です。比べる対象がないので、自分の生活が同年代と違うことに気づきにくい。さらに、家族を思う気持ちや「家のことを外で話してはいけない」という感覚から、疲れやさみしさを自分の中にしまいこみます。その結果、気持ちを感じ、見分け、言葉にする回路そのものが細くなっていくことがあります。

だから、「困っていることがあったら相談してね」と呼びかけるだけでは、なかなか届きません。必要なのは、周りの大人が小さなサインに気づき、子どもの代わりに気持ちに名前をつけて差し出すことです。この記事では、そのための具体的な方法を、感情の言語化という視点からお伝えします。

よくある相談の典型例
「別に大変じゃないです。
うちでは普通のことなので」
場面中学2年生。父親は夜勤のある仕事で、母親は体調を崩して寝ている日が多い。夕食づくりと小学生の妹の宿題を見るのは本人の役目。最近、提出物の遅れと授業中の居眠りが目立ち、担任が個別に話を聞いた。
本人は強がっているわけではありません。「大変」という言葉を自分に当てはめたことが一度もないのです。疲れは確かにたまっています。ただ、それに名前をつける機会がなかったのです。

中学2年生の約17人に1人|数字で見るヤングケアラー

約17人に1人(5.7%)
「世話をしている家族がいる」と回答した中学2年生の割合
出典:厚生労働省・文部科学省「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」(令和2年度)。現在はこども家庭庁が支援施策を所管公的調査

この調査は、全国の中学2年生や高校2年生などを対象に、国が行った実態調査です。約17人に1人という数字は、1クラスに1〜2人の割合にあたります。どの学校、どの地域にも、家族の世話を担っている子どもがいると考えてよい数字です。

ここで注意したいのは、この数字が子ども自身の回答にもとづいているということです。冒頭で述べたように、自分の世話を「手伝い」と考えて「世話をしている」と答えなかった子もいるはずです。実際の数は、表に出ている数字より多い可能性があると考えておいたほうがよいでしょう。

中学2年生の教室を17人で表すと 家族の世話をしている ※本人が「手伝い」と考えて回答しなかった子は含まれない可能性がある
▲ 令和2年度の国の調査では、中学2年生の5.7%、約17人に1人が「世話をしている家族がいる」と回答しました。1クラスに1〜2人いてもおかしくない割合です。

「お手伝い」と「ケア」の境目|子どもが担っていること

ヤングケアラーとは、一般に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どものことをいいます。子どもが家事を手伝うこと自体は、悪いことではありません。問題になるのは、その量や内容が子どもの年齢に見合わず、学業や友人関係、休息、そして自分の気持ちを感じる時間が削られている場合です。

担っていることの例子どもの心に起きやすいこと
病気や障害のある親の身の回りの世話、通院の付き添い「自分がいないと家が回らない」という緊張が続く
幼いきょうだいの送り迎え、食事、寝かしつけ友だちと遊ぶ時間がなくなり、さみしさを感じても言えない
祖父母の見守り、認知症のある家族の対応夜中に起こされる、目が離せない不安で休めない
日本語が得意でない家族のための通訳(役所、病院、学校)大人の深刻な話を子どもが訳す負担、内容への不安
精神的に不安定な家族の話し相手、気持ちの支え家族の気分に合わせて、自分の感情を消す
家計を助けるためのアルバイト、家事全般勉強や将来の選択を後回しにする

目安になるのは、「その子が、自分のための時間と気持ちを持てているか」です。同じ「料理をする」でも、週末に楽しみながら作るのと、毎日家族の分を作らなければならないのとでは、心にかかる重さがまったく違います。

通訳を担う子どもの見えにくさ

外国にルーツのある家庭では、日本語が得意な子どもが、親の代わりに役所や病院、学校の面談で通訳を担うことがあります。周りからは「しっかりした子」「頼りになる子」と見られやすく、負担に気づかれにくいのが特徴です。家族の病気の説明やお金の話など、子どもが受けとめるには重すぎる内容を、気持ちを挟まずに淡々と訳し続ける。その積み重ねが、自分の感情を切り離すクセにつながることもあります。

自分の気持ちを後回しにする仕組み|アレキシサイミアと感情迷子さん

自分の感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態を、心理学ではアレキシサイミア(失感情症)と呼びます。感情がないのではなく、感情を言葉にするところでつまずいている状態です。一般の人の約10人に1人(研究によって約10〜16%)に強い傾向があるとされ、病名ではなく、誰もが持つ特性の濃淡と考えられています。基本はアレキシサイミア(失感情症)とは|感情に名前がつけられない人の特徴・原因・回復のヒントで解説しています。

私はこの状態にある人を「感情迷子さん」と呼んでいます。中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』で使っている言葉で、感情をうまく認識・表現しにくくなっている状態のことです。迷子という言葉には、帰る場所があるという前提が含まれています。気持ちは失われたのではなく、帰り道が見えにくくなっているだけです。

ケアを担う子が「感じる」ことを止めるまで

ヤングケアラーの子どもたちは、毎日の生活の中で、知らず知らずのうちに自分の気持ちを後回しにする練習を重ねています。

仕組み1
優先順位が「家族が先、自分は後」に固定される

家族の体調や機嫌、次にやるべき家事。注意がいつも外側に向いていると、自分の内側を見る時間がなくなります。感情迷子さんのタイプ3「感情に興味がない」に近い状態が、環境によってつくられていきます。

仕組み2
感じると動けなくなるから、感じない

「疲れた」「さみしい」「怖い」と感じてしまうと、明日もまた同じ毎日をこなせなくなる。だから心は、自分を守るために感じる回路を絞ります。強いストレスのもとで一時的に感情がわかりにくくなる状態は、「2次性アレキシサイミア」と呼ばれます。弱さではなく、生き延びるための賢い反応です。

仕組み3
気持ちを映し返してくれる大人がいない

子どもの気持ちは、大人に「疲れたね」「頑張ったね」と映し返してもらうことで育ちます。ところがケアを担う家庭では、本来その役割を担う大人自身が支えを必要としていることが多い。気持ちに名前をつけてもらう機会が少ないことが、感情の言葉の育ちを細くします。

仕組み4
「言ってはいけない」という思い込み

家族の病気や家の事情を外で話すと、家族を悪く言うことになる。助けを求めると、家族がばらばらにされるかもしれない。そんな不安から、気持ちそのものを口に出さないことを選ぶ子もいます。

大人になってから表れることもある

子どものころにケアを担った人の中には、大人になってから「人に頼れない」「休むと罪悪感がある」「自分が何をしたいのかわからない」といった生きづらさを感じる人もいます。進学や就職、一人暮らしなど、ケアから少し離れたタイミングで、しまってきた疲れやさみしさが一気に表に出てくることもあります。

だからこそ、子どものうちに「疲れていいんだよ」「あなたの気持ちも大切だよ」と言ってくれる大人に出会えるかどうかは、とても大きな意味を持ちます。今の支えが、その子の10年後、20年後の心の土台になるのです。

気持ちを感じないのは、冷たいからではない。
感じたら崩れてしまう毎日を、
必死に守ってきたからです。

学校・地域で気づけるサイン|遅刻・宿題・居眠りの奥にあるもの

本人が言葉にしない分、周りの大人が行動や体の変化から気づくことが大切です。次のようなサインは、それだけでヤングケアラーと決められるものではありませんが、「家で何か担っているのかもしれない」と考えるきっかけになります。

場面見られやすいサイン
登校・出席遅刻や欠席が増える、特定の曜日に休みが多い、早退したがる
学習宿題や提出物が出ない、忘れ物が増える、授業中の居眠り
体・身なり疲れた様子が続く、食事をとれていない、季節に合わない服装
人間関係部活や放課後の誘いを断る、友だちと話がかみ合わない
気持ちの表し方「別に」「大丈夫」が多い、表情が乏しい、急に泣く・怒る
地域で平日の昼間に家族の買い物や通院に付き添っている、夜遅くまできょうだいの面倒をみている

特に注意したいのは、「だらしない」「やる気がない」と見えてしまうサインです。遅刻や提出物の遅れを注意されると、子どもは「やっぱり自分がだめなんだ」と受けとり、ますます本当の事情を話せなくなります。注意する前に、「この行動の奥に、どんな毎日があるのだろう」と一度立ち止まってみてください。

学校では、担任だけで判断せず、養護教諭やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーと情報を共有することが大切です。保健室には、子どもの体調や表情の変化がよく見えています。部活の顧問や塾・習い事の先生、子ども食堂のスタッフなど、学校の外の大人が最初に気づくことも少なくありません。教員としての関わり方は、教員のための感情の言語化の記事もあわせて参考にしてください。

責めずに聞く声かけ|「どうして」ではなく「どんな毎日?」

サインに気づいたら、次は話を聞く段階です。ここで大切なのは、原因を問い詰めるのではなく、子どもの毎日と気持ちに関心を向けることです。

避けたい聞き方おすすめの聞き方
「どうして宿題を出さないの?」「最近、家に帰ってからはどんなふうに過ごしてる?」
「また遅刻?ちゃんと起きなさい」「朝、バタバタしてるのかな。何か手伝えることある?」
「家で何かあったの?」「疲れてるように見えるけど、ちゃんと眠れてる?」
「大変なら言ってくれればいいのに」「家のこと、いろいろ頑張ってるんだね」

気持ちに名前をつけて「差し出す」

感情を言葉にしにくい子に「どう思ってるの?」と聞いても、答えは返ってきにくいものです。そんなときは、大人のほうから気持ちの候補を差し出してみてください。

「毎日、妹さんのお世話をしてるんだね。
それって、ちょっと疲れることもあるんじゃないかな」
気持ちの名前を「差し出す」声かけの例

本人が「別に」と答えても、それでかまいません。「疲れることもあるかもしれない」という言葉を、子どもが初めて自分に当てはめてみるきっかけになります。うなずいたり、少し間があいたりしたら、それは心が動いたサインです。

聞くときに守りたい4つのこと

  • 家族を悪く言わない。「お母さん、大変なんだね」と、家族の状況にも敬意を払う
  • すぐに解決策を出さない。まずは「話してくれてありがとう」と受けとめる
  • 「よく頑張っているね」と、子どもがしてきたことを認める
  • 秘密を守れない場合もあることを、正直に伝える。勝手に話を広げず、誰に相談するかを子どもと一緒に考える

書籍原稿で紹介しているワーク「共感の一言」は、大人にとっての大切な心得でもあります。正しいアドバイスを伝えたくなっても、まずは「それは大変だったね」「頑張ってきたんだね」と共感の一言を先に置く。わかってもらえたという安心感があってはじめて、子どもは次の言葉を話せるようになります。

保護者の方へ|わが子が担っていることに気づいたら

この記事を読んで、「うちの子もそうかもしれない」と感じた保護者の方もいるでしょう。まずお伝えしたいのは、気づけたこと自体が、すでに大きな一歩だということです。病気や障害、仕事、ひとり親での子育てなど、家庭の事情は誰にも責められるものではありません。

そのうえで、子どもに「いつもありがとう」と伝えるとき、「あなたも疲れているよね。無理しなくていいよ」と一言足してみてください。そして、子どもの負担を減らせるサービスがないか、自治体の窓口や学校に相談してみてください。親が助けを求める姿を見せることは、子どもにとって「困ったときは頼っていい」という大切な学びになります。

中島輝より一言

カウンセリングで、家族を支えてきた方に「あなた自身はどうでしたか?」と尋ねると、長い沈黙のあとに「そんなこと、考えたこともありませんでした」と言われることがあります。誰かのために生きてきた人ほど、自分の気持ちを聞かれた経験が少ないのです。子どもに一度でも「あなたはどう?」と聞いてくれる大人がいること。それが、その子の心にとってどれほど大きいか、私は何度も目にしてきました。

子どもと一緒にできる感情の言語化ワーク

書籍原稿の第4章にあるワークを、忙しい毎日を送る子どもでも短時間でできるようにアレンジしました。教室や保健室、子ども食堂や学習支援の場など、家の外で安心できる大人と一緒にやるのがおすすめです。

ワーク|心の体温チェック(3秒)
朝の会や保健室で「今、温かい?冷たい?」

手のひらを胸に当てて、「今、自分の体は温かい?冷たい?」と3秒だけ聞きます。「よくわからない」でも正解です。家族の体調ばかり気にしている子が、自分の体に注意を向ける小さなきっかけになります。

ワーク|3段階温度計(1分)
疲れを「ちょっと・そこそこ・すごく」で表す

「今日の疲れは、ちょっと?そこそこ?すごく?」と聞いてみます。「大変」という言葉は使えなくても、3つから選ぶだけなら答えやすいものです。「すごく」が続くようなら、支援を考えるサインにもなります。

ワーク|感情だけ日記(2分)
出来事ではなく「感じたこと」だけを書く

ヤングケアラーの子が日記を書くと、「朝、弟を送った。夕方、ごはんを作った」と家事の記録になりがちです。このワークでは、あえて出来事は書かず、「ほっとした」「イライラした」「さみしかった」など、感じたことだけを1行書きます。後回しにしてきた自分の内側に目を向ける練習です。

ワーク|もしもタイム
「もし1日、家のことを何もしなくていいとしたら?」

小さな「もしも」を一緒に考えます。「一日中寝たい」「友だちとカラオケに行きたい」。その答えの中に、その子が本当は欲しいもの、我慢しているものが隠れています。答えを否定せずに「いいね、それ」と受けとめてください。

自己肯定感の「6つの感」から見たヤングケアラー

自己肯定感を1本の木にたとえると、根は「自尊心≒自己存在感」、幹は「自己受容感」、枝は「自己効力感」、葉は「自己信頼感」、花は「自己決定感」、実は「自己有用感」にあたります。ケアを担う子は、家族の役に立っているという「自己有用感」の実は大きく育っていることが少なくありません。それは本当に尊い力です。

ただ、その実を支えるはずの根(自分はここにいていいという感覚)や幹(ありのままの自分を受け入れる感覚)が、十分に育つ余裕がないまま、実だけが重くなっていることがあります。「役に立っている自分」には価値があるけれど、「疲れて何もできない自分」には価値がない。そう感じていると、休むことにさえ罪悪感を抱いてしまいます。

だからこそ周りの大人は、手伝いや頑張りをほめるだけでなく、「何もしていなくても、あなたは大切な存在だよ」というメッセージを伝えてほしいのです。成果ではなく存在そのものを認める言葉が、根を太くし、気持ちを感じる力を取り戻す土台になります。

家族のために頑張る子にこそ、
「あなたはどう?」と聞く大人が必要です。
その一言が、自分の気持ちへの帰り道になる。

一人で抱えさせないために|相談先とつなぎ方

ヤングケアラーの支援は、子どもの気持ちを受けとめるだけでは終わりません。家族全体が必要な支援につながり、子どもの負担そのものが軽くなることがゴールです。そのためには、学校や地域の大人が一人で抱えず、専門職とチームで動くことが欠かせません。

気づく → 受けとめる → つなぐ 気づく 担任・部活顧問・養護教諭 地域の大人・習い事の先生 遅刻・宿題・居眠りなど 受けとめる 責めずに毎日を聞く 気持ちの名前を差し出す 「頑張ってきたね」 つなぐ スクールソーシャルワーカー 自治体のヤングケアラー窓口 福祉・介護・医療の支援 ゴールは「子どもの負担が軽くなり、自分の気持ちを持てること」 家族を引き離すことではなく、家族全体が必要なサービスにつながること 一人の大人が抱えこまず、チームで支える
▲ 気づいた大人が一人で解決しようとする必要はありません。受けとめたうえで専門職につなぐことで、家族全体の支援が動き出します。

主な相談先

相談先(一般名)役割
スクールソーシャルワーカー学校に配置・派遣される福祉の専門職。家庭の状況を整理し、福祉や医療のサービスにつなぐ橋渡し役。
スクールカウンセラー、養護教諭子どもの気持ちを受けとめ、心身の変化を見守る。
自治体のヤングケアラー相談窓口多くの自治体で、子ども家庭支援や福祉の部署に相談窓口やコーディネーターが置かれている。名称は自治体によって異なる。
地域包括支援センター、障害福祉の窓口ケアが必要な家族(高齢者・障害のある人)のためのサービスを調整し、子どもの負担を減らす。

子ども自身が話せる相談先

24時間子供SOSダイヤル(文部科学省) 0120-0-78310

チャイルドライン(18歳まで) 0120-99-7777

住んでいる自治体の「ヤングケアラー相談窓口」

つなぐときには、子ども本人の気持ちを置き去りにしないことが大切です。「先生だけでは力が足りないから、こういう人に相談してみたいと思う。どうかな?」と、本人の意向を確かめながら進めてください。子どもにとって、家族の事情を外に出すことは大きな不安をともないます。「あなたや家族を責めるためではなく、あなたが少し楽になるため」と、目的を言葉にして伝えましょう。つないだあとも、「あれからどう?」と声をかけ続けてください。支援が始まっても、気持ちを話せる身近な大人がいることは、子どもにとって変わらず大切な支えです。

よくあるご質問

家の手伝いをさせるのは、よくないことなのでしょうか?
いいえ。年齢に合ったお手伝いは、子どもの自己有用感を育てる大切な経験です。気をつけたいのは、量や内容が子どもに見合わず、学業や友人関係、休息、自分の気持ちを感じる時間が削られている場合です。
本人が「大変じゃない」と言うなら、そっとしておくべきですか?
本人の言葉を尊重しつつも、それだけで判断しないでください。ヤングケアラーの多くは、自分の状況を「普通」だと感じています。無理に認めさせる必要はありませんが、「何かあったらいつでも話してね」と伝え、サインを見守り続けることが大切です。
保護者に連絡すると、子どもが家で責められないか心配です。
その心配はもっともです。担任一人で判断せず、スクールソーシャルワーカーや管理職と相談し、保護者への伝え方を検討してください。保護者自身も支援を必要としていることが多いため、「お子さんが頑張っていて心配している」「ご家族の負担を軽くできるサービスがある」という、責めない伝え方が基本になります。
地域の大人として、気になる子がいるときに何ができますか?
あいさつや「頑張ってるね」の一言をかけ続けるだけでも、子どもにとっては大切な支えになります。心配な状況が続くときは、自治体のヤングケアラー相談窓口や、子ども家庭支援の部署に相談してください。子ども食堂や学習支援の場も、子どもが安心して過ごせる居場所になります。
ケアを担ってきた経験は、子どもにとってマイナスばかりなのでしょうか?
そうとは限りません。家族を支えた経験は、思いやりや責任感、生活力としてその子の力になることもあります。大切なのは、その経験を「我慢のしすぎ」のまま終わらせず、周りの大人が負担を減らし、本人が自分の気持ちを大切にできるよう支えることです。
「手伝いだから」と笑う子の心に、
言葉にならない疲れとさみしさがある。
気づく大人が、一人いればいい。
「あなたはどう?」という一言が、
子どもが自分の気持ちに帰る道しるべになります。

自分を大切にしよう

家族の介護やきょうだいの世話、通訳などを担うヤングケアラーは、国の調査で中学2年生の約17人に1人にのぼります。そして多くの子が、それを「手伝い」と考え、疲れやさみしさを言葉にしないまま毎日をこなしています。家族を優先し、感じると動けなくなるから感じない。気持ちを映し返してくれる大人も少ない。そうして、自分の気持ちに名前をつける力が少しずつ細くなっていきます。

だからこそ、周りの大人ができることがあります。遅刻や宿題、居眠りの奥にある毎日を想像する。「どうして」ではなく「どんな毎日?」と聞く。「疲れることもあるよね」と気持ちの名前を差し出す。そして一人で抱えず、スクールソーシャルワーカーや自治体の窓口とチームで支える。どれも、特別な専門知識がなくても始められることです。

子どもたちに伝えたいのは、家族を大切にするのと同じように、自分の気持ちも大切にしていいということです。そして、支える大人の皆さんも、どうか自分自身の気持ちを置き去りにしないでください。自分を大切にしよう。その姿を見せることが、子どもたちにとって何よりの「気持ちを大切にしていい」というメッセージになります。家族の中で気持ちを抑えがちな、障害や病気のきょうだいがいる子については、きょうだい児と感情の言語化でも取り上げています。

本記事の参考資料・科学的根拠

  • 厚生労働省・文部科学省「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」(令和2年度、三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
  • こども家庭庁「ヤングケアラー」支援に関する施策情報
  • 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)書籍原稿
  • Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation: Alexithymia in Medical and Psychiatric Illness. Cambridge University Press.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
  • A.N.シン「心身症とアレキシサイミア(失感情症)」永田勝太郎ほか訳、『心身症の診断と治療』所収(1次性/2次性アレキシサイミア)
  • 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料(一般人口の10.1〜16.3%)
監修|中島 輝
心理カウンセラー・自己肯定感アカデミー会長・「6つの感」理論創始者
著書累計77万部・15,000人臨床・回復率95%
本記事は心理学的知見に基づく一般情報です。医学的診断や治療の代わりにはなりません。心身に不調を感じる場合は、医療機関・専門家へのご相談をおすすめします。

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