近所の騒音やトラブルに「言いたいのに言えない」とき
近隣トラブルと感情の言語化
夜10時すぎ、天井からまたドスン、ドスン。子どもを寝かしつけたばかりなのに、と天井を見上げながら、明日こそ言おうと思う。けれど翌朝、エレベーターで上の階の人に会うと、口から出たのは「おはようございます」だけ。家に戻って、言えなかった自分にまたモヤモヤする。言いたいのに言えない。でも、もう限界かもしれない。騒音、ゴミ出し、駐車、ペット、境界の植木。近隣トラブルに悩む方へ。相手に何を言うかの前に、まず自分の中で何が起きているのかを、感情迷子さんの視点で整理していきます。
「言いたいのに言えない」が続くと、心と体に何が起きるか
ある晩、自分でも驚くほど怒鳴ってしまったんです」
近隣トラブルには、ほかの人間関係にはない難しさがあります。まず、相手から簡単に離れられないこと。職場なら異動や転職、友人なら距離を置くという選択肢がありますが、家はそう簡単に引っ越せません。しかも、毎日顔を合わせる可能性があります。次に、相手のことをよく知らないこと。どんな人なのか、話が通じるのかがわからないまま、言いにくいことを伝えなければなりません。
そのため多くの人は、まず我慢を選びます。我慢は、関係を壊さないための大切な知恵でもあります。ただ、気持ちを感じないようにしたまま我慢を続けると、心と体には次のようなことが起こりやすくなります。
- ある日突然、抑えていた怒りが爆発し、自分でも驚くような言動をしてしまう
- 音がしていない時間も、耳が勝手に音を探してしまい、家で休まらない
- 寝つきが悪い、夜中に目が覚める、頭痛や肩こり、胃の不調が続く
- 家族に八つ当たりしたり、逆に家族の「気にしすぎ」という言葉に傷ついたりする
- 「こんなことで悩む自分が小さい」と、自分を責める
この二つ、つまり「我慢して爆発する」と「我慢して体調を崩す」は、正反対に見えて、根っこは同じです。どちらも、自分の中で動いている気持ちに気づき、言葉にする前に、ふたをしてしまっている状態なのです。
この記事では、心理学のアレキシサイミア(失感情症)という考え方を手がかりに、近隣トラブルの中で起きている「言えなさ」を見ていきます。相手を言い負かす方法ではなく、自分の気持ちを取り戻し、穏やかに伝えられる状態をつくるための記事です。
近隣トラブルで感情迷子さんになりやすい理由
アレキシサイミアとは、自分の感情に気づき、ほかの感情と見分け、言葉にすることが難しい状態のことです。感情がないのではありません。感じてはいるけれど、それをつかまえて言葉にするところで、流れが細くなっている状態です。研究によって約10〜16%、およそ10人に1人に強い傾向があるとされ、病名ではなく、誰もが持つ特性の濃淡と考えられています。DSM-5やICD-11でも独立した診断名にはなっていません。基本的な特徴はアレキシサイミア(失感情症)とは|感情に名前がつけられない人の特徴・原因・回復のヒントで解説しています。
中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』では、感情をうまく認識・表現しにくくなっている状態を「感情迷子さん」と呼んでいます。迷子という言葉には、帰る場所があるという前提が含まれています。もともと特性の強い人だけでなく、強いストレスが続く状況では、誰でも一時的に感情迷子さんになることがあります。
「波風を立てない」が習慣になっている
近隣トラブルは、まさにそうした状況の一つです。日本の地域社会には、「ご近所とは波風を立てずに」「多少のことはお互いさま」という暗黙のルールがあります。それ自体は、狭い場所で暮らす知恵です。けれど、このルールが強く身についている人ほど、「迷惑だ」「困っている」と感じること自体にブレーキをかけてしまいます。「こんなことで腹を立てるのは心が狭い」と、感じる前に打ち消してしまうのです。
体が先に悲鳴を上げる
『感情迷子さんの本』には、30代の秘書エミコさん(仮名)の事例が出てきます。社長の理不尽な要求にも、取引先からの小言にも、いつも笑顔で応対していたエミコさんは、ある日「原因不明の激しいめまい」を訴えて相談に来ました。「そのとき、どう感じましたか?」と聞かれても、答えは「……わかりません」。けれど体の反応を尋ねると、「胃がキュッとしたような感じがしました」と話し始めたといいます。
近隣トラブルも同じです。気持ちにふたをしていても、体は正直に反応しています。足音がするたびに肩に力が入る。相手の車を見ると胃が重くなる。それは、言葉になる前の気持ちが、体を通して出しているサインなのです。
言えない気持ちは、消えたわけではない。
体の緊張や眠れなさとして、
あなたに何かを伝えようとしている。
怒りの下にある気持ちに名前をつける
近隣トラブルで最初に意識にのぼるのは、たいてい「怒り」や「イライラ」です。けれど、怒りはしばしばほかの気持ちを守るための、表面の感情だといわれます。氷山にたとえると、水面の上に見えているのが怒りで、その下にはもっと大きな気持ちが沈んでいることが多いのです。
たとえば、上の階の足音に怒りを感じているとき。その下には、「また今夜も眠れないかもしれない」という不安、何週間も寝不足が続いた疲れ、言っても変わらないのではという無力感、自分の暮らしが軽く扱われているような悲しさがあるかもしれません。ゴミ出しのルール違反に腹が立つときには、「自分だけがルールを守っている」という不公平感や、注意したら逆恨みされるのではという恐れが隠れていることもあります。
名前をつけると、脳は少し落ち着く
神経科学者リーバーマン(Lieberman)らの2007年の研究では、感情を表す写真を見たときに、その感情に言葉でラベルをつけると、不安や恐れに関わる脳の扁桃体の活動が下がることが示されました。「腹が立つ」をひとくくりのままにせず、「私は今、疲れていて、不安なんだ」と名前をつけ直すだけで、心の温度は少し下がります。
これは、気持ちをなかったことにするのとは正反対の作業です。気持ちを正確に見ることで、気持ちに振り回されにくくなるのです。そして、怒りの下の気持ちが見えると、相手に伝える言葉も変わってきます。「うるさい!」ではなく、「夜、眠れなくて困っているんです」と言えるようになるからです。
「3段階温度計」で強さを測る
『感情迷子さんの本』のワーク「3段階温度計」は、感じた気持ちの強さを「ちょっと・そこそこ・すごく」の3段階で表すものです。近隣トラブルに当てはめると、「足音にちょっとイライラ」「寝不足でそこそこ疲れている」「逆恨みがすごく怖い」というように、どの気持ちがいちばん大きいのかが見えてきます。いちばん大きい気持ちが、あなたが本当に守りたいものを教えてくれます。
伝える前に、自分の気持ちを整理する4ステップ
近隣トラブルでは、「どう言えばいいか」ばかりを考えてしまいがちです。けれど、自分の気持ちが整理できていないまま相手の前に立つと、言うつもりのなかった強い言葉が出たり、反対に何も言えずに帰ってきたりします。伝える前に、まず自分と話す。それがいちばん遠回りに見えて、いちばん確実な近道です。
音がした瞬間、胸に手を当てる
『感情迷子さんの本』のワーク「心の体温チェック」の応用です。気になる音がしたり、迷惑駐車を見つけたりした瞬間に、手のひらを胸に当てて「今、体は温かい?冷たい?」と3秒だけ聞きます。カッと熱くなっているのか、ひやっと冷えているのか。答えは「よくわからない」でもかまいません。反射的に怒りや我慢に飛びつく前に、一呼吸おくことが目的です。
日時・出来事・体の反応・気持ちを分けて書く
ノートやスマホのメモに、「いつ」「何があったか」「体はどうなったか」「どんな気持ちだったか」を分けて書きます。たとえば「10月3日 23時10分ごろ、上の階で走る音が15分ほど。肩がこわばり、寝つけなかった。気持ちは、疲れ・不安」。事実と気持ちを分けて書くことで、頭の中で膨らみがちな怒りが整理されます。この記録は、あとで管理会社や自治会に相談するときの客観的な材料にもなります。
「相手にどうしてほしいか」を一文にする
怒りの下の気持ちが見えたら、次は「本当はどうなってほしいのか」を一文にします。「相手に謝ってほしい」「出ていってほしい」という気持ちが浮かぶのは自然なことです。そのうえで、現実的に変えてほしいことを探します。「夜11時以降は、走る音を控えてほしい」「ゴミは収集日の朝に出してほしい」。具体的であるほど、相手も応じやすくなります。
「今こういう気持ち」と声に出してみる
家族や友人に、メモを見ながら「こういうことがあって、今こういう気持ちなんだ」と話してみます。ここで大切なのは、相手にアドバイスではなく「それはつらいね」をもらうことです。聞く側になった人は、ワーク「共感の一言」を思い出してください。「気にしすぎじゃない?」ではなく、まず「それは眠れなくてつらいね」。共感してもらえると、人は落ち着いて次の一手を考えられるようになります。
書くことには、それ自体に力がある
心理学者ペネベーカー(Pennebaker)は、つらい出来事について、そのときの感情も含めて数日間書き出してもらう研究(エクスプレッシブ・ライティング)を重ね、心身の健康によい影響があることを報告してきました。ポイントは、出来事だけでなく感情も書くことです。「うるさかった」だけでなく、「うるさくて、悲しくなった」と書く。その一語が、自分を取り戻す手がかりになります。
角の立たない伝え方|Iメッセージ・手紙・第三者を通す
気持ちが整理できたら、いよいよ伝え方です。近隣トラブルでは、「直接言う」「書いて伝える」「第三者を通す」の三つの道があります。どれが正解ということはありません。相手との関係、トラブルの内容、あなたの安全を考えて選びましょう。
Iメッセージで「私の困りごと」として伝える
アメリカの臨床心理学者トマス・ゴードン(Gordon)が広めた「Iメッセージ」は、主語を「あなた」ではなく「私」にして伝える方法です。「あなたはうるさい」(Youメッセージ)は、相手を責める言葉として届き、相手は身構えます。一方、「私は夜眠れなくて困っている」(Iメッセージ)は、あなたの状況として届くので、相手が受け取りやすくなります。
| 場面 | Youメッセージ(角が立ちやすい) | Iメッセージ(受け取りやすい) |
|---|---|---|
| 上の階の足音 | 「いつもうるさいんですけど」 | 「夜11時ごろの足音で、子どもが起きてしまって困っているんです」 |
| ゴミ出し | 「ルールくらい守ってください」 | 「前の晩に出されると、カラスに荒らされて片づけが大変で」 |
| 家の前の駐車 | 「勝手に停めないでください」 | 「車を出すときに通れず、仕事に遅れそうになって焦りました」 |
| 境界の植木 | 「枝が邪魔なんですけど」 | 「落ち葉が雨どいに詰まってしまって、どうしたらいいか悩んでいて」 |
Iメッセージのコツは、「事実」+「私への影響」+「私の気持ち」+「お願い」の順で組み立てることです。たとえば、「夜11時ごろに足音が響いていて(事実)、子どもが起きてしまうんです(影響)。私も寝不足で少し参っていて(気持ち)。もし可能なら、夜はスリッパにしていただけると助かります(お願い)」。前のステップで整理した気持ちが、ここでそのまま使えます。
また、相手が気づいていない可能性を最初に置いておくと、会話がやわらかくなります。「お気づきではないかもしれないのですが」「お互いさまなのですが」という前置きは、相手の面子を守り、話を聞いてもらいやすくします。実際、足音や生活音は、出している側にはほとんど聞こえていないことが多いのです。
直接言いにくいときは、手紙やメモで
顔を合わせると言葉に詰まってしまう方、相手がどんな人かわからず不安な方は、手紙やメモという方法もあります。書く場合も、Iメッセージの順番は同じです。気をつけたいのは、次の点です。
- 感情が高ぶっている夜には書かず、一晩おいて翌日に読み返す
- 「非常識」「迷惑」など、相手を評価する言葉を使わない
- 名前を書くかどうかは状況で判断する(不安が強ければ、管理会社経由にする)
- 一枚に一つのお願いにしぼる。あれもこれも書かない
- 「ご配慮いただけると助かります」と、相手に選ぶ余地を残して結ぶ
匿名の貼り紙は、書く側は気が楽でも、受け取る側には「誰かに監視されている」という恐れや反発を生みやすく、トラブルがこじれることがあります。名前を出すのが不安なときこそ、次の「第三者を通す」方法を考えてみてください。
管理会社・自治会・大家さんを通す
賃貸住宅なら管理会社や大家さん、分譲マンションなら管理組合や管理会社、戸建てなら自治会や町内会の役員。当事者どうしで向き合わずにすむ道を使うことは、逃げではありません。むしろ、感情がぶつかり合うのを防ぐ、賢い選択です。全戸へのお知らせとして「夜間の生活音にご配慮ください」と配布してもらえば、相手を名指しせずに伝えることもできます。
相談するときは、ステップ2の「困りごとメモ」が役に立ちます。日時と内容が具体的に記録されていると、管理会社も状況をつかみやすく、対応を検討しやすくなります。
「私は困っている」から始める。
相手を変えようとするより、自分の状況を正確に伝えることに集中しましょう。相手がどう受け取るかは、最終的には相手の領域です。あなたにできるのは、受け取りやすい形で差し出すところまでです。
一人で抱えないための相談先
伝えても状況が変わらない、相手が話し合いに応じない、怖くて伝えること自体ができない。そんなときは、一人で抱えず、公的な相談先や専門家を頼ってください。近隣トラブルの相談先には、主に次のようなものがあります。
近隣トラブルの主な相談先(一般的な例)
・賃貸住宅の管理会社・大家さん、分譲マンションの管理組合
・お住まいの自治会・町内会の役員
・市区町村の市民相談(生活相談)窓口:多くの自治体で無料の相談を受け付けている
・自治体の弁護士による無料法律相談、法テラス(日本司法支援センター)
・簡易裁判所の民事調停:話し合いの場を第三者が仲立ちする制度
・警察相談専用電話 #9110:緊急ではないが、警察に相談したいとき
・暴力や脅し、身の危険を感じたときは、迷わず110番へ
とくに覚えておいてほしいのは、暴力をふるわれた、脅された、つきまとわれている、物を壊されたなど、身の安全にかかわることは、近所づきあいの問題ではないということです。「ご近所だから大ごとにしたくない」と迷う必要はありません。危険を感じたときは110番、緊急ではないけれど不安なときは#9110に相談してください。直接話しに行くのも控えましょう。
体と心の不調が続くときも、相談を
トラブルが長引くと、眠れない、食欲がない、家にいても落ち着かない、何をしても楽しくないといった状態が続くことがあります。こうした状態が2週間以上続く場合は、かかりつけ医や心療内科、自治体の保健センターに相談してください。こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)では、お住まいの地域の公的な相談窓口につながります。トラブルそのものが解決していなくても、あなたの心と体を守ることは、今すぐ始められます。
「言われる側」になったときの気持ちの受けとめ方
近隣トラブルは、いつも「言う側」とは限りません。ある日、管理会社から「生活音について苦情が来ています」と連絡が来る。ポストに注意の手紙が入っている。そんなとき、多くの人が感じるのは、驚き、恥ずかしさ、怒り、そして「そんなつもりはなかったのに」という悔しさです。
悪者にされた気がして、悔しくて眠れなかった」
言われる側になったときも、手順は同じです。まず胸に手を当てて、体の反応を確かめる。次に、怒りの下にある気持ちに名前をつける。「恥ずかしい」「悔しい」「子どもを責めてしまいそうで怖い」「下の人がどんな人かわからなくて不安」。気持ちを言葉にしてから、対応を考えましょう。
そして、相手の立場を想像する余裕が少しでも出てきたら、ワーク「5秒ルール」を試してみてください。すぐに「言い訳」や「反論」を考えるのではなく、5秒だけ「下の階の人は、今どんな気持ちで暮らしているのだろう」と想像してみるのです。答えはわからなくてかまいません。想像しようとすることが、敵どうしではなく、同じ建物で暮らす者どうしとして話す準備になります。
中島輝より一言
私は5歳のとき、育ててくれた里親が夜逃げをするという経験をしました。それ以来、私は感情を出すのをやめ、周りに迷惑をかけないこと、波風を立てないことばかりを考えて生きるようになりました。我慢は、子どもの私が自分を守るための精いっぱいの方法だったのです。けれど、感じないようにした気持ちは消えません。小学生の頃、理由もわからないまま涙が流れてきたのは、しまい込んだ気持ちが出口を探していたのだと、今は思います。近隣トラブルで「言えない」と悩む方に、私はこう伝えたいのです。我慢してきたあなたは、弱いのではなく、周りを大切にしてきた人です。その大切さを、そろそろ自分にも向けてあげてください。
トラブルのあとも、暮らしを取り戻すために
近隣トラブルは、話し合いで解決することもあれば、完全には解決しないこともあります。相手が引っ越していったり、こちらが引っ越しを決めたりすることもあるでしょう。どんな結末であっても、大切なのは、トラブルの間に押し込めていた気持ちを、あとからでも言葉にしてあげることです。
トラブルが落ち着いたあとも、「また始まるのではないか」と音に敏感になる状態がしばらく続くことがあります。それは、あなたの神経がずっと警戒モードで頑張ってきた証拠です。警戒をゆるめるには、意識して「安心」を感じる時間をつくることが役に立ちます。
家の中に「安心のスイッチ」をつくる
ワーク「五感スイッチ」を、家の中の安心づくりに使ってみましょう。朝のお茶の時間に、湯気の香り、カップの温かさ、窓から入る光を一つずつ感じて、「心地いい?」と問いかけます。音にばかり向いていた注意を、心地よい感覚へと少しずつ取り戻していく練習です。気になる音がしたときは、イヤホンで好きな音楽を流したり、別の部屋に移ったりと、自分を守る工夫をしていいのです。
また、トラブルで沈んだ気持ちを誰にも話さないままでいると、地域全体が「敵の住む場所」のように感じられてしまうことがあります。あいさつを交わせるご近所さん、話を聞いてくれる友人など、トラブルの相手以外とのつながりを意識して保つことも大切です。地域の人間関係との向き合い方は、ご近所・地域の人間関係に疲れる理由|感情を言葉にできない大人のつながり直しでも詳しく紹介しています。
よくあるご質問
周りを大切にしてきた証拠。
伝える前に、まず自分と話そう。
「うるさい」は「困っています」に変わります。
自分を大切にしよう
近隣トラブルで「言いたいのに言えない」とき、私たちは我慢を選びがちです。我慢は関係を守る知恵でもありますが、気持ちにふたをしたまま続けると、ある日の爆発や、眠れなさ、体の不調となってあらわれます。言えない気持ちは、消えたわけではありません。体の緊張として、あなたに何かを伝えようとしているのです。
まずは、怒りの下にある不安や疲れ、無力感に名前をつけてみてください。胸に手を当てて体の温度を確かめ、日時と出来事と気持ちを分けて書き、本当に望むことを一文にする。そのうえで、「私は困っている」から始めるIメッセージや手紙、管理会社や自治会を通す方法を選びましょう。暴力や脅しがあれば、迷わず110番や#9110へ。近隣の問題は、一人で抱えなくていいのです。
そして、どんな結末になっても、トラブルの間ずっと頑張ってきた自分をねぎらってください。眠れない夜を耐え、波風を立てないように気を配ってきたのは、あなたが周りを大切にしてきたからです。その思いやりを、今度は自分に向けてあげましょう。自分を大切にしよう。自分の気持ちをていねいに扱えるようになると、相手に伝える言葉も、自然とやわらかくなっていきます。
ひとりで抱えないで(相談先の例)
管理会社・大家さん・管理組合、自治会・町内会
市区町村の市民相談(生活相談)窓口、自治体の無料法律相談、法テラス
警察相談専用電話 #9110(緊急でない相談)
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
暴力や脅し、身の危険を感じたときは、迷わず110番へ
本記事の参考資料・科学的根拠
- 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)
- 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料
- Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation: Alexithymia in Medical and Psychiatric Illness. Cambridge University Press.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
- Lieberman, M.D., et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421-428.
- Pennebaker, J.W. (1997). Writing about emotional experiences as a therapeutic process. Psychological Science, 8(3), 162-166.
- Gordon, T. (1970). Parent Effectiveness Training. Peter H. Wyden.(Iメッセージ)

自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。







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