「習い事をやめたい」と言われたら|続ける・やめるの前に聞きたい子どもの本音

『習い事をやめたい』と言われたら|続ける・やめるの前に聞きたい子どもの本音

『習い事をやめたい』と言われたら
続ける・やめるの前に聞きたい子どもの本音

日曜の夜、明日のピアノのレッスンを前に、子どもがぽつりと「もう、やめたい」。月謝も払ったし、発表会も近い。「せっかくここまで頑張ったのに」「すぐやめる癖がついたらどうしよう」。頭の中で言葉がぐるぐる回り、つい「もう少し頑張ろうよ」と返してしまう。けれども、子どもの「やめたい」は、たった一つの気持ちではありません。飽きた、友だちとうまくいかない、失敗が恥ずかしい、ただ疲れた。いくつもの気持ちが一語に押し込められていることが多いのです。続ける・やめるを決める前に、その一語をほどいてみませんか。親ができる本音の聞き方を、心理学の研究とアドラー心理学の視点からお伝えします。

中島 輝(中島輝)
心理カウンセラー/自己肯定感アカデミー会長/「6つの感」理論創始者/著書累計77万部/15,000人臨床/『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる自己肯定感の教科書』(SBクリエイティブ・累計32刷)『働く人のための自己肯定感』著者

結論:「やめたい」は終わりの合図ではなく、本音を話す入口

結論からお伝えします。子どもの「やめたい」に対して、すぐに「続けなさい」か「やめていいよ」で答える必要はありません。大切なのは、その一語の中にどんな気持ちが入っているのかを、親子で一緒に見ていくことです。気持ちが見えてくると、「続ける」「やめる」の二択だけでなく、「休む」「量を減らす」「教室を変える」「目標を変える」といった選択肢が見えてきます。

この記事のポイントは3つです。

  • 「やめたい」は、いくつもの感情の詰め合わせ。飽き、人間関係のつらさ、失敗の恥ずかしさ、体や心の疲れ。どれが入っているかで、親の関わり方は変わる。
  • 親の「続けてほしい」にも、いくつもの感情が入っている。お金や時間をかけた惜しさ、子どもの将来への不安、自分の夢。そこを言葉にすると、子どもの話を聞きやすくなる。
  • 最後に決めるのは子ども、という線を引く。親の役割は、決める材料をそろえ、気持ちを言葉にする手伝いをすること。自分で決めた経験が、自己決定感を育てる。

この記事の背景にあるのは、心理学でアレキシサイミア(失感情症)と呼ばれる考え方です。感情がないのではなく、感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態のことで、病名ではありません。一般の人の約10〜16%に強い傾向が見られる、誰もが持つ特性の濃淡です。子どもはもともと、感情を細かく言い分ける力が育っている途中です。だから、いろいろな気持ちをまとめて「やめたい」の一語で表すのは、ごく自然なことなのです。中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』では、こうした状態を「感情迷子さん」と呼んでいます。基本についてはアレキシサイミア(失感情症)とはをご覧ください。

数字で見る「やる気」と「続ける」の心理学

「一度始めたことは最後までやり通すべき」「すぐやめると、やめ癖がつく」。こうした考えは、多くの親が自分の親から受け継いできたものです。けれども、やる気や継続について調べてきた心理学の研究は、もう少し複雑な姿を見せています。

3つの欲求
人が自分から「やりたい」と感じるために必要とされる心の栄養:
自分で決めている感覚(自律性)・できる感覚(有能感)・つながっている感覚(関係性)
出典:Deci & Ryan の自己決定理論動機づけ研究
知見内容出典
ごほうびの落とし穴絵を描くのが好きな幼児に「描いたらごほうび」と約束して描かせると、その後、自由時間に自分から絵を描く時間が減ったLepper, Greene & Nisbett(1973)
自分で決める力自律性・有能感・関係性の3つが満たされると、人は外からの圧力がなくても活動を続けやすいDeci & Ryan(自己決定理論)
サンクコスト効果すでに払ったお金や時間を「もったいない」と感じるほど、やめたほうがよい場面でも続ける判断をしやすくなるArkes & Blumer(1985)
「やり抜く力」の再検討「やり抜く力(グリット)」の成績への影響は、当初の期待ほど大きくなく、勤勉性という性格特性とかなり重なるとするメタ分析Credé, Tynan & Harms(2017)
感情のラベリング感情に名前をつけると、不安や恐れに関わる扁桃体の活動が下がるLieberman et al.(2007)

ここから見えてくるのは、「続けさせる」ことと「続けたくなる」ことは、まったく別のことだということです。外から圧力をかけたり、ごほうびで釣ったりすると、短期的には続いても、子ども自身の「やりたい」という気持ちはかえって弱まることがあります。反対に、自分で決めている、できるようになっている、仲間や先生とつながっている、という感覚があるとき、子どもは自分から続けていきます。

つまり、「やめたい」と言われたときに見るべきなのは、この3つの栄養のどれが足りなくなっているかなのです。そしてそれは、子どもの気持ちを聞かなければわかりません。

「やめたい」を感情で分解する|飽き・人間関係・失敗の恥・疲れ

よくある相談の典型例
「理由を聞いても、
『なんとなく』しか言わないんです」
場面小学4年生の女の子の母親。幼稚園の年長から続けてきたスイミングを、最近「やめたい」と言いはじめた。理由を聞くと「なんとなく」「めんどくさい」。母親は「せっかく上のクラスに上がれそうなのに」と戸惑い、つい「あと少し頑張ろう」と言ってしまう。
「なんとなく」「めんどくさい」は、子どもがまだ気持ちを見分けられていないときによく出る言葉です。この子の場合、よく聞いていくと、上のクラスに上がると仲のよい友だちと別れてしまうさみしさと、新しいクラスで泳げなかったらどうしようという不安が隠れていました。「めんどくさい」の下に、別の気持ちがあったのです。

子どもの「やめたい」は、大きく次の4つの気持ちに分けて考えると、見えやすくなります。もちろん、いくつかが混ざっていることも多くあります。

「やめたい」を4つの気持ちに分けてみる ひとつの言葉の中に、いくつもの気持ちが入っていることが多い やめたい (ひとまとめの言葉) ① 飽き・退屈 同じ練習のくり返し ほかにやりたいことができた ② 人間関係 友だち・先生とうまくいかない さみしい・こわい・くやしい ③ 失敗の恥 できない姿を見られたくない 比べられるのがつらい ④ 疲れ 予定が多すぎる・眠い 学校でもう精一杯 どれが入っているかで、親の関わり方は変わる
▲ 子どもの「やめたい」は、飽き・人間関係・失敗の恥・疲れといった気持ちの詰め合わせであることが多いもの。どれが大きいかを一緒に見ていくと、次の一手が見えてきます。

① 飽き・退屈|「つまらない」の奥にあるもの

同じ練習のくり返しに飽きた、ほかに夢中になれるものが見つかった。これは成長の自然な過程でもあります。ただし、「つまらない」の奥に、「上達が止まって手ごたえがない」という停滞感が隠れていることもあります。自己決定理論でいう「有能感」が満たされなくなっている状態です。この場合は、目標を変えたり、新しい課題に挑戦したりすることで、また気持ちが動きだすことがあります。

② 人間関係|子どもが一番言いにくい理由

先生が怖い、仲のよい友だちがやめた、からかわれる、仲間に入れない。人間関係のつらさは、子どもがもっとも言葉にしにくい理由です。「先生が怖い」と言ったら親が先生に何か言うかもしれない、「からかわれる」と言うのは恥ずかしい。そう考えて、子どもは「なんとなく」「めんどくさい」という言葉に包みます。ここに気づかずに「頑張りなさい」と背中を押すと、子どもはつらい場所に一人で通い続けることになります。

③ 失敗の恥|「できない自分」を見られたくない

発表会、試合、検定、昇級テスト。習い事には、できる・できないがはっきり見える場面がたくさんあります。失敗した姿を人に見られる恥ずかしさや、きょうだいや友だちと比べられるつらさは、「やめたい」の大きな理由になります。恥は、怒りや悲しみと比べても、とくに言葉にしにくい感情です。子どもは「できないからやめたい」とは言わず、「もう興味がない」と言うことがあります。

④ 疲れ|心と体のエネルギーが足りない

学校、宿題、塾、習い事。予定がぎっしり詰まった毎日の中で、子どもは「疲れた」と感じる余裕さえなくしていることがあります。眠そう、朝起きられない、イライラしている、頭やおなかが痛い。こうした体のサインは、「もう少しゆっくりしたい」という気持ちの表れかもしれません。この場合に必要なのは、根性ではなく休息です。

「やめたい」の中身がわかれば、
「続ける・やめる」以外の道が見えてくる。
まず、一語をほどくところから。

親の投資と期待|「ここまでかけたのに」という気持ちの正体

子どもの「やめたい」を聞いたとき、親の心の中にもたくさんの感情が湧き上がります。ここを言葉にしておかないと、親は自分の気持ちに押されて、子どもの話を最後まで聞けなくなってしまいます。

「もったいない」はサンクコストの感情

何年も払ってきた月謝、買いそろえた道具、毎週の送り迎え、発表会の衣装。「ここまでかけたのに」という気持ちは、とても自然なものです。心理学では、すでに払って取り戻せないコストに引きずられて判断がゆがむことを「サンクコスト効果」と呼びます(Arkes & Blumer, 1985)。

けれども、これまでに子どもが得たもの、たとえば体力、音感、礼儀、友だち、頑張った経験は、やめたからといって消えるわけではありません。大切なのは「これまでにかけたもの」ではなく、「これからの子どもにとって何がいいか」です。「もったいない」と感じている自分に気づいたら、心の中で「いま私は、惜しいと感じているんだな」と名前をつけてみてください。それだけで、少し冷静に子どもの話を聞けるようになります。

親の期待の中にある、いくつもの気持ち

親の言葉その奥にあるかもしれない気持ち
「せっかくここまで続けたのに」惜しい、これまでの頑張りを無駄にしたくない
「やめ癖がついたら困る」将来への不安、子どもが逃げる人になったらという心配
「みんな続けてるよ」周りの親の目、比べられる焦り
「あなたのためなのに」わかってもらえないさみしさ、自分の努力を認めてほしい気持ち
「お母さんも子どものころやめて後悔した」自分の過去の悔しさ、果たせなかった夢

とくに気をつけたいのは、最後の行です。親が子どものころにできなかったこと、続けられなかったことを、知らず知らずのうちに子どもに託していることがあります。それ自体は愛情から生まれたものです。けれども、子どもの人生は子どものものです。親の夢と子どもの気持ちを分けて考えることが、子どもの本音を聞く第一歩になります。

「続ける力」神話を問い直す

「習い事は続けることに意味がある」「一度やめると何をしても続かない子になる」。こうした考えは、日本の子育てで長く語られてきました。けれども、これには研究の面から見ても、もう少しやわらかく考えてよい点があります。

グリットは「何でも我慢して続ける力」ではない

ペンシルベニア大学の心理学者アンジェラ・ダックワースは、著書『やり抜く力 GRIT』で、長期的な目標に向けた情熱と粘り強さの大切さを紹介しました。この本は世界中で読まれ、「続ける力」の大切さを語る根拠としてよく引用されます。

ただ、ダックワースが語っているのは、「本人が情熱を持てる目標」に向けた粘り強さです。何でも我慢して続けることではありません。実際に彼女の家庭では、家族一人ひとりが「難しいこと」に取り組む、始めたら区切り(シーズンの終わりや月謝を払った期間など)まではやめない、そして何に取り組むかは本人が選ぶ、というルールを紹介しています。続けることと、自分で選ぶことが、セットになっているのです。

また、その後の研究では、グリットが成績などに与える影響は当初期待されたほど大きくない、勤勉性という性格の特徴とかなり重なっている、とするメタ分析も出ています(Credé ら, 2017)。「続ける力」だけが、子どもの将来を決めるわけではないのです。

「やめる力」も、生きる力の一つ

大人になると、自分に合わない仕事、つらい人間関係、続けても成果の出ない計画から「やめる」決断が必要な場面がたくさん出てきます。自分の気持ちを見つめて、理由を言葉にし、納得してやめる。これは「逃げ」ではなく、大切な生きる力の一つです。

反対に、気持ちを言葉にできないまま、親に言われて嫌々続けた経験は、「自分の気持ちより、人の期待が大事」というメッセージとして子どもの心に残ることがあります。それが続くと、自分が本当は何をしたいのかがわからなくなる、感情迷子さんの状態に近づいていきます。

大切なのは「続けたかどうか」ではなく、
「自分の気持ちを見つめて決めたかどうか」。
その経験が、一生ものの力になる。

アドラーの目的論|「やめたい」は何のために出ている?

私は長年、アドラー心理学をベースにカウンセリングをしてきました。アルフレッド・アドラー(1870〜1937、オーストリアの精神科医)は、人の行動や感情を「原因」だけでなく「目的」から見ることを大切にしました。これを目的論といいます。

原因論では、「なぜやめたいの?」と過去の理由を探します。目的論では、「やめたいという気持ちは、この子にとって何を守ろうとしているのだろう」「何を手に入れようとしているのだろう」と考えます。

「やめたい」の目的として考えられること親が考えたいこと
失敗する姿を見られる恥ずかしさから、自分を守る結果ではなく挑戦を認める関わりがあるか
つらい人間関係から距離をとる教室の中で何が起きているか
疲れを回復させるための時間を手に入れる予定が詰まりすぎていないか
親に自分の気持ちに気づいてほしい最近、子どもの話をゆっくり聞けているか
新しく見つけた「やりたいこと」に時間を使う子どもの興味の変化に目を向けているか

目的論の視点に立つと、「やめたい」は困った言葉ではなく、子どもが自分を守ろうとしている、あるいは何かを求めているサインとして見えてきます。たとえば「失敗を見られたくない」が目的なら、必要なのは「やめさせる」ことでも「続けさせる」ことでもなく、失敗しても大丈夫だと感じられる関わりかもしれません。

親の「続けなさい」にも目的がある

目的論は、親自身にも当てはまります。「続けなさい」と言いたくなるとき、それは子どものためだけでなく、親自身の不安を落ち着かせるためだったり、周りの親の目から自分を守るためだったりすることがあります。それに気づくことは、自分を責めることではありません。自分の気持ちを言葉にできると、子どもの気持ちと自分の気持ちを分けて考えられるようになります。

決めるのは誰か|課題の分離と自己決定感

アドラー心理学には、「課題の分離」という考え方もあります。岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』で広く知られるようになった整理で、「その選択の結果を最終的に引き受けるのは誰か」を考え、自分の課題と相手の課題を分けるというものです。

習い事を続けるかどうか。その結果、うまくなる喜びも、練習のつらさも、やめたあとの時間の使い方も、最終的に引き受けるのは子ども自身です。習い事を続けるかどうかは、基本的には子どもの課題です。一方、月謝を払えるか、送り迎えができるか、家庭のルールをどうするかは、親の課題です。

課題の分離は、「子どもの好きにさせる」ということではありません。年齢に応じて、親は情報を伝え、一緒に考え、家庭として譲れない条件があれば正直に伝えます。そのうえで、最後の一歩は子どもが自分で決める。それが、子どもを一人の人として尊重するということです。

自己決定感|「自分で決めた」が花を咲かせる

自己肯定感の「6つの感」を木にたとえると、自尊心≒自己存在感が根、自己受容感が幹、自己効力感が枝、自己信頼感が葉、自己決定感が花、自己有用感が実にあたります。習い事の「やめたい」で揺らぎ、そして育つのが、花にあたる自己決定感、つまり「自分の人生は自分で決めている」という感覚です。

親に言われて続けた習い事より、自分で「続ける」と決めた習い事のほうが、子どもは困難を乗り越えやすいものです。そしてもし「やめる」と決めた場合でも、自分で考えて決めた経験は、次の挑戦の土台になります。反対に、いつも親が決めてきた子は、大人になってから「自分は何がしたいのかわからない」と悩むことがあります。習い事の「やめたい」は、子どもが自分で決める練習をする、絶好の機会なのです。

中島輝より一言

私は中学生のころバスケットボール部にいましたが、試合に勝っても一人だけ無表情でした。うれしいのか、つらいのか、続けたいのか、やめたいのか。自分の気持ちがわからないまま、言われるままにボールを追っていたのだと思います。だからこそ、子どもが「やめたい」と口にできることは、とても大切だと感じます。「やめたい」と言えるのは、自分の内側に気持ちがあることに気づけている証拠です。その気持ちを、どうか大事に聞いてあげてください。

本音を聞く親子の会話ワーク

ここからは、子どもの「やめたい」の中身をほどくための会話のワークを紹介します。中島輝の近刊で紹介しているワークを、習い事の場面向けにアレンジしました。答えを引き出すための尋問ではなく、気持ちを一緒に探す時間として行ってください。

ワーク1|1分
3段階温度計で「やめたい度」を測る

「やめたい気持ちは、1・2・3で言うとどれくらい?」と聞きます。1は「ちょっとだけ」、3は「もう本当に無理」。数字にすると、子どもは自分の気持ちの強さを伝えやすくなり、親も「今日いきなり決めなくていい段階」かどうかがわかります。1週間後にもう一度聞くと、変化も見えてきます。

ワーク2|1分
4つの気持ちカードで分解する

紙に「あきた」「人のこと」「しっぱいがいや」「つかれた」の4つを書き、「どれが一番近い?いくつ選んでもいいよ」と聞きます。言葉で説明するのが苦手な子も、指さしなら答えやすくなります。選んだカードについて、「もう少し教えてくれる?」と続けます。

ワーク3|30秒
習い事の気持ちをオノマトペで

「習い事に行く前の気持ちは、どんな音?」と聞いてみます。「ずーん」「どきどき」「もやもや」「わくわく」。行く前、している最中、終わったあとで音が違えば、どの場面がつらいのかが見えてきます。「行く前はずーんだけど、終わったらすっきり」なら、行くまでのハードルに手当てが必要なのかもしれません。

ワーク4|5分
未来日記|やめた自分・続けた自分

「もし習い事をやめたら、来月の土曜日はどんな一日になると思う?」「続けていたら、1年後の発表会でどんな気持ちだと思う?」と、2つの未来を想像してもらいます。想像の中で両方の自分を体験すると、子どもは自分が本当に大切にしたいものに気づきやすくなります。

ワーク5|継続
親の気持ちも「Iメッセージ」で伝える

子どもの話を聞いたあとで、親の気持ちも伝えます。「やめなさい/続けなさい」ではなく、「お母さんは、ここまで頑張ってきたのを見てきたから、少しさみしい気持ちもあるんだ」と、「私は」を主語にして伝えます。親の気持ちは決定の条件ではなく、一つの情報として差し出すのがポイントです。

聞くときに避けたい言葉

  • 「なんでやめたいの?」の連発(責められているように感じる)
  • 「そんなことでやめるの?」(気持ちの重さを否定する)
  • 「じゃあ勝手にしなさい」(突き放されたように感じる)
  • 「お金がかかってるんだよ」(罪悪感で続けさせることになる)

子どもの気持ちを受けとめる親の関わり方については、「泣かないの!」をやめると子どもは強くなる|感情コーチングとアドラーの勇気づけもあわせてお読みください。

続ける・休む・やめるを一緒に決める手順

気持ちが見えてきたら、次は具体的にどうするかを親子で考えます。ここでは、子どもの自己決定感を大切にしながら決めていく手順を紹介します。

一緒に決める5つのステップ ① 聞く すぐ答えを 出さない ② ほどく 4つの気持ちに 分けてみる ③ 広げる 二択以外の 選択肢を出す ④ 決める 最後の一歩は 子どもが選ぶ ⑤ ふり返る 期限を決めて 気持ちを確認 気持ちは変わってもいい。ふり返りで何度でも①に戻れる
▲ 「やめたい」と言われたら、すぐに結論を出さず、聞く→ほどく→広げる→決める→ふり返るの順に進みます。決めたあとに気持ちが変わっても、また最初に戻って話し合えばいいのです。
STEP 1
聞く|その日のうちに結論を出さない

「やめたい」と言われたその場で、答えを出す必要はありません。「そう思ってたんだね。話してくれてありがとう。今度ゆっくり聞かせてね」と受けとめ、落ち着いて話せる時間をとります。言ってくれたこと自体を受けとめるのが最初の一歩です。

STEP 2
ほどく|気持ちを分けて、言葉にする

前の章のワークを使って、「やめたい」の中身を一緒に探ります。人間関係のつらさやいじめの気配が見えたときは、子どもに無理をさせず、まず安全を確保し、必要に応じて先生や教室の責任者と話し合います。

STEP 3
広げる|二択以外の選択肢を並べる

「続ける」「やめる」のあいだには、たくさんの道があります。回数を減らす、1か月休んでみる、クラスや教室を変える、目標を変える、別の習い事に切り替える。紙に書き出して、子どもと一緒に眺めてみましょう。

STEP 4
決める|家庭の条件を伝えたうえで、本人が選ぶ

「今月の分は払ってあるから、月末までは行ってみて、そこで決めよう」など、家庭として大切にしたい条件があれば正直に伝えます。そのうえで、どれを選ぶかは子どもに決めてもらいます。年齢が低い場合は、親が2〜3つの選択肢にしぼって選んでもらう方法もあります。

STEP 5
ふり返る|期限を決めて、気持ちを確認する

決めたあとも、「1か月たったら、また気持ちを聞かせてね」と期限を決めます。続けると決めたけれどやっぱりつらい、やめたけれどまたやりたくなった。気持ちが変わるのは失敗ではありません。ふり返りのたびに、子どもは自分の気持ちを言葉にする練習を重ねていきます。

やめると決めたときに伝えたいこと

やめると決めたときは、「ここまでよく頑張ったね」「ここで覚えたことは、ずっとあなたの中に残るよ」と、これまでの過程を認める言葉をかけてください。先生や仲間に「ありがとう」を伝える機会をつくるのもおすすめです。気持ちよく区切りをつけた経験は、次に何かを始めるときの勇気になります。

よくあるご質問

すぐにやめさせると「やめ癖」がつきませんか?
大切なのは、やめるかどうかより、どうやめるかです。気持ちを言葉にし、理由を整理し、自分で決めてやめた経験は「やめ癖」ではなく「決める力」につながります。反対に、気持ちを聞かれないまま続けさせられた経験が、かえって「何をしても楽しくない」という感覚を残すこともあります。
本人は「やめたい」、でも親から見ると才能があります。
親から見た才能と、子どもの気持ちは、どちらも大切な情報です。「お母さんは、あなたの〇〇がすごいと思っている」と気持ちを伝えたうえで、子どもの「やめたい」の中身を聞いてみてください。休む、ペースを落とすなど、才能も気持ちも大切にできる道が見つかることがあります。最後は本人が選ぶことを忘れないでください。
理由を聞いても「わからない」としか言いません。
「わからない」も大切な気持ちの報告です。言葉で説明するのが難しいときは、3段階温度計やオノマトペ、気持ちカードなど、選ぶだけで答えられる方法を試してみてください。すぐに理由がわからなくても、「わからないけどやめたいんだね」と受けとめるだけで、子どもは安心して少しずつ話しはじめます。
夫婦で意見が分かれています。どうすればいいですか?
まずは夫婦それぞれが、自分の「続けてほしい/やめさせたい」の奥にある気持ちを言葉にしてみてください。惜しい、不安、自分の経験から、などが見えてくると、意見の違いは対立ではなく、子どもを思う気持ちの違う形だとわかります。そのうえで、子どもの話を一緒に聞く時間をつくりましょう。
教室でいじめや先生の厳しすぎる指導があるようです。
その場合は、続けるかどうかを考える前に、子どもの安全と心を守ることを最優先にしてください。無理に通わせず、教室の責任者に相談したり、場合によっては教室を変えたりすることも考えましょう。子どもには「話してくれてありがとう。あなたは悪くないよ」と伝えてください。
「やめたい」は、終わりの言葉ではなく、
子どもが本音を話しはじめる、最初の一語。
続ける・やめるの前に、その一語をほどいてみよう。
自分で決めた経験が、
子どもの心に自己決定感という花を咲かせます。

自分を大切にしよう

子どもの「やめたい」は、飽き、人間関係のつらさ、失敗の恥ずかしさ、疲れといった、いくつもの気持ちの詰め合わせであることが少なくありません。子どもはまだ気持ちを細かく言い分ける力が育っている途中なので、それを「なんとなく」「めんどくさい」という言葉に包んで伝えます。心理学の研究でも、外から続けさせる圧力より、自分で決めている感覚、できる感覚、つながっている感覚こそが、子どもを自分から続けさせる力になることが示されています。

だからこそ、続ける・やめるを決める前に、その一語をほどくことが大切です。気持ちを分けて聞く。親自身の「もったいない」「不安」にも名前をつける。「やめたい」が何のために出ているのかを、目的論の視点で考える。そして、最後の一歩は子どもにゆだねる。その経験が、「自分の人生は自分で決めていい」という自己決定感を育てていきます。

この記事を読んで、子どもの「やめたい」にどう答えようかと迷ってきた方は、それだけ子どもの将来を真剣に考えてきた方です。月謝のこと、送り迎えのこと、周りの目。たくさんのものを抱えながら、子どもの習い事を支えてきたのは、ほかでもないあなたです。どうか、その頑張りをあなた自身が認めてあげてください。自分を大切にしよう。親が自分の気持ちを大切にできるとき、子どもの気持ちも大切に聞けるようになります。

本記事の参考資料・科学的根拠

  • 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)原稿
  • Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation: Alexithymia in Medical and Psychiatric Illness. Cambridge University Press.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
  • Lepper, M.R., Greene, D., & Nisbett, R.E. (1973). Undermining children’s intrinsic interest with extrinsic reward. Journal of Personality and Social Psychology, 28(1), 129-137.
  • Deci, E.L., & Ryan, R.M. (2000). The “what” and “why” of goal pursuits: Human needs and the self-determination of behavior. Psychological Inquiry, 11(4), 227-268.
  • Arkes, H.R., & Blumer, C. (1985). The psychology of sunk cost. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 35(1), 124-140.
  • アンジェラ・ダックワース『やり抜く力 GRIT』ダイヤモンド社
  • Credé, M., Tynan, M.C., & Harms, P.D. (2017). Much ado about grit: A meta-analytic synthesis of the grit literature. Journal of Personality and Social Psychology, 113(3), 492-511.
  • Lieberman, M.D., et al. (2007). Putting feelings into words. Psychological Science, 18(5), 421-428.
  • アルフレッド・アドラー『人生の意味の心理学』
  • 岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』ダイヤモンド社
  • 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料
監修|中島 輝
心理カウンセラー・自己肯定感アカデミー会長・「6つの感」理論創始者
著書累計77万部・15,000人臨床・回復率95%
本記事は心理学的知見に基づく一般情報です。医学的診断や治療の代わりにはなりません。心身に不調を感じる場合は、医療機関・専門家へのご相談をおすすめします。

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