部下と上司の板挟みで何も感じなくなった管理職へ|中間管理職のための感情の言語化

部下と上司の板挟みで何も感じなくなった管理職へ|中間管理職のための感情の言語化

部下と上司の板挟みで何も感じなくなった管理職へ
中間管理職のための感情の言語化

朝の部長会で目標の上積みを告げられ、午後は部下の1on1で「正直、もう限界です」と打ち明けられる。どちらにも「わかりました」と答え、帰りの電車でスマホを眺めているうちに、自分が今日どう感じたのかを一つも思い出せない。もし思い当たるなら、結論から申し上げます。「何も感じない」は管理職としての強さではなく、心が出している警報です。40代前後の課長・部長、プレイングマネジャーの方に向けて、自分自身の感情を取り戻すための言語化の方法をお伝えします。

中島 輝(中島輝)
心理カウンセラー/自己肯定感アカデミー会長/「6つの感」理論創始者/著書累計77万部/15,000人臨床/『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる自己肯定感の教科書』(SBクリエイティブ・累計32刷)『働く人のための自己肯定感』著者

結論|「何も感じない」は、管理職の心が出している警報である

忙しい方のために、最初に結論を3つにまとめます。

結論1
板挟みの管理職は、感情を「処理」するうちに自分の感情を感じなくなる

上からの方針を部下向けに言い換え、部下の不満を上向けに言い換える。中間管理職の仕事は、他人の感情を受け取って翻訳し続ける仕事です。その作業に慣れるほど、自分の感情は後回しになり、やがて「何も感じない」状態に近づいていきます。

結論2
感情の鈍麻は、判断の質とチームの空気に先に表れる

本人が「平気だ」と思っていても、判断の遅れ、部下への言葉の硬さ、家での無口といった形で周りには伝わっています。数字に表れるのは、たいてい最後です。

結論3
感情の言語化は、数秒単位の習慣で取り戻せる

性格を変える必要はありません。通勤電車の中、会議と会議の間、帰りの改札。1日に合計しても数分の「自分の内側を見る時間」をつくるだけで、感情の回路は少しずつ戻ってきます。

この記事で使う「感情迷子さん」とは、中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』の言葉で、感情をうまく認識・表現しにくくなっている状態を指します。心理学では「アレキシサイミア(失感情症)」と呼ばれる状態に近いものです。感情がないのではなく、感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しくなっている状態で、病名ではなく、誰もが持っている特性の濃淡です。全体像はアレキシサイミア(失感情症)とは|感情に名前がつけられない人の特徴・原因・回復のヒントで詳しく解説しています。

約10人に1人
感情に気づき、言葉にすることが難しい傾向が強い人の割合(研究により約10〜16%)。
部下10人の課なら、あなたを含めて1人以上いても不思議ではありません
出典:TAS-20等を用いた複数の疫学研究、中島輝・自己肯定感アカデミー講座資料疫学データ

本では、感情迷子さんの「迷子」という言葉について、迷子という言葉には、帰る場所があるという前提が含まれていますと書いています。感情を感じなくなったのは、感情が消えたからではありません。一時的に、居場所がわからなくなっているだけです。

板挟みの課長に起きている「感情の鈍麻」とは

アレキシサイミアには、大きく2つのタイプがあるとされています。生まれ持った気質や育った環境によって長く続く「1次性」と、強いストレスから心を守るために一時的に感情の回路を絞る「2次性」です。板挟みの管理職に多いのは、後者の2次性に近い状態です。

40代前後の管理職は、仕事の責任が最も重くなる時期にいます。上には経営の方針があり、下には人手不足のチームがあり、自分自身もプレイヤーとして数字を持っている。家に帰れば、子どもの進学や親の体調が気になり始める年代でもあります。感じていたら回らない。そう判断した心が、静かに感情のボリュームを下げていくのです。

板挟みの管理職に流れ込む「感情」と、置き去りの感情 上司・経営 方針・目標・プレッシャー・期待 部下・チーム 不満・不安・相談・疲れ 中間管理職 上の言葉を下へ、下の言葉を上へ「翻訳」する 他人の感情は処理できるのに… 自分の感情の行き先がない 置き去りの感情 肩こり・不眠・胃の重さ 家での無口・虚無感 本当は必要なもの 自分の感情を 言葉にする場所 感情は上下から流れ込むのに、出口がないまま体と行動にたまっていく
▲ 中間管理職は、上と下の感情を受け取って言い換える「翻訳者」の役割を担っています。ところが自分自身の感情を言葉にする場所がないため、置き去りにされた感情が体の不調や虚無感として表に出やすくなります。

不快な感情だけを選んで消すことはできない

ここで知っておいていただきたいのは、感情のボリュームは、不快なものだけを選んで下げることができないという点です。焦りや怒りを感じないようにしているうちに、部下の成長を見たときの喜びや、プロジェクトを終えたときの達成感まで薄くなっていきます。

「最近、仕事が楽しいとも苦しいとも思わない」「目標を達成しても、次の数字のことしか考えていない」。管理職の方からよく聞くこうした言葉は、怠けや燃え尽きの前触れというより、心が自分を守るためにとった、ある意味で賢い反応です。責める必要はありません。ただ、この状態が長く続くと、判断の質と体の健康の両方に負担がかかります。

何も感じないのは、心が弱いからではない。
感じていたら回らない毎日から、
心があなたを守ってきた結果です。

1on1で部下の話は聞くのに、自分の話は誰にもしていない

ここ数年、多くの企業で1on1ミーティングが定着しました。管理職には、部下の話を傾聴し、気持ちを受け止め、エンゲージメントを高める役割が求められています。そのこと自体は、とても大切な変化です。

約6%
仕事に熱意をもって取り組む「エンゲージしている」社員の割合(日本)。
世界でも最低水準とされています
出典:Gallup「State of the Global Workplace」国際調査

この数字を前に、「部下のエンゲージメントを上げてくれ」と言われる管理職は少なくありません。けれど、ここには見落とされがちな構造があります。部下の感情を聞く場はできたのに、聞く側の管理職の感情を聞く場はほとんどないのです。

よくある相談の典型例
「部下の話は毎週聞いています。
でも、自分の話をしたのはいつだったか」
場面40代・営業課長。部下8人と週1回ずつ1on1を行い、評価面談の時期には1日に5件の面談が重なる。部長との面談は月1回あるが、話すのは数字と人員計画だけ。「最近どうですか」と聞かれると、反射的に「特に問題ありません」と答えてしまう。
この方は、部下の気持ちには丁寧に耳を傾けています。ところが自分の気持ちについては、聞かれる機会がないうえに、聞かれても答える言葉が出てこない。聞く役割を担い続けるうちに、話す回路のほうが細くなっていたのです。

「聞く力」と「自分の感情に気づく力」は別の筋肉

傾聴の研修を受け、部下の気持ちを汲み取るのが上手な管理職ほど、自分の感情には鈍くなっていることがあります。相手に意識を向け続けると、自分の内側を見る時間がなくなるからです。

本では、外側の出来事や処理すべきことに関心が向き続けると「自分はどう感じているか」を考える間がなくなる、と説明しています。管理職の1日はまさにその連続です。会議、承認、トラブル対応、1on1。どれも他者と課題に向けた時間で、自分の感情に向ける時間は、意識してつくらない限り1分もありません。

また、管理職には「上司が弱音を吐いたら部下が不安になる」という思い込みも働きます。弱みを見せないことが責任感の表れだと考え、感情を言葉にすることを自分に禁じてしまう。その結果、話さないうちに、話す言葉そのものが見つからなくなっていきます。

「疲れている」に気づかない管理職の体と行動のサイン

感情の鈍麻がやっかいなのは、本人が「疲れている」と自覚しにくいことです。言葉にならなかった感情は、体の不調や行動の変化として先に表に出てきます。次のチェックで、最近の自分を振り返ってみてください。

  • 「最近どう?」と聞かれると、反射的に「特に問題ない」と答えている
  • 週末に何をしていたか、月曜の朝にはほとんど思い出せない
  • 肩こり・頭痛・胃の重さが続いているが、忙しさのせいだと片づけている
  • 夜中や明け方に目が覚め、仕事のことを考え始めてしまう
  • 部下の報告に、以前より短く硬い言葉で返すようになった
  • 家族に話しかけられても、要点だけを返して会話が終わる
  • 目標を達成しても、うれしさより「次の数字」が先に浮かぶ
  • お酒や甘いもの、スマホの時間が、気づくと増えている
  • 以前は楽しめた趣味に、手が伸びなくなった
  • 「何のために働いているのだろう」と、ふと思うことがある
当てはまった数目安
0〜3個感情の回路はおおむね働いています。忙しい時期だけ鈍くなることがあるので、後半のワークを予防として使ってください。
4〜6個感情のボリュームが下がり始めているかもしれません。通勤中のワークから試してみてください。
7個以上心と体がかなり無理をしている可能性があります。眠れない状態や気分の落ち込みが続くときは、産業医や医療機関への相談も考えてください。

このチェックは診断ではありません。数が多かったとしても、それはあなたがそれだけ周りのために感情を後回しにしてきた証拠です。気づいたことそのものが、回復の第一歩になります。

なお、アレキシサイミアの傾向は、うつ病の方の約45〜50%に見られるという報告もあります。どちらが原因かは一概にいえませんが、「何も感じない」が数週間以上続き、眠りや食欲にも変化があるときは、心の不調のサインである可能性もあります。我慢を重ねる前に、専門家につないでください。

「感情はノイズ」と考えていたタカシさんの半年

本に登場するタカシさん(仮名・40代・管理職)は、「感情はノイズだ」と思って生きてきた方でした。部下が相談に来れば、まず解決策を出す。家族が話しかけてきても、論理的に返す。それが当たり前で、仕事のうえでは成果も出していました。

そんなタカシさんが私のところに来られたのは、「最近、何のために働いているのかわからなくなった」という虚無感を抱えていたからです。困っていることを聞いても、出てくるのは業務の課題ばかり。自分がどう感じているのかについては、ほとんど言葉が出てきませんでした。

自分の感情ではなく、相手の感情から始めた

タカシさんのように感情に興味を持ちにくい方に、いきなり「自分の気持ちを話してください」とお願いしても、うまくいきません。そこで最初に取り組んでもらったのは、相手の感情を想像することでした。部下が相談に来たら、解決策を言う前に「この人は今、何を感じているのだろう」と一度だけ心の中で問いかける。それだけです。

「部下が落ち込んでいるとき、つらかったね、と言えるようになりました。それだけで、部下の表情が変わるんですね」
タカシさん(仮名)の言葉/中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』より

半年ほど経ったある日、タカシさんはこう話してくれました。そして、こう続けたのです。「自分もなんだか、スッとするんです」。相手の感情に目を向ける練習が、いつのまにか自分の感情に気づく練習にもなっていました。

この変化は、管理職の方にとって大きな示唆を含んでいます。部下と向き合う時間そのものを、自分の感情を取り戻す練習の場に変えられるということです。新しく時間をつくらなくても、毎日の1on1や相談対応の中で、感情の回路は鍛え直せます。

中島輝より一言

中学生のころ、私はバスケットボール部に入っていました。試合に勝ってチームメイトが抱き合って喜んでいるとき、私だけが無表情で立っていたことを覚えています。うれしくなかったわけではありません。感情を出さないことが、身についた生き方になっていたのです。だから、成果を出しても喜べない管理職の方の話を聞くと、あのコートの隅にいた自分を思い出します。感情は、いつからでも取り戻せます。私自身がそうでした。

中間管理職に多い感情迷子さんのタイプ

本では、感情迷子さんを4つのタイプに分けて説明しています。管理職の場面に当てはめると、次のように表れやすくなります。どれか1つにきれいに当てはまる必要はありません。「この場面の自分はこれに近い」という見方で読んでください。

タイプ管理職の場面での表れ方育てたい感(木のたとえ)
タイプ1
感情がわからない
胃が重い、肩が張る。でもそれが焦りなのか怒りなのか区別がつかない。「ちょっと疲れているだけ」で片づける自尊心≒自己存在感(根)
タイプ2
感情を説明できない
部長に「どう思う?」と聞かれても「特に問題ありません」としか言えない。違和感はあるのに言葉にならない自己受容感(幹)
タイプ3
感情に興味がない
部下の相談にはすぐ解決策で応える。会議でも感情の話題は「本題から外れる」と感じる自己信頼感(葉)
タイプ4
想像できない
3年後の自分やチームの姿を思い描けない。キャリアの話になると「今の仕事をこなすだけ」と答える自己決定感(花)

板挟みの管理職にとくに多いのは、タイプ2とタイプ3が重なった状態です。上にも下にも「問題ありません」と言い続けるうちに説明する言葉が減り(タイプ2)、成果を出すために感情を後回しにするうちに、感情への関心そのものが薄れていく(タイプ3)。

タイプ3の土台になるのは、自己肯定感の「6つの感」のうちの自己信頼感です。根拠はなくても「なんとなく、このやり方は危ない気がする」という感覚を、価値のないものとして切り捨てずに信じてあげる力です。木のたとえでいえば「葉」にあたり、光を受けて木全体に栄養を届けます。違和感を口にできる管理職は、チームにとっての早期警報装置でもあります。

通勤中・会議の合間にできる4つのワーク

ここからは、管理職の1日の流れに合わせて組み立てたワークを紹介します。どれも本の第4章で紹介しているワークを、オフィスの場面向けに置き換えたものです。全部やる必要はありません。1つだけ選んで、まず1週間続けてみてください。

管理職の1日に「内側を見る時間」を差し込む 合計しても1日5分前後。新しい時間はつくらず、すき間に置く 朝の通勤 1on1・相談 会議の合間 帰り道 感情タイムアウト アラームで 「今、どんな気分?」 3秒×1日3回 5秒ルール 解決策の前に 相手の感情を想像 5秒 3段階温度計 ちょっと・そこそこ ・すごく 1分 感情だけ日記 出来事は書かず 感じたことだけ 2分 「よくわからない」「何も感じない」も、立派な答えとして記録してよい
▲ 管理職の1日の流れに、短いワークを差し込む例です。朝の通勤、部下との対話、会議の合間、帰り道。どれも新しく時間をつくる必要はなく、すでにある「すき間」を使います。
ワーク1|3秒×3回
感情タイムアウト|通勤電車・昼・帰りの改札で

スマホのアラームを1日3回セットします。おすすめは、朝の電車に乗った直後、昼食のあと、夕方に会社を出る時刻です。鳴ったら3秒だけ「今、どんな気分?」と自分に問いかけます。答えは「よくわからない」でもかまいません。本では、自律神経の理論であるポリヴェーガル理論にふれながら、外の世界に対処する「効率モード」に偏りがちな人が、意識を内側に向けることで「安全モード」を少しずつ働かせていく練習だと説明しています。「意識したときにやる」では、忙しい人ほど続きません。アラームで外側からきっかけをつくるのがポイントです。

ワーク2|5秒
5秒ルール|1on1や相談の場で

部下から相談を受けたとき、解決策が頭に浮かんでも5秒だけ待ちます。その間に「この人は今、何を感じているのだろう」と一度だけ心の中で問いかけます。答えが出なくてもかまいません。タカシさんが最初に取り組んだのが、このワークでした。相手の内面を想像する練習を重ねるうちに、自分の内面にも目が向くようになっていきます。

ワーク3|1分
3段階温度計|会議を出てエレベーターを待つ間に

緊張する会議や、難しい交渉のあと、感じたことに「ちょっと・そこそこ・すごく」の3段階で強さをつけます。「部長の一言に、そこそこムカついた」「あの数字には、ちょっと焦った」。感情に名前をつけると脳の扁桃体の活動が下がるという研究(Lieberman et al., 2007)があり、強さまで区別すると、さらに感情の解像度が上がります。次の会議に、前の会議の感情を持ち越しにくくなります。

ワーク4|2分
感情だけ日記|帰りの電車でスマホのメモに

1日の終わりに、出来事ではなく「今日感じたこと」だけをメモします。「午前は焦り。午後は少しほっとした。最後の電話でどっと疲れた」。管理職の方は日報のように出来事を並べがちですが、あえて出来事を書かないのがコツです。感情を書き出すことの効果は、心理学者ペネベーカー(Pennebaker)らの研究でも示されていますが、本では、出来事だけを書いても効果はなく、感情の記述があってはじめて効果が出ると説明しています。「何も感じなかった」と書く日があっても大丈夫です。それも内側を見た証拠です。

感情を取り戻すのに、長い休みはいらない。
3秒、5秒、1分、2分。
すき間に置いた問いかけが、回路を戻していく。

上司と部下に「感情つきの報告」をする言葉の型

自分の感情に少し気づけるようになったら、次はそれを短い言葉で周りに伝える段階です。管理職の方がよく心配されるのは「感情を出したら評価が下がるのでは」「部下に弱いところを見せたら頼りなく思われるのでは」ということです。

本では、感情と思考を切り分けずに、合わせて伝えることをすすめています。事実と判断に、感情を一言だけ添える。それだけで相手は「この人は今、こういう状態なんだ」と理解でき、信頼が生まれるのです。泣き言を言うのとは違います。状況を正確に伝えるための、もう一つの情報です。

場面事実だけの報告感情つきの報告
上司へ(目標の上積み)「承知しました。調整します」「承知しました。正直、今の人員では不安があります。どこを優先するか、一度相談させてください」
上司へ(トラブル報告)「A社の件、納期が遅れます」「A社の件で納期が遅れます。私も焦っていますが、対策は2案あります」
部下へ(方針の伝達)「上の決定なので、来月からこれでいきます」「急な変更で、私も戸惑いました。みんなの負担も心配なので、困りごとは早めに聞かせてください」
部下へ(成果への反応)「了解。次もこの調子で」「この結果は、素直にうれしいです。ありがとう」

管理職が感情を一言添えると、チームにも「ここでは感情を言っていい」という合図が伝わります。部下から「不安です」「困っています」が早く上がってくるようになり、結果として問題の発見も早くなります。部下の育成の視点からさらに詳しく知りたい方は、感情を言葉にできない部下の育て方|4タイプ別・感情迷子さんの人材育成もあわせてお読みください。

まず「うれしい」から始める

いきなり不安や怒りを言葉にするのは、ハードルが高いものです。最初は「うれしい」「助かった」「ほっとした」といった、ポジティブな感情から言葉にしてみてください。ポジティブな感情を言葉にする練習は、評価のリスクがなく、チームの雰囲気もよくします。慣れてきたら「ちょっと不安」「少し焦っている」のように、強さを小さくつけて否定的な感情も伝えていきます。

管理職が一人で抱え込まないための相談先

管理職の方は、相談される側に立つことに慣れていて、自分が相談する側に回ることに強い抵抗を感じやすいものです。けれど、感情を言葉にする力は、聞いてくれる相手がいてこそ育ちます。社内外に、次のような「話せる場所」を一つずつ持っておくことをおすすめします。

  • 産業医・保健師などの産業保健スタッフ(体調の相談から入ってもよい)
  • 会社が契約している従業員支援プログラム(EAP)などの外部相談窓口
  • 利害関係のない社外の友人や、他部署・他社の同年代の管理職
  • 家族やパートナー(解決策ではなく「聞いてほしい」と最初に伝える)
  • 心理カウンセラーなどの専門家

相談するとき、上手に話す必要はありません。「うまく言えないけど、最近ずっとモヤモヤしている」という途中の言葉で十分です。感情は、受け止めてくれる人がいることで、だんだん輪郭を持つようになります。

また、眠れない日が続く、朝起き上がれない、食欲が大きく変わった、仕事に行こうとすると体が動かない、といった状態が2週間以上続くときは、我慢せずに医療機関を受診してください。会社の人事や産業保健スタッフがどのような視点で社員を見ているかは、「ストレスはありません」と答える社員をどう見るか|人事・産業保健のためのアレキシサイミア入門で解説しています。

中島輝より一言

管理職の方とお話ししていると、「自分が倒れたら、チームが回らない」という言葉をよく聞きます。その責任感は本物です。だからこそお伝えしたいのは、あなたが自分の感情を大切にすることは、チームを大切にすることと矛盾しないということです。上司が「今日は少し疲れたから早めに帰る」と言える職場では、部下も無理をせずにすみます。あなたの一言が、チームの働き方の手本になります。

よくあるご質問

管理職が感情を口にすると、頼りなく見られませんか?
感情をそのままぶつけることと、感情を一言添えて状況を伝えることは違います。「不安があるので相談したい」「焦っているが対策はある」という伝え方は、むしろ状況を正確に共有する力として受け取られます。最初はポジティブな感情から言葉にすると、抵抗が少なくなります。
「何も感じない」のは、ストレスに強くなったということではないのですか?
ストレスへの耐性がついた場合は、感情は感じながらも落ち着いて対処できます。一方、感情そのものを感じなくなっている場合は、心が自分を守るために感情の回路を絞っている可能性があります。喜びや楽しさまで薄くなっているなら、後者を疑ってみてください。
忙しくて、ワークを続ける時間がありません。
感情タイムアウトは3秒、5秒ルールは5秒です。新しい時間をつくるのではなく、通勤や会議の合間など、すでにあるすき間に置いてください。アラームを使うと、忙しい日でも自然にきっかけが生まれます。まずは1つを1週間続けることを目標にしてみてください。
部下にも感情迷子さんがいそうです。管理職としてどう関わればいいですか?
「どう思う?」と答えを急がせるより、「それは焦ったよね」「ちょっと困ったかな」と、こちらが感じたことを言葉にして差し出すと、部下も答えやすくなります。その前提として、まず管理職自身が感情を一言添えて話す手本を見せることが、いちばんの近道です。
どのような状態になったら、医療機関に相談すべきですか?
眠れない、朝起きられない、食欲が大きく変わった、気分の落ち込みや「何も感じない」状態が2週間以上続く、といったときは、心療内科や精神科、産業医に相談してください。この記事は一般的な情報で、医学的な診断の代わりにはなりません。
上と下の感情を受け止めてきたあなたへ。
今度は、自分の感情を受け止める番です。
今日の帰り道、3秒だけ「今、どんな気分?」と。
管理職の一言が変わると、チームの空気が変わります。

自分を大切にしよう

部下と上司の板挟みの中で「何も感じない」と思うとき、それは心が弱いからではありません。上からの方針と下からの声を受け取り、言い換え続けるうちに、自分の感情の居場所がわからなくなっているのです。感情のボリュームは不快なものだけを選んで下げることができないため、喜びや手応えまで薄くなり、やがて「何のために働いているのか」という虚無感として表に出てきます。

部下の話は聞くのに、自分の話は誰にもしていない。肩こりや眠りの浅さ、家での無口は、言葉にならなかった感情が体と行動に出ているサインかもしれません。「感情はノイズ」と考えていたタカシさんも、相手の感情を想像するところから始め、半年後には「つらかったね」と言えるようになり、自分自身も「スッとする」感覚を取り戻していきました。

感情タイムアウト、5秒ルール、3段階温度計、感情だけ日記。どれも数秒から数分で始められます。そして上司にも部下にも、事実に感情を一言添えて伝えてみてください。チームのために走り続けてきたあなたこそ、自分を大切にしよう。あなたの感情は、チームを動かすための、まだ使われていない大切な情報です。

本記事の参考資料・科学的根拠

  • 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)原稿
  • 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料
  • Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation: Alexithymia in Medical and Psychiatric Illness. Cambridge University Press.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
  • A.N.シン「心身症とアレキシサイミア(失感情症)」永田勝太郎ほか訳、『心身症の診断と治療』所収(1次性/2次性アレキシサイミア)
  • Lieberman, M.D. et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421-428.
  • Pennebaker, J.W., & Chung, C.K. (2007). Expressive writing, emotional upheavals, and health.
  • Porges, S.W.(ポリヴェーガル理論)
  • Gallup「State of the Global Workplace」
監修|中島 輝
心理カウンセラー・自己肯定感アカデミー会長・「6つの感」理論創始者
著書累計77万部・15,000人臨床・回復率95%
本記事は心理学的知見に基づく一般情報です。医学的診断や治療の代わりにはなりません。心身に不調を感じる場合は、医療機関・専門家へのご相談をおすすめします。

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