「何も困っていません」と言う子の面談で
スクールカウンセラーのための感情の言語化
担任に勧められて相談室に来た中学2年生。椅子に浅く座り、「別に、何も困っていません」と言ったきり、視線は窓の外。50分の枠のうち、話せたのは部活の練習時間のことだけ。記録には「主訴なし」と書くしかない――。「何も困っていません」は、困りごとがないという報告ではなく、困りごとを言葉にする回路がまだ開いていないという報告であることが少なくありません。この記事では、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、学校の相談担当の皆さんに向けて、言葉にならない子との面談を「話させる」から「言葉が生まれる場をつくる」へ変える視点と技法を整理します。
「何も困っていません」は、面談の終わりではなく始まり
何も困ってないです」
学校の相談室には、自分から「話を聞いてほしい」とやって来る子ばかりではありません。担任や養護教諭、保護者に勧められて来る子、不登校や行き渋り、体の不調をきっかけにつながる子。そうした子の中には、そもそも自分の困りごとを「困りごと」として認識できていない子が少なくありません。
自分の感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態を、心理学ではアレキシサイミア(失感情症)と呼びます(概要はアレキシサイミア(失感情症)とは|感情に名前がつけられない人の特徴・原因・回復のヒント)。一般人口の約10〜16%に強い傾向が見られる特性で、DSM-5やICD-11の独立した診断名ではありません。また、強いストレスや喪失、トラウマ体験のあとに一時的に感情が平板になる「2次性アレキシサイミア」もあります。学校の相談で出会う「話せない子」の中には、もともとの特性としてこの傾向が強い子と、今まさに心がシャットダウンしている子の両方がいます。
いずれの場合も、面談の目標を「困りごとを話してもらう」に置くと、子どもも相談担当者も行き詰まります。目標を「感情が言葉になる手前の段階を一緒に歩く」に置き直すことが、この記事の出発点です。中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』では、感情をうまく認識・表現しにくくなっている状態を「感情迷子さん」と呼んでいます。迷子という言葉には、帰る場所があるという前提が含まれています。相談室は、その帰り道を一緒に探す場所です。
数字で見る学校相談の現場|SC・SSW配置の歴史と子どもを取り巻く状況
学校における心理・福祉の専門職の配置は、この30年ほどで大きく広がってきました。同時に、子どもを取り巻く状況は厳しさを増しています。
| データ・制度 | 内容 |
|---|---|
| スクールカウンセラー(SC) | 1995年度、文部省(当時)の「スクールカウンセラー活用調査研究委託事業」として配置が始まった。 |
| スクールソーシャルワーカー(SSW) | 2008年度に「スクールソーシャルワーカー活用事業」が始まり、家庭や地域、関係機関とつなぐ役割を担うようになった。 |
| 不登校 (文部科学省、令和5年度調査) | 小中学校の不登校は約34万6千人で過去最多。 |
| いじめの認知件数 (同調査、令和5年度) | 約73万2千件で過去最多。 |
| 子どもの自殺 (厚生労働省・警察庁の統計) | 小中高生の自殺者数は2024年に500人を超え、過去最多の水準。 |
| 感情ラベリング (Lieberman et al., 2007) | 気持ちに言葉で名前をつけると、扁桃体の活動が下がる。言語化そのものに情動調整の働きがある。 |
数字の背後には、つらさを言葉にできないまま、行き渋りや体の不調、対人トラブルとして表に出している子どもたちがいます。つらさを言葉にしにくい子は、SOSが周りに届きにくい。だからこそ、学校の中に「言葉にならない気持ちを扱える専門職」がいることの意味は大きいのです。
「困っていない」と言う子ほど、
困りごとが言葉になっていないことがある。
相談室は、言葉が生まれる手前から関われる場所。
TAS-20の3因子を「見立て」に使う|診断ではなく関わりの地図として
アレキシサイミアの評価では、トロント・アレキシサイミア尺度(TAS-20、Bagby, Parker & Taylor, 1994)が国際的に広く使われています。20項目の自己記入式尺度で、合計61点以上がアレキシサイミア傾向の目安とされています。
ただし、学校の相談場面で子どもにTAS-20を実施して点数をつけることは、この記事ではおすすめしません。もともと成人を中心に開発・検証されてきた尺度であること、そして何より、学校での面談の目的は「判定」ではなく「関わり方を考えること」だからです。そこで提案したいのは、TAS-20の3つの因子を、面談中の観察の「レンズ」として使う方法です。
| 因子 | 面談で見られやすい様子 | 関わりの方向 |
|---|---|---|
| DIF 感情を見分ける難しさ | 「頭が痛い」「だるい」など体の訴えが中心。気持ちを聞くと「わからない」。急に涙が出て本人が驚く | 体の感覚から入る。感覚と感情をつなぐ言葉を一緒に探す |
| DDF 感情を伝える難しさ | 何か感じている様子はあるが「別に」「普通」「うざい」で終わる。言いかけて止める | 言葉以外の表現手段を用意する。選ぶ・指さす・描くで伝えられる場をつくる |
| EOT 外側に向いた思考 | 出来事や事実、部活の記録、ゲームの話は詳しい。「どう感じた?」には答えにくい | 本人が話しやすい出来事の話から入り、出来事の中の「心が動いた瞬間」に少しずつ光を当てる |
この3因子は、中島輝の近刊で示している4タイプ(タイプ1「感情がわからない」、タイプ2「感情を説明できない」、タイプ3「感情に興味がない」、タイプ4「想像できない」)の最初の3つとも対応しています。タイプ4(想像や空想の少なさ)はTAS-20では測られていませんが、「もし〜だったら」という問いに答えにくい子として面談で気づかれることがあります。
見立ての注意点
- 見立ては仮説であり、子どもに「アレキシサイミア」というラベルを貼るためのものではない
- 発達特性(ASDなど)、抑うつ、トラウマ反応、家庭環境の影響との重なりを常に考える(必要に応じて医療機関と連携)
- 「話せない」のか「話さないことを選んでいる」のかを、急いで決めつけない
- 本人が安心できていない場面での観察は、本来の姿を反映していないことがある
アレキシサイミアと自閉スペクトラム症(ASD)は別の概念ですが、重なりが多いことが知られています。見立てはあくまで「この子にはどの入口が合いそうか」を考えるための地図として使い、診断的な判断は医療機関に委ねるという線引きを大切にしてください。
言葉以外の入口|描画・スケーリング・選択肢カード
感情を言葉にすることが難しい子との面談では、いきなり言葉を求めないことが鍵になります。言葉の手前にある「体」「色」「数」「選択」を入口にすると、子どもは自分の内側に目を向けやすくなります。
描画|「上手に描く」ではなく「今を置く」
白い紙と色鉛筆を用意し、「今の気分を、色や線だけで描いてみて」と伝えます。形にしなくてかまいません。ぐるぐるの線、塗りつぶし、何も描かないことも、表現の一つです。描き終わったら、解釈を伝えるのではなく、「この色は、どんな感じ?」「ここだけ濃いね」と、本人の言葉を待つ問いかけをします。原稿のワーク「色彩感情カレンダー」を、面談ごとに1枚ずつ積み重ねる形にすると、子ども自身が自分の変化を目で見られるようになります。
スケーリング|「数」なら言える子は多い
解決志向ブリーフセラピーで知られるスケーリング・クエスチョンは、感情を言葉にしにくい子にとって有効な入口です。「今日の学校のしんどさを0〜10で言うと?」「先週と比べて、上がった?下がった?」。数字で答えることは、感情を見分けることの手前の、大切な一歩です。
数字が出てきたら、「3じゃなくて4なのは、何があるから?」と、少しだけ中身に近づきます。原稿のワーク「3段階温度計」(ぬるい・あたたかい・あつい)のように段階を減らすと、低学年や言葉の少ない子にも使いやすくなります。
選択肢カード|「選ぶ」は「話す」より負担が少ない
「うれしい」「くやしい」「さみしい」「こわい」「はずかしい」「イライラ」「ほっとした」「もやもや」「わからない」など、気持ちのことばを書いたカードを机に並べます。「今日の自分に近いものを、いくつでも選んでいいよ」と伝えると、口では「別に」と言っていた子が、黙って3枚選ぶことがあります。
カードには必ず「わからない」「言いたくない」も入れておいてください。それを選べることが、子どもにとっての安心になり、「選んでも責められない場所」だという信頼につながります。
感情の粒度を育てる面談の進め方
心理学者リサ・フェルドマン・バレットは、感情を細かく言い分ける力を「感情の粒度(emotional granularity)」と呼びました。感情を細かく言い分けられる人ほど、ストレス時に過度な飲酒や攻撃的な行動に走りにくいという研究があります。思春期の子どもの「うざい」「だるい」「やばい」は、粒度の粗い感情語の代表です。
面談で粒度を育てるときは、否定せずに、一段だけ細かくするのがポイントです。
「うざい」をそのまま受けとる
「うざい、って感じたんだね」と、本人の言葉をそのまま返します。言葉づかいを直したくなっても、ここでは直しません。その言葉が、今の本人にとっての精一杯の感情語です。
「うざいの中に、どんなのが混ざってる?」
「イラッとする感じ?それとも、放っておいてほしい感じ?ちょっと傷ついた感じもある?」と、2〜3個の候補を差し出します。候補を出すのは相談担当者、選ぶのは本人。この役割分担が、DDFの強い子の負担を減らします。
「その感じのとき、体はどうなってる?」
選んだ感情と体の感覚をつなぎます。「放っておいてほしいときは、肩がかたくなる」。DIFの強い子にとって、体の感覚と感情語が結びつく経験は、次に同じ感覚が来たときの手がかりになります。
面談の最後に「今日見つけた言葉」を一つ
「今日は『ちょっと傷ついた』っていう言葉が見つかったね」と、面談で生まれた言葉を一つだけ確認して終わります。原稿のワーク「感情ことば帳」を本人用に用意し、見つかった言葉を書きためていくのもよい方法です。
EOTの強い子には、本人が詳しく話せるゲームや部活、好きなアニメの話から入るのが有効です。「そのキャラクター、そのとき、どんな気持ちだったと思う?」と、登場人物の気持ちを想像する問いは、自分の気持ちを直接聞かれるより負担が少なく、心の状態を想像する力(メンタライゼーション)を育てる入口になります。原稿にも、対戦ゲームで世界トップクラスの腕を持つ不登校の高校生が、アニメの登場人物について「このキャラなら泣くよね」と語れたところから変化が始まった事例があります。
アドラー心理学|「話さない」の目的を見る、勇気づけで関わる
私はアドラー心理学をベースにカウンセリングを行ってきました。オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラー(1870〜1937)の考え方は、話さない子との面談に、別の角度からの見立てをもたらしてくれます。
目的論|「なぜ話さないのか」より「話さないことで何を守っているのか」
アドラー心理学の目的論では、人の行動や感情は、過去の原因によって決まるのではなく、本人なりの目的のために使われていると考えます。この視点で「話さない」を見ると、問いが変わります。「なぜこの子は話せないのか」から、「話さないことで、この子は何を守っているのか」へ。
| 「話さない」が守っているかもしれないもの | 面談での配慮 |
|---|---|
| 話したことが担任や親に伝わるのではないかという不安から、自分の安全を守っている | 守秘の範囲と例外を、最初にわかりやすく説明する |
| 言葉にすると気持ちがあふれそうで、崩れないことを守っている | 深い話に急がず、体や数の話で「安全な距離」を保つ |
| 家族や友だちを悪く言いたくなくて、大切な人との関係を守っている | 「誰かを責めなくても、あなたの気持ちは話していい」と伝える |
| 大人に勧められて来た場で、自分で決める感覚を守っている | 「今日は話さなくてもいい」と選択肢を返す |
目的論は、子どもの「話さない」を責めるための考え方ではありません。むしろ、「話さない」にも、本人なりの理由と知恵があると尊重するための考え方です。目的が見えてくると、その目的を別の方法で満たせる関わりを考えられるようになります。
勇気づけ|「話せたこと」より「ここに来たこと」
アドラー心理学の勇気づけは、上から評価する「ほめる・叱る」ではなく、横の関係から相手の存在や過程に目を向けて伝える関わりです。話せない子との面談では、話せた内容ではなく、ここに来たこと、座っていたこと、カードを1枚選んだことに目を向けます。
「今日は来てくれてありがとう」「カードを選んでくれて、あなたのことが少しわかってうれしい」。こうした言葉は、子どもに「話さなければ価値がない」というメッセージを送りません。「ここにいていい」と感じられることが、言葉が生まれる土台になります。
教員・保護者との連携と守秘|言葉にならないSOSをチームで受けとめる
学校の相談担当者は、子どもとの信頼関係を守りながら、教員や保護者、関係機関と連携するという、難しい役割を担っています。とくに感情を言葉にしにくい子の場合、本人が言葉にできないぶん、周りの大人の観察を持ち寄ることが重要になります。
連携で共有したい「言葉以外のサイン」
- 保健室への来室の頻度と時間帯(特定の授業や曜日に偏っていないか)
- 体の訴えの内容と変化(頭痛、腹痛、眠れない、食欲の変化)
- 表情や身なりの変化、持ち物の乱れ
- 友人関係の変化、休み時間の過ごし方
- 作文や提出物、絵の中にあらわれる表現
教員と共有するときは、面談で本人が話した内容そのものではなく、「関わりのヒント」として伝える工夫が役立ちます。たとえば「数字で聞くと答えやすいようです」「体の調子から聞くと話が広がります」。これなら守秘を守りながら、担任が日常で同じ入口を使えるようになります。守秘の範囲は、学校のチーム支援の方針(チーム内守秘の考え方など)に沿い、本人にもあらかじめ説明しておきましょう。
命に関わるサインがあるとき
感情を言葉にしにくい子は、つらさがSOSとして周りに届きにくく、限界まで抱えこんでしまうことがあります。「消えたい」「いなくなりたい」といった言葉や、それに近い表現、描画や作文の中のサインに気づいたときは、それを「つらさを伝えるSOS」として真剣に受けとめ、ひとりで抱えずに学校の危機対応の体制につなぐことが最優先です。
このとき大切なのは、守秘よりも本人の安全を優先すること、そしてそのことを本人に誠実に伝えることです。「あなたを守るために、ほかの先生にも力を借りたい」。助けを求めることは弱さではないと、相談担当者自身が態度で示すことが、子どもにとっての大きなメッセージになります。子どもの自殺予防と感情の言語化については、「つらい」と言えない子どもを守る|感情の言語化と自殺予防のために大人ができることでくわしく扱っています。
子どもと大人が使える相談先
24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310(文部科学省)
チャイルドライン 0120-99-7777(18歳まで)
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
よりそいホットライン 0120-279-338(24時間)
いのちSOS 0120-061-338
SNSで相談したいときは、厚生労働省「まもろうよ こころ」(https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/)で相談先を探せます。
命の危険が迫っているときは、迷わず119番・110番へ。
保護者との面談で
保護者もまた、子どもの気持ちがわからずに不安を抱えています。「家では何も話さないんです」という保護者には、「話さない」ことを問題として扱うのではなく、家でも使える小さな入口を一緒に考える姿勢が役立ちます。「夕食のときに、今日の気分を天気で言ってみる」「車の中など、目を合わせなくていい場面で話しかける」。保護者が子どもの気持ちに名前をつけて返す関わりを続けられるよう、支える側に回ることもSC・SSWの大切な役割です。
養護教諭との連携については、保健室を入口にした関わりを扱った保健室の記事も参考になります。
6つの感と、相談担当者自身のスーパービジョン
私が提唱している自己肯定感の「6つの感」は、心を1本の木にたとえています。根が自尊心≒自己存在感、幹が自己受容感、枝が自己効力感、葉が自己信頼感、花が自己決定感、実が自己有用感です。
子どもの木|面談で育つのは「根」と「幹」
話せない子との面談で最初に育つのは、根の自尊心≒自己存在感です。「話さなくても、ここにいていい」という体験は、存在そのものを認められる体験です。その上で、カードを選び、数字で答え、少しずつ気持ちの言葉を見つけていく過程で、幹の自己受容感、つまり「こんな気持ちを持っている自分もOK」という感覚が育っていきます。
また、「今日は話さない」「このカードを選ぶ」と自分で選べる経験は、花の自己決定感を育てます。大人に勧められて来た相談室で、自分で選べる余地があること。それが、子どもの主体性を取り戻す小さな一歩になります。
相談担当者の木|「何もできなかった」という感覚を言葉にする
一方で、話せない子との面談は、相談担当者にとっても負担の大きいものです。50分間ほとんど言葉が出なかった面談のあと、「自分は何もできなかった」「専門職として力不足だ」という感覚が残ることがあります。週に1〜2日、複数校を掛け持ちする勤務形態では、同じ立場の同僚と気持ちを分かち合う機会も限られます。
この「何もできなかった」という感覚は、放っておくと自己効力感(枝)を細らせます。そして、相談担当者自身が自分の感情に気づきにくくなると、子どもの言葉にならない気持ちを受けとめる感度も下がっていきます。
「子どもの様子」「自分の体」「自分の気持ち」
記録とは別に、面談のあと自分用に3行だけ書きます。「ずっと窓を見ていた」「自分の肩に力が入っていた」「焦り、少し無力感」。自分の反応を言葉にしておくことは、逆転移に気づく手がかりにもなります。
ケースで動いた自分の感情も扱う
スーパービジョンやケース検討の場では、技法や見立てだけでなく、「このケースで自分が何を感じているか」も言葉にしてみてください。言葉にならない子に向き合うとき、相談担当者自身の感情の言語化が、いちばんの支えになります。
「話せた量」ではなく「入口の変化」を見る
先月は数字しか言わなかった子が、今月はカードを2枚選んだ。変化の物差しを「言葉の量」から「入口の広がり」に変えると、見えにくかった成果が見えてきます。それが、相談担当者自身の自己有用感(実)を守ります。
中島輝より一言
私は5歳のとき、育ててくれていた里親が夜逃げをして、それ以来、気持ちを外に出すのをやめてしまいました。小学生の頃、教室で理由もなく涙が流れてきたことがあります。先生に「どうしたの?」と聞かれても、何も答えられませんでした。本当に、自分でもわからなかったのです。あのときの私に必要だったのは、理由を聞かれることではなく、「わからなくてもいいよ」と隣にいてもらうことでした。「何も困っていません」と言う子の前で、言葉を待ちながら座っていてくださる皆さんの時間は、決してむだではありません。
よくあるご質問
話させるのではなく、言葉が生まれる場をつくる。
体、色、数、選択。入口はいくつもある。
少しずつ言葉が生まれていきます。
自分を大切にしよう
「何も困っていません」と言う子の多くは、困りごとがないのではなく、困りごとを言葉にする回路がまだ開いていない状態にあります。もともとの特性としてアレキシサイミア傾向が強い子もいれば、強いストレスで一時的に感情がシャットダウンしている子もいます。不登校、いじめ、子どもの自殺がいずれも過去最多の水準にある今、つらさを言葉にしにくい子のSOSは、周りに届きにくくなっています。
TAS-20の3因子は、診断のためではなく、観察のレンズとして使うことで、その子に合った入口を考える地図になります。描画、スケーリング、選択肢カードといった言葉以外の入口から始め、感情の粒度を一段ずつ細かくしていく。アドラー心理学の目的論は「話さない」にも本人なりの目的と知恵があることを教え、勇気づけは「ここにいていい」という土台を育てます。教員や保護者とは関わりのヒントを共有し、命に関わるサインがあるときは本人の安全を最優先にチームで受けとめます。
そして、言葉にならない子に向き合い続ける相談担当者の皆さん自身も、感情の言語化を必要としています。面談後の3行メモ、スーパービジョン、小さな変化の記録。自分を大切にしよう。あなたが自分の気持ちに名前をつけられることが、子どもの気持ちに名前が生まれるのを待てる力になります。
ひとりで抱えこまないでください
24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310(文部科学省)
チャイルドライン 0120-99-7777(18歳まで)
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
よりそいホットライン 0120-279-338(24時間)
いのちSOS 0120-061-338
厚生労働省「まもろうよ こころ」(https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/)でSNS相談先を探せます。
命の危険が迫っているときは、迷わず119番・110番へ。
本記事の参考資料・科学的根拠
- 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)
- Bagby, R.M., Parker, J.D.A., & Taylor, G.J. (1994). The twenty-item Toronto Alexithymia Scale (TAS-20).
- Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation: Alexithymia in Medical and Psychiatric Illness. Cambridge University Press.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
- Lane, R.D., & Schwartz, G.E. (1987). Levels of emotional awareness. American Journal of Psychiatry, 144, 133-143.
- Lieberman, M.D. et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421-428.
- リサ・フェルドマン・バレット『情動はこうしてつくられる―脳の隠れた働きと構成主義的情動理論』(高橋洋訳、紀伊國屋書店)
- 文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(令和5年度)
- 厚生労働省・警察庁「自殺の状況」
- 文部科学省「スクールカウンセラー活用調査研究委託事業」(1995年度〜)、「スクールソーシャルワーカー活用事業」(2008年度〜)
- アルフレッド・アドラー『人生の意味の心理学』(岸見一郎訳、アルテ)
- 岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気―自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社)
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」
- 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料

自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。







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