理由のわからないイライラに悩む10代へ|思春期の脳と感情の言語化

理由のわからないイライラに悩む10代へ|思春期の脳と感情の言語化

理由のわからないイライラに悩む10代へ
思春期の脳と感情の言語化

朝、親に「早くしなさい」と言われただけで、ドアを強く閉めてしまった。友だちのLINEの一言が、なぜか一日じゅう頭から離れない。自分でも「なんでこんなにイライラしてるんだろう」とわからなくて、そんな自分がまた嫌になる。もし今、そう感じているなら、知っておいてほしいことがあります。思春期のイライラは、脳が大人へと作りかわっている途中に起きる、ごく自然な成長のサインだということです。そして、イライラの下には、まだ名前のついていない別の気持ちが隠れていることがよくあります。この記事の前半は10代のあなたに、後半はおうちの方に向けて書きました。

中島 輝(中島輝)
心理カウンセラー/自己肯定感アカデミー会長/「6つの感」理論創始者/著書累計77万部/15,000人臨床/『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる自己肯定感の教科書』(SBクリエイティブ・累計32刷)『働く人のための自己肯定感』著者

理由もないのにイライラするのは、あなただけじゃない

よくある相談の典型例
「別に何もされてないのに、
全部がうざく感じるんです」
場面中学2年生。家に帰ると、親の「おかえり」の声にさえイラッとする。部活の後輩の態度や、先生のちょっとした言い方も気になってしかたない。夜になると「今日も言いすぎた」と落ち込むけれど、次の日もまた同じことをくり返してしまう。
この人は、性格が悪いわけでも、心が弱いわけでもありません。心の中でいろいろな気持ちが同時に動いているのに、それを見分ける言葉がまだ追いついていないのです。言葉にならない気持ちは、まとめて「イライラ」という一つの箱に入れられてしまいます。

10代のころは、毎日がめまぐるしく変わります。勉強、部活、友だち、SNS、進路、体の変化。そのどれもが、心をゆさぶります。気持ちが動く回数はものすごく多いのに、「この気持ちは何なのか」を一つずつ確かめる時間も、言葉も、まだ足りていない。だから、全部がまとめて「なんかムカつく」「うざい」になってしまうのです。

自分の気持ちに気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態を、心理学ではアレキシサイミア(失感情症)と呼びます。むずかしい名前ですが、「気持ちがない」という意味ではありません。気持ちはちゃんとあるのに、名前をつけるところで迷っている状態です。くわしくは大人向けの記事アレキシサイミア(失感情症)とは|感情に名前がつけられない人の特徴・原因・回復のヒントにまとめています。

私はこの状態を「感情迷子さん」と呼んでいます。中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』で使っている言葉です。迷子という言葉には、帰る場所があるという意味がふくまれています。あなたの気持ちは、なくなったのではなく、少し道に迷っているだけです。

中島輝より一言

私は小学生のころ、理由もわからないまま涙が流れてくることがありました。悲しいのか、悔しいのか、自分でもわからない。幼いころに里親との別れを経験して、気持ちを出すのをやめてしまっていたからだと、ずっとあとになって気づきました。だから、「理由がわからない」こと自体を責めないでほしいのです。理由がわからない気持ちにも、ちゃんと理由があります。それを一緒に探していけばいいのです。

イライラは「成長中の脳」のサイン|思春期の脳の二重システム

思春期のイライラには、脳の発達のしかたが大きく関わっています。アメリカの脳科学者B.J.ケイシー(Casey)らは、思春期の脳を「二重システム」という考え方で説明しました。

思春期の脳は「アクセル」が先に育つ 二重システムモデル(Casey ら)のイメージ 子ども 思春期(10代) 20代半ば このすき間が イライラや衝動の 出やすさにつながる アクセル(感情の脳) ブレーキ(前頭前野) 感情の脳は早く育ち、ブレーキ役の前頭前野は20代半ばまでゆっくり育つ
▲ 線の形は考え方を示すためのイメージで、実際の測定値ではありません。感情の動きを生む「アクセル」が先に強くなり、気持ちを整理する「ブレーキ」があとから追いつくため、思春期は気持ちが大きくゆれやすくなります。

脳には、気持ちをわき上がらせる「感情の脳」(扁桃体などのしくみ)と、気持ちを整理して行動を選ぶ「考える脳」(おでこの裏側にある前頭前野)があります。思春期には、感情の脳が先にぐんと成熟して、気持ちのアクセルが強くなります。一方、ブレーキ役の前頭前野は、20代半ばまで時間をかけてゆっくり育ち続けると考えられています。

つまり、今のあなたの脳は、アクセルが大きくなったのに、ブレーキの練習中という状態です。ちょっとしたことで気持ちが大きく動くのは、壊れているからではなく、大人の脳へと作りかわっている最中だからなのです。

数字で見る|気持ちに名前をつける科学

研究・データわかっていること
感情ラベリング
(Lieberman et al., 2007)
気持ちに言葉で名前をつけると、扁桃体(感情の警報装置)の活動が下がる。名前をつけること自体が、ブレーキの代わりになる。
感情の粒度
(リサ・フェルドマン・バレットら)
気持ちを細かく言い分けられる人ほど、強いストレスを受けたときに、過度な飲酒や攻撃的な行動に走りにくいという研究がある。
学校での感情の学習
(Durlak et al., 2011)
213の「社会性と情動の学習(SEL)」プログラム、約27万人を分析したところ、学んだ児童生徒は学力も11パーセンタイルポイント向上していた。
アレキシサイミアの割合気持ちを言葉にしにくい傾向が強い人は、一般に約10〜16%(研究による)。決してめずらしいことではない。

ブレーキがまだ育ちきっていなくても、気持ちに名前をつける練習をすれば、その名前がブレーキを助けてくれる。これが、思春期に感情の言語化を学ぶいちばんの意味です。

イライラは、こわれたサインじゃない。
大人の脳へ作りかわっている、
成長のまっ最中のサイン。

イライラの下にある本当の気持ち

イライラや怒りは、氷山の見えている部分のようなものです。水面の下には、もっと大きくて、言葉にしにくい気持ちが隠れていることがよくあります。

イライラの氷山 水面(言葉になっている気持ち) イライラ うざい・ムカつく さみしい わかってほしい 悔しい 負けたくない 恥ずかしい 見られたくない 不安 この先どうなる? 疲れ もう限界かも 水面の下の気持ちに名前がつくと、イライラは小さくなりやすい
▲ 「イライラ」は、さみしさ・悔しさ・恥ずかしさ・不安・疲れなど、名前のつかない気持ちがまとめて外に出てきた形であることが多いのです。

よくある場面と、下にある気持ち

場面表に出た気持ち下にあるかもしれない気持ち
親に「スマホばっかり」と言われたうざい自分のことをわかってもらえないさみしさ
テストの点を友だちと比べられたムカつくがんばったのに届かなかった悔しさ
授業で発言して笑われたイライラみんなの前で失敗した恥ずかしさ
進路の話をされるだるい・ほっといて何をしたいかわからない不安
部活が終わって家に帰った話しかけないで体も心もいっぱいいっぱいの疲れ

表の「下にある気持ち」は、あくまで例です。あなたの気持ちは、あなたにしかわかりません。大事なのは、イライラしたときに「これは、ほかに何かの気持ちがかくれているサインかも」と一度立ち止まってみることです。それだけで、心の中に少しすき間が生まれます。

気持ちの言葉を細かくする|感情の粒度を上げるワーク

心理学者のリサ・フェルドマン・バレット(Barrett)は、気持ちをどれだけ細かく言い分けられるかを「感情の粒度」と呼びました。「ムカつく」の一言しか持っていない人と、「悔しい」「情けない」「がっかり」「見捨てられた感じ」などを使い分けられる人とでは、同じ出来事でも心の受けとめ方が変わってきます。

粒度は、生まれつき決まっているものではありません。言葉を少しずつ増やしていけば、だれでも細かくしていけるものです。ここでは、中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』で紹介しているワークを中心に、10代の毎日に合わせて紹介します。

ワーク1|30秒
今日のオノマトペ

気持ちの名前が出てこないときは、「モヤモヤ」「ザワザワ」「チクチク」「ズーン」のような音の言葉で表してみます。「なんかチクチクする」と言えたら、それはもう立派な言語化の入り口です。

ワーク2|1分
3段階温度計

気持ちが動いたら、「ちょっと・そこそこ・すごく」のどれに当たるかを選びます。「すごくムカつく」と思っていたのが、落ち着いて考えると「そこそこ悔しい」だった、ということはよくあります。強さを分けるだけで、気持ちは少し扱いやすくなります。

ワーク3|30秒
感情ことば帳

スマホのメモに「気持ちのことば」のページをつくり、マンガや音楽の歌詞、友だちの会話で見つけた気持ちの言葉を1日1つメモしていきます。「やるせない」「ほっとした」「拍子抜け」。集めた言葉が、イライラの下の気持ちを探すときの辞書になります。

ワーク4|5秒
言う前に、心の中で名前をつける

きつい言葉が口から出そうになったら、まず心の中で「今、私はイライラしている」と名前をつけます。たった5秒でも、名前をつけるとアクセルが少しゆるみます。言ってしまったあとでもかまいません。「さっきのは、たぶん悔しかったんだ」と、あとから名前をつけるだけでも練習になります。

もっと年下の人向けに、気持ちのことばリストや色で気持ちを表すワークを紹介した気持ちがうまく言えないきみへの記事もあります。弟や妹と一緒に読んでみるのもおすすめです。

アドラー心理学|その怒りは「何のために」出ている?

私はアドラー心理学をベースにカウンセリングを行ってきました。アルフレッド・アドラー(1870〜1937)はオーストリアの精神科医で、人の気持ちや行動には「目的」があると考えました。これを目的論といいます。

ふつう私たちは、「親がうるさいから、イライラする」のように、原因から気持ちを考えます。目的論では、見方を逆にして「このイライラは、何のために出てきているんだろう?」と考えます。

イライラした場面怒りが果たそうとしている目的の例
親に勉強のことを言われて、ドアを強く閉めたこれ以上言われないように、相手を引き下がらせたい
友だちにきつい言い方をしてしまった自分が傷ついたことを、相手にも感じてほしい
先生に反抗的な態度をとったみんなの前で、自分は負けていないと示したい

アドラーの考え方では、怒りは相手を動かしたり、自分を守ったりするための道具として使われることがあります。それ自体は悪いことではありません。ただ、怒りという道具は強すぎて、相手との関係まで傷つけてしまうことが多いのです。

目的に気づけたら、もっと別の道具を使えるようになります。「これ以上言われたくない」が目的なら、ドアを閉める代わりに「今は疲れてるから、あとで話したい」と言葉で伝えることができます。「わかってほしい」が目的なら、怒るより「さみしかった」と言うほうが、ずっと届きやすいのです。

書籍で紹介した事例
「さぁ」「別に」
しか言わなかった男の子
場面『感情迷子さんの本』の「おわりに」に登場する高校生。お母さんに連れられて私のところに来た彼は、何を聞いても「さぁ」「別に」と答えるだけで、表情もほとんどありませんでした。2人で話すうちに、ポツリと強い怒りの言葉を口にしたのです。
私はその怒りを否定せず、「それだけの気持ちがあるんだね」と受けとめました。怒りをいったん受け入れてもらえたことで、彼はその奥にあるほかの気持ちにも少しずつ気づいていきました。長い道のりでしたが、今では人を助ける医療の仕事に就いています。怒りは、閉じこめてきた気持ちが出てくる最初の扉になることがあるのです。

劣等感は成長のバネ|イライラする自分を受け入れる自己受容感

思春期のイライラの裏には、「自分はあの子より劣っている」という劣等感がかくれていることもよくあります。部活でレギュラーになれない、テストの順位、SNSで見るほかの人のキラキラした毎日。比べる材料が、10代のまわりにはあふれています。

劣等感と劣等コンプレックスはちがう

アドラーは、劣等感そのものは悪いものではないと考えました。「もっとうまくなりたい」「あの人みたいになりたい」という気持ちは、人が成長するためのバネになるからです。問題になるのは、劣等感を言い訳にして「どうせ自分なんか」と挑戦をやめてしまう状態で、アドラー心理学ではこれを劣等コンプレックスと呼んで区別しています。

劣等感(成長のバネ)劣等コンプレックス(言い訳)
「悔しい。だから練習を増やそう」「どうせ才能がないから、やってもムダ」
「あの人の話し方、まねしてみたい」「あの人は特別。自分とはちがう」

ここで大切なのが、感情の言語化です。「ムカつく」のままだと、劣等感はただのイライラとして外に出ていきます。けれど「悔しい」「うらやましい」と名前をつけられると、「じゃあ、どうなりたいんだろう」という次の問いが生まれます。名前をつけた劣等感だけが、バネとして使えるのです。

6つの感の「幹」|自己受容感を育てる

私が提唱している自己肯定感の「6つの感」は、心を1本の木にたとえています。根が自尊心≒自己存在感、幹が自己受容感、枝が自己効力感、葉が自己信頼感、花が自己決定感、実が自己有用感です。

イライラしやすい時期に特に大切なのが、幹にあたる自己受容感です。自己受容感とは、いいところも、イヤなところも含めて「これが今の自分」と受け入れられる感覚のことです。「イライラする自分はダメだ」と思うと、イライラにさらに自己嫌悪が重なって、幹がぐらつきます。反対に「今、自分は悔しいんだな。それでいい」と受けとめられると、幹がしっかりして、枝の自己効力感(やればできる感覚)も伸びやすくなります。

イライラしない自分になるより、
「イライラしている自分」に
やさしく名前をつけられる自分へ。

「消えたい」と思うほどつらいときは

イライラや落ちこみが長く続くと、「もう消えてしまいたい」と感じることがあるかもしれません。その気持ちは、あなたが弱いから生まれるのではありません。「それくらいつらい」という心からのSOSです。そして、SOSは、だれかに届けていいものです。

気持ちを言葉にするのが苦手な人ほど、つらさが周りに伝わりにくく、一人で抱えこんでしまいがちです。「うまく説明できない」「こんなことで相談していいのかな」と思っても大丈夫。「なんかしんどい」「うまく言えないけど、つらい」の一言から話し始めてください。助けを求めることは、弱さではありません。

話せる相談先
チャイルドライン 0120-99-7777(18歳まで)
24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310(文部科学省)
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
よりそいホットライン 0120-279-338(24時間)
いのちSOS 0120-061-338
SNSで相談したいときは、厚生労働省「まもろうよ こころ」(https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/)で相談先を探せます。
命の危険が迫っているときは、迷わず119番・110番へ。

電話が苦手なら、家の人、学校の先生、保健室の先生、スクールカウンセラーなど、少しでも話しやすいと思える大人に「話したいことがある」とだけ伝えてみてください。友だちから「消えたい」と打ち明けられたときも、一人で抱えずに信頼できる大人に相談してください。それは裏切りではなく、友だちを守る行動です。

おうちの方へ|反抗期の言葉の裏にあるもの

ここからは、10代の子をもつおうちの方に向けてお伝えします。「うざい」「関係ないでしょ」「ほっといて」。毎日のようにそんな言葉を向けられると、親のほうも傷つき、つい言い返したくなるものです。

けれど、前半でお伝えしたように、思春期の脳はアクセルが先に育ち、ブレーキはまだ練習中です。そして、強い言葉の下には、本人も名前をつけられていない、さみしさや悔しさ、不安がかくれていることがよくあります。反抗期の言葉は、言葉どおりの意味ではなく、「まだ言葉にならない気持ちが、ここにある」というサインとして受けとってみてください。

反抗期の言葉の「翻訳」例

子どもの言葉その奥にあるかもしれない気持ち
「うざい」自分のペースを尊重してほしい/子ども扱いされるのが恥ずかしい
「関係ないでしょ」自分で何とかしたい/心配されると、かえって自信がなくなる
「別に」何か感じているけれど、まだ言葉にならない
「どうせ無理」本当はやりたい。でも失敗するのがこわい

もちろん、翻訳が当たっているかどうかはわかりません。決めつけて「本当はさみしいんでしょ」と言うと、かえって心を閉ざしてしまいます。翻訳は親の心の中で行い、口に出すときは「そうなんだね」と受けとめるだけで十分です。言葉の裏に気持ちがあると思えるだけで、親の側のイライラもずいぶん小さくなるはずです。

子どもの「消えたい」「死にたい」といった言葉への向き合い方は、「つらい」と言えない子どもを守るための記事にくわしくまとめています。少しでも気になる言葉があったときは、ためらわずに学校や専門の相談先とつながってください。

おうちの方へ|聞き方と距離の取り方

聞き方|「なぜ?」より「どんな感じ?」

イライラしている子に「なんで怒ってるの?」と聞くと、子どもは責められているように感じがちです。理由を説明できないから困っているのに、理由を求められると、さらに追いつめられてしまいます。

  • 「なんで?」ではなく「今、どんな感じ?」「ちょっと?すごく?」と聞く
  • 答えがなくても「そっか」で終える。沈黙を埋めようとしない
  • 車の中、料理中など、顔を向き合わせなくていい時間に話しかける
  • アドバイスは、子どもが「どうしたらいい?」と聞いてきたときだけにする
  • 親自身の気持ちも「お母さんは少し心配だった」と短く言葉にして見せる

最後の項目は特に大切です。子どもは、親が自分の気持ちを言葉にする姿を見て、感情の言語化を学びます。親が「怒ってないよ」と言いながら顔が怒っていると、子どもは気持ちと言葉はずれていいものだと学んでしまいます。「今ちょっとイライラしてる。5分休憩させて」と言える親の姿は、何よりの見本になります。

距離の取り方|課題の分離

アドラー心理学には課題の分離という考え方があります。岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』で広く知られるようになった整理で、「その結果を最終的に引き受けるのは誰か」で、それが誰の課題かを見分けます。

子どもの課題親の課題
勉強をするかどうか/友だちとの関係/自分のイライラをどう扱うか子どもの態度を見て生まれた自分の不安やいら立ちをどう扱うか/家庭のルールをどう伝えるか

課題を分けるといっても、放っておくという意味ではありません。子どもの課題には土足で踏みこまず、でも「困ったときはいつでも手伝うよ」と伝えておく。それが、思春期の子との心地よい距離です。勉強をするかどうかは子どもの課題ですが、そのことで親が不安になるのは親の課題です。親が自分の不安を自分で受けとめられると、子どもへの言葉は自然とやわらかくなります。

中島輝より一言

思春期の子をもつ親御さんから、「何を考えているのかまったくわからない」という相談をよく受けます。そのとき私は、「わからないのは、子ども自身も同じかもしれません」とお伝えしています。子どもは、自分でもわからない気持ちを抱えて、精いっぱい毎日を過ごしています。答えを引き出そうとするより、「わからないままでも、ここにいていいよ」と伝え続けること。その安心感が、気持ちに名前がつく日を連れてきてくれます。

よくあるご質問

イライラするのは、私の性格が悪いからですか?
いいえ、ちがいます。思春期は、感情の脳が先に育ち、気持ちを整理する前頭前野があとからゆっくり育つ時期です。気持ちが大きくゆれるのは成長の自然な一部です。性格の問題ではなく、気持ちに名前をつける練習の途中だと考えてみてください。
怒るのは、いけないことですか?
怒りそのものは、大切な気持ちの一つです。「大事なものを守りたい」「わかってほしい」というサインでもあります。いけないのは怒ることではなく、人や物を傷つける形で出してしまうことです。怒りを感じたら、まず心の中で名前をつけ、言葉で伝える方法を一緒に練習していきましょう。
気持ちを書き出そうとしても、何も出てきません。
最初はそれで大丈夫です。「わからない」「モヤモヤ」とだけ書いても、立派な記録です。気持ちの名前が出てこないときは、「肩がかたい」「おなかが重い」のように体の感じを書いてみてください。体の感じは、気持ちの入り口になります。
(おうちの方)反抗期の子に、どこまで口を出していいのでしょうか?
課題の分離の考え方で、「その結果を最終的に引き受けるのは誰か」を目安にしてください。子どもの課題には踏みこみすぎず、家庭のルールや安全に関わることは親の課題として落ち着いて伝えます。ただし、眠れない、食べられない、学校に行けない状態が続く、「消えたい」と口にするなどのときは、迷わず学校や専門家と連携してください。
(おうちの方)子どものイライラに、こちらまでイライラしてしまいます。
自然なことです。親もまた、感情をもつ一人の人間です。「今、私はイライラしている」と心の中で名前をつけ、少し場を離れてから話すだけでも違います。親が自分の気持ちを言葉で扱う姿は、子どもにとって何よりの感情の教科書になります。
イライラは、こわれたサインじゃない。
まだ名前のない気持ちが、ここにあるサイン。
今日の気持ちに、一つだけ名前をつけてみよう。
気持ちの言葉が増えるほど、
あなたの脳のブレーキは、少しずつ強くなっていきます。

自分を大切にしよう

理由のわからないイライラは、性格が悪いからでも、心が弱いからでもありません。思春期の脳は、気持ちのアクセルである感情の脳が先に育ち、ブレーキ役の前頭前野が20代半ばまでゆっくり追いついていく途中にあります。そして、イライラの下には、さみしさ、悔しさ、恥ずかしさ、不安、疲れなど、まだ名前のついていない気持ちがかくれていることがよくあります。気持ちに名前をつけると、それ自体がブレーキの助けになることが、研究でもわかってきました。

アドラー心理学の目的論で「この怒りは何のために出ているんだろう」と考えると、怒りの代わりに使える言葉が見えてきます。劣等感は、名前をつければ成長のバネになります。そして「イライラする自分」もふくめて受けとめる自己受容感が、心の木の幹を太くしてくれます。おうちの方は、反抗期の言葉を翻訳しながら、「なぜ?」より「どんな感じ?」と聞き、課題の分離で心地よい距離を保ってみてください。

気持ちがあふれて苦しいとき、一人でがまんする必要はありません。「なんかしんどい」の一言から、だれかに話していいのです。自分を大切にしよう。イライラしてしまう今日のあなたも、大人へと育っている大切なあなたです。

こまったとき、話せる場所があります
チャイルドライン 0120-99-7777(18歳まで)
24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310(文部科学省)
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
よりそいホットライン 0120-279-338(24時間)
いのちSOS 0120-061-338
厚生労働省「まもろうよ こころ」(https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/)でSNS相談先を探せます。
命の危険が迫っているときは、迷わず119番・110番へ。

本記事の参考資料・科学的根拠

  • 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)
  • Casey, B.J., Jones, R.M., & Hare, T.A. (2008). The adolescent brain. Annals of the New York Academy of Sciences, 1124, 111-126.
  • Lieberman, M.D. et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421-428.
  • Kashdan, T.B., Barrett, L.F., & McKnight, P.E. (2015). Unpacking emotion differentiation. Current Directions in Psychological Science, 24(1), 10-16.
  • Durlak, J.A. et al. (2011). The impact of enhancing students’ social and emotional learning: A meta-analysis of school-based universal interventions. Child Development, 82(1), 405-432.
  • Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation: Alexithymia in Medical and Psychiatric Illness. Cambridge University Press.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
  • アルフレッド・アドラー『人生の意味の心理学』(岸見一郎訳、アルテ)
  • 岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気―自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社)
  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」
  • 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料
監修|中島 輝
心理カウンセラー・自己肯定感アカデミー会長・「6つの感」理論創始者
著書累計77万部・15,000人臨床・回復率95%
本記事は心理学的知見に基づく一般情報です。医学的診断や治療の代わりにはなりません。心身に不調を感じる場合は、医療機関・専門家へのご相談をおすすめします。

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