「楽しかった」しか言わない参加者たち|高齢者サロン・通いの場と感情の言語化

「楽しかった」しか言わない参加者たち|高齢者サロン・通いの場と感情の言語化

「楽しかった」しか言わない参加者たち
高齢者サロン・通いの場と感情の言語化

体操と脳トレ、お茶とおしゃべり。終わりに「今日はどうでしたか」と聞くと、返ってくるのは決まって「楽しかったです」「ありがとうね」。うれしいはずなのに、どこか物足りない。本当に楽しんでもらえているのか、来月も来てくれるのか、わからない――。高齢者サロンや通いの場を運営するボランティアの方から、よくこんなお話を聞きます。「楽しかった」は、本音がない証拠ではありません。言葉にしにくい気持ちを包んでいる、やさしい包み紙のようなものです。この記事では、その包み紙の中身にそっと触れる方法と、運営するあなた自身の気持ちの整え方をお伝えします。

中島 輝(中島輝)
心理カウンセラー/自己肯定感アカデミー会長/「6つの感」理論創始者/著書累計77万部/15,000人臨床/『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる自己肯定感の教科書』(SBクリエイティブ・累計32刷)『働く人のための自己肯定感』著者

結論:「楽しかった」は本音の入口。中身は「問い」でなく「場」で引き出す

最初に結論をお伝えします。参加者が「楽しかった」としか言わないのは、本音がないからでも、運営がうまくいっていないからでもありません。高齢期には、よい感情に目を向けやすくなるという心の特徴があり、さらに「お世話になっている人に悪いことは言えない」という遠慮や、気持ちを言葉にする習慣が少なかった世代の背景が重なっています。

ですから、「本当はどうでしたか」と問いを重ねても、本音はなかなか出てきません。大切なのは、感情を自然に話したくなる「場」と「役割」をつくることです。昔の思い出を語る時間、五感を使う活動、参加者が教える側に回る機会。そうした工夫の中で、「楽しかった」の包み紙が少しずつほどけていきます。

よくあるご相談の典型例
「みんな『楽しかった』と言うけれど、
本当にそうなのか自信がないんです」
場面60代の女性。地域の公民館で月2回、通いの場の運営を担当して5年目。毎回20人ほどが参加し、アンケートの感想欄は「楽しかった」「また来ます」ばかり。ところが、熱心だった80代の女性が、何も言わずに来なくなった。理由を聞きに行くと「ちょっと用事があってね」とだけ。自分たちの何がいけなかったのか、わからずにいる。
この方の中には、参加者を思う気持ちと、「自分の運営が否定されたのでは」という不安、そして「誰も本当のことを言ってくれない」というさみしさがありました。来なくなった女性もまた、膝の痛みや、ほかの参加者との小さな気まずさなど、言葉にしにくい理由を抱えていたのかもしれません。

このように、自分の感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態を、心理学ではアレキシサイミア(失感情症)と呼びます。感情がないのではなく、感情は動いているのに、言葉にたどり着く前に迷子になっている状態です。私はこれを「感情迷子さん」と呼んでいます。中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』の言葉です。全体像はアレキシサイミア(失感情症)とはでくわしく解説しています。

「楽しかった」は、閉じた答えではない。
言葉にしにくい気持ちを包んだ、
やさしい包み紙です。

数字で見る、通いの場と高齢期の心

内閣府『高齢社会白書』によれば、日本の総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は約3割に達しています。こうした中、厚生労働省は介護予防の柱の一つとして、住民が主体となって運営する「通いの場」を推進してきました。体操や趣味活動、会食などを行う通いの場は、全国で10万か所を超えています。社会福祉協議会が支える「ふれあい・いきいきサロン」なども、各地で地域の居場所になっています。

数字・研究で見るわかっていること
約3割
内閣府『高齢社会白書』
総人口に占める65歳以上の割合。地域の居場所を必要とする人は、これからも増えていく。
10万か所超
厚生労働省の調査
全国の「通いの場」の数。その多くを、住民ボランティアが無償に近い形で支えている。
JAGES
日本老年学的評価研究
趣味やスポーツなどの地域のグループに参加している高齢者ほど、要介護状態になりにくい傾向が報告されている。
ポジティビティ効果
カーステンセンら(スタンフォード大学)
年齢を重ねると、残された時間を意識して感情的に満たされることを大切にするようになり、よい情報に注意が向きやすくなる。
2006年
Mattila ら(フィンランド)
一般住民を対象にした調査で、年齢が高いほどアレキシサイミア傾向が強いという関連が報告された。

この表からわかるのは、通いの場は高齢者の健康を支える大切な場であり、同時に、気持ちを言葉にしにくい人が多く集まる場でもあるということです。年齢とアレキシサイミア傾向の関連には、世代ごとの育ち方や教育の違いも関わっていると考えられ、「年をとると誰でも感情がわからなくなる」という意味ではありません。ただ、運営する側がこの特徴を知っておくと、「楽しかった」の受けとめ方が変わります。

なぜ「楽しかった」しか出てこないのか|4つの理由

参加者の「楽しかった」の裏には、次のような理由が重なっていることが多いものです。どれも、参加者がうそをついているわけではありません。

理由1|心の特徴
よいことに目が向きやすくなる

心理学者ローラ・カーステンセンの社会情動的選択性理論では、人は残された時間を意識するほど、感情的に満たされることを優先するようになると考えます。その結果、年齢を重ねるとよい出来事に注意が向き、よい記憶が残りやすい「ポジティビティ効果」が見られます。「楽しかった」は、その人にとって本当の気持ちであることも多いのです。

理由2|遠慮
「お世話になっている人に悪いことは言えない」

ボランティアが準備してくれた場に対して、「つまらなかった」「疲れた」とは言いにくいものです。感謝の気持ちが強い人ほど、不満や物足りなさを飲みこみます。とくに、迷惑をかけることを何より嫌う世代の方にとって、「楽しかった」は礼儀の言葉でもあります。

理由3|世代の背景
気持ちを言葉にする習慣が少なかった

いまの70代、80代の多くは、「自分の気持ちを話すのははしたない」「黙って働くのが美徳」とされた時代に育ちました。感情を表す言葉を使う練習を、あまりしてこなかったのです。「楽しかった」「よかった」以外の言葉が、すぐには出てこないこともあります。

理由4|集団の場
みんなの前では「みんなと同じ」答えになる

輪になって一人ずつ感想を言う場では、前の人と同じ言葉を言うのがいちばん安心です。耳が遠くなった方や、話すのが苦手な方にとっては、なおさらです。一人目が「楽しかった」と言えば、二人目以降も「楽しかった」が続きます。

こうして見ると、「楽しかった」の中には、本当の楽しさ、感謝、遠慮、そして言葉の少なさが一緒に包まれていることがわかります。包み紙をはがそうとするのではなく、中身が自然に顔を出せるような関わりが大切です。

「楽しかった」という包み紙の中身 はがそうとせず、中身が自然に出てくる「場」をつくる 「楽しかったです」 口に出る言葉 本当の楽しさ よいことに 目が向きやすい 感謝・遠慮 悪いことは 言えない 言葉の少なさ ほかの感情語が すぐ出ない 言えない事情 体の痛み・疲れ 人間関係の気まずさ 中身が自然に出てくる「場」の工夫 回想法・五感を使う活動・参加者の役割・少人数の雑談・個別の声かけ
▲ 参加者の「楽しかった」には、本当の楽しさ、感謝と遠慮、感情を表す言葉の少なさ、言いにくい事情などが一緒に包まれています。問いを重ねるより、気持ちが自然に出てくる場づくりが大切です。

男性が来ない理由を、感情から読みとく

多くの通いの場で共通する悩みが、「男性の参加者が少ない」ということです。チラシを工夫しても、奥さんに誘ってもらっても、なかなか足が向かない。その背景には、言葉にされにくい男性の感情があります。

  • 「年寄りの集まり」に行くことは、自分が年寄りだと認めることのように感じる
  • 女性ばかりの場で、どう振る舞えばいいかわからない
  • 歌や手遊びなど、子どもっぽく見える活動に抵抗がある
  • 会社の肩書きがない場で、初対面の人と何を話せばいいかわからない
  • 「世話をされる側」になることに、プライドが傷つく
  • 一度行ってなじめなかったら、もう顔を出しにくい

これらに共通しているのは、恥ずかしさ、居心地の悪さ、そして「役割がないこと」への不安です。けれど、多くの男性はそれを「興味がない」「忙しい」という言葉で表します。感情を言葉にしにくい傾向は、「男は弱音を吐くな」と言われて育った世代の男性に強く見られることがあり、心理学者ロナルド・レヴァントはこれを「規範的男性アレキシサイミア」と呼びました。

だからこそ、男性に来てもらう工夫は、「楽しい場です」より「あなたの力が必要です」という誘い方が効果的です。椅子や机の設営、会計、写真係、そば打ちや将棋の先生役、地域の歴史の語り手。「参加者」ではなく「役割を持つ人」として迎えると、足を運ぶ理由が生まれます。定年後の男性の心については、定年後の男性と感情の言語化の記事でもくわしく書いています。

運営者同士の摩擦|善意どうしがぶつかるとき

通いの場を支えるボランティアの多くは、地域のためになりたいという善意で集まっています。それなのに、運営メンバーのあいだでぎくしゃくすることがあります。善意どうしがぶつかる摩擦は、悪意のある対立よりも、かえって言葉にしにくいものです。

よくあるご相談の典型例
「私ばかり準備しているのに、
それを言ったらわがままですよね」
場面70代の女性。サロンの立ち上げから関わり、毎回の準備や買い出しをほぼひとりで担っている。新しく入ったメンバーがプログラムの変更を提案すると、なぜか強い反発を感じてしまう。会合では何も言わず、帰り道にどっと疲れる。
この方の中には、「自分ばかり」という不公平感と、これまでの努力を否定されたような悲しみ、そして「自分の居場所がなくなる」という不安がありました。反発は、その気持ちが言葉にならないまま表に出たものだったのです。

運営者同士の摩擦の多くは、次のような気持ちのすれ違いから生まれます。

表に出る言動その下にあるかもしれない感情
新しい提案に反対するこれまでのやり方を否定されたような悲しみ。自分の役割がなくなる不安。
準備を一人で抱えこむ頼んで断られるのが怖い。「自分がやったほうが早い」という焦り。
会合で黙りこむ意見を言って場の空気を壊したくない。言っても変わらないというあきらめ。
「もう辞めようかな」と言う疲れ、感謝されないさみしさ。本当は「続けたいから助けてほしい」というSOS。

運営の話し合いでは、「何をするか」の前に「いま、どんな気持ちで関わっているか」を一人ずつ話す時間をとってみてください。「最近、準備が少し負担になっている」「新しいことを試すのが楽しみ」。気持ちが言葉になると、意見の対立は「誰が正しいか」ではなく「どうすればみんなが続けられるか」の話に変わっていきます。

本音が出るプログラムの工夫|回想法・五感・役割

ここからは、参加者が自然に気持ちを話したくなるプログラムの工夫を紹介します。中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』で紹介しているワークを、通いの場向けに作り直したものも含めています。

回想法|昔の話は、感情の宝庫

回想法は、昔の思い出を語り合うことで心を活性化させる方法です。アメリカの精神科医ロバート・バトラーが1963年に、高齢者が人生をふり返る「ライフレビュー」の意義を示したことが、広がるきっかけになりました。日本でも、介護予防や認知症の方へのケアの場で広く使われています。

回想法のよいところは、「いまの気持ち」を聞かなくても、思い出を語る中で感情が自然に出てくることです。「子どものころの遊び」「初めての給料で買ったもの」「この町の昔の商店街」。思い出を話すうちに、「あのころは貧しかったけど、楽しかった」「母に叱られて悔しかった」と、さまざまな感情の言葉が出てきます。

工夫1|回想法・20分
昔の道具や写真を「きっかけ」にする

洗濯板、黒電話、昔の教科書、地域の古い写真など、手にとれるもの、目で見られるものを用意します。「これ、使ったことありますか」と聞くだけで、話は自然に広がります。運営者は、出てきた感情の言葉を「悔しかったんですね」「誇らしかったでしょうね」と、そっと映し返してください。

工夫2|五感スイッチ・1分
お茶の時間に「香り」と「味」を言葉にする

お茶やお菓子を出すとき、「今日のお茶は、どんな香りがしますか」と聞いてみます。五感の言葉は、感情の言葉の入り口です。「香ばしい」「ほっとする」「子どものころの縁側を思い出す」。体の感覚から気持ちへ、自然に橋がかかります。

工夫3|色彩感情カレンダー・1分
今日の気分を「色」で選んでもらう

何色かの色紙やシールを用意し、帰り際に「今日の気分に近い色」を一つ選んでもらいます。言葉にしなくても、色なら気持ちを表せます。いつも明るい色を選ぶ人が、ある日だけ灰色を選んだら、それは個別に声をかけるきっかけになります。

工夫4|少人数・個別の時間
全体の感想より、二人きりの雑談

みんなの前で感想を言う時間より、片づけを手伝ってもらいながらの雑談や、帰り道に並んで歩く数分のほうが、本音は出やすいものです。「最近、膝はどうですか」「〇〇さんとは仲良くやれていますか」。体のことや具体的なことから聞くと、気持ちの話につながりやすくなります。

「どうでしたか」と聞くより、
「これ、覚えていますか」と差し出す。
思い出の中に、感情の言葉は眠っています。

共同体感覚と横の関係|アドラー心理学で見る通いの場

私はカウンセリングで、オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラー(1870〜1937)の心理学をベースにしてきました。通いの場の運営を考えるうえで、アドラー心理学の二つの考え方がとても役に立ちます。

共同体感覚|「ここにいていい」「役に立てる」

アドラー心理学の中心にあるのが共同体感覚です。自分は共同体の一員であり、そこに居場所があり、仲間を信頼し、誰かの役に立っているという感覚のことです。アドラーは、この感覚が人の心の健康の土台になると考えました。

通いの場が高齢者の健康によいのは、体操や脳トレの効果だけではありません。「ここに自分の居場所がある」「待っていてくれる人がいる」という共同体感覚が、心を支えているからだと私は考えています。そしてこの感覚は、サービスを受けるだけでは育ちにくく、誰かの役に立つ経験の中で育つものです。

横の関係|「してあげる」から「一緒にする」へ

アドラー心理学では、人を上から評価したり導いたりする縦の関係ではなく、対等な横の関係を大切にします。通いの場では、運営者と参加者のあいだに、知らず知らずのうちに縦の関係が生まれがちです。準備するのは運営者、楽しませてもらうのは参加者。「してあげる人」と「してもらう人」という関係の中では、参加者は遠慮して「楽しかった」と言うしかなくなります。

縦の関係の通いの場・横の関係の通いの場 参加者に「役割」があると、遠慮が減り、本音が出やすくなる 縦の関係 運営者(してあげる) 参加者(してもらう) → 遠慮して「楽しかった」だけ 横の関係 運営者 参加者(役割あり) 一緒に場をつくる → 「ありがとう」が行き来し、本音が出る 役割の例:お茶係・受付・写真係・先生役・昔話の語り手
▲ 運営者が「してあげる」、参加者が「してもらう」という縦の関係では、参加者は遠慮しがちです。参加者にも役割があり、ともに場をつくる横の関係になると、感謝が双方向に行き来し、本音も出やすくなります。

横の関係をつくるいちばんの方法は、参加者に役割を持ってもらい、運営者がそれに「ありがとう」「助かりました」と伝えることです。アドラー心理学でいう勇気づけです。「お上手ですね」とほめるのは、評価する側とされる側という縦の関係の言葉になりがちです。「〇〇さんがお茶を入れてくれたので、みんな喜んでいました」と、相手の貢献を言葉にして伝える。それが、参加者の共同体感覚を育てます。

6つの感で見る|参加者と運営者の自己有用感

自己肯定感の「6つの感」は、木にたとえて説明できます。根が自尊心≒自己存在感、幹が自己受容感、枝が自己効力感、葉が自己信頼感、花が自己決定感、実が自己有用感です。通いの場で、参加者にも運営者にも大きく関わるのが実にあたる「自己有用感」です。

参加者の実|自己有用感
「まだ誰かの役に立てる」という感覚

退職、子育ての終わり、体力の衰え、配偶者との死別。高齢期は、「役に立てる場面」が少しずつ減っていく時期でもあります。自己有用感がしぼむと、「自分なんかが行っても」と外に出る気持ちもしぼみます。通いの場で役割を持ち、「ありがとう」と言われる経験は、この実をもう一度実らせます。

運営者の実|自己有用感
「楽しかった」を、自分の実として受けとる

運営者の自己有用感は、参加者の反応に左右されやすいものです。本音が聞けない、参加者が減る、メンバーとぎくしゃくする。そんなとき、「自分の運営は役に立っていないのでは」と感じてしまいます。けれど、参加者が毎回足を運んでくれること、「楽しかった」と言ってくれること自体が、あなたの貢献の証です。包み紙の中身がすべてわからなくても、その包み紙を受けとれる場所をつくっているのは、あなたです。

幹|自己受容感
「うまくいかない日」の自分も認める

参加者が少ない日、プログラムが盛り上がらなかった日。そんな日の自分を責めるのではなく、「今日はそういう日だった」と受けとめることが、運営を長く続けるための幹になります。ボランティアは、完璧である必要はありません。

中島輝より一言

地域で人のために動いている方のご相談を受けていると、「参加者の気持ち」はとても細やかに語れるのに、「ご自身の気持ち」を聞くと、急に「私は別に」と口ごもる方が多いことに気づきます。運営者のあなたもまた、「楽しかった」という包み紙で、自分の疲れやさみしさを包んでいるのかもしれません。会が終わって片づけを済ませたら、どうか一度、「今日の私は、どんな気持ちだった?」と、自分にも聞いてあげてください。

運営者のための、ふり返りの工夫

  • 会が終わったら「心の体温チェック」で、自分の心が温かいか、冷えているかを3秒で確かめる
  • 運営メンバーで、会の感想と一緒に「今日、自分はどんな気持ちだったか」を一言ずつ話す
  • 準備や役割が一人に偏っていないか、3か月に一度見直す
  • 困ったときは、地域包括支援センターや社会福祉協議会の担当者に相談する
  • 疲れたときは休んでいい、と運営メンバー同士で確認しておく

よくあるご質問

アンケートの感想がいつも「楽しかった」ばかりで、改善のしようがありません。
自由記述の感想欄だけでなく、「今日いちばん印象に残ったことは?」「次にやってみたいことは?」など、具体的に答えられる質問を一つ加えてみてください。色や顔のマークで選べる形式にすると、書くのが苦手な方も答えやすくなります。全体の感想より、片づけの最中や帰り道の雑談のほうが、本音を聞けることも多いものです。
回想法をやってみたいのですが、つらい記憶を思い出させてしまわないか心配です。
戦争や死別など、人によってはつらい記憶につながるテーマもあります。最初は「子どものころの遊び」「好きだった食べ物」など、楽しい記憶が出やすいテーマから始めてください。話したくない人には無理に話を振らず、聞いているだけの参加も歓迎しましょう。話の途中で涙ぐむ方がいたら、無理に話を変えずに「大切な思い出なんですね」と受けとめるだけで十分です。
男性の参加者を増やすには、どうすればいいですか。
「楽しい集まりです」より「あなたの力を貸してください」という誘い方を試してみてください。設営、会計、写真係、得意なことの先生役など、役割を持って参加してもらうと、足を運びやすくなります。男性が少人数でも集まれる別のプログラム(将棋、囲碁、畑仕事、散歩など)を用意する地域もあります。
参加者の様子が気になるとき、どこまで踏みこんでいいでしょうか。
運営者は医師や専門職ではありません。「最近、元気がないようで気になって」と声をかけ、話してくれたら聴く、というところまでで十分です。急に来なくなった、身なりや表情が大きく変わったなど心配な変化があれば、ひとりで判断せず、地域包括支援センターや社会福祉協議会に相談してください。
「楽しかった」は、閉じた答えではない。
言葉にしにくい気持ちを包んだ、やさしい包み紙。
中身は、問いではなく「場」と「役割」がほどいていく。
参加者にも、運営するあなたにも、
「ここにいていい」「役に立てる」と感じられる居場所を。

自分を大切にしよう

高齢者サロンや通いの場で参加者が「楽しかった」としか言わないのは、本音がないからでも、運営がうまくいっていないからでもありません。そこには、よいことに目が向きやすくなる高齢期の心の特徴、お世話になっている人への遠慮、気持ちを言葉にする習慣が少なかった世代の背景、そして集団の場で「みんなと同じ」答えを選ぶ安心感が重なっています。男性が来ない理由も、運営者同士の摩擦も、その下には言葉にされにくい恥ずかしさや不公平感、居場所を失う不安があります。

だからこそ、問いを重ねるより、回想法や五感を使う活動、色で気持ちを選ぶ工夫、そして参加者が役割を持てる場づくりが大切です。アドラー心理学の共同体感覚と横の関係の考え方に立てば、通いの場は「してあげる人」と「してもらう人」の場ではなく、みんなで一緒につくる居場所になります。「ありがとう」が行き来する場所で、参加者の自己有用感は実り、包み紙は自然にほどけていきます。

そして、運営するあなた自身の気持ちも、どうか置き去りにしないでください。疲れ、もどかしさ、うれしさ。会が終わったら、自分の心の体温を確かめ、仲間と一言ずつ気持ちを分け合ってください。自分を大切にしよう。地域に居場所をつくり続けているあなたこそ、その居場所に支えられてよい人です。

地域の相談先
・お住まいの地域の地域包括支援センター(高齢の方の暮らし・介護・健康の総合相談)
・市区町村の社会福祉協議会(サロン・ボランティア活動の相談)
・こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
・命の危険が迫っているときは、迷わず119番・110番へ

本記事の参考資料・科学的根拠

  • 内閣府『高齢社会白書』(高齢化率)
  • 厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業等の実施状況に関する調査」(通いの場の数)
  • Kanamori, S. et al. (2014). Social participation and the prevention of functional disability in older Japanese: The JAGES cohort study. PLoS ONE, 9(6).
  • Carstensen, L.L., Isaacowitz, D.M., & Charles, S.T. (1999). Taking time seriously: A theory of socioemotional selectivity. American Psychologist, 54(3).
  • Mather, M., & Carstensen, L.L. (2005). Aging and motivated cognition: The positivity effect in attention and memory. Trends in Cognitive Sciences, 9(10).
  • Mattila, A.K. et al. (2006). Age is strongly associated with alexithymia in the general population. Journal of Psychosomatic Research.
  • Butler, R.N. (1963). The life review: An interpretation of reminiscence in the aged. Psychiatry, 26.
  • Levant, R.F. (1992). Toward the reconstruction of masculinity. Journal of Family Psychology.(規範的男性アレキシサイミア)
  • Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation: Alexithymia in Medical and Psychiatric Illness. Cambridge University Press.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
  • アルフレッド・アドラー『人生の意味の心理学』
  • 岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)
  • 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)
  • 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料
監修|中島 輝
心理カウンセラー・自己肯定感アカデミー会長・「6つの感」理論創始者
著書累計77万部・15,000人臨床・回復率95%
本記事は心理学的知見に基づく一般情報です。医学的診断や治療の代わりにはなりません。心身に不調を感じる場合は、医療機関・専門家へのご相談をおすすめします。

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