数字に追われて「何も感じない」営業職へ
成果を出し続けるための感情の言語化
午前中に「今回は見送らせてください」という失注のメール。午後はクレームの電話にひたすら頭を下げ、夜は接待の席で笑う。帰りの電車で月末までの数字を見返しても、焦りも悔しさも湧いてこない。もし思い当たるなら、結論から申し上げます。「何も感じない」のは営業として鍛えられた証ではなく、感情のセンサーが静かに止まりかけているサインかもしれません。法人営業・個人営業で働く20〜40代の方に向けて、成果を出し続けるための感情の言語化をお伝えします。
結論|感情を感じる力は、営業成績を支える「計器」である
最初に、この記事の結論を3つにまとめます。
「何も感じない」は、強さではなく消耗のサイン
失注しても平気、怒鳴られても平気。それは一見、営業向きのタフさに見えます。けれども感情を感じなくなるのは、心が負荷に耐えるために回路を絞っている状態であることが多いのです。放っておくと、ある日突然、体や意欲がついてこなくなります。
自分の感情を読む力と、顧客の感情を読む力は同じ回路
自分の焦りや不安に気づけない人は、顧客の迷いや不満にも気づきにくくなります。感情のセンサーは「自分用」と「顧客用」で別々にあるわけではありません。自分の感情を言葉にする練習は、そのまま商談の質を上げます。
失注の振り返りに「感情の1行」を足すだけで、次が変わる
原因分析に「そのとき自分はどう感じていたか」を1行加えると、数字だけの反省では見えなかった失注のパターンが見えてきます。この記事の後半で、移動中や商談の合間にできるやり方を紹介します。
ここで使う「感情迷子さん」とは、中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』の言葉で、感情をうまく認識・表現しにくくなっている状態を指します。心理学では「アレキシサイミア(失感情症)」と呼ばれ、感情がないのではなく、感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態のことです。病名ではなく、誰もが持つ特性の濃淡です。全体像はアレキシサイミア(失感情症)とは|感情に名前がつけられない人の特徴・原因・回復のヒントで詳しく解説しています。
営業部が30人なら、3人以上いても不思議ではありません
そして営業という仕事は、生まれつきの傾向がなくても、感情を切り離さないと回らない場面が毎日のようにやってくる仕事です。強いストレスから心を守るために感情が鈍くなる状態は「2次性アレキシサイミア」と呼ばれ、ストレスが和らぐと薄れていくことが多いとされています。つまり、今の「何も感じない」は、取り戻せる状態だということです。
ノルマ・失注・クレーム・接待|営業の1日で切り離されていく感情
営業の1日を、感情の視点で見直してみましょう。数字の上では「よくある1日」でも、心の中では次のようなことが起きています。
| 場面 | 本当は動いている感情 | 実際にとっている行動 |
|---|---|---|
| 朝の営業会議で未達を詰められる | 焦り、恥ずかしさ、反発 | 「巻き返します」と即答する |
| 3か月追いかけた案件の失注 | 悔しさ、落胆、むなしさ | 「切り替えます」と次のリストを開く |
| 顧客からのクレーム電話 | 怒り、理不尽さ、怖さ | 「おっしゃるとおりです」と謝り続ける |
| 夜の接待・会食 | 疲れ、退屈、気づかいの消耗 | 笑顔で相づちを打ち、場を盛り上げる |
| 月末に目標を達成する | 安堵、誇らしさ | 「来月はまたゼロから」と喜ばない |
表の右側の行動は、どれも営業として正しいものです。問題は、真ん中の列の感情が、一度も言葉にされないまま積み重なっていくことにあります。「切り替えます」と言った瞬間に、悔しさは片づいたのではなく、心の奥の引き出しにしまわれただけなのです。
うれしい感情まで感じなくなる
見落とされやすいのが、表の最後の行です。感情のスイッチは、つらい感情だけを選んで切ることができません。悔しさや怒りを感じないように回路を絞ると、達成したときの喜びや、顧客に感謝されたときのうれしさまで薄くなってしまうのです。「目標を達成したのに、ほっとするだけで何もうれしくない」。営業の方からよく聞く言葉です。
本では、こうした状態を「この程度で喜んではダメだ」「一時的な感情のためにやっているのではない」と、喜びにさえ興味がないふりをするパターンとして紹介しています。その先にあるのが、「自分は何のために数字を追っているのだろう」という虚無感です。
言葉にならない感情は「未完了のタスク」として残る
途中で中断したことのほうが、完了したことより記憶に残りやすい。これを心理学では「ツァイガルニク効果」といいます。言葉にされなかった感情もこれに似ていて、脳の中で「未処理の案件」として残り続け、メモリを消費します。営業の方が「休日も頭が休まらない」「寝ても疲れが取れない」と感じるとき、その背景には、名前のつかないまま溜まった感情の渋滞があることが少なくありません。
「切り替えます」で片づいたのは、
行動だけ。
感情は、名前がつくまで心に残り続ける。
笑顔の演技が続くと、自分の感情がわからなくなる理由
営業は、典型的な「感情労働」の仕事です。感情労働とは、社会学者のアーリー・ホックシールド(Hochschild)が名づけた概念で、仕事として、顧客の前で自分の感情を管理し、ふさわしい表情や態度をつくることを指します。客室乗務員や看護師、接客業の研究から広まった言葉ですが、商談で笑顔を絶やさず、理不尽な要求にも穏やかに応じる営業職は、まさにその代表です。
「本当の気持ち」と「顔」が別々に動く
ホックシールドは、感情労働のやり方を2つに分けました。表情だけを取りつくろう「表層演技」と、自分の感じ方そのものを場に合わせて変えていく「深層演技」です。どちらも、続けているうちに次のようなことが起きやすくなります。
- 顧客の前の「営業用の自分」と、本来の自分の境目がわからなくなる
- 家族や友人の前でも、つい「感じのいい反応」を選んでしまう
- 本当はどう感じているのかを自分に聞く習慣がなくなる
- 演技をやめた瞬間、何も感じない「空っぽ」の時間がやってくる
笑顔は、営業にとって大切な武器です。それを否定する必要はまったくありません。ただ、笑顔の裏で動いている感情に、自分だけは気づいていること。これが、感情労働で心をすり減らさないための分かれ道になります。
男性営業にも、同じことが起きている
感情労働というと、女性の多い職場の話だと思われがちです。けれども営業の現場では、男性も同じように感情を管理しています。むしろ「男は弱音を吐くな」「数字で語れ」という文化が残る職場では、感情を言葉にすること自体が「甘え」とみなされやすく、つらさがいっそう表に出にくいのです。
本に登場する50代の経営者、ケンジさん(仮名)は、幼いころから「泣くのは無能の証拠」と教え込まれ、「泣いている暇があったら解決策を探す」ことを信じてきました。それは確かに成果につながりました。しかし同時に、感情を「ノイズ」として切り捨てることで、人生の彩りという最大の報酬まで手放してしまっていたのです。営業の世界で「数字だけを見ろ」と育てられてきた方にとって、他人事ではない話だと思います。
中島輝より一言
私は5歳のとき、育ててくれた里親が突然いなくなるという経験をしました。そのときから「自分のつらさを人に見せてたまるか」と感情を表に出すのをやめ、表面上は「いい子」を演じ続けました。中学のバスケ部でチームが勝っても、私だけが無表情で立っていたのを覚えています。演じ続けると、うれしいはずの場面でさえ、感情がどこにあるのかわからなくなる。営業の方の「達成しても何も感じない」という言葉を聞くたびに、あのころの自分を思い出します。
「何も感じない」営業担当者に出る体と行動のサイン
感情は、言葉にならないと別の出口を探します。営業の方の場合、それは多くの場合、体と行動に出てきます。次のうち、最近の自分に当てはまるものはいくつありますか。
- 商談の前になると、胃が重くなる・腹痛が出る
- 肩や首のこりがひどく、マッサージに行っても戻ってしまう
- 移動中の車や電車で、気づくとスマホの数字ばかり見ている
- 接待や飲み会のあと、ひとりでさらに飲んだり食べたりしてしまう
- 失注の連絡を受けても「まあ、そうですよね」としか思わない
- 日曜の夜になると、理由のわからない重さを感じる
- 家族に「今日どうだった?」と聞かれて「別に」「普通」としか答えられない
- 顧客の小さな変化(声のトーン、返信の速さ)に気づくのが遅くなった
- 「何のためにこの数字を追っているのか」と、ふと思うことがある
このチェックは診断ではありません。ただ、4つ以上当てはまる場合は、感情のセンサーがかなり省エネモードになっていると考えてよいでしょう。とくに、腹痛や頭痛、不眠などの体の症状が2週間以上続いている場合は、我慢せずに医療機関や産業医に相談してください。
「顧客の変化に気づきにくくなった」は大事なサイン
チェック項目の中で、営業の方にとくに注目してほしいのが8番目です。自分の感情を感じる回路が細くなると、相手の感情を感じとる回路も一緒に細くなります。「最近、先方の温度感が読めない」「いつのまにか競合に決まっていた」。そんな失注が増えているなら、それは営業スキルの問題ではなく、感情のセンサーの問題かもしれません。
顧客の感情を読む力は、自分の感情を読む力とつながっている
「売れる営業は、お客さまの気持ちがわかる」。よく言われることです。では、お客さまの気持ちがわかるとは、どういうことでしょうか。
私たちの脳には、他者の表情や行動を見ると、自分の脳の中でも同じ回路が反応する「ミラーニューロン」という仕組みがあるといわれます。相手の気持ちを想像するとき、私たちは自分の中にある感情の記憶や感覚を手がかりにしているのです。心理学では、相手の行動を、その人の感情や考えといった心の状態から理解しようとする力を「メンタライゼーション」と呼びます。精神科医のピーター・フォナギー(Fonagy)らが発展させた考え方で、この力が育つと、人間関係がよくなるだけでなく自己理解も進むことが報告されています。
「共感すると巻き込まれる」という恐れ
営業の方の中には、「顧客の感情に入り込みすぎると、値引きや無理な納期をのんでしまう」と考えて、あえて感情を見ないようにしている人もいます。本では、感情に興味がないように見えるタイプの人の中に、実は人の感情がわかりすぎてしまうから、巻き込まれるのが怖くて見ないふりをしているケースが多いと書かれています。
ここで大切なのは、相手の感情を「感じとる」ことと、相手の感情に「のみこまれる」ことは別だということです。「この方は今、上に説明するのが不安なんだな」と気づくことは、値引きに応じることとは違います。気づいたうえで、「その不安を解消できる材料を一緒に用意しましょう」と提案できる。これが、感情を読める営業の強さです。
共感の一言が商談を変える|解決策の前に置く30秒
営業の方は、問題解決が得意です。顧客が課題を話しはじめた瞬間、頭の中では「それならこの商品で」「この事例を出せば」と解決策が組み上がっていきます。それ自体は能力の高さであり、相手を助けたいという誠実さの表れでもあります。
けれども、悩みを話している人が最初に求めているのは、多くの場合「わかってもらえた」という感覚です。本で紹介している「共感の一言」は、正しいことを言いたくなったら、まず共感の言葉を先に出す、というシンプルなワークです。正論はそのあとに言ってかまいません。
| 顧客の言葉 | すぐ解決策を出す | 共感の一言を先に置く |
|---|---|---|
| 「今のシステム、現場から文句ばかりで」 | 「弊社の製品なら操作画面が簡単です」 | 「板挟みになって、お困りですよね」→そのうえで提案 |
| 「上がなかなか承認してくれなくて」 | 「費用対効果の資料をお送りします」 | 「ご担当として、もどかしいですね」→資料の相談 |
| 「前の業者には正直がっかりして」 | 「弊社はサポート体制が万全です」 | 「それは不安になりますよね」→何が困ったかを聞く |
共感の一言は、本当にわかっているかどうかよりも、「わかろうとしてくれている」と相手が感じることに意味があります。相手の心の扉が開いてから届けた提案は、同じ内容でも違う温度で受けとめられます。
共感の一言は、自分の感情の練習にもなる
本に登場する40代の管理職、タカシさん(仮名)は、「感情はノイズだ」と思って生きてきた方でした。部下が相談に来ても、まず解決策を出す。半年ほどたったころ、タカシさんは「部下が落ち込んでいるとき、つらかったね、と言えるようになりました。それだけで部下の表情が変わるんですね。そして、自分もなんだかスッとするんです」と話してくれました。
相手の感情に言葉をかけることは、自分の中の感情の回路を動かす練習にもなります。タカシさんは、相手の感情を想像するところから始めて、自分の感情にも気づけるようになっていきました。商談の中で「お困りですよね」と口にするたびに、あなた自身の感情のセンサーも、少しずつ目を覚ましていきます。
提案の前に、共感の一言。
それは営業トークのテクニックではなく、
相手と自分、両方の感情に気づく練習。
失注の振り返りに「感情の1行」を足す
失注したあと、多くの営業組織では振り返りを行います。価格、競合、タイミング、決裁ルート。分析としては正しいのですが、ここに「そのとき自分はどう感じていたか」が入ることは、ほとんどありません。
実は、失注の原因のかなりの部分は、商談中に営業担当者が感じていた小さな違和感の中に隠れています。「なんとなく先方の反応が薄いと感じていた」「値引きの話が出たとき、焦って即答してしまった」「キーマンに会えないことが不安だったのに、確認しなかった」。感情は、数字に出る前のリスク情報なのです。
悔しさを「切り替える」前に、いったん名前をつける
失注した直後に「切り替えます」と言うことは、営業の美徳とされています。けれども、悔しさや落胆をまったく感じないまま次に進むと、同じ失注をくり返しやすくなります。感情に名前をつけると、不安や怒りなどの情動に関わる脳の扁桃体の活動が下がることが、リーバーマン(Lieberman)らの研究(2007年)で示されています。「悔しい。すごく悔しい」と1回言葉にしてから切り替えるほうが、心も早く落ち着くのです。
20代の男性、ハヤトさん(仮名)は、恋人との関係の中で「心の中にモヤモヤと渦を巻いているカタマリがあるのに、それに合う言葉が見つからない」と話していました。若手の営業の方にも、同じように言葉を慎重に選びすぎて、かえって感情の出口をふさいでしまう人がいます。振り返りシートの「感情」の欄は、「モヤモヤ」「ザワザワ」のような言葉でもかまいません。まずは外に出すことが先です。
移動中・商談の合間にできる4つのワーク
営業の方の1日は、移動と商談の連続です。ここでは、本で紹介しているワークを、営業の生活リズムに合わせて作り直しました。どれも長くて2分ほどでできます。
感情タイムアウト|アポの前後にアラームを
1日3回、スマホのアラームを設定し、鳴ったら「今、どんな気分?」と3秒だけ自分に聞きます。営業の方におすすめのタイミングは、朝いちばんのアポの直前、昼食のあと、最後の訪問を終えて車に戻ったときです。「よくわからない」「なんか疲れてる気がする」でも立派な答えです。ポリヴェーガル理論でいう「効率モード」に偏りがちな神経系に、内側を確かめる「安全モード」の時間をつくります。大事なプレゼンの1週間前から、プレゼンと同じ時刻にアラームを鳴らして気分を聞いておくと、本番の緊張が「いつもの状態」になり、普段の力を出しやすくなります。
3段階温度計|商談のあと、車に戻ったら
商談を終えて車や駅のホームに戻ったら、今の感情に「ちょっと・そこそこ・すごく」の3段階で強さをつけます。「ちょっと手ごたえ」「そこそこ不安」「すごく疲れた」。感情を細かく区別できる人ほど、ネガティブな感情からの回復が早いという研究があります。この1分のメモが、そのまま失注の振り返りシートの「感情」の欄になります。
5秒ルール|顧客の課題を聞いたら、提案の前に5秒
顧客が課題を話し終えたら、解決策を口にする前に5秒だけ待ちます。その間に「この方は今、何を感じているだろう?」と一度だけ自分に問いかけてください。答えはわからなくていいのです。相手の内面を想像する、メンタライゼーションの最小単位のトレーニングです。その5秒の沈黙が、顧客には「ちゃんと受けとめてもらえた」という間として伝わります。
感情だけ日記|日報とは別に、夜に2分
営業日報は、出来事と数字の記録です。それとは別に、夜、今日感じたことだけを書きます。出来事はあえて書きません。「達成感があった。でも空回りした感じも少し」「やる気が出ず、罪悪感のようなものがあった」「とくに何も感じなかった」。最後の「何も感じなかった」も立派な感情の記録です。何も感じなかったと気づいたこと自体が、内側を見た証拠だからです。
感情を書き出すことは、ストレスの軽減や免疫機能の向上と関係していることが、社会心理学者ペネベーカー(Pennebaker)らのエクスプレッシブ・ライティング(筆記開示)の研究で示されてきました。ポイントは、出来事だけを書いても効果は出にくく、感情に触れた記述があってはじめて効果が出るということです。日報をいくら丁寧に書いても心が軽くならないのは、そこに感情の行がないからかもしれません。
中島輝より一言
営業の方にワークをお伝えすると、「そんな時間はありません」と言われることがあります。でも、ここで紹介したのはすべて、移動の合間にできるものばかりです。1日の中で、自分の感情に向ける時間が合計で5分あれば十分です。数字を追う時間の、ほんの一部を自分に返してあげてください。それは成果を手放すことではなく、成果を出し続けるための投資です。
営業チームで感情を扱う|マネージャーと同僚ができること
感情の言語化は、ひとりで取り組むだけでなく、チームで取り組むと効果が大きくなります。営業組織は数字の話が中心になりやすいからこそ、感情を話してもいい時間を、あえて仕組みとしてつくることが大切です。
世界でも最低水準とされています
仕事への熱意が低い状態は、さまざまな要因で起こります。そのひとつとして見落とされやすいのが、自分が何にうれしさや誇りを感じるのかがわからなくなっていることです。熱意は、感情がなければ生まれません。営業のモチベーション施策がうまくいかないとき、報酬や表彰を工夫する前に、感情を感じとれる状態に戻すことが必要な場合もあります。
マネージャーができること
- 失注報告を受けたら、原因を聞く前に「それは悔しかったね」と共感の一言を置く
- 週1回の営業会議の冒頭で、数字の前に「今週の手ごたえを一言で」と聞く
- 大型案件の受注を、数字だけでなく「何がうれしかったか」とともに共有する
- クレーム対応をした部下には、対応の評価より先に「大変だったね」と声をかける
- マネージャー自身が「今月は正直、少し焦っている」と感情つきで話してみせる
最後の項目がいちばん大切です。上司が感情を口にしない職場では、部下も感情を口にしなくなります。感情の言語化とチームの成果の関係については、感情の言語化が業績を変える|心理的安全性とアレキシサイミアの関係でも詳しく解説しています。
同僚どうしでできること
同行営業や商談のあとの移動時間は、同僚と感情を言葉にするよい機会です。「今の商談、どうだった?」と聞くとき、「手ごたえは3段階でいうとどれくらい?」と聞いてみてください。数字の評価ではなく感情の評価を交わすことで、お互いの感情のセンサーが育っていきます。
感情と思考を合わせて伝える言い方も、営業組織で役立ちます。本では、「このタスクは少し苦手で不安な部分があるので、時間がかかるかもしれません。フォローしてもらえたらありがたいです」のように、感情を1つ加えるだけで、相手は「この人は今こういう状態なんだ」と理解でき、信頼が生まれると書かれています。「あと200万、正直かなり厳しいと感じています。同行をお願いできますか」。こう言える営業は、ひとりで抱えて月末に崩れる営業よりも、ずっと強いのです。
よくあるご質問
でも、感情はあなたの数字を支えている。
次の商談の前に、3秒だけ自分に聞いてみよう。
その答えが、成果を出し続ける営業の土台になります。
自分を大切にしよう
ノルマ、失注、クレーム、接待。営業の毎日には、感情を切り離さなければ乗り切れない場面がたくさんあります。笑顔で頭を下げ、「切り替えます」と次に向かう。その積み重ねの中で、悔しさだけでなく、達成したときの喜びまで感じにくくなっていく。それは、あなたが弱いからでも冷たいからでもなく、心が負荷から自分を守ろうとしてきた結果です。
そして、自分の感情を読む力と、顧客の感情を読む力は、同じ土台の上にあります。提案の前に共感の一言を置くこと、失注の振り返りに感情の1行を足すこと、移動の合間に「今、どんな気分?」と3秒だけ聞くこと。どれも小さな習慣ですが、感情のセンサーをもう一度動かし、商談の質を確実に変えていきます。
数字を追うことは、これからも営業の仕事の中心であり続けるでしょう。だからこそ、その数字を生み出しているあなた自身の感情を、置き去りにしないでください。うれしいときはうれしいと、悔しいときは悔しいと、まずは自分にだけでも言葉にしてあげる。自分を大切にしよう。それが、長く成果を出し続ける営業でいるための、いちばん確かな方法です。
本記事の参考資料・科学的根拠
- 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)原稿
- Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation: Alexithymia in Medical and Psychiatric Illness. Cambridge University Press.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
- Hochschild, A.R. (1983). The Managed Heart: Commercialization of Human Feeling. University of California Press.(邦訳『管理される心―感情が商品になるとき』世界思想社)
- Lieberman, M.D. et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18, 421-428.
- Pennebaker, J.W. (1997). Writing about emotional experiences as a therapeutic process. Psychological Science, 8, 162-166.
- Fonagy, P. et al. (2002). Affect Regulation, Mentalization, and the Development of the Self. Other Press.
- Porges, S.W. (2011). The Polyvagal Theory. W. W. Norton.
- Gallup. State of the Global Workplace.
- 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料

自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。






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