スタンプと「やばい」だけで気持ちを伝える子どもたち|SNS時代の感情の言語化と親の関わり方

スタンプと「やばい」だけで気持ちを伝える子どもたち|SNS時代の感情の言語化と親の関わり方

スタンプと「やばい」だけで気持ちを伝える子どもたち
SNS時代の感情の言語化と親の関わり方

「今日の遠足どうだった?」とLINEを送ると、返ってきたのはウサギのスタンプひとつ。夕食の席で聞いても「やばかった」「エモい」「まじ無理」。リビングでは短い動画を次々とスワイプしながら、ときどき小さく笑っている。わが子が本当は何を感じているのか、だんだん見えなくなってきた。そんな不安を感じていませんか。スタンプや一語の言葉の奥にも、気持ちはちゃんとあります。ただ、それを細かく見分ける練習の機会が、SNSの便利さの中で減っているのかもしれません。スマホを持ち始めた小学校高学年〜高校生の子をもつ親御さんに、取り上げるのではなく「言葉を足す」関わり方をお伝えします。

中島 輝(中島輝)
心理カウンセラー/自己肯定感アカデミー会長/「6つの感」理論創始者/著書累計77万部/15,000人臨床/『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる自己肯定感の教科書』(SBクリエイティブ・累計32刷)『働く人のための自己肯定感』著者

スタンプと「やばい」だけの会話は、悪いことなのか

よくある相談の典型例
「娘との会話が、
スタンプと『やばい』だけになってしまって」
場面40代の母親。中学1年の娘にスマホを持たせて半年。友だちとのLINEは楽しそうに続いているのに、親とのやりとりは「り」「おけ」とスタンプだけ。部活の試合に負けた日も、「どうだった?」に返ってきたのは泣き顔の絵文字ひとつだった。それ以上聞くと「うざい」と言われそうで、何も聞けなかった。
これは特定の誰かではなく、スマホを持ち始めた子の親御さんからよく聞く話です。泣き顔の絵文字の奥には、たぶん「悔しい」「恥ずかしい」「自分が許せない」など、いくつもの気持ちが重なっています。絵文字は気持ちの入り口としては十分ですが、そこから先の細かい気持ちは、まだ本人にも見えていないのかもしれません。

最初にお伝えしたいのは、スタンプや「やばい」の一語で気持ちを伝えること自体は、悪いことではないということです。短い言葉やスタンプは、友だちとの距離を縮め、軽やかに気持ちを共有するための、子どもたちの大切なコミュニケーションの道具です。言葉を尽くさなくても通じ合える感覚は、むしろ仲間とのつながりの証でもあります。

本の中でも、私は「やばい」の一言で言えるのは確かに便利だと書いています。問題は、便利な言葉「だけ」になってしまったときです。感動したときも、焦っているときも、怖いときも「やばい」。そうなると、相手に伝わらないだけでなく、自分でも本当はどう感じているのかがわからなくなってくるのです。

「感情迷子さん」という見方

中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』では、感情をうまく認識・表現しにくくなっている状態を「感情迷子さん」と呼んでいます。心理学では「アレキシサイミア(失感情症)」と呼ばれ、感情がないのではなく、感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態のことです。一般の人の約10〜16%に強い傾向があるとされ、病名ではなく誰もが持つ特性の濃淡です。全体像はアレキシサイミア(失感情症)とは|感情に名前がつけられない人の特徴・原因・回復のヒントで解説しています。

スタンプで会話する子どもが、みんな感情迷子さんだというわけではありません。ただ、「迷子」という言葉には、帰る場所があるという前提が含まれています。言葉を足す関わりがあれば、子どもは気持ちの言葉のある場所に、いつでも戻ってこられます。

スタンプひとつの奥にも、気持ちはある。
なくなったのではなく、
まだ細かく見分けられていないだけ。

一語で済むほど、気持ちの解像度は粗くなる

「やばい」は、とても便利な言葉です。おいしいものを食べたとき、テストの範囲を聞いて焦ったとき、推しの新曲を聴いたとき、自転車にぶつかりそうになったとき。まったく違う気持ちを、たった一語で表せてしまいます。

「やばい」の中に詰まっている、いろいろな気持ち 一語で済ませると、中身の違いが本人にも見えにくくなる やばい (スタンプ1個) うれしい 推しの新曲が出た 感動した 映画のラストで泣いた 焦っている テスト範囲が広すぎる こわい 自転車とぶつかりかけた 恥ずかしい 発表で言葉に詰まった 困っている グループで浮いている 下の2つのような「助けが必要な気持ち」も、同じ一語に隠れてしまう
▲ 「やばい」という一語には、うれしい、感動、焦り、こわさ、恥ずかしさ、困りごとなど、まったく違う気持ちが詰まっています。便利な一方で、本人も周りの大人も中身の違いに気づきにくくなり、とくに助けが必要な気持ちが見落とされやすくなります。

気持ちを細かく見分ける力は、心の回復力につながる

心理学では、気持ちを細かく区別して捉える力を「感情の分化(emotion differentiation)」と呼びます。カシュダン(Kashdan)らが2015年にまとめた研究のレビューでは、感情を細かく区別できる人ほど、ネガティブな気持ちに振り回されにくく、立ち直りが早い傾向があることが示されています。「なんか嫌」ではなく「悔しい」「恥ずかしい」「さみしい」と見分けられると、それぞれに合った対処を選べるからです。

本の中でも、便利な言葉ばかり使っていると自分の感情の解像度も粗くなり、本当にどう思っているのかがわからなくなってくると書きました。たとえば映画を見て深く感動したのに、「やばかった」に集約してしまう。本当は、主人公と敵とのあいだに友情が芽生えたところで涙が止まらなかった、と言いたかったのに。言葉にしなかった細かい気持ちは、少しずつ本人の記憶からも薄れていきます。

名前をつけるだけで、心は落ち着く

カリフォルニア大学のリーバーマン(Lieberman)らは2007年、感情に「怒り」「悲しみ」などの名前をつけると、脳の扁桃体(へんとうたい)の活動が下がることを報告しました。扁桃体は、危険を察知して体を臨戦態勢にする警報装置のような部位です。「やばい」より「焦ってる」、「無理」より「もう疲れた」。少しだけ具体的な言葉にするだけで、心の警報は静まりやすくなります。

既読とグループLINEの空気|「本音を打たない」を覚える子どもたち

本の中で、私はSNSやチャットのような短文のコミュニケーションについて、表情や声のトーンの情報がないため、誤解のないように伝えることがとても難しいと書きました。大人でも、仕事のチャットで「この一文、冷たく読まれないかな」と迷うことがありますよね。子どもたちは、それを毎日、友だち関係の中でやっています。

既読の数を気にする毎日

グループLINEにメッセージを送ると、既読の数が表示されます。既読がつくのに誰も返信しない。自分が送った直後だけ、会話が止まる。そんな小さな出来事に、子どもたちは大人が思う以上に心を揺らしています。そして多くの子が、「本音を打つと浮くかもしれない」「スタンプなら角が立たない」と学んでいきます。

グループLINEでの行動その奥にあるかもしれない気持ち
とりあえずスタンプで返すどう返せばいいかわからない、浮きたくない
「わかる〜」「それな」を連発する本当は違う意見だけど、合わせておきたい
深夜まで通知を気にしている自分のいないところで話が進むのが不安
「無理」「死ぬ」と軽く書く本当に疲れているのか、ノリなのか、本人も曖昧
急にグループで発言しなくなる傷ついた、居場所がないと感じている

空気を読み、角が立たないように振る舞えるのは、子どもなりの大切な社会性です。ただ、本の中で書いたように、周囲の空気を読み、人の期待に応えようと自分の感情を抑えたり後回しにしたりしてきた人にとって、感情を言葉にするのはなおさら難しいものです。グループの空気に合わせることが毎日続くと、「自分はどう感じているのか」を確かめる時間が、知らないうちになくなっていきます。

中島輝より一言

カウンセリングで中高生と話していると、「LINEだと平気で話せるのに、面と向かうと何も言えない」という子に出会います。逆に、「LINEでは何を打てばいいかわからなくて、スタンプしか送れない」という子もいます。どちらも、気持ちを言葉にする場所を、まだ安心して見つけられていないのだと思います。家が、その安心できる場所のひとつになれたら、と願っています。

短い動画で、気持ちが細切れになる

もうひとつ、SNS時代ならではの特徴があります。短い動画を次々に見ることで、気持ちが細切れになりやすいことです。15秒で笑い、次の15秒で驚き、その次で少し切なくなり、またすぐ笑う。感情は確かに動いています。けれど、ひとつの気持ちを味わい、「今の、なんだったんだろう」と振り返る前に、次の動画が流れてきます。

感情を言葉にするまでには、本の中で説明しているとおり、「体の信号に気づく → 感情を解釈する → 言葉に変換する」という3つのステップが必要です。短い刺激が途切れなく続くと、最初の「気づく」の段階で次の刺激が来てしまい、解釈や言葉にする時間が残りません。感じることはしていても、味わい、名前をつける前に流れていく。そんな状態が、毎日少しずつ積み重なっていきます。

ぼんやりする時間も、心には必要

本では、ぼんやりしているときや空想しているときに活発に働く脳の回路、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)についても紹介しています。DMNが働くと、感情の処理や自己理解が深まることがわかっています。スマホを手放せない毎日では、このぼんやりする時間が、すき間時間ごと動画で埋まってしまいがちです。

ここで「動画は悪だ」と決めつける必要はありません。好きな動画を見て笑うことは、子どもにとって大切な息抜きです。ただ、1日のどこかに、画面を見ないでぼーっとする数分があるといい。お風呂、通学の電車、寝る前の布団の中。その数分が、細切れになった気持ちをつなぎ直す時間になります。

画面の中のキャラクターも、気持ちの練習相手になる

一方で、画面の中の物語が、感情の言葉を育てる助けになることもあります。本に登場する、ある対戦ゲームで世界トップクラスの腕を持つ高校生は、ゲームの話になると感情豊かに語るのに、それ以外の話になると途端に言葉が少なくなる子でした。現実の人の気持ちを想像するのは抵抗があった彼も、アニメの登場人物の気持ちを想像する練習は「ゲーム感覚」でできたそうです。

以前は「自分ならここで泣いたりしない」と思っていた彼が、やがて「このキャラなら泣くよね。わからなくはない」と言うようになりました。そして「周りの人が自分のことを少し理解してくれるようになった気がする」と話してくれたのです。子どもが好きなアニメや動画は、取り上げる対象ではなく、気持ちの言葉を育てる教材にもなるのです。

取り上げるより「言葉を足す」|「やばいって、どっちのやばい?」

子どもの言葉が「やばい」ばかりになったとき、つい「ちゃんとした言葉で話しなさい」「スマホばかり見ているからだ」と言いたくなるかもしれません。でも、言葉を注意されると、子どもは言葉を減らします。大切なのは、一語を否定することではなく、そこにもう一語を足す手伝いをすることです。

足し方1|二択で聞く
「やばいって、いいほうのやばい? 大変なほうのやばい?」

「どういう意味?」と聞くと、子どもは説明を求められているように感じます。二択にすると、答えるハードルがぐっと下がります。「いいほう」と返ってきたら「おお、何がよかったの?」、「大変なほう」なら「そっか、大変なんだ」とまず受け止めます。正しく言い当てることより、気持ちの方向を一緒に探すことが目的です。

足し方2|強さを聞く
「ちょっと? そこそこ? すごく?」

本で紹介している「3段階温度計」です。「無理」と言ったら「無理って、ちょっと無理? すごく無理?」と強さだけ聞きます。感情の強さを区別すると、ぼんやりしていた気持ちの解像度が上がります。「すごく」が続くようなら、それはしっかり話を聞くべきサインでもあります。

足し方3|オノマトペを差し出す
「モヤモヤ系? ザワザワ系? ワクワク系?」

思春期の子は、「悲しい」「不安」のような感情語を口にするのが照れくさいこともあります。そんなときはオノマトペが便利です。体の感覚に近い言葉なので選びやすく、それでも脳は感情のラベルとして受け取ります。本の中では、お母さんのことを「チクチク」と表現した子が、話していくうちに「なぜ怒られているのかわからなくて困っている」という本当の気持ちにたどり着いた話を紹介しました。

足し方4|親が先に言葉を足す
「お母さんなら、ちょっと悔しいかも」

聞いても答えが出ないときは、親が自分の気持ちとして言葉を差し出します。「その状況、お母さんだったら、ちょっと悔しいかも」。子どもは「別に悔しくはない。どっちかというと恥ずかしい」と、親の言葉を手がかりに自分の気持ちを探しはじめることがあります。違っていても大丈夫。違うと言えたことが、すでに一歩です。

言いがちな言葉と、言葉を足す言いかえ

子どもの一語つい言ってしまう言葉言葉を足す返し方
「やばい」「ちゃんと説明して」「いいほう? 大変なほう?」
「エモい」「エモいって何よ」「懐かしい感じ? ちょっと切ない感じ?」
「無理」「無理って言わないの」「ちょっと無理? すごく無理?」
「草」「意味がわからない」「そんなに面白かったんだ。どこがツボ?」
泣き顔スタンプ「スタンプじゃわからない」「悔しい系? 疲れた系? 帰ったら聞かせてね」

ポイントは、子どもの一語をいったんそのまま受け取ってから、もう一語を足すことです。子どもたちの言葉を否定せず、むしろ「エモいって、いい言葉だね。どんな感じのエモい?」と面白がるくらいがちょうどいい。親が言葉に興味を持つと、子どもも自分の言葉に興味を持ちはじめます。

一語を直すのではなく、一語を足す。
「やばい」を消さなくていい。
その隣に、もう一つ気持ちの言葉を置けばいい。

親子のLINEでできる、感情の言葉を増やす工夫

子どもと話す時間が限られている家庭でも、LINEは毎日使っているはずです。連絡事項だけのやりとりに、少しだけ感情の言葉を混ぜる工夫をしてみましょう。

スタンプから「気持ちの言葉」へ、5段の階段 一段ずつでいい。親子のLINEで、上の段へ少しずつ ① スタンプ 泣き顔・笑顔 ② 一語 やばい・無理 ③ オノマトペ モヤモヤ・ザワザワ ④ 感情語+強さ そこそこ悔しい ⑤ 理由つき 「負けて悔しい。 でも楽しかった」 どの段にいても否定しない。一段上の言葉を、親がそっと差し出す
▲ 気持ちの伝え方を、スタンプ(①)から理由つきの言葉(⑤)までの階段として表しました。子どもがどの段にいても否定せず、親が一段上の言葉を問いかけや自分の言葉として差し出すことで、少しずつ上の段へ進んでいけます。
工夫1|毎日10秒
「今日の心の天気」を送り合う

本の「比喩レッスン」を親子LINE向けにしたものです。夜、「今日の心の天気は?」と送り、親も「ママはくもりのち晴れ」と返します。天気の絵文字だけでもOKにしておくと、子どもも気軽に返せます。続けるうちに、「雷」「霧」のようなユニークな表現が出てくることもあります。

工夫2|随時
親が「感情つき」の連絡をする

「今日は遅くなります」だけでなく、「今日は遅くなります。会議が長引いてちょっとぐったり」と気持ちをひとつ添えます。親が感情を言葉にする姿は、子どもにとっていちばん身近なお手本です。スタンプを使うときも、「ほっとしたスタンプ」のように気持ちが伝わるものを選んでみてください。

工夫3|週1回
「感情ことば帳」を親子で共有する

本で紹介している「感情ことば帳」は、歌詞やドラマのセリフ、誰かのSNS投稿などで「この気持ち、わかる」と思った言葉をメモしておくワークです。自分で言葉を作る必要はなく、誰かの言葉を借りるだけでいい。好きなアーティストの歌詞の一節を、親子で「これ、わかる」と送り合うだけでも、気持ちの語彙は増えていきます。

工夫4|返信のルール
既読スルーを責めない、すぐの返信を求めない

親子LINEでは、返信がなくても責めないことを約束しておきましょう。「見たよ」の一言やスタンプで十分。友だちとのLINEで既読の重さを感じている子どもにとって、親とのLINEが「返さなくても大丈夫な場所」であることは、それだけで安心になります。

気持ちの相談をAIに任せきりにしない

最近は、友だちへの返信の仕方や、自分の気持ちの整理を生成AIに相談する子どもも増えています。本の最後で私は、「感情をAIに任せない」ということをお伝えしました。「どう返せば感じがいい?」とAIに聞き、その通りに動いているうちに、自分が何を感じているのかわからなくなっていくかもしれないからです。

一方で、AIにモヤモヤを話して吐き出すこと自体は、気持ちを言葉にする練習にもなります。大切なのは使い方です。「どう感じればいい?」と聞くのではなく、「今こう感じている」を自分の言葉で打ってみる。そう子どもに伝えてみてください。感じることそのものは、人にしかできないことです。

中島輝より一言

小学生のころ、週に一度来てくれる家庭教師の先生が、私に日記を書かせてくれました。出来事を1行、感想を1行。何も感じなかった日に「何も感じなかった」と言うと、先生は「じゃあ、何も感じなかったと書いたらいいよ」と笑いました。どんな気持ちでも書いていい、そしてそれを見てくれる大人がいる。その安心感が、私の心を落ち着かせてくれました。親子のLINEも、きっとそんな場所になれると思います。

ネットいじめ・夜中のSNS|心が乱れているときのサイン

SNSは、子どもにとって楽しいつながりの場であると同時に、傷つきやすい場でもあります。グループから外される、悪口を書き込まれる、知らないうちに写真をさらされる。こうしたネット上のいじめは、大人の目に見えにくく、しかも夜中も止まりません。気持ちを言葉にしにくい子ほど、つらさが周りに届きにくいことを、親は知っておく必要があります。

見逃したくない変化

  • 通知が鳴るたびに表情が硬くなる、スマホを裏返して置くようになった
  • 夜中にSNSを見ていて眠れない日が続いている
  • あんなに好きだったグループLINEや動画を、急に見なくなった
  • スマホを見られることを極端に嫌がるようになった
  • 朝になると頭痛や腹痛を訴え、学校に行きしぶる
  • 投稿や会話に「消えたい」「もう無理」「死にたい」といった言葉が出てくる

こうした変化に気づいたら、まず「スマホを取り上げる」より先に、「最近、眠れてる?」「何かしんどいことある?」と体や生活のことから声をかけてみてください。いきなり気持ちを聞くより、体のことのほうが答えやすいものです。そして、話してくれたら、内容を評価する前に「話してくれてありがとう」と伝えます。

「死にたい」は、つらさを伝えるSOS

子どもが「死にたい」「消えたい」と口にしたり、書き込んだりしたとき、親は動揺して「そんなこと言わないの」と打ち消したくなるかもしれません。けれど、その言葉は「それくらい、つらい」という気持ちを伝えるSOSです。軽いノリに見えても、聞き流さずに、「そう思うくらいつらいんだね。話してくれてよかった」と受け止めてください。そして、ひとりで抱え込まずに、学校や専門の窓口に相談してください。助けを求めることは、弱さではありません。それは子どもにとっても、親にとっても同じです。

つらいときの相談窓口(子ども本人も、保護者も相談できます)
24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310(文部科学省)
チャイルドライン 0120-99-7777(18歳まで)
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
よりそいホットライン 0120-279-338(24時間)
いのちSOS 0120-061-338
SNSで相談できる窓口は、厚生労働省「まもろうよ こころ」で探せます
命の危険が迫っているときは、迷わず119番・110番へ

いじめの心配があるときの学校との連携や、子どもが「大丈夫」と隠すときの関わり方は、いじめを「大丈夫」と隠す子どもたち|感情を言葉にできない心理と大人ができることで詳しくお伝えしています。

家のスマホのルールは、子どもと一緒に決める

夜中のSNSで心が乱れやすい子には、使用時間や充電場所のルールが助けになることがあります。ただし、一方的に決めるより、「夜中に通知が来ると、どんな気持ちになる?」と子どもの気持ちを聞いてから、一緒に決めるほうが守られやすくなります。「本当は寝たいのに、見ないと不安」という気持ちが出てきたら、「じゃあ、夜はリビングで充電しておこうか。そうすれば見なくていい理由になるね」と提案できます。こども家庭庁の「青少年のインターネット利用環境実態調査」などの公的な調査や、学校から配られる情報も、家庭のルールを考える参考になります。

親自身のスマホと感情を見直す

最後に、少しだけ親自身のことを振り返ってみましょう。子どもにスマホとの付き合い方を伝える前に、私たち大人も、スタンプと「了解です」で一日を終えていないでしょうか。仕事のチャット、ママ友・パパ友のグループ、家族の連絡。気づけば親自身も、気持ちを言葉にしないまま、既読の数に一喜一憂しているかもしれません。

よくある相談の典型例
「子どもに『スマホばっかり』と言いながら、
私もずっと見ているんです」
場面40代の父親。夕食後、子どもに「いつまで動画見てるんだ」と言ったあと、自分も仕事のチャットとニュースアプリを見続けている。寝る前、今日自分がどんな気持ちで過ごしたのか、まったく思い出せないことに気づいた。
親を責める話ではありません。大人も子どもも、同じ環境の中で、気持ちを味わう時間を少しずつ失っているのです。だからこそ、親が先に小さく変わると、子どもはそれを見ています。

親のための「感情タイムアウト」

親のワーク|3秒×3回
スマホを開く前に「今、どんな気分?」

本で紹介している「感情タイムアウト」は、1日3回アラームを鳴らして「今、どんな気分?」と3秒だけ自分に問いかけるワークです。スマホ時代の親には、アプリを開く前の3秒をおすすめします。「なんとなく不安だから開こうとしている」「疲れているから動画で逃げたい」。それに気づけるだけで、スマホとの付き合い方が少し変わります。

親が「今日はちょっと疲れたから、スマホ置いてお茶飲むね」と言葉にして実際にそうする姿は、どんな注意よりも子どもに伝わります。中学受験や部活で忙しい思春期の子との関わりについては、中学受験・思春期の子が「何も感じない」と言うとき|感情迷子さんと親の関わり方もあわせてご覧ください。

子どもの言葉を増やしたいなら、
まず親が、自分の気持ちに一語を足す。
家の中の言葉の温度は、そこから変わっていく。

よくあるご質問

「やばい」ばかり使う子どもは、語彙力が落ちているのでしょうか?
一語の流行り言葉を使うこと自体は、どの時代の子どもにも見られる自然なことです。心配なのは語彙の量より、「本当はどう感じているか」を自分で確かめる機会が減ることです。言葉を注意するより、「いいほうのやばい?」と一語を足す関わりを続けてみてください。
スマホの使用時間を制限すれば、気持ちを話すようになりますか?
時間の制限は、睡眠や生活リズムを守るためには役立ちます。ただ、制限するだけで気持ちを話すようになるとは限りません。むしろ一方的に取り上げると、子どもは親に本音を言わなくなることがあります。ルールは子どもの気持ちを聞きながら一緒に決め、空いた時間に横並びで話せる機会をつくるのがおすすめです。
親とのLINEはスタンプしか返ってきません。どうしたらいいですか?
スタンプが返ってくるだけでも、つながりは保たれています。返信を求めすぎず、親のほうから「今日はちょっとうれしいことがあった」のように感情つきのメッセージを送ってみてください。「今日の心の天気」のように、絵文字ひとつで答えられる問いかけも返しやすくなります。
子どもがSNSに「死にたい」と書いているのを見つけてしまいました。
まずは落ち着いて、責めたり問い詰めたりせずに「最近つらいことがあるの?」と声をかけてください。その言葉は、つらさを伝えるSOSです。話してくれたら「話してくれてありがとう」と受け止め、ひとりで抱えずに学校や、24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)などの相談窓口に相談してください。命の危険が迫っているときは、迷わず119番・110番へ連絡してください。
動画やアニメばかり見ているのが心配です。
見る内容や時間には目を配りつつ、それを気持ちの言葉を育てる教材として使ってみてください。「この人、今どんな気持ちだと思う?」と登場人物の気持ちを一緒に想像するだけで、感情を想像する力のトレーニングになります。子どもが好きなものに親が関心を持つことは、それ自体が安心できる関係づくりにもなります。
スタンプひとつの奥にも、気持ちはある。
取り上げるのではなく、一語を足す。
「やばいって、どっちのやばい?」から始めよう。
SNS時代でも、気持ちの言葉は家庭で育てられます。

自分を大切にしよう

スタンプや「やばい」「エモい」「無理」の一語で気持ちを伝えることは、それ自体は子どもたちの大切なコミュニケーションの道具です。ただ、便利な一語「だけ」になると、本人にも自分の気持ちの中身が見えにくくなります。既読やグループLINEの空気の中で「本音を打たない」ことを覚え、短い動画の連続で気持ちを味わう前に次へ流れていく。SNS時代の子どもたちは、気持ちを細かく見分ける練習の機会を、知らないうちに失いやすい環境にいます。

だからこそ、親にできることがあります。スマホを取り上げるのではなく、一語を否定せずに受け取り、「いいほう? 大変なほう?」「ちょっと? すごく?」ともう一語を足す。親子のLINEで心の天気を送り合い、親が感情つきの言葉で連絡する。夜中のSNSやネットいじめで心が乱れているサインには早めに気づき、「死にたい」という言葉はつらさを伝えるSOSとして受け止め、ひとりで抱えずに相談先を頼る。そして親自身も、スマホを開く前の3秒で「今、どんな気分?」と自分に問いかけてみてください。

子どもの気持ちが見えなくなったと感じるのは、それだけ子どもを大切に思っているからです。焦らなくて大丈夫。自分を大切にしよう。親が自分の気持ちに一語を足せるようになると、家の中の言葉の温度が変わり、子どもも少しずつ、スタンプの奥にある気持ちを言葉にしはじめます。

ひとりで抱えないでください(子ども本人も、保護者も相談できます)
24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310(文部科学省)
チャイルドライン 0120-99-7777(18歳まで)
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
よりそいホットライン 0120-279-338(24時間)
いのちSOS 0120-061-338
厚生労働省「まもろうよ こころ」(https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/)でSNS相談先を探せます
命の危険が迫っているときは、迷わず119番・110番へ

本記事の参考資料・科学的根拠

  • 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)原稿
  • 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料
  • Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation: Alexithymia in Medical and Psychiatric Illness. Cambridge University Press.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
  • Kashdan, T.B., Barrett, L.F., & McKnight, P.E. (2015). Unpacking emotion differentiation. Current Directions in Psychological Science, 24(1), 10-16.
  • Lieberman, M.D. et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421-428.
  • こども家庭庁「青少年のインターネット利用環境実態調査」
  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」
監修|中島 輝
心理カウンセラー・自己肯定感アカデミー会長・「6つの感」理論創始者
著書累計77万部・15,000人臨床・回復率95%
本記事は心理学的知見に基づく一般情報です。医学的診断や治療の代わりにはなりません。心身に不調を感じる場合は、医療機関・専門家へのご相談をおすすめします。

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