「感情的と思われたくない」女性リーダーへ|感情を言葉にして信頼されるリーダーシップ

「感情的と思われたくない」女性リーダーへ|感情を言葉にして信頼されるリーダーシップ

「感情的と思われたくない」女性リーダーへ
感情を言葉にして信頼されるリーダーシップ

会議で自分の提案が軽く流された。言い返したいけれど、ここで声を荒らげたら「やっぱり女性は感情的」と思われる。だから笑顔で「承知しました」と引き取り、帰りの電車でどっと疲れが出る。そのくせ部下からは「リーダーって、何を考えているかわからない」と言われてしまう。そんな経験はありませんか。あなたに必要なのは、感情を抑える力ではなく、感情を「言葉にする」力かもしれません。チームリーダー・管理職として働く女性、そして昇進を打診されて迷っている女性に向けて、信頼されるリーダーシップのための感情の言語化をお伝えします。

中島 輝(中島輝)
心理カウンセラー/自己肯定感アカデミー会長/「6つの感」理論創始者/著書累計77万部/15,000人臨床/『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる自己肯定感の教科書』(SBクリエイティブ・累計32刷)『働く人のための自己肯定感』著者

「感情的」と「冷たい」のあいだで揺れる女性リーダーの二重拘束

リーダーになった女性から、よくこんな相談を受けます。「怒ると感情的だと言われる。でも、抑えていると冷たいと言われる。いったい、どうすればいいんでしょう」。

これは、あなたの性格やスキルの問題ではありません。心理学では、ある役割に期待される振る舞いと、その人の属性に向けられる期待がずれているとき、どちらを選んでも評価が下がりやすい状況が生まれることが知られています。社会心理学者のイーグリー(Eagly)とカラウ(Karau)は、これを「役割不一致」という考え方で説明しました。リーダーには「はっきり主張する」「決断する」ことが求められる一方、女性には「やさしく」「協調的に」あることが期待されやすい。その板挟みが、女性リーダーを動きにくくしているのです。

よくある相談の典型例
「悔しかったはずなのに、
家に帰ると何も感じていないんです」
場面30代後半・課長職の女性。部長の前で、自分のチームの成果を別の課長の手柄のように話された。その場では「補足させてください」と淡々と数字だけを説明した。帰宅後、夫に「今日どうだった?」と聞かれ、「普通だよ」と答えたまま、夜中に何度も目が覚めた。
この方は冷静に対応しました。それ自体はすばらしいことです。けれども、悔しさや怒りが一度も言葉にされないまま、心の奥にしまいこまれています。夜中に目が覚めるのは、しまいこまれた感情が「まだ片づいていない」と知らせているサインかもしれません。

こうした状態を、中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』では「感情迷子さん」と呼んでいます。感情をうまく認識・表現しにくくなっている状態のことです。心理学でいう「アレキシサイミア(失感情症)」に近い考え方で、感情がないのではなく、感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態を指します。病名ではなく、誰もが持つ特性の濃淡です。基本的な考え方はアレキシサイミア(失感情症)とは|感情に名前がつけられない人の特徴・原因・回復のヒントでまとめています。

約10人に1人
感情に気づき、言葉にすることが難しい傾向が強い人の割合(研究により約10〜16%)。
もともとの傾向がなくても、強いストレスが続くと一時的に同じ状態になることがあります
出典:TAS-20等を用いた複数の疫学研究、中島輝・自己肯定感アカデミー講座資料疫学データ

女性リーダーの多くは、もともと感情が乏しいわけではありません。むしろ、相手の気持ちに敏感で、場の空気をよく読む人ほど、「感情的と思われないように」と自分の感情に何重ものブレーキをかけています。迷子という言葉には、帰る場所があるという前提が含まれています。今は感情が見えにくくなっていても、それは取り戻せる状態です。

怒りや悔しさを飲み込むと、何が起きるのか

「怒りは表に出さない」「悔しさは顔に出さない」。リーダーとして、それは身につけるべき技術だと考えている方も多いでしょう。確かに、感情をそのままぶつけることは、チームにとってよいことではありません。けれども、飲み込んだ感情は消えるわけではありません。

体に出る

本では、30代の会社員アカネさん(仮名)の例が紹介されています。アカネさんは職場でも家庭でも「大丈夫」「問題ありません」をくり返し、体に不調が出るまで自分の限界に気づけなかったといいます。言葉にならない感情は、肩こり、頭痛、胃の不快感、眠りの浅さといった体の言葉で表に出てきやすいのです。

うれしさまで感じにくくなる

感情のスイッチは、つらい感情だけを選んで切ることができません。怒りや悔しさを感じないように回路を絞ると、プロジェクトが成功したときの誇らしさや、部下の成長を見たときのうれしさまで薄くなっていきます。「チームが表彰されたのに、ほっとしただけだった」。管理職の女性からよく聞く言葉です。

チームに「温度」が伝わらなくなる

もうひとつ見落とされがちなのが、チームへの影響です。リーダーの感情が見えないと、部下は「この人は今、満足しているのか、不満なのか」がわかりません。わからないと、人は安全側に倒れて、報告や相談を控えるようになります。感情を飲み込むことは、リーダー本人だけでなく、チームのコミュニケーションの量も減らしてしまうのです。

飲み込んだ感情起きやすいこと
会議で意見を流された悔しさ次の会議で発言が減る、資料ばかり厚くなる
上司の理不尽な指示への怒り帰宅後のイライラ、家族へのそっけない態度
部下のミスへの落胆自分で抱え込んで仕事を巻き取る
評価への不安完璧主義が強まり、休日も仕事が頭から離れない

飲み込んだ感情は、
消えたのではなく、
別の出口を探しているだけ。

感情を「出す」と「言葉にする」はまったく別のこと

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。感情を「出す」ことと、感情を「言葉にする」ことは、まったく別のことです。

感情を「出す」とは、声を荒らげる、ため息をつく、涙を見せる、机をたたく、といったように、感情がそのまま表情や態度にあふれることです。一方、感情を「言葉にする」とは、「今、私は少し焦っています」「この決定には正直、悔しさがあります」と、自分の状態を言葉で相手に伝えることです。前者は相手を驚かせたり萎縮させたりしやすいのに対し、後者は相手に「この人は今こういう状態なんだ」という情報を渡します。

二重拘束から抜ける「第三の道」 感情を出すのでも、抑えるのでもなく、言葉にする 感情をそのまま出す 声を荒らげる・ため息・涙 →「感情的なリーダー」 相手が萎縮しやすい 感情を抑えこむ 無表情・笑顔で受け流す →「冷たいリーダー」 何を考えているかわからない 感情を言葉にする 「この決定には、正直悔しさがあります」 → 状態が伝わり、信頼が生まれる
▲ 感情を「出す」と感情的に見られ、「抑える」と冷たく見られる。その二択の外に、感情を「言葉にする」という道があります。言葉にした感情は、相手にとって判断の材料になります。

理由を言葉にすると、受けとめられ方が変わる

職場での怒りの表現と評価について調べた、ブレスコル(Brescoll)とウールマン(Uhlmann)の研究(2008年)があります。この研究では、仕事の場面で怒りを表した女性は、同じように怒りを表した男性より低く評価されやすいという結果が出ました。ただし、怒りの理由を言葉で説明した場合には、評価の下がり方が小さくなったことも報告されています。

これは、とても現実的なヒントです。不公平な評価のされ方そのものは、組織全体で変えていくべき問題です。そのうえで、今日の職場で自分を守る方法として、感情を「態度」ではなく「理由つきの言葉」で伝えることは、女性リーダーにとって大きな武器になります。

また、感情に名前をつけると、不安や怒りに関わる脳の扁桃体の活動が下がることが、リーバーマン(Lieberman)らの研究(2007年)で示されています。「私は今、怒っている」と言葉にすること自体が、怒りに飲み込まれないためのブレーキになるのです。言葉にすることは、感情的になることの反対側にあるといってもよいでしょう。

会議で使える感情の言葉の型|事実・感情・要望の3点セット

では、実際の会議ではどう言えばいいのでしょうか。おすすめは、「事実」「感情」「要望」を1セットで伝える型です。感情だけを言うと唐突に聞こえますが、事実と要望にはさまれると、感情は「判断材料のひとつ」として自然に伝わります。

会議で使える「事実・感情・要望」の型 ① 事実 起きたことを短く 「納期が2週間 前倒しになりました」 ② 感情 強さもそえて一言 「チームの負荷に そこそこ不安があります」 ③ 要望 何をしてほしいか 「優先順位を一緒に 決めさせてください」 感情は「事実」と「要望」にはさむと、判断材料として伝わる
▲ 感情の部分には「ちょっと・そこそこ・すごく」の3段階で強さをそえると、聞き手は状況の深刻さをつかみやすくなります。

場面ごとの言い換えの例を挙げます。

場面飲み込む/出してしまう言葉にする
提案が流された黙る/「もういいです」と言う「この案はチームで時間をかけて練ったので、このまま流れるのは残念です。来週もう一度10分いただけますか」
手柄を横取りされた何も言わない/強い口調で訂正する「先ほどの件、実務は私のチームが担当しました。メンバーの努力が伝わらないのは悔しいので、補足させてください」
無理な追加依頼「承知しました」と全部引き受ける「お受けしたい気持ちはありますが、今の体制では正直かなり厳しいと感じています。どれかを後ろにずらせますか」
部下の大きなミス無言で巻き取る/感情的に叱る「正直、驚きましたし、少し焦っています。まず状況を一緒に整理させて」

本では、「このタスクは少し苦手で不安な部分があるので、時間がかかるかもしれません。フォローしてもらえたらありがたいです」のように、感情を1つ加えるだけで、相手は「この人は今こういう状態なんだ」と理解でき、信頼が生まれると書かれています。アカネさんも、ワークを続けた数か月後には「このプロジェクトは少し不安があるので、サポートをお願いしたいです」と言えるようになり、「以前の私には考えられないことです」と話してくれました。

「感情の単語」を1つだけ入れる

最初から完璧な型で話す必要はありません。まずは、いつもの発言に「残念」「心配」「うれしい」「悔しい」のうち1語だけを足してみてください。「この数字は心配です」「この結果はうれしいです」。それだけで、あなたの発言には温度が生まれます。

1on1で部下の感情を受けとめ、自分の感情も伝える

1on1は、リーダーにとって感情の言葉を使ういちばんの練習の場です。ところが、真面目な女性リーダーほど、1on1を「課題の確認と助言の時間」にしてしまいがちです。部下の話を聞きながら、頭の中では次に言うべきアドバイスを組み立てている。思い当たる方も多いのではないでしょうか。

解決策の前に「共感の一言」

本で紹介している「共感の一言」は、正しいことを言いたくなったら、まず共感の言葉を先に出すというワークです。「それは大変だったね」「悩ましいね」と一言置いてから、助言に入ります。相手が「わかってもらえた」と感じてから届けた助言は、同じ内容でもずっと受けとめられやすくなります。

リーダー自身の感情も、少しだけ見せる

もうひとつ大切なのが、リーダー自身の感情を少しだけ言葉にすることです。「私も新任のころは、会議で発言するのが怖かった」「今期の目標には、正直プレッシャーを感じている」。上司が感情を口にしない職場では、部下も感情を口にしなくなります。リーダーが先に感情を言葉にすることは、チームに「ここでは気持ちを話してもいい」という合図を送ることになります。チームの成果との関係については、感情の言語化が業績を変える|心理的安全性とアレキシサイミアの関係で詳しく解説しています。

  • 1on1の冒頭で「今週の気分を3段階でいうと?」と聞く
  • 部下の報告には、評価より先に「それは手ごたえがあったね」など感情の言葉で返す
  • 自分の感情を、1回の1on1で1つだけ言葉にする
  • 部下が「大丈夫です」と答えたら、「大丈夫の中に、少しでも気になることはある?」と聞き直す
  • 終わり際に「今日話してみて、どんな感じ?」と感想を聞く

感情を見せることは、弱さを見せることではありません。自分の状態を正確に伝えられるリーダーは、部下から見て「予測できる」リーダーです。予測できる相手には、人は安心して報告や相談ができるのです。

ロールモデルがいない孤独を、言葉にして分け合う

女性リーダーが感情を飲み込みやすい背景には、身近にロールモデルが少ないという事情もあります。厚生労働省の「雇用均等基本調査」では、課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は1割強にとどまっています。職場によっては、管理職会議で女性が自分ひとり、ということも珍しくないでしょう。

ロールモデルがいないと、「こういうとき、ほかの女性リーダーはどうしているのだろう」と確かめる相手がいません。その結果、迷いや不安を誰にも話さないまま、「私が弱いからだ」と自分のせいにしてしまいやすいのです。孤独は、それ自体が感情を見えにくくします。話す相手がいなければ、感情は言葉になる機会を失うからです。

「ひとりのロールモデル」ではなく「部分ロールモデル」

完璧なロールモデルを探す必要はありません。「会議での切り返しはAさん」「部下との距離感はBさん」「家庭との両立はCさん」のように、部分ごとに参考にする人を決めると、ずっと見つけやすくなります。社外の勉強会や、他社の女性管理職どうしのつながりも、心強い場になります。

そして、そうした相手と話すときには、ぜひ「何をしたか」だけでなく「そのとき、どう感じたか」を話してみてください。「私もあの会議、すごく悔しかった」。その一言を交わせる相手が1人いるだけで、孤独の重さは驚くほど軽くなります。

同じ立場の人と、
「何をしたか」ではなく「どう感じたか」を話す。
それが、ロールモデル不在の時代の支え合い方。

昇進をためらう気持ちを言語化する

昇進を打診されたとき、「私には無理です」「まだ早いと思います」と反射的に答えてしまう女性は少なくありません。けれども、その「無理」の中身を言葉にしてみたことはあるでしょうか。

「無理」は感情ではなく、結論です。その手前には、いくつもの感情が重なっています。たとえば、次のようなものです。

  • 今の仕事が好きで、手放すのがさみしい
  • 家庭との両立が回らなくなるのではと不安
  • 同僚から「なぜあの人が」と思われるのが怖い
  • 期待に応えられなかったときが心配
  • 本当は少しうれしい、でもそれを認めるのが恥ずかしい

感情を一つひとつ見分けると、対処の方法も見えてきます。不安が「家庭との両立」なら、働き方や支援の相談ができます。怖さが「周りの目」なら、それは昇進そのものではなく、職場の関係性の問題かもしれません。「無理」をほどいてみると、実は「条件が整えば、やってみたい」が隠れていることもあるのです。

未来日記で「その先の気持ち」を描いてみる

本で紹介している「未来日記」は、週末などの5分を使って、「1年後の私は、どんな気持ちで毎日を過ごしているか」を書くワークです。昇進に迷ったら、「引き受けた1年後の私」と「断った1年後の私」の2通りの未来日記を書いてみてください。出来事ではなく、そのときの気持ちを中心に書くのがコツです。

書いてみると、「引き受けた私」は大変そうだけれど、どこか誇らしそうにしている。「断った私」はほっとしているけれど、少し悔しそうにしている。そんなふうに、頭で考えていたときには見えなかった本音が、感情の言葉として浮かびあがってきます。どちらを選ぶかはあなたの自由です。大切なのは、「なんとなく無理」ではなく、自分の感情をわかったうえで選ぶことです。

中島輝より一言

カウンセリングで昇進の迷いを話してくださる女性の多くは、最初「私には向いていないので」と言います。でも、「本当はどんな気持ちがありますか」とうかがうと、少し間があって「……やってみたい気持ちも、あるんです」とおっしゃることが本当に多いのです。その「やってみたい」は、あなたの中の自己決定感の芽です。周りの期待でも、遠慮でもなく、自分の感情から選ぶこと。それが、迷いながらでも前に進めるリーダーの土台になります。

忙しいリーダーのための1日5分のワーク

リーダーの1日は、会議と判断の連続です。ここでは、本で紹介しているワークを、女性リーダーの1日に合わせて作り直しました。合計しても5分ほどでできます。

ワーク1|3秒×3回
感情タイムアウト|会議の前に3秒

1日3回、スマホのアラームを設定し、鳴ったら「今、どんな気分?」と3秒だけ自分に聞きます。おすすめは、朝いちばんの会議の前、昼食のあと、退勤の直前です。会議の前に自分の状態を知っておくと、「今日は少しイライラしているから、発言の前にひと呼吸置こう」と準備ができます。

ワーク2|1分
3段階温度計|会議のあと、席に戻ったら

会議が終わって席に戻ったら、今の感情に「ちょっと・そこそこ・すごく」の3段階で強さをつけます。「ちょっと悔しい」「そこそこ手ごたえ」「すごく疲れた」。この1分の記録が、次に「事実・感情・要望」の型で話すときの材料になります。感情を細かく区別できる人ほど、ネガティブな感情からの回復が早いとされています。

ワーク3|1分
比喩レッスン|言葉にならないモヤモヤを、何かにたとえる

感情の名前がすぐに出てこないときは、「今の気持ちは○○みたい」と何かにたとえてみます。「ずっと背伸びしているみたい」「ブレーキを踏みながらアクセルを踏んでいるみたい」。たとえは、名前のない感情を外に出すための入り口です。たとえが見つかったら、「それはつまり、どんな気持ち?」と自分に聞いてみてください。

ワーク4|2分
感情だけ日記|寝る前に、今日感じたことだけを書く

夜、出来事は書かずに、今日感じたことだけを書きます。「会議で悔しかった。でも部下の一言がうれしかった」「とくに何も感じなかった」。最後の「何も感じなかった」も立派な記録です。感情を書き出すことがストレスの軽減と関係していることは、社会心理学者ペネベーカー(Pennebaker)らの筆記開示(エクスプレッシブ・ライティング)の研究で示されてきました。出来事だけでなく、感情に触れて書くことがポイントです。

6つの感の木のたとえでいえば、感情に気づく練習は「根」にあたる自尊心≒自己存在感を、気づいた感情を受け入れることは「幹」にあたる自己受容感を育てます。そのうえで、自分の感情から選ぶ経験が「花」である自己決定感を咲かせていきます。リーダーとしての自信は、スキルの積み重ねだけでなく、この根と幹の太さに支えられています。

よくあるご質問

感情を言葉にしたら、かえって「感情的」と思われませんか?
声を荒らげることと、「私は今、悔しさを感じています」と落ち着いて伝えることは、聞き手にとってまったく違う体験です。感情に理由と要望をそえて伝えると、多くの場合「冷静な人」という印象になります。最初は「残念」「心配」など、職場で使いやすい言葉から始めてみてください。
涙が出そうになったときは、どうすればいいですか?
涙は自然な反応で、恥ずかしいことではありません。その場で話し続けるのが難しければ、「少し気持ちが動いているので、5分だけ時間をください」と言葉にして席を外すのもひとつの方法です。涙を隠すより、状態を言葉で伝えるほうが、相手も対応しやすくなります。
男性の多い管理職会議で、感情の話をするのは場違いではないでしょうか。
いきなり「気持ち」の話をする必要はありません。「懸念しています」「手ごたえがあります」「リスクを感じています」など、ビジネスの場で使い慣れた言葉も、立派な感情の言葉です。言葉の形を変えても、自分の状態を伝えていることに変わりはありません。
昇進を断ったら、もうチャンスはないのではと不安です。
その不安自体も大切な感情です。断るにしても引き受けるにしても、「今は家庭の事情で不安が大きいのですが、仕事への意欲はあります」のように、理由と気持ちを言葉にして伝えておくと、次の機会につながりやすくなります。未来日記で、自分の本音を確かめてから答えるのもおすすめです。
最近、何をしても楽しくなく、眠れない日が続いています。
何も楽しめない、眠れない、食欲がないといった状態が2週間以上続く場合は、うつ病などの可能性もあるため、心療内科や精神科、産業医に相談してください。アレキシサイミア自体は病名ではありませんが、強いストレスが続いているサインであることがあります。
感情を抑えるのでも、ぶつけるのでもなく。
言葉にして、手渡す。
それが、信頼されるリーダーの第三の道。
次の会議で、「残念」「心配」「うれしい」を1つだけ。
あなたの言葉に、温度が戻ってきます。

自分を大切にしよう

「感情的と思われたくない」。その思いは、あなたがこれまで職場で真剣に信頼を積み上げてきた証です。けれども、怒りや悔しさを飲み込み続けると、体に不調が出たり、うれしさまで感じにくくなったり、チームに自分の温度が伝わらなくなったりします。それは、あなたの弱さではなく、二重拘束の中で自分を守ろうとしてきた結果です。

感情を「出す」ことと「言葉にする」ことは違います。事実・感情・要望の型で伝えること、1on1で共感の一言を置き、自分の感情も少しだけ見せること、昇進の迷いを「無理」ではなく感情の言葉でほどいてみること。どれも小さな一歩ですが、あなたを「何を考えているかわからない人」から「状態が伝わる、信頼できるリーダー」へと変えていきます。

リーダーである前に、あなたはひとりの人です。悔しいときは悔しいと、うれしいときはうれしいと、まずは自分にだけでも言葉にしてあげてください。自分を大切にしよう。自分の感情を大切にできるリーダーは、チームの一人ひとりの感情も大切にできるリーダーになっていきます。

本記事の参考資料・科学的根拠

  • 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)原稿
  • 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料
  • Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation: Alexithymia in Medical and Psychiatric Illness. Cambridge University Press.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
  • Eagly, A.H., & Karau, S.J. (2002). Role congruity theory of prejudice toward female leaders. Psychological Review, 109, 573-598.
  • Brescoll, V.L., & Uhlmann, E.L. (2008). Can an angry woman get ahead? Status conferral, gender, and expression of emotion in the workplace. Psychological Science, 19, 268-275.
  • Lieberman, M.D. et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18, 421-428.
  • Pennebaker, J.W. (1997). Writing about emotional experiences as a therapeutic process. Psychological Science, 8, 162-166.
  • 厚生労働省「雇用均等基本調査」
監修|中島 輝
心理カウンセラー・自己肯定感アカデミー会長・「6つの感」理論創始者
著書累計77万部・15,000人臨床・回復率95%
本記事は心理学的知見に基づく一般情報です。医学的診断や治療の代わりにはなりません。心身に不調を感じる場合は、医療機関・専門家へのご相談をおすすめします。

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