『やって当たり前』で感謝されない仕事へ
バックオフィスと感情の言語化
月末の締め日。経費精算の差し戻しをしたら「細かいなあ」と言われ、給与計算が1円も間違わずに終わっても誰も何も言わない。でも、たった一度の入力ミスは、翌朝には部署中に知れわたっている。バックオフィスの仕事は、うまくいっているときほど見えず、うまくいかなかったときだけ見える仕事です。心理学には、人は良い出来事より悪い出来事に強く反応するという研究があります。だから「ありがとう」は届かず、指摘だけが積もっていく。その中で多くの担当者が、「何も感じないようにする」ことで毎日を回しています。凍った気持ちをほどき、見えない貢献を自分で確かめる方法を、アドラー心理学と感情の言語化の視点からお伝えします。
結論:感謝されないのは、あなたの仕事に価値がないからではない
最初に結論をお伝えします。バックオフィスの仕事が感謝されにくいのは、仕事の価値が低いからではありません。「うまくいっている状態」が目に見えにくく、人の注意がミスのほうに向きやすいという、仕事の構造と心のクセが重なっているからです。
この記事のポイントは3つです。
- 「やって当たり前」の仕事ほど、感情が凍りやすい。指摘は届くのに感謝は届かない状態が続くと、心は傷つかないために「何も感じない」スイッチを入れる。
- 貢献感は、他人の評価を待たなくても持てる。アドラー心理学では、「自分は誰かの役に立っている」という感覚を、自分で確かめることができると考える。
- 感情を言葉にすると、仕事の伝え方が変わる。差し戻しや締め切りの催促を「事実+気持ち+お願い」の言葉にすると、板挟みのストレスが小さくなる。
背景にあるのは、心理学でアレキシサイミア(失感情症)と呼ばれる状態です。感情がないのではなく、感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態のことで、病名ではなく、一般の人の約10〜16%に強い傾向が見られる特性の濃淡です。中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』では、こうした状態を「感情迷子さん」と呼んでいます。基本についてはアレキシサイミア(失感情症)とはをご覧ください。
もともと感情を言葉にするのが得意だった人でも、「正確であること」「感情を出さず淡々と処理すること」を毎日求められる環境に長くいると、感じる回路を絞ることで自分を守るようになります。強いストレスから心を守るための一時的な反応は、専門的には「2次性アレキシサイミア」と呼ばれます。気持ちが動かなくなったのは、あなたが冷たくなったからではなく、心があなたを守ってきた結果なのです。
数字と研究で見る「やって当たり前」の心理
「感謝されない」「ミスだけ言われる」という感覚には、心理学の裏づけがあります。押さえておきたい研究を整理します。
| 知見 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| ネガティビティ・バイアス | 人は良い出来事よりも悪い出来事に強く反応し、長く覚えている傾向がある | Baumeister et al.(2001)「Bad is stronger than good」 |
| 感謝の効果 | 上司から一言感謝を伝えられた人は、その後の仕事への取り組みが増えた | Grant & Gino(2010) |
| 約6% | 日本で仕事に「熱意あふれる」社員の割合。世界でも最低水準 | Gallup「State of the Global Workplace」 |
| 感情のラベリング | 感情に名前をつけると、不安や恐れに関わる扁桃体の活動が下がる | Lieberman et al.(2007) |
| 約10〜16% | 一般の人のうち、アレキシサイミア傾向が強いとされる人の割合 | TAS-20等を用いた複数の疫学研究 |
心理学者ロイ・バウマイスターらは、多くの研究を整理し、人の心は悪い出来事のほうに強く、長く反応すると結論づけました。100回の正確な処理より、1回のミスのほうが記憶に残る。これは周りの人が意地悪なのではなく、人の心のしくみです。けれども、そのしくみの上に「うまくいって当たり前」の仕事が乗ると、担当者のところには指摘ばかりが集まることになります。
一方で、組織心理学者のアダム・グラントとフランチェスカ・ジーノは、短い感謝の一言が、人の意欲を目に見えて高めることを実験で示しました。感謝されることは、自分が誰かの役に立っているという実感、つまり自己有用感を支えるからです。裏を返せば、感謝の届かない職場は、意欲の土台が削られやすい職場だといえます。
ミスが目立つのは、人の心のしくみ。
感謝が届かないのは、仕事の構造。
あなたの価値とは、まったく別の話です。
ミスだけ指摘される職場で、心が凍っていく理由
ただ、最近は何をしても何も感じなくて」
バックオフィスの仕事には、感情を凍らせやすい条件がそろっています。
条件1|正確さが「ゼロ点」から始まる
営業なら契約を取れば加点されます。けれども経理や給与計算は、正しくて当たり前、間違えたら減点という評価になりがちです。100点が普通で、そこから引かれるだけ。この仕組みの中にいると、「よくできた」という喜びを感じる機会がほとんどありません。
条件2|感情を出さないことが「プロ」とされる
社員の個人情報、給与、評価、退職、ときには懲戒。バックオフィスには、感情が揺れる情報が集まります。それでも担当者は、それを顔に出さずに処理することを求められます。社会学者のA.R.ホックシールドは『管理される心』(1983年)で、仕事のために自分の感情を管理することを「感情労働」と呼びました。接客の仕事でよく語られる言葉ですが、「表情を変えずに淡々と処理する」こともまた、静かな感情労働です。
条件3|相談できる相手が社内にいない
給与や人事の情報は、同僚にも話せません。少人数の部署では、同じ立場の人がいないこともあります。話せない情報を抱えている人は、気持ちも一緒に抱え込みやすいのです。
こうした条件が重なると、感情は「ないこと」にされ、かわりに体に出てきます。肩こり、眠りの浅さ、月末が近づくと重くなる胃。アレキシサイミアの研究では、言葉にならなかった感情は、体の不調や行動として出てきやすいことが知られています。
中島輝より一言
カウンセリングで「経理です」「総務です」と自己紹介される方は、驚くほど同じことをおっしゃいます。「別に大した仕事じゃないので」。でも、話を聞いていくと、その方がいなければ会社の給料日は来ないのです。自分の仕事を小さく言う習慣は、自分の感情を小さく扱う習慣と、たいていつながっています。まずは、その口ぐせに気づくことから始めてみてください。
締め切りと板挟み|月末・決算・年末調整に起きている感情
バックオフィスの担当者は、二つの方向から押されます。一方には法律・規程・税務の締め切りがあり、もう一方には「忙しいんだから、あとで出すよ」という現場がある。その間に立つのが担当者です。
| よくある場面 | 表に出る言葉 | その下にあるかもしれない感情 |
|---|---|---|
| 経費精算の締め日に、領収書が出てこない | 「至急お願いします」 | 焦り、いら立ち、「なぜ私だけが急いでいるのか」という不公平感 |
| 規程どおりに差し戻したら「融通がきかない」と言われた | 「規程なので…」 | 悔しさ、さみしさ、自分の仕事を理解されない孤独 |
| 年末調整の書類を何度も催促する | 「何度もすみません」 | 申し訳なさ、うんざり感、自分を責める気持ち |
| 決算前に残業が続く | 「大丈夫です」 | 疲れ、不安、家族への罪悪感 |
| 上司と現場の言うことが違う | 「確認します」 | 混乱、怒り、どちらにもいい顔をしなければという緊張 |
表に出る言葉は、どれもていねいで、正しい言葉です。だからこそ、その下にある感情は、本人にも見えなくなっていきます。「至急お願いします」と打つたびに、本当は小さないら立ちが生まれている。それを毎月くり返すと、いら立ちは消えるのではなく、疲れや無気力として積もっていきます。
板挟みのつらさは、「どちらかが悪い」という問題ではありません。締め切りは締め切りとして正しく、現場の忙しさも本物です。正しいもの同士の間に立つ人の感情は、誰からも「間違っている」と言われない代わりに、誰からも気づかれないのです。だからこそ、まず自分で気づいてあげる必要があります。
「見えない貢献」を言葉にする|貢献ログのすすめ
バックオフィスの成果の多くは、「何も起きなかったこと」です。給料日に給料が振り込まれた。監査で指摘がなかった。新入社員が初日から問題なくパソコンを使えた。どれも誰かの仕事の結果なのに、何も起きなかったので誰も気づきません。
そこでおすすめしたいのが、「貢献ログ」です。業務日報とは別に、自分のためだけの短いメモをつけます。
「今日、何が起きなかったか」を1行で書く
例:「今日、Aさんの入社手続きが漏れなく終わった。だから、Aさんは初日に困らなかった」「振込データを二重に確認した。だから、取引先に迷惑がかからなかった」。「私がやったこと」+「だから、誰が助かったか」の形で書くのがポイントです。
そのときの気持ちに名前をつける
1行の最後に、「ほっとした」「ちょっと誇らしい」「正直、面倒だった」など、感情の言葉を1つだけそえます。きれいな感情でなくてかまいません。「面倒だった、でもやった」は、立派な貢献の記録です。
貢献ログを1か月続けた方の多くが、「自分はこんなに仕事をしていたのか」と驚かれます。感謝の言葉は他人がくれるものですが、貢献の事実は、自分で拾い集めることができるのです。評価面談の前に読み返せば、自分の仕事を説明する材料にもなります。
ここで大切なのは、貢献ログを「誰かに見せて認めてもらうための証拠集め」にしないことです。その理由は、次のアドラー心理学の考え方にあります。
アドラー心理学の貢献感|評価を待たずに「役に立てた」と知る
私は長年、オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラー(1870〜1937)の心理学をベースにカウンセリングをしてきました。アドラー心理学には、バックオフィスで働く人の心を支える考え方が二つあります。
考え方1|貢献感は、自分で持てる
アドラー心理学では、人が幸せを感じるための土台の一つに「貢献感」があると考えます。「自分は誰かの役に立っている」という感覚です。ここで大切なのは、貢献感は、他人から「ありがとう」と言われたときにだけ生まれるものではないという点です。
岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』で広く知られるようになった整理では、「自分は役に立てた」と自分で感じられれば、それでよいとされます。他人が気づくかどうか、感謝するかどうかは、他人の側のことだからです。給料が正しく振り込まれたことに社員が気づかなくても、あなたが正しく振り込んだという事実と、それで誰かの生活が支えられたという事実は変わりません。
考え方2|承認欲求に人生を預けない
アドラー心理学は、「認められたい」という欲求(承認欲求)を行動の基準にしないことを説きます。ほめられるために働くと、ほめられないときに働く意味がなくなってしまうからです。とくに「やって当たり前」の仕事は、承認を待っていたら心がもちません。
誤解のないように言うと、これは「感謝されなくても我慢しなさい」という意味ではありません。感謝されないことをさみしいと感じるのは自然なことです。その気持ちは「さみしい」と言葉にして受けとめていい。そのうえで、自分の価値を他人の反応に預けきらない。この二段構えが大切です。
| 承認を待つ働き方 | 貢献感で働く働き方 | |
|---|---|---|
| 心の中の問い | 「誰か気づいてくれた?」 | 「今日、誰の役に立てた?」 |
| 感謝されないとき | やる気がなくなる、怒りがたまる | さみしさは感じつつ、事実は自分で確かめる |
| ミスを指摘されたとき | 自分の全部を否定された気がする | 「この手順の課題」として切り分けられる |
| 育つ感覚 | 他人の評価に左右される自己有用感 | 自分で確かめられる自己有用感 |
「すべての悩みは対人関係の悩み」から見た板挟み
アドラーは「すべての悩みは対人関係の悩みである」と考えました。締め切りの苦しさも、よく見ると「書類を出してくれないあの人」「急に指示を変える上司」との関係の悩みです。だからこそ、締め切りそのものではなく、人に向けた言葉の出し方を変えると、悩みは小さくなるのです。
差し戻し・依頼・断りの伝え方|感情を「事実+気持ち+お願い」に
バックオフィスの担当者は、差し戻し、催促、断りなど、相手にとって「うれしくない連絡」をすることが多い仕事です。感情を押し殺して事務的に書くと冷たく受けとられ、気をつかいすぎると伝わりません。そこで役に立つのが、「事実+気持ち+お願い」の型です。
| 場面 | 感情を飲み込んだ言い方 | 事実+気持ち+お願い |
|---|---|---|
| 経費精算の差し戻し | 「規程違反のため差し戻します」 | 「領収書の日付が確認できませんでした(事実)。せっかく申請いただいたので、今月中に処理したいと思っています(気持ち)。日付のわかるものを25日までにお願いできますか(お願い)」 |
| 年末調整の催促 | 「何度もすみません、至急で…」 | 「未提出の方があと3名です(事実)。全員分そろわないと給与計算が止まってしまうので、少し焦っています(気持ち)。明日の正午までにご提出をお願いします(お願い)」 |
| 急な依頼を断る | 「……わかりました(引き受ける)」 | 「今週は決算の締めで手がいっぱいです(事実)。中途半端にお受けして迷惑をかけるのが心配です(気持ち)。来週火曜からなら対応できますが、いかがでしょう(お願い)」 |
「気持ち」の部分は、短くてかまいません。「焦っています」「心配です」「助かります」の一言があるだけで、文章が「規程」から「人」の言葉に変わります。相手も、あなたを「融通のきかない窓口」ではなく、同じ会社で働く一人の人として見やすくなります。
また、相手が書類を出さないことに怒りを感じたときは、アドラーの目的論を思い出してください。アドラー心理学では、感情は何かの目的のために使われると考えます。強い口調の催促は、「相手を動かす」ことが目的かもしれません。けれども、怒りで人を動かすと、相手はあなたを避けるようになり、次の書類はさらに遅れます。怒りの下にある「焦り」や「困っている」を言葉にするほうが、目的には近づけるのです。
バックオフィス版・感情の言語化ワーク
ここからは、中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』で紹介しているワークを、バックオフィスの仕事に合わせて作り直したものです。机の上で、誰にも気づかれずにできるものばかりです。
締め日の「3段階温度計」
月末や締め日の朝、今の気持ちを「1:落ち着いている 2:ざわざわする 3:かなり張りつめている」の3段階で測ります。付箋に数字だけ書いてモニターの端に貼っておくのもよい方法です。数字にするだけで、「今日は3だから、昼休みはしっかり休もう」と自分を扱えるようになります。
指摘されたあとの「5秒ルール」
ミスを指摘されたら、返事をする前に5秒だけ、胸のあたりに注意を向けます。「熱い」「ぎゅっとする」と体の感覚に気づいたら、心の中で「今、恥ずかしいんだな」と名前をつけます。感情に名前をつけると扁桃体の活動が下がるという研究(Lieberman et al., 2007)のとおり、名前をつけるだけで、反射的に自分を責める流れが少しゆるみます。
処理件数の横に「今日のオノマトペ」
その日の処理件数や作業メモの横に、「ぐったり」「すっきり」「もやもや」「ひやっ」など、擬音語・擬態語を一つ書きます。感情の言葉が出てこない日でも、オノマトペなら出てきやすいものです。数字の横に感情を置くと、数字だけでは見えない自分の状態が見えてきます。
帰り道の「感情だけ日記」
帰りの電車で、今日の出来事ではなく感情だけを3つ、スマホのメモに書きます。「焦り、ほっとした、少しさみしい」。出来事を書くと、どうしても業務の振り返りになってしまうので、あえて感情だけにします。心理学者ジェームズ・ペネベーカーの研究では、感情を含めて体験を書き出すことが、心身の健康によい影響を与えうると報告されています。
数字は、正確に。
感情は、ざっくりでいい。
「ぐったり」の一語も、立派な記録です。
自己有用感という「実」を、自分の手で育てる
自己肯定感は、6つの感で成り立っています。私はこれを一本の木にたとえてお伝えしています。根にあたる自尊心≒自己存在感、幹にあたる自己受容感、枝にあたる自己効力感、葉にあたる自己信頼感、花にあたる自己決定感、そして実にあたる自己有用感です。
バックオフィスの仕事でいちばん揺らぎやすいのは、実にあたる自己有用感です。感謝という日光が届かないと、実は熟しません。そして実が育たない木は、「自分はいてもいなくても同じ」という感覚に傾き、根の自尊心≒自己存在感まで細くしていきます。
けれども、実はほかの5つの感とつながっています。「面倒だったけど、やった」と自分の感情を認めることは幹の自己受容感を育て、「今日も締めに間に合った」と確かめることは枝の自己効力感を伸ばします。その上に、貢献ログで拾い集めた「誰かが助かった」という事実が実ります。他人の「ありがとう」を待たなくても、実は自分の手で確かめられる。これが、アドラー心理学の貢献感と、自己有用感が重なるところです。
管理職・経営者の方へ|見えない仕事を見える組織にする
この記事を、バックオフィスを率いる立場の方や、経営者の方も読んでくださっているかもしれません。担当者一人の工夫には限界があります。「やって当たり前」を組織の仕組みとして変えるために、できることを挙げます。
- 「起きなかったトラブル」を言葉にして伝える。「今月も給与が予定どおり出ました。ありがとう」。成果が見えない仕事ほど、言葉にしないと届きません。
- ミスの指摘は、人ではなく手順に向ける。「誰が間違えたか」より「どの手順なら防げるか」を一緒に考えると、担当者は感情を凍らせずにすみます。
- 締め切り前の感情を話してよい場をつくる。朝の5分で「今日の温度は?」と聞くだけでも、張りつめた空気は変わります。
- 一人部署をなくす。相談相手のいない担当者は、気持ちも抱え込みます。部署をまたいだ相談相手や、外部の専門家との連携を考えてください。
- 現場の部署に、バックオフィスの仕事の流れを知ってもらう。締め切りの理由がわかると、催促は「お願い」として受けとられやすくなります。
アドラー心理学で大切にされる勇気づけは、上から「よくやった」とほめることではありません。横の関係から「助かった」「ありがとう」を伝えることです。バックオフィスの担当者が欲しいのは、高い評価よりも、自分の仕事が誰かの役に立っていると知ることができる一言であることが多いのです。
秘書やアシスタントのように、他人を先回りして支える仕事の感情については上司の機嫌を先回りして疲れ果てるあなたへ|秘書・アシスタントと感情の言語化でも詳しく扱っています。
よくあるご質問
それは、あなたが働いた証拠です。
見えない貢献を、まず自分が見つけてあげてください。
貢献の実感は、自分で育てられるものです。
自分を大切にしよう
経理・総務・人事労務などのバックオフィスの仕事は、うまくいっているときほど見えず、ミスのときだけ目立つ仕事です。人の心には悪い出来事に強く反応するしくみがあり、そこに「正確で当たり前」という評価が重なると、担当者のところには指摘ばかりが集まります。締め切りと現場の板挟みの中で、悔しさや焦り、さみしさを毎日飲み込むうちに、感情は凍り、体の不調や休めなさとして出てくることがあります。
凍った感情は、小さな言葉でほどいていくことができます。「今日、何が起きなかったか」を貢献ログに書く。締め日の朝に3段階温度計で自分を測る。指摘されたら5秒だけ待って感情に名前をつける。差し戻しや催促は「事実+気持ち+お願い」で伝える。アドラー心理学が教えるように、貢献感は他人の評価を待たなくても、自分で確かめることができます。その積み重ねが、6つの感のうち、木の「実」にあたる自己有用感を、他人の反応に左右されない形で育てていきます。
誰にも気づかれない仕事を、毎日正確に積み重ねてきたあなたは、本当によく頑張っています。その頑張りを、「当たり前」で片づけないでください。「今月も、ちゃんと締めた。少し誇らしい」。その一言で十分です。自分を大切にしよう。あなたの仕事は、見えないところで、たくさんの人の毎日を支えています。
働く人のこころの相談:厚生労働省「こころの耳」
職場のトラブルの相談:都道府県労働局などの「総合労働相談コーナー」
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
本記事の参考資料・科学的根拠
- 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)原稿
- 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料
- Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation: Alexithymia in Medical and Psychiatric Illness. Cambridge University Press.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
- Baumeister, R.F., Bratslavsky, E., Finkenauer, C., & Vohs, K.D. (2001). Bad is stronger than good. Review of General Psychology, 5, 323-370.
- Grant, A.M., & Gino, F. (2010). A little thanks goes a long way: Explaining why gratitude expressions motivate prosocial behavior. Journal of Personality and Social Psychology, 98, 946-955.
- Gallup. State of the Global Workplace.
- A.R.ホックシールド『管理される心―感情が商品になるとき』(石川准・室伏亜希訳、世界思想社)
- Lieberman, M.D. et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18, 421-428.
- Pennebaker, J.W. (1997). Writing about emotional experiences as a therapeutic process. Psychological Science, 8, 162-166.
- アルフレッド・アドラー『人生の意味の心理学』
- 岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)

自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。







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