孫の「べつに」にさみしくなったら
祖父母だからできる感情の言葉の育て方
お盆に、久しぶりに孫が帰ってきた。好きだった煮物も用意して、玄関で待っていたのに、孫は「こんにちは」もそこそこにスマホを見ている。「学校はどう?」と聞いても「べつに」。「楽しい?」には「ふつう」。台所に戻って、なんだか胸の奥がしんとする。もし思い当たるなら、それは孫に嫌われたのではなく、孫も、そして私たちも、気持ちの言葉を探している途中なのかもしれません。祖父母という立場だからこそできる、感情の言葉の育て方をお伝えします。
久しぶりに会えた孫が、スマホから顔を上げない
『おばあちゃん、見て見て』と言ってくれたのに」
孫の成長を楽しみにしてきた方ほど、この「べつに」はこたえるものです。あんなにおしゃべりだった子が、急に口数が少なくなる。何を考えているのかわからない。こちらから話しかけるほど、壁が厚くなっていくように感じる。
けれど、長い人生を歩んでこられた皆さんなら、きっとご存じのはずです。言葉が少ないことと、気持ちがないことは、まったく別のことだと。黙って背中で語る人がいる。照れくさくて「ありがとう」が言えない人がいる。私たちの身のまわりには、言葉にならない思いを抱えた人が、昔からたくさんいました。
この記事では、孫の「べつに」の奥にあるものを一緒に見ていきながら、祖父母だからこそできる関わり方をお伝えします。そして最後には、孫のためだけでなく、皆さんご自身の気持ちに名前をつけるお話もしたいと思います。
「べつに」は拒絶ではなく、気持ちの迷子のサイン
感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態を、心理学ではアレキシサイミア(失感情症)と呼びます。難しい名前ですが、「感情がない」という意味ではありません。心の中では何かが確かに動いているのに、それを「うれしい」「さみしい」「くやしい」と見分けて言葉にするところで、うまくいかなくなっている状態です。くわしくはアレキシサイミア(失感情症)とは|感情に名前がつけられない人の特徴・原因・回復のヒントでご説明しています。
研究によって幅はありますが、一般の人の約10〜16%、およそ10人に1人に、この傾向が強く見られるといわれます。病気の名前ではなく、誰もが持っている特性の濃い・薄いのようなものです。
私はこの状態を「感情迷子さん」と呼んでいます。中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』で使っている言葉で、感情をうまく認識・表現しにくくなっている状態のことです。迷子という言葉には、帰る場所があるという前提が含まれています。迷っているだけで、帰り道はちゃんとあるのです。
思春期の孫に「べつに」が増える理由
小学校の高学年から中学生にかけて、子どもの心の中では、それまでになかった複雑な気持ちが次々に生まれてきます。友だちへのあこがれと嫉妬が混ざる。親から離れたいのに、さみしい。自分のことが好きになれない。気持ちが複雑になる時期に、それを表す言葉の数が追いついていない。だから一番短い言葉、「べつに」「ふつう」「やばい」で、ひとまずやり過ごすのです。
そこにスマホが加わると、気持ちはスタンプや短い言葉で送ることが多くなり、ゆっくり言葉を探す機会がさらに減っていきます。孫のスマホとの付き合い方が気になる方は、スタンプと「やばい」だけで気持ちを伝える子どもたち|SNS時代の感情の言語化と親の関わり方も参考になさってください。
孫の様子で、少し気をつけて見てほしいこと
多くの場合、「べつに」は成長の一場面です。ただ、次のような様子が重なって長く続くときは、心の疲れが体や行動に出ているのかもしれません。祖父母が直接どうにかしようとするより、気づいたことを、責める調子ではなく、そっと孫の親に伝えてあげてください。
- 好きだった食べ物や遊びにも、まったく興味を示さない
- おなかが痛い、頭が痛いと何度も言うのに、理由がはっきりしない
- 以前に比べて、表情がほとんど動かなくなった
- 夜遅くまで眠れていない様子がある
- 学校の話題になると、急に黙り込む、部屋にこもる
「べつに」は、扉を閉めた音ではない。
扉の向こうで、言葉を探している音。
急がずに、待ってあげられる人がいれば、扉は開く。
私たちの世代は「感情を出すな」と育てられた
孫のことを考えるとき、少しだけ、ご自分の子ども時代を思い出してみてください。
「男の子は泣くんじゃない」「女の子はにこにこしていなさい」「わがままを言うな」「人さまに迷惑をかけるな」。皆さんの多くは、こうした言葉をかけられて育ったのではないでしょうか。家族が多く、親は朝から晩まで働きづめで、一人ひとりの気持ちに耳を傾ける余裕はなかった。気持ちを口にすることは、どこか「はしたないこと」「甘えること」とされていた時代でした。
それは、決して親の愛情が足りなかったわけではありません。戦後の暮らしを立て直し、家族を食べさせることが何より大事だった時代に、感情を飲み込んで働くことは、生き抜くための知恵でもありました。
飲み込んできた気持ちは、消えたわけではない
ただ、そうして長い間飲み込んできた気持ちは、消えてなくなったわけではありません。書籍原稿の中に、50代の経営者ケンジさん(仮名)の話があります。ケンジさんは幼い頃から「泣くのは無能の証拠」と教えられ、感情を「ノイズ」として切り捨てて会社を大きくしてきました。けれどある時から「何のために働いているのかわからない」という虚無感に悩むようになります。カウンセリングの中で、自分の感情そのものに価値があると思えたとき、ケンジさんは初めて涙をこぼしました。
男性は「強くあれ」と言われて育ったことで、自分の弱さや悲しみを感じとりにくくなることがあり、こうした傾向は「規範的男性アレキシサイミア」と呼ばれることもあります。女性もまた、「家族の世話を優先して、自分の気持ちは後回し」という生き方を長く続けてきた方が少なくありません。
ここで大切なのは、ご自分を責めないことです。「私が感情を出さない親だったから、子どもも孫もこうなったのでは」と考える必要はまったくありません。その時代、その場所で、精一杯のことをしてこられたのです。そして、気づいた今からでも、感情の言葉は何歳からでも育て直すことができます。
中島輝より一言
私は幼い頃、里親に育てられました。5歳のとき、その里親が突然いなくなり、それから私は感情を表に出すのをやめてしまいました。中学のバスケットボール部で試合に勝ったときも、みんなが抱き合って喜ぶ輪の中で、私一人だけが無表情だったのを覚えています。長い時間をかけて、35歳でようやく暗闇から抜け出しました。だからこそ、皆さんにお伝えしたいのです。感情の言葉は、いくつになっても取り戻せます。孫と一緒に、もう一度育て直していけばいいのです。
祖父母は「評価しない大人」でいられる
孫にとって、祖父母はとても特別な存在です。なぜなら、親や先生と違って、成績や生活態度を評価しなくてもいい大人だからです。
親は、子どもを一人前に育てる責任があります。宿題はやったか、ゲームの時間は守っているか、塾の成績はどうか。毎日見ているからこそ、つい注意や評価の言葉が多くなります。先生も同じです。子どもたちは、一日中「評価されること」に囲まれて暮らしているのです。
| 親・先生 | 祖父母 | |
|---|---|---|
| 役割 | しつけ、勉強、生活の管理に責任がある | 管理の責任から少し離れていられる |
| かける言葉 | 「宿題は?」「ちゃんとしなさい」になりやすい | 「来てくれてうれしい」をそのまま言える |
| 時間の流れ | 毎日の忙しさの中で、急ぎがち | ゆっくり待つことができる |
| 孫にとって | がんばりを見せる相手 | がんばらなくてもいられる相手 |
この「評価しない」立場は、感情の言葉を育てるうえで大きな強みになります。人は、評価されるかもしれないと感じる相手には、本当の気持ちを話しにくいものです。「この人は、私が何を言っても、点数をつけない」と感じられるとき、子どもは安心して、まだ言葉になりきっていない気持ちを口にすることができるのです。
評価の言葉を、ひと呼吸おいて「気持ちの言葉」に
とはいえ、つい「勉強はちゃんとしてる?」「もっとご飯を食べなさい」と言いたくなるのが、孫を思う気持ちでしょう。そんなときは、ひと呼吸おいて、評価の言葉を気持ちの言葉に置きかえてみてください。
- 「勉強がんばってる?」→「毎日いそがしそうだね。疲れてない?」
- 「背が伸びたね、もう大人だね」→「大きくなったね。会えてうれしいよ」
- 「スマホばっかり見て」→「何かおもしろいのある? おばあちゃんにも見せて」
- 「部活でレギュラーになれたの?」→「部活、楽しい? しんどいときもある?」
右側の言葉には、こちらの気持ち(うれしい、心配)や、孫の気持ちへの関心がこめられています。答えが「べつに」でもかまいません。こうした言葉を何度も浴びることで、孫の中に「気持ちを言ってもいい相手」としての祖父母が育っていきます。
手を動かしながら話す|料理・畑・散歩・昔話
向かい合って「最近どう?」と聞かれると、大人でも身構えてしまいます。思春期の孫ならなおさらです。そこでおすすめしたいのが、一緒に手を動かしながら、横に並んで話すことです。
台所で、五感の言葉を交わす
一緒に料理をするのは、感情の言葉を育てる絶好の機会です。玉ねぎを炒める音、だしの香り、味見をしたときの顔。五感で感じたことを「いいにおいだね」「ちょっとしょっぱいかな」と言い合うことは、感情の言葉の一歩手前の練習になります。書籍原稿でご紹介している「五感スイッチ」というワークは、五感を一つずつ意識して「心地いい? 心地悪い?」と問いかけるものです。台所は、そのワークにぴったりの場所です。
畑や庭で、待つことを一緒に味わう
種をまいて、芽が出るのを待つ。トマトが赤くなるのを待つ。畑や庭の仕事には、「待つ」「楽しみにする」「がっかりする」といった気持ちが自然に生まれます。「芽が出てたね、うれしいね」「虫に食べられちゃって、くやしいね」。そんな言葉を孫の前で口にしてみてください。皆さんが自分の気持ちを言葉にする姿そのものが、孫にとってのお手本になります。
昔話は「出来事」より「気持ち」を語る
孫に昔の話をするときは、出来事だけでなく、そのとき感じた気持ちを添えてみてください。「おじいちゃんが若い頃は、こうだった」で終わらずに、「初めて給料をもらったとき、うれしくて、でも少しこわかった」「おばあちゃんが中学生のとき、友だちとけんかして、何日も眠れなかった」。祖父母も、迷ったり、くやしかったり、さみしかったりしながら生きてきた。その話は、孫にとって「自分の気持ちも、あっていいんだ」と感じられる何よりの贈り物です。
孫の「もしも」の話に、全力で乗る
小さな孫が「もしも空を飛べたら」「大きくなったらケーキ屋さんになる」と話してくれたら、どんなに突拍子もない話でも、「いいね! それでどうするの?」と全力で乗ってあげてください。書籍原稿で「子どもの空想に全力で乗る」として紹介しているワークです。空想の中でなら、子どもは傷つく心配をせずに、さまざまな気持ちを試しに味わうことができます。「もし1日好きなことができたら、何をする?」と、こちらから小さな「もしも」を投げかけるのもおすすめです。
手紙とはがきで交わす、気持ちの言葉
離れて暮らしていると、孫と会えるのは年に数回ということも多いでしょう。そんなとき、ぜひ使っていただきたいのが手紙やはがきです。
電話やビデオ通話は、その場ですぐ答えを求められるので、言葉を探すのが苦手な子には負担になることがあります。手紙なら、孫は好きなときに読み、時間をかけて考えることができます。返事が来なくても、「気持ちを言葉にして届けてくれる大人がいる」という経験そのものが、孫の心に残っていきます。
手紙に「気持ちの言葉」をひとつ入れる
手紙を書くときは、近況の報告に加えて、ご自分の気持ちをひとつ書き添えてみてください。
季節の出来事に、「胸があたたかくなった」という体の感覚と気持ちを重ねています。そして最後に、孫の様子を気づかう一言。説教やアドバイスを入れずに、気持ちだけを届けるのがポイントです。
孫と一緒につくる「感情ことば帳」
書籍原稿でご紹介している「感情ことば帳」は、歌の歌詞やドラマのセリフ、本の一節などで「この気持ち、わかる」と感じた言葉を書きとめておくワークです。これを、孫との手紙のやりとりに取り入れてみてはいかがでしょうか。
「最近読んだ本に、こんな言葉があったよ。おばあちゃんは、この気持ちがよくわかる」。俳句や短歌、昔の歌謡曲の一節でもかまいません。孫からも、好きな歌の歌詞やマンガのセリフを教えてもらう。世代の違う言葉を交換することで、孫も祖父母も、気持ちを表す言葉の引き出しが増えていきます。自分で言葉を作らなくても、誰かの言葉を借りるだけでいいのです。
ビデオ通話では「答えのいらない話」を
ビデオ通話をするときは、「学校はどう?」と質問を重ねるより、ご自分のことを短く話してみてください。「今日はね、近所の人とお茶をして、楽しかったよ」。孫が黙っていても、画面の向こうで聞いています。質問ではなく、こちらの気持ちを差し出す。それだけで、通話の空気はずいぶんやわらかくなります。
孫の年ごろ別・気持ちの言葉のかけ方
孫の年ごろによって、感情の言葉の育ち方は違います。ここでは、年代別に祖父母ができる関わりをまとめました。
| 年ごろ | この時期の様子 | 祖父母ができること |
|---|---|---|
| 幼児(3〜6歳) | 気持ちが体や行動ですぐ出る。泣く、怒る、かんしゃくを起こす。 | 「くやしかったね」「びっくりしたね」と、気持ちを代わりに言葉にして映し返す。絵本の登場人物の気持ちを一緒に想像する。 |
| 小学生 | 「楽しかった」「ふつう」など、大まかな言葉が中心。友だち関係で複雑な気持ちが生まれ始める。 | 「楽しかった」のあとに「どんなところが?」と一つだけ聞く。料理や畑仕事を一緒にしながら、五感の言葉を交わす。 |
| 中高生 | 「べつに」「やばい」が増える。親や大人と距離をとりたくなる時期。 | 質問を減らし、こちらの気持ちを短く伝える。手紙や好きな歌の話など、答えを急がせない方法で関わる。 |
どの年代でも共通しているのは、「正しい気持ちの言葉を言わせよう」としないことです。子どもが「ふつう」と言ったら、「そっか、ふつうか」とそのまま受けとめる。受けとめてもらえた経験が積み重なると、子どもは少しずつ、もう少し細かい言葉を探し始めます。
感情の言葉の土台には、自己肯定感の「6つの感」でいう自尊心≒自己存在感、つまり木の根にあたる「自分はここにいていい」という感覚があります。「来てくれてうれしい」「あなたがいるだけでうれしい」。祖父母が何気なくかける言葉は、孫の心の根っこを、静かに太くしていくのです。
孫の親(息子・娘夫婦)に、口を出しすぎない伝え方
孫の様子が気になると、つい孫の親に「もっと話を聞いてあげたら」「スマホばかり持たせて大丈夫なの」と言いたくなるかもしれません。孫を思う気持ちから出た言葉でも、子育て真っ最中の息子や娘、そのお連れ合いには、「自分の子育てを否定された」と聞こえてしまうことがあります。
今の子育て世代は、共働きで時間に追われ、仕事と家事と子どものことで手一杯になっている方が多いのです。そんな中で祖父母から助言を受けると、どんなにやさしい言い方でも、責められているように感じやすくなります。
「助言」より「ねぎらい」と「気づきの共有」を
- まずは「毎日大変だね。よくやってるね」と、子育てをねぎらう
- 気になったことは「〜したほうがいい」ではなく「〜な様子だったよ」と事実だけ伝える
- 伝えるのは、孫の前ではなく、二人きりのときに
- 「何か手伝えることがあったら言ってね」と、いつでも頼れる場所であることを示す
- 相手が話してくれたら、意見を言う前に「そうだったの」と最後まで聞く
たとえば、「あの子、最近あんまり話さないね。大丈夫?」ではなく、「この前、畑でトマトをとったとき、少しだけうれしそうにしてたよ。学校のことは話さなかったけど、元気そうでほっとした」。こう伝えれば、孫の親も「おばあちゃんのところでは、そんな顔をしているんだ」と、安心して受けとめることができます。
孫の親の気持ちにも、名前をつけてあげる
息子や娘も、仕事や子育てに追われる中で、自分の気持ちを後回しにしているかもしれません。「あなたも疲れてるでしょう。たまにはゆっくりしてね」。祖父母からのこの一言は、子育て世代の心にも、思いのほか深く届きます。孫の感情の言葉を育てる一番の近道は、孫の親が安心していられることなのです。
同じ世代の方が、ご自身のパートナーや親の介護との関係で感じる気持ちについては、夫が気持ちを話さない、親の介護に疲れた…|50代からの人間関係と「感情迷子さん」でも取り上げています。
ご自身の気持ちにも名前を|祖父母のための小さなワーク
最後に、孫のためではなく、皆さんご自身のためのワークをご紹介します。孫の「べつに」にさみしくなった、その「さみしさ」に、まずご自分で気づいてあげることから始めましょう。どれも書籍原稿の第4章のワークを、祖父母の暮らしに合わせて作り直したものです。
朝のお茶の前に「心の体温チェック」
朝、お茶をいれる前に、手のひらを胸に当てて「今、自分の体は温かい? 冷たい?」と3秒だけ聞きます。答えは「温かい」「冷たい」「よくわからない」のどれでもかまいません。体に聞くことは、心に聞くことの入り口です。毎朝続けると、季節や出来事による心の変化に気づきやすくなります。
カレンダーに「色彩感情カレンダー」
夜寝る前に、色鉛筆でカレンダーのその日のマスを、今日の気分に近い色で1マス塗ります。孫が来た日はオレンジ、帰ったあとは薄い水色。言葉にしにくい気持ちも、色なら表せることがあります。1か月たつと、カレンダーがご自分の心の日記になっています。
新聞や本で「感情ことば帳」
新聞の投書欄やコラム、好きな作家の小説、テレビドラマのセリフで「この気持ち、わかる」と感じた言葉を、手帳に書きとめます。自分で言葉を作らなくてかまいません。たまったら、孫への手紙に一つ引用してみてください。
週末に「未来日記」
週末に5分だけ、「1年後の私は、どんな気持ちで毎日を過ごしていたい?」と考えて書いてみます。予定や目標ではなく、「おだやかでいたい」「孫と笑っていたい」といった気持ちを想像するのがポイントです。これからの日々を、どんな気持ちで過ごしたいか。その答えが、孫との関わり方のヒントにもなります。
孫が帰ったあとのしんとした家で、「さみしいな」と口に出してみる。それだけでも、心は少し落ち着きます。研究でも、感情に名前をつけることで、脳の扁桃体という感情の警報装置の活動が落ち着くことが示されています(Lieberman et al., 2007)。さみしいと感じられるのは、それだけ孫を大切に思っている証拠です。その気持ちを、どうかご自分で抱きしめてあげてください。
孫の「べつに」にさみしくなったら、
まずはその「さみしい」に、名前をつけてあげる。
あなたが気持ちを言葉にする姿が、孫への何よりの贈り物。
よくあるご質問
評価しない大人として、横に並んで待っていよう。
そして今日は、自分の「さみしい」にも名前を。
孫の心に、静かに根をはっていきます。
自分を大切にしよう
久しぶりに会った孫の「べつに」は、祖父母の心に小さなさみしさを残します。けれどその言葉は、扉を閉める音ではありません。成長とともに複雑になっていく気持ちを、まだうまく言葉にできない孫の、精一杯の返事です。感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態は、誰にでも濃い・薄いがあり、関わりの中で少しずつ育っていきます。
祖父母は、成績や態度を評価しなくてもいい、特別な大人です。台所で五感の言葉を交わし、畑で待つ楽しみを分かち合い、昔話に「そのときの気持ち」を添え、手紙で気持ちの言葉を届ける。孫の親には、助言よりもねぎらいを。横に並んで、急がずに待つことが、孫の感情の言葉を育てる何よりの力になります。そして、「感情を出すな」と言われて育った私たちの世代も、今からでも感情の言葉を取り戻すことができます。
孫が帰ったあとの静かな部屋で、「さみしいな」「でも、会えてうれしかったな」と、ご自分の気持ちに名前をつけてみてください。その小さな一言が、ご自身の心をあたため、次に孫と会うときの笑顔につながっていきます。自分を大切にしよう。長い年月を生きてこられたあなたの気持ちもまた、言葉にされるのを待っている、大切な宝物です。
本記事の参考資料・科学的根拠
- 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)原稿
- 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料
- Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation: Alexithymia in Medical and Psychiatric Illness. Cambridge University Press.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
- Lieberman, M.D. et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421-428.
- Levant, R.F.(規範的男性アレキシサイミアに関する研究)

自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。






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