夫が気持ちを話さない、親の介護に疲れた…
50代からの人間関係と「感情迷子さん」
夕食の席で「今日はどうだった?」と聞いても、夫の返事は「別に」。週末は実家へ通い、母に「何か困ってない?」と聞けば「大丈夫よ」。帰りの車の中で、ふと気づくのです。私自身も、もう長いこと「大丈夫」としか言っていないと。家族のため、地域のために心を配ってきた年月の先で、自分の気持ちがどこかへ行ってしまったように感じる。そんな50代からの人間関係を、「感情迷子さん」という視点からいっしょに見直していきましょう。
「別に」と「大丈夫」に囲まれて暮らす50代
気づいたら私も、『大丈夫』としか
言わなくなっていました」
50代から60代は、人生の中でも役割がいちばん重なりやすい時期かもしれません。妻として、母として、娘として、ときには嫁として。仕事を続けている方なら職場での立場もあり、地域では自治会や民生委員、PTAのOGとしての顔もある。一日のほとんどを「誰かのための私」として過ごしている方が少なくありません。
若い頃なら、友人とお茶を飲みながら愚痴をこぼせば、それで気持ちが軽くなったかもしれません。けれど今は、友人もそれぞれ親の介護や孫の世話で忙しい。夫に話しても「で、どうしたいの?」と返される。気持ちを言葉にする場所が、知らないうちに少なくなっていきます。
そうして、こんな状態が生まれます。家族の誰も気持ちを口にせず、みんなが「大丈夫」と言い合っている家。表面は穏やかですが、それぞれが言葉にならない思いを抱えたまま暮らしています。この記事では、その状態を「感情迷子さん」という視点からひもといていきます。
中島輝より一言
カウンセリングでこの世代の女性にお会いすると、いつも頭が下がります。親を看取り、子を送り出し、地域を支えてこられた。その方々が「自分の気持ちがわからない」とおっしゃるとき、私はそれを欠点だとは思いません。それだけ長く、人の気持ちを優先して生きてこられた証だと受けとめています。今度は、その細やかなまなざしを、少しだけご自分に向けてみませんか。
感情迷子さんとは|感情がないのではなく、言葉が届いていない
自分の感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態を、心理学ではアレキシサイミア(失感情症)と呼びます。名前だけ聞くと「感情を失った人」のようですが、そうではありません。感情は確かに生まれているのに、それをつかまえて名前をつけるところでうまくいかなくなっている状態です。詳しい成り立ちはアレキシサイミア(失感情症)とは|感情に名前がつけられない人の特徴・原因・回復のヒントにまとめています。
これは病名ではありません。アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)や世界保健機関の国際疾病分類(ICD-11)にも、独立した診断名としては載っていません。誰もが持っている特性の「濃い・薄い」だと考えてください。そして、ふだんは気持ちを言葉にできる人でも、強いストレスが長く続くと、一時的に感じる回路が細くなることがあります。親の介護や家族の変化が重なる時期は、まさにそうなりやすい時期です。
私の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』では、こうした状態の人を「感情迷子さん」と呼んでいます。感情をうまく認識・表現しにくくなっている状態のことです。迷子という言葉には、帰る場所があるという前提が含まれています。気持ちは失われたのではなく、帰り道がわからなくなっているだけなのです。
感情迷子さんの4つのタイプ|家庭ではこう見える
| タイプ | 家庭や地域で見えやすい姿 |
|---|---|
| タイプ1 感情がわからない | 「疲れた」はわかるけれど、それが悲しいのか、腹が立っているのかはわからない。体の不調として出やすい。 |
| タイプ2 感情を説明できない | モヤモヤはあるのに、口にすると「別に」「まあまあ」になってしまう。夫や母との会話がいつも短く終わる。 |
| タイプ3 感情に興味がない | 気持ちの話より段取りや正しさが先に立つ。「泣いても仕方ない」「どうするか決めよう」が口ぐせ。 |
| タイプ4 想像できない | 「これから、どうしたい?」と聞かれても思い浮かばない。定年後や介護のあとの暮らしが描けない。 |
このタイプは、自己肯定感を木にたとえた「6つの感」とつながっています。タイプ1は根にあたる自尊心≒自己存在感、タイプ2は幹にあたる自己受容感、タイプ3は葉にあたる自己信頼感、タイプ4は花にあたる自己決定感が、それぞれ回復の土台になります。ご自分だけでなく、夫やお母さまはどのタイプに近いか、少し思い浮かべながら読み進めてみてください。
気持ちを話さない夫|「男は泣くな」の時代を生きてきた人
「夫は何を考えているのかわからない」。この世代の女性から、本当によく伺う言葉です。結婚して30年近くたつのに、夫が「うれしい」「さみしい」と口にしたのを聞いたことがない。母が亡くなったときでさえ、葬儀の段取りを淡々と進めていた。そんな話も珍しくありません。
いま50代・60代の男性の多くは、「男は人前で泣くな」「弱音を吐くな」と言われて育った世代です。こうした価値観の中で育った男性に見られる、気持ちを感じにくく言葉にしにくい傾向は、心理学で「規範的男性アレキシサイミア」と呼ばれることがあります。生まれつきというより、育った時代と文化がつくった傾向だという考え方です。
50代の経営者ケンジさん(仮名)は、幼いころからこう教え込まれ、「泣いている暇があったら解決策を探す」ことを大切にしてきました。感情は目標を邪魔する「ノイズ」だと信じ、会社を大きく育てました。けれどある日、「何のために働いているのかわからなくなった」という虚無感を抱えて相談に来られます。自分の感情そのものに価値があると思えたとき、ケンジさんははじめて涙をこぼしました。
ケンジさんのような方は、感情がないのではありません。原稿の中で私は、こう説明しています。「泣くのは弱さだ」という思い込みと、実際には感情を持っている自分とのあいだに矛盾が生まれる。脳はその矛盾のストレスを減らすために、「最初から感じないようにしよう」という方向へ働いていく。心理学でいう「認知的不協和」のしくみです。
「冷たい人」に見えてしまう理由
気持ちを言葉にしにくい傾向が強い人は、人間関係の調査で「冷たい」「距離がある」「自分の意見を言わない」と見られやすいことが報告されています(対人関係の問題を測るIIP-64という尺度を使った研究)。また、2008年の研究では、パートナーのどちらかにこの傾向が強いと、カップルとしての満足度が下がりやすいことも示されています。
ここで大切なのは、「だから夫が悪い」という話ではないことです。夫は冷たいのではなく、気持ちをあらわす回路を、長いあいだ使わずに生きてきた。そして妻は、その回路の分まで、家族の気持ちを読み取る役を引き受けてきた。夫婦のすれ違いは、どちらかの性格の問題というより、長い年月のあいだにできあがった役割分担なのです。
中島輝より一言
私は中学のバスケットボール部で、試合に勝ってみんなが抱き合って喜んでいるときも、一人だけ無表情でした。うれしくなかったのではありません。幼いころに里親と突然別れた経験から、感情を表に出すことそのものをやめてしまっていたのです。だから、気持ちを見せない男性の姿に、私はかつての自分を重ねてしまいます。その無表情の奥にも、ちゃんと心は動いています。
定年前後の夫婦に起きること|「家にいる夫」との新しい距離
夫の定年は、夫婦にとって大きな節目です。長年、朝出かけて夜帰ってきた夫が、一日じゅう家にいる。昼ごはんの心配が増え、テレビの音がずっと聞こえ、台所のやり方に口を出される。「こんなはずじゃなかった」と感じる方は多いものです。
実はこの時期、夫の側でも大きな変化が起きています。仕事という「外側」の世界は、感情を言葉にしにくい人にとって、気持ちを向ける必要のない、居心地のいい場所でした。予定があり、成果があり、肩書きがある。それが急になくなると、行き場のない落ち着かなさだけが残ります。けれど本人は、それを「さみしい」「不安だ」とは言葉にできません。
| 定年前後の夫に見えやすい言動 | 奥にあるかもしれない気持ち |
|---|---|
| 家事のやり方に細かく口を出す | 役に立てる場所がほしい。何をしていいかわからない落ち着かなさ |
| 急に不機嫌になる・黙りこむ | うまく言えない不安や、置いていかれたような感覚 |
| テレビやスマホから目を離さない | 何もしない時間に浮かんでくる気持ちを避けたい |
| 妻の外出先や帰宅時間を何度も聞く | さみしさ、ひとりになることへの心細さ |
| 「体がだるい」「眠れない」と言う | 気持ちの疲れが、体の言葉で出ている可能性 |
もちろん、すべての夫がそうだというわけではありませんし、表の右側は「正解」ではありません。ただ、夫の困った言動を「性格」ではなく「言葉にならなかった気持ちの出口」として眺めてみると、少しだけ腹立ちがやわらぐことがあります。
一方で、気をつけたいサインもあります。何をしても楽しくなさそう、食欲が落ちた、眠れない日が続く、といった状態が2週間以上続く場合は、気持ちの落ち込みが隠れていることがあります。感情を言葉にしにくい人は、つらさを「つらい」と言わないぶん、周りが気づきにくいのです。本人が「別に」と言っても、かかりつけ医などに相談するきっかけを、家族がつくってあげてください。
妻の側にも、言葉にならない気持ちがある
そして忘れてはいけないのが、あなた自身の気持ちです。「定年まで頑張ってきた夫に、文句を言ってはいけない」。そう思うと、イライラも、ひとりの時間が減ったさみしさも、なかったことにしてしまいがちです。けれど、どちらの気持ちも、あってあたりまえのものです。感じてはいけない気持ちは、ひとつもありません。
親の介護と「いい娘」の役割|感じる前に動いてしまう心
親の介護が始まると、毎日は「やること」で埋まっていきます。通院の付き添い、薬の管理、買い物、ケアマネジャーさんとの打ち合わせ、きょうだいへの連絡。気づけば、感じるより先に体が動いている。それが何か月も、何年も続きます。
介護の場面では、同時にいくつもの気持ちが生まれます。弱っていく親を見る悲しみ。同じことを何度も聞かれたときの苛立ち。そんなふうに苛立つ自分への罪悪感。手伝ってくれないきょうだいへの怒り。それでも「ありがとうね」と言われたときの、少し救われる思い。相反する気持ちがいくつも混ざり合うのが、介護の心です。
心理学者のレイン(Lane)とシュワルツ(Schwartz)は、感情に気づく力を5つの段階で説明しました。その上のほうの段階は、「混ざり合った気持ちを、混ざったまま見分けて語れる」ことです。つまり、「母のことは大切。でも正直、腹も立つ」と言えることは、心の未熟さではなく、むしろ成熟のあらわれなのです。
お母さまの「大丈夫」も、感情迷子さんの言葉かもしれない
親世代の「大丈夫よ」「迷惑かけたくないから」という言葉にも、言葉にならない気持ちが隠れていることがあります。年を重ねて体が思うように動かなくなる、友人を見送る、住み慣れた家を離れる。大きな喪失が続くと、心は痛みから身を守るために感じる回路を一時的に絞ることがあるのです。「何もいらない」と言う親への関わり方は、「何もいらない」と言う高齢者の本音|介護職のための、感情を言葉にしにくい人への関わり方でも詳しく書いています。介護職の方向けの記事ですが、ご家族にも役立つ内容です。
「大切」と「腹が立つ」は、同時にあっていい。
混ざった気持ちを、混ざったまま認めること。
それが、介護をする心を守ります。
ご近所の目と自治会の役|「ちゃんとしなきゃ」が気持ちを閉じ込める
「お母さん、最近見かけないけど大丈夫?」。ご近所の何気ないひと言に、胸がざわつく。責められたわけではないのに、「ちゃんと面倒を見ていないと思われているのでは」と気になって、その夜は眠りが浅くなる。長く同じ地域に暮らしていると、人の目は、支えにもなり、重荷にもなります。
自治会の班長、ゴミ当番、回覧板、地域の行事の手伝い。順番だから仕方ないと引き受けて、本当は介護で手一杯なのに「できません」と言えない。こうした場面で起きているのは、周りに合わせることを優先しすぎて、自分の気持ちを感じる余地がなくなるという状態です。
心身症の研究でも、周りの期待に合わせて頑張りすぎる「過剰適応」は、気持ちを言葉にしにくい人によく見られる特徴として注目されてきました(A.N.シン「心身症とアレキシサイミア」、永田勝太郎ほか訳『心身症の診断と治療』所収)。まじめで、責任感が強く、人に迷惑をかけたくない人ほど、自分の気持ちを置き去りにしやすいのです。
気持ちをひとつ添えて、上手に断る
断るのが苦手な方は、理由の説明より先に、気持ちをひとつ添えてみてください。気持ちを添えると、相手は「この人は今、こういう状態なんだ」と受けとりやすくなります。
- 「お声がけいただいてうれしいんですけど、今年は母のことで手一杯で、正直ちょっと不安なんです」
- 「引き受けたい気持ちはあるのですが、無理をすると皆さんにご迷惑をかけそうで心配です」
- 「申し訳なくて言い出しにくかったんですが、班長は来年にしていただけると助かります」
「うれしい」「不安」「心配」「申し訳ない」。こうした小さな感情語は、相手を責めずに自分の状態を伝える、いちばんやわらかな道具です。地域の人間関係で疲れやすい理由については、ご近所・地域の人間関係に疲れる理由|感情を言葉にできない大人のつながり直しもあわせて読んでみてください。
体が先に教えてくれるサイン|眠り・肩・胃・涙
気持ちを後回しにする暮らしが長く続くと、言葉にならなかった感情は、体の言葉で話しはじめます。アレキシサイミアという考え方が、もともと心身症の研究から生まれたのはそのためです。次のようなサインに、心当たりはないでしょうか。
- 夜中に目が覚めて、そのまま眠れないことが増えた
- 肩や首がいつも重く、マッサージに行ってもすぐ戻る
- 実家へ向かう日の朝になると、胃が重くなる・食欲がない
- テレビのちょっとした場面で、理由もなく涙が出る
- 夫の足音や咳払いに、体がびくっとこわばる
- 甘いものを食べる量や、お酒の量が増えた
- 好きだった趣味や友人との約束が、面倒に感じる
- 「疲れた」以外の言葉で、今の気分を言い表せない
いくつか当てはまったとしても、それはあなたが弱いからではありません。心がずっと頑張っていることを、体が代わりに知らせてくれているのです。
ただし、この年代は更年期やその後の体の変化、高血圧や甲状腺の病気など、体そのものの不調が重なりやすい時期でもあります。「気持ちのせいだろう」と決めつけず、続く不調はまずかかりつけ医や婦人科などで相談してください。体の手当てと、気持ちの手当て。その両方があって、はじめて元気が戻ってきます。
母に『あんた、やせたね』って言われただけで」
自分の気持ちを取り戻す5つのワーク|台所と散歩道でできること
ここからは、近刊『感情迷子さんの本』でご紹介しているワークを、毎日の暮らしの中でできる形にアレンジしてお伝えします。どれも数秒から数分でできるものです。全部やる必要はありません。「これならできそう」と思うものを、ひとつだけ選んでください。
感情に名前をつけるだけで、心の警報装置といわれる脳の扁桃体の活動が落ち着くことがわかっています(Liebermanら、2007年)。正確な言葉でなくてもかまいません。「モヤモヤ」のような言葉でも、同じように効果があると考えられています。
心の体温チェック|お湯が沸くまでのあいだに
朝、やかんを火にかけたら、手のひらを胸に当てて「今、私の体は温かい?冷たい?」と3秒だけ聞いてみます。答えは「温かい」「冷たい」「よくわからない」のどれでも大丈夫。実家へ出かける前、夜の歯みがきのあとにもやってみると、日によって、場面によって、心の体温が違うことに気づいていきます。
五感スイッチ|朝のお茶を「味わう」時間に
朝のお茶やコーヒーを、ニュースを見ながらではなく、1分だけ五感で味わいます。湯気の香り、湯のみの温かさ、窓の外の音。ひとつずつ「心地いい?心地悪い?」の2択で答えます。「心地いい」は好き・嫌いよりも手前にある、とても大切な感覚です。この感覚がよみがえってくると、自分に必要なものを選ぶ力も戻ってきます。
色彩感情カレンダー|手帳のすみに一色だけ
夜、手帳やカレンダーの今日の欄に、今日の気分に近い色を一色だけ塗ります。色鉛筆が一本あれば十分です。理由はいりません。しばらく続けると、介護の日はいつも灰色、友人と会った日は黄色というように、心のリズムが目に見えるようになります。ただ、黒や白ばかりが何週間も続くようなら、ひとりで抱えずに専門家に相談してみてください。
比喩レッスン|散歩道で「今日のお天気」を
散歩や買い物の帰り道に、「今の気持ちは、お天気でいうと?」と自分に聞きます。「どんより曇り空」「小雨がぱらぱら」「雲のあいだから少し日が差してきた」。気持ちに直接名前をつけるのが難しいときも、たとえなら言葉になりやすいものです。俳句や短歌がお好きな方なら、季語を借りてみるのも素敵です。
感情だけ日記|出来事は書かずに、気持ちだけ
寝る前に、今日あったことではなく「今日感じたこと」だけを書きます。「母の病院の待ち時間が長くて、イライラした。でも帰りに笑ってくれて、少しほっとした」の、気持ちの部分だけを残すイメージです。「とくに何も感じなかった」も立派な記録です。気持ちを書き出すことがストレスをやわらげることは、心理学者ペネベーカー(Pennebaker)の研究でも知られています。
家族のために動いてきた手を、
一日3秒だけ、自分の胸に当ててみる。
そこから、あなたの気持ちが帰ってきます。
夫や親に届く「気持ちを添える」話し方
自分の気持ちに少しずつ名前がつくようになったら、次は、それを家族に伝える番です。ただ、気持ちを話さない夫や親に「どう思ってるの?」と迫ると、たいていは「別に」で終わってしまいます。相手に気持ちを言わせようとするより、こちらが気持ちを添えて差し出すほうが、ずっと届きやすいのです。
夫に届きやすい3つのコツ
「解決策」の前に「共感の一言」
夫に相談すると、すぐに「じゃあ、こうすればいい」と返ってくる。それは夫なりの誠実さですが、聞いてほしいだけのときはつらいものです。そんなときは「先に『大変だったね』って言ってもらえると、すごく助かるの」と、して欲しいことを具体的にお願いしてみてください。感情に興味を持ちにくいタイプの人は、やり方がわかれば、案外すぐにできるようになります。
「あなたは」ではなく「私は」で話す
「あなたは何もしてくれない」は、相手を身構えさせます。「私は、母のことをひとりで抱えている気がして、さみしいの」と、主語を自分にして気持ちを伝えると、責める言葉になりにくくなります。
小さな「ありがとう」に気持ちをひとつ足す
ゴミを出してくれた、病院まで車を出してくれた。そんなときの「ありがとう」に、「助かった」「ほっとした」「うれしかった」をひとつ足します。夫は、気持ちの言葉がどう使われるのかを、あなたの言葉から少しずつ学んでいきます。
親には「答えなくていい言葉」を
親が「大丈夫」と言うときは、無理に本音を聞き出そうとしなくてかまいません。「今日は寒かったね」「このお茶、おいしいね」と、答えなくても受けとれる言葉を重ねていきましょう。昔のアルバムを一緒に見ながら「この頃、楽しかった?」と尋ねると、思いがけず気持ちの言葉が出てくることもあります。
中島輝より一言
気持ちを話さない家族にがっかりしてしまうのは、それだけ相手とわかり合いたいと願っているからです。その願いを手放さなくていい。ただ、相手が変わるのを待つより、自分の言葉を少し変えてみるほうが、結果として家族の空気は早く変わります。私はそれを、カウンセリングの現場で何度も見てきました。
よくあるご質問
今度は、自分の気持ちを読む番です。
一日3秒、胸に手を当てるところから。
ひとつずつ名前をつけていきましょう。
自分を大切にしよう
50代から60代は、妻、娘、母、地域の一員と、いくつもの役割が重なる時期です。気持ちを話さない夫、「大丈夫」と言う親、断りにくい地域の役。その中で、多くの女性が人の気持ちを先に読み、自分の気持ちを後回しにする暮らしを続けてきました。感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しくなるアレキシサイミアは、誰もが持つ特性の濃淡であり、強いストレスが続くときには誰にでも起こりうる状態です。
夫が気持ちを話さないのは、冷たいからではなく、「男は泣くな」の時代に感情の回路を使わずに生きてきたから。親の「大丈夫」には、喪失から心を守る働きが隠れていることがあります。そしてあなた自身の眠りの浅さや肩の重さ、理由のわからない涙は、心が頑張っていることを体が知らせてくれているサインです。体の不調は医療機関で確かめながら、心の体温チェック、五感スイッチ、色彩感情カレンダー、比喩レッスン、感情だけ日記のうち、できそうなものをひとつ始めてみてください。
迷子という言葉には、帰る場所があるという前提が含まれています。長いあいだ家族のために使ってきたあなたの細やかな心は、なくなったわけではありません。少しのあいだ、自分のところへ帰る道がわからなくなっていただけです。自分を大切にしよう。「今日はちょっと疲れた」「あのひと言がうれしかった」。そのひとつひとつが、これからの人生を、あなたらしく彩っていきます。
本記事の参考資料・科学的根拠
- 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)
- 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料
- Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation: Alexithymia in Medical and Psychiatric Illness. Cambridge University Press.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
- A.N.シン「心身症とアレキシサイミア(失感情症)」永田勝太郎ほか訳、『心身症の診断と治療』所収
- Lane, R.D., & Schwartz, G.E. (1987). Levels of emotional awareness. American Journal of Psychiatry, 144, 133-143.
- Lieberman, M.D. et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18, 421-428.
- Pennebaker, J.W. (1997). Opening Up: The Healing Power of Expressing Emotions. Guilford Press.
- Bagby, R.M., Parker, J.D.A., & Taylor, G.J. (1994). The twenty-item Toronto Alexithymia Scale (TAS-20).

自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。






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