更年期のイライラや落ち込みを言葉にできないとき|働く女性のための感情の言語化

更年期のイライラや落ち込みを言葉にできないとき|働く女性のための感情の言語化

更年期のイライラや落ち込みを言葉にできないとき
働く女性のための感情の言語化

午後の会議で、部下の何気ないひと言に、自分でも驚くほどイライラした。顔がカッと熱くなり、汗がにじむ。席に戻っても動悸がおさまらず、夕方には理由もなく気分が沈む。「私、どうしちゃったんだろう」。でも、職場で「更年期かも」とはなかなか言い出せない。そんな毎日を過ごしていませんか。理由のわからないイライラや落ち込みは、体の変化と感情がからみ合い、言葉になりにくくなっているサインかもしれません。40〜50代で働くあなたと、その職場に向けて、揺らぎの時期を乗り切るための感情の言語化をお伝えします。

中島 輝(中島輝)
心理カウンセラー/自己肯定感アカデミー会長/「6つの感」理論創始者/著書累計77万部/15,000人臨床/『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる自己肯定感の教科書』(SBクリエイティブ・累計32刷)『働く人のための自己肯定感』著者

「なぜこんなにイライラするのかわからない」更年期の働く女性へ

40代後半から50代にかけて、カウンセリングでこんな言葉を聞くことが増えます。「前はこんなことで怒らなかったのに」「急に涙が出てきて、自分でも理由がわからない」「仕事は好きなはずなのに、朝、会社に行きたくない」。

この年代の女性の多くは、職場では管理職やベテランとして頼られ、家庭では子どもの進学や親の介護も重なりやすい時期にいます。責任が重くなるちょうどそのときに、体の中では、自分ではコントロールできない大きな変化が起きているのです。

よくある相談の典型例
「イライラしている自分が嫌で、
でも、何にイライラしているのかがわからない」
場面40代後半・メーカーの課長職の女性。ここ半年ほど、会議中に突然顔がほてり、汗が出る。部下の報告に必要以上にきつい言い方をしてしまい、あとで自己嫌悪に陥る。夜は寝つけず、朝はだるい。家族に「最近怒りっぽいね」と言われ、「誰のせいだと思ってるの」と返してしまった。
この方は、怒りっぽい性格になったわけではありません。体の変化による不快感、睡眠不足の疲れ、仕事の責任の重さ、家族への不満。いくつもの要素が混ざり合って、ひとつの「イライラ」として噴き出しているのです。中身が見分けられないから、自分でも理由がわからなくなっています。

こうした状態を、中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』では「感情迷子さん」と呼んでいます。感情をうまく認識・表現しにくくなっている状態のことです。心理学でいう「アレキシサイミア(失感情症)」に近い考え方で、感情がないのではなく、感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態を指します。病名ではなく、誰もが持つ特性の濃淡です。くわしくはアレキシサイミア(失感情症)とは|感情に名前がつけられない人の特徴・原因・回復のヒントで解説しています。

約10人に1人
感情に気づき、言葉にすることが難しい傾向が強い人の割合(研究により約10〜16%)。
もともとの傾向がなくても、体調の変化やストレスが重なると、一時的に感情が見分けにくくなることがあります
出典:TAS-20等を用いた複数の疫学研究、中島輝・自己肯定感アカデミー講座資料疫学データ

迷子という言葉には、帰る場所があるという前提が含まれています。更年期の揺らぎの中で感情がわからなくなっても、それはあなたが変わってしまったということではありません。体と心の地図が一時的に書き換わっている最中で、少し道に迷いやすくなっているだけです。

更年期に心と体が揺らぐしくみ

ここでは、一般的に知られていることを簡単に説明します。一人ひとりの症状の見立てや治療については、必ず医師にご相談ください。

更年期とは、閉経の前後5年ずつ、あわせて約10年間を指します。日本人女性の閉経の平均年齢はおよそ50歳とされているため、多くの人にとって、40代半ばから50代半ばがこの時期にあたります。この時期には、卵巣の働きがゆるやかに低下し、女性ホルモンのエストロゲンが大きく揺らぎながら減っていきます。

エストロゲンの変化は、体温や発汗、睡眠、気分などを調整する自律神経にも影響しやすいと考えられています。そのため、更年期には次のような心身の変化がよく見られます。

体に出やすいサイン心に出やすいサイン
ほてり・のぼせ・急な発汗イライラ・怒りっぽさ
動悸・めまい理由のわからない落ち込み
寝つきが悪い・夜中に目が覚める不安感・焦り
肩こり・頭痛・疲れやすさ集中しにくい・やる気が出ない

こうした症状が強く、日常生活に支障をきたす状態を「更年期障害」と呼びます。症状の出方や強さには大きな個人差があり、ほとんど気にならない人もいれば、仕事を続けるのがつらいほどの人もいます。「みんな通る道だから」と我慢する必要はありません。また、気分の落ち込みが強い場合には、更年期以外の原因が隠れていることもあるため、医師による見極めが大切です。

イライラも落ち込みも、
あなたの性格が変わったのではなく、
体の中で起きている変化への反応かもしれない。

理由のわからないイライラは「感情迷子」のサインかもしれない

本では、私たちが何かを感じるとき、①体の信号に気づく、②その信号を感情として解釈する、③言葉に変換する、という3つのステップをたどると説明しています。心拍が速くなる、胃がキュッとする、体温が上がる。こうした体の反応が、感情の最初のサインです。

更年期には、このステップのいちばん最初、「体の信号」そのものが大きく揺らぎます。急なほてりや動悸は、本来なら「緊張」や「怒り」のときに起こる体の反応とよく似ています。すると脳は、「体がカッとしているのだから、私は怒っているのだろう」と解釈してしまうことがあるのです。

更年期に「感情の翻訳」が混線するしくみ 体の信号が揺らぐと、感情の解釈がずれやすくなる ① 体の信号 ほてり・動悸 寝不足のだるさ ホルモンの揺らぎで増える ② 感情の解釈 「カッとしている」 →「私は怒っている」 ここで混線が起きやすい ③ 言葉・行動 きつい口調 あとで自己嫌悪 ①と②のあいだに「分けて書く」をはさむ 体:顔がほてった・汗が出た / 感情:部下の報告が遅くて少し焦った 体の反応と感情を切り分けると、「怒り」の正体が見えてくる
▲ ほてりや動悸のような体の変化は、怒りや緊張のときの体の反応と似ています。体のサインと感情を分けて書きとめると、「本当は何を感じていたのか」が見えやすくなります。

反対に、体の不調があまりにも続くと、感じることそのものに疲れて、感情のスイッチを下げてしまう人もいます。「何を見ても心が動かない」「うれしいはずなのに、ほっとしただけ」。イライラが増える人もいれば、感情が平らになる人もいる。どちらも、感情が見分けにくくなっているという点では同じです。

「イライラ」の中身はひとつではない

理由のわからないイライラの中には、たいてい、いくつもの感情が重なっています。

  • 思うように体が動かないことへのもどかしさ
  • 前のように働けなくなるのではという不安
  • 誰にもわかってもらえないさみしさ
  • 仕事も家庭も自分ばかりが抱えているという不満
  • 年齢を重ねていくことへの戸惑い

これらがすべて「イライラ」という一語にまとめられていると、何に手を打てばいいのかがわかりません。中身を見分けることができれば、休む、頼む、受診する、話す、といった具体的な対処が選べるようになります。

体のサインと感情を分けて記録する

そこでおすすめしたいのが、体のサインと感情を、別々の欄に分けて記録する方法です。手帳やスマホのメモに、1日1回、次の3つを書きとめます。

記録1|体のサイン
体に起きたことを、そのまま書く

「14時ごろ顔がほてった」「夜中に2回目が覚めた」「肩がガチガチ」。評価や理由づけはせず、起きたことだけを書きます。ほてりや発汗、睡眠、頭痛、動悸、月経の有無など、気になるものを書いておくと、受診のときにも役立ちます。

記録2|感情
そのとき、どんな気持ちだったか

「会議で発言をさえぎられて、そこそこ悔しかった」「娘の帰りが遅くて、ちょっと不安」。感情には「ちょっと・そこそこ・すごく」の3段階で強さをつけます。本で紹介している「3段階温度計」のワークです。感情の名前が出てこなければ、「モヤモヤ」「ざわざわ」などのオノマトペでもかまいません。

記録3|重なり
体と感情が重なった瞬間に印をつける

週に一度、記録を見返して、体のサインと強い感情が同じ時間帯に起きているところに印をつけます。「ほてりが出た日は、イライラも強い」「よく眠れた日は、部下にもやさしくできている」。重なりのパターンが見えると、「私が悪い」ではなく「今日は体の波が高い日」と受けとめられるようになります。

「体」と「気持ち」を分けて書く手帳の例 体のサイン 気持ち(強さ) 月 夜中に2回目が覚めた 朝からずっしり(そこそこ) 火 14時に顔がほてる・汗 会議でイライラ(すごく) 水 よく眠れた 部下の成長がうれしい(ちょっと) 木 肩こり・頭が重い 母の通院が不安(そこそこ) ↑ 体と感情が重なった日に印をつける 「私が悪い」ではなく「今日は波が高い日」と受けとめるための記録
▲ 左に体のこと、右に気持ちのことを書くだけのシンプルな記録です。1週間分たまると、体の波と感情の波の重なりが見えてきます。

記録は「続けられる形」がいちばん

こうした記録は、完璧に続けようとすると、かえって負担になります。書けない日があっても大丈夫です。3日空いたら、4日目からまた始めればいい。手帳が面倒なら、スマホのメモに「体:ほてり/気持ち:焦り」と1行書くだけでもかまいません。大切なのは、きれいな記録を残すことではなく、体と気持ちを「別々のもの」として見る習慣をつくることです。最初は体の欄しか埋まらなくても、続けるうちに、気持ちの欄にも少しずつ言葉が入るようになっていきます。忙しい日は、スマホのアラームを1日1回だけ鳴らして、そのときに書くと決めておくのもおすすめです。

本では、感情が動いたときの「体の反応」に注目する「感情が動いた瞬間日記」というワークも紹介しています。「電話が鳴って、肩が上がった」のように、まずは体の反応を書くだけでも、感情の認識力は高まるといいます。更年期の記録は、この考え方を応用したものです。

なお、感情を書き出すことがストレスの軽減と関係していることは、社会心理学者ペネベーカー(Pennebaker)らの筆記開示(エクスプレッシブ・ライティング)の研究で示されてきました。また、感情に名前をつけると不安や怒りに関わる脳の扁桃体の活動が下がることが、リーバーマン(Lieberman)らの研究(2007年)で報告されています。書くこと、名づけることは、揺らぐ時期の心を落ち着かせる手軽な方法です。

マナミさんの手帳に書かれた「イライラ」

本の中に、仕事をしながら、お子さんの中学受験の伴走をしていたマナミさん(仮名)の話が出てきます。更年期についての事例ではありませんが、仕事と家庭の両方を背負いながら、自分の感情を後回しにしてきた女性の姿として、多くの方に重なるところがあると思います。

マナミさんは、スケジュール管理はもちろん、子どもの睡眠や栄養にまで気を配り、最大限のサポートをしようとしていました。もともと論理的・合理的に考えるのが得意で、「お母さんが不安になったらいけない」「仕事と同じように、スケジュールを完璧にこなすべき」と考え、自分の感情は完全に無視するようになっていたそうです。相談に来られたとき、マナミさんはとても疲れたように見え、手帳には予定がぎっしり書きこまれていました。

本に登場する仮名事例
「たった一言書くだけで、
こんなに効果があるとは思わなかった」
マナミさん(仮名)手帳の余白に、1日1回、感情を一言だけ書くことにした。「イライラ」「落ち込んだ気分」「焦りでグルグルしている」。
「イライラする私はダメ」と感情を否定していたマナミさんは、書き続けるうちに、ある日「今日は仕事が忙しくて疲れちゃったから、イライラしてごめんね」と家族に言えたそうです。お子さんは「なんだ。機嫌悪いのは私のせいかと思った」とほっとした様子で、家庭には以前より笑顔が増えました。

マナミさんの変化で大切なのは、イライラが消えたことではありません。イライラしている自分に気づき、受け入れ、その理由を言葉にして伝えられるようになったことです。それまでは、イライラしていても自分で気づかず、ただ黙々と家事をしていました。黙っているあいだ、周りの人は「自分のせいかもしれない」と不安になっていたのです。

更年期のイライラも同じです。「今日は体調の波があって、少しイライラしやすいかもしれない。あなたのせいじゃないからね」。その一言があるだけで、家族や同僚は安心し、あなた自身も自分を責めずにすみます。

感情を消そうとしなくていい。
気づいて、名前をつけて、
「あなたのせいじゃない」と伝えられれば十分。

職場で言いにくい…上司や同僚への伝え方

更年期の不調は、職場でとても言い出しにくいものです。「年齢のことを言われたくない」「評価に響くのでは」「男性の上司にどう説明すればいいのか」。そう感じるのは、自然なことです。

まず知っておいてほしいのは、「更年期」という言葉を使うかどうかは、あなたが選んでいいということです。本では、感情を自分の中で認めることと、それを表現することは別のことであり、表現するかどうかは自分で選べると書かれています。体調のことも同じです。くわしく話さなくても、仕事に必要なことは伝えられます。

伝え方の型|事実・影響・お願い

上司や同僚に伝えるときは、「体調の事実」「仕事への影響」「具体的なお願い」の3点にしぼると、話がまとまりやすくなります。

伝えたいこと言い方の例
くわしくは言わずに配慮を求める「最近、体調に波があって、午後に集中しにくい日があります。重要な打ち合わせは午前中に入れていただけると助かります」
更年期だと伝える「更年期の症状で、急にほてったり眠れなかったりする日があります。いま婦人科に相談しています。会議中に少し席を外すことがあるかもしれません」
同僚にきつく当たってしまったあと「さっきは言い方がきつくなってごめんなさい。体調の波があって、少しイライラしやすくなっていました。あなたのせいではありません」
受診や休みを取りたいとき「体調のことで通院したいので、来週の水曜午後に半休をいただけますか。業務はこのように調整します」

伝えるときに、「不安です」「申し訳なく思っています」と感情をひとつそえると、相手は状況の深刻さや、あなたの誠実さを受けとりやすくなります。ただし、無理に感情を見せる必要はありません。まずは自分の中で言葉にできていれば、それで十分です。

職場の側にできること

上司や同僚の立場の方にお願いしたいのは、「最近どうしたの?」と理由を問いただすのではなく、「何か手伝えることはある?」と選択肢を差し出すことです。更年期の話題は、本人が話したいと思ったときに話せることが大切です。休憩の取りやすさ、会議の時間帯、空調や服装の柔軟さなど、職場全体で整えられる環境もたくさんあります。

人生の後半に入った女性の人間関係や家族のことについては、50代女性向けの記事で、リーダーとして働く女性の感情の伝え方については女性リーダー向けの記事で取り上げています。

婦人科・女性外来に相談するときの「感情のメモ」

更年期の不調は、婦人科や女性外来で相談できます。症状に応じて、ホルモン補充療法や漢方薬など、いくつかの選択肢があります。どの方法が合うかは人によって違うため、治療の判断は医師に委ね、自分に合う方法を一緒に探していくことが大切です。

ところが、いざ診察室に入ると、「何から話せばいいのかわからない」「うまく説明できずに、大丈夫ですと言ってしまった」という方が少なくありません。感情を言葉にするのが苦手な人ほど、診察室でも同じことが起こりがちです。そこで、受診前に次のようなメモを用意しておくことをおすすめします。

  • 体のサイン:いつから、どんな症状が、どのくらいの頻度で出ているか
  • 心のサイン:イライラ、落ち込み、不安などを「ちょっと・そこそこ・すごく」で
  • 生活への影響:仕事、睡眠、家族との関係で困っていること
  • 月経の状況:最後の月経の時期や、周期の変化
  • いちばん困っていること:今日いちばん相談したいことを1つだけ

前の章で紹介した「体のサインと感情を分けた記録」があれば、そのまま診察の資料になります。気分の落ち込みが強い場合は、そのこともはっきり伝えてください。更年期の症状なのか、うつ病など別の不調なのかを見極めるのは医師の役割です。必要に応じて、心療内科や精神科を紹介してもらえることもあります。

中島輝より一言

私のカウンセリングルームには、ホットウォーマーと冷蔵庫を置いています。セッションの前に、温かいおしぼりか冷たいおしぼりを手渡し、「これは温かいですか?」と聞くのです。私はさほど温かいと思わないおしぼりでも、「すごく温かい」とおっしゃる方がいます。同じものに触れても、そのときの体の状態や、その人の感じ方によって、受けとり方はまったく違うのです。更年期の揺らぎも同じです。同じ職場、同じ会議でも、今日のあなたの体が感じるものは昨日と違うかもしれない。その違いを責めずに、「今日の私はこう感じている」とそのまま認めてあげてください。

揺らぐ時期を乗り切る1日5分のワーク

ここでは、本で紹介しているワークを、更年期世代の働く女性の1日に合わせて作り直しました。体調のすぐれない日は、どれか1つだけでかまいません。

ワーク1|3秒
心の体温チェック|朝、出勤前に

手のひらを胸に当てて、「今、自分の体は温かい?冷たい?」と3秒だけ聞きます。「ほてっている」「ひんやりしている」「よくわからない」のどれでもかまいません。体の状態を朝のうちに知っておくと、「今日は波が高いかもしれない」と心の準備ができます。

ワーク2|1分
五感スイッチ|昼休みのお茶の時間に

お茶やコーヒーを飲むときに、香り、味、温度、カップの手触りを1つずつ感じて、「心地いい?心地悪い?」と問いかけます。体の不快感が多い時期だからこそ、「心地いい」を意識して拾うことが、心のバランスを取り戻す助けになります。

ワーク3|1分
色彩感情カレンダー|寝る前に

手帳のその日のマスに、今日の気分に近い色を1色だけ塗ります。しばらく続けると、「グレーが続いた週は、ほてりも多かった」「水色に変わった日は、よく眠れていた」のように、体と心の波が色で見えてきます。たとえ今は灰色が続いていても、ずっと灰色ということはないと知っているだけで、気持ちはラクになります。

ワーク4|1分
比喩レッスン|言葉にならないモヤモヤを、天気にたとえる

感情の名前がどうしても出てこないときは、「今の気持ちは、○○みたい」と天気にたとえてみます。「急に雷が落ちてくる夏の夕立みたい」「一日中どんよりした梅雨空みたい」。たとえることで、名前のない感情に輪郭が生まれます。家族や同僚に「今日は夕立の日なの」と伝えるのも、ひとつの方法です。

6つの感の木のたとえでいえば、体の変化に気づくことは「根」にあたる自尊心≒自己存在感を、揺らいでいる自分を責めずに受け入れることは「幹」にあたる自己受容感を育てます。揺らぎの時期は、これまで頑張ってきた自分の根と幹を、あらためていたわる時期でもあるのです。

よくあるご質問

イライラや落ち込みが、更年期のせいなのか、性格のせいなのか分かりません。
どちらか一方に決める必要はありません。体の変化、仕事や家庭のストレス、もともとの感じ方など、いくつもの要素が重なっていることがほとんどです。体のサインと感情を分けて記録し、婦人科や女性外来で医師と一緒に見ていくのがおすすめです。医学的な判断は医師に委ねてください。
職場に更年期のことを伝えるべきでしょうか。
伝えるかどうかは、あなたが選んでかまいません。「更年期」という言葉を使わなくても、「体調に波があるので、午前中に打ち合わせを入れてほしい」のように、仕事に必要な配慮だけを伝えることもできます。信頼できる上司や同僚、産業医や保健師に、まず話してみるのもひとつの方法です。
部下や家族にきつく当たってしまい、自己嫌悪がつらいです。
自分を責めすぎないでください。きつく当たってしまったと気づけていること自体が、感情に目を向けられている証拠です。あとから「さっきは言い方がきつくてごめんなさい。体調の波があって、あなたのせいではないの」と伝えるだけで、相手は安心しますし、あなた自身の心も少し軽くなります。
何をしても楽しくなく、眠れない日が続いています。
気分の落ち込みや不眠、食欲の低下などが2週間以上続く場合は、更年期の症状だけでなく、うつ病などの可能性もあります。婦人科や女性外来、心療内科・精神科、職場の産業医に早めに相談してください。アレキシサイミア自体は病名ではありませんが、つらさが続いているサインであることがあります。
同僚が更年期でつらそうです。どう声をかければいいですか?
「更年期なの?」と理由をたずねるより、「最近忙しそうだけど、何か手伝えることある?」と、手助けの選択肢を差し出すほうが相手は答えやすくなります。話してくれたときは、助言より先に「それはしんどいね」と共感の一言を置いてください。話すかどうかは、本人が決められることが大切です。
イライラを消そうとしなくていい。
体と感情を分けて、名前をつける。
それだけで、揺らぎは「わかる波」に変わる。
今夜、手帳に「体:」「気持ち:」と2行だけ。
その2行が、明日のあなたを少しラクにしてくれます。

自分を大切にしよう

更年期のイライラや落ち込みは、あなたの性格が変わったからでも、弱くなったからでもありません。体の中で起きている大きな変化と、仕事や家庭の重い責任が重なり、感情の中身が見分けにくくなっているのです。理由がわからないのは、あなたが自分の気持ちに鈍いからではなく、いくつもの信号が同時に鳴っているからです。

体のサインと感情を分けて記録する。3段階で強さをつける。マナミさんのように、手帳に「イライラ」と一言だけ書いてみる。職場には「事実・影響・お願い」で、伝えたいことだけを伝える。そして、婦人科や女性外来で医師と一緒に、自分に合う方法を探す。どれも小さな一歩ですが、「私、どうしちゃったんだろう」という不安を、「今日は体の波が高い日」という理解に変えていきます。

これまで職場でも家庭でも、たくさんのものを背負って走ってきたあなたです。揺らぐ時期は、その歩みをいったんゆるめて、自分の体と心の声に耳を傾ける時期でもあります。自分を大切にしよう。自分の揺らぎを責めずに受けとめられる人は、同じように揺らいでいる後輩や仲間にも、やさしい言葉をかけられる人になっていきます。

本記事の参考資料・科学的根拠

  • 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)原稿
  • 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料
  • Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation: Alexithymia in Medical and Psychiatric Illness. Cambridge University Press.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
  • 公益社団法人 日本産科婦人科学会「更年期障害」(一般向け解説)
  • Lieberman, M.D. et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18, 421-428.
  • Pennebaker, J.W. (1997). Writing about emotional experiences as a therapeutic process. Psychological Science, 8, 162-166.
監修|中島 輝
心理カウンセラー・自己肯定感アカデミー会長・「6つの感」理論創始者
著書累計77万部・15,000人臨床・回復率95%
本記事は心理学的知見に基づく一般情報です。医学的診断や治療の代わりにはなりません。心身に不調を感じる場合は、医療機関・専門家へのご相談をおすすめします。

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