病気の家族の前で「大丈夫」と笑ってしまう人へ|支える側の感情の言語化

病気の家族の前で「大丈夫」と笑ってしまう人へ|支える側の感情の言語化

病気の家族の前で「大丈夫」と笑ってしまう人へ
支える側の感情の言語化

病室を出るとき、いつものように「また来るね」と笑って手を振る。エレベーターの扉が閉まった瞬間、顔から表情がすっと抜け落ちる。駐車場の車の中で、エンジンをかけたまま、しばらく動けない。悲しいのか、怖いのか、疲れているのか、自分でもよくわからない。大切な人を支えるために笑い続けるうちに、自分の気持ちが見えなくなることがあります。がんや難病など、重い病気の家族を支えている方へ。支える側の心を守るための、感情の言葉の取り戻し方をお伝えします。

中島 輝(中島輝)
心理カウンセラー/自己肯定感アカデミー会長/「6つの感」理論創始者/著書累計77万部/15,000人臨床/『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる自己肯定感の教科書』(SBクリエイティブ・累計32刷)『働く人のための自己肯定感』著者

告知のあと、心が止まったように感じる

よくある相談の典型例
「夫の病気を聞いたとき、
不思議なくらい何も感じなかったんです」
場面60代の女性。定年を迎えたばかりの夫に、進行したがんが見つかった。診察室で医師の説明を聞きながら、彼女は「入院の準備は何がいるのか」「保険の書類はどこにあったか」ばかり考えていた。涙は出なかった。帰宅して娘に電話で伝えるときも、声は落ち着いていた。「私は冷たい人間なのではないか」と、あとになって自分を責めるようになった。
冷たいのではありません。あまりに大きな知らせを受けたとき、心は一時的に感じることを止めて、目の前のことに対処しようとすることがあります。それは、自分を守り、家族を支えるための、心の自然な働きです。

国立がん研究センターの統計によると、日本人がその一生のうちにがんと診断される確率は、およそ2人に1人とされています。がんに限らず、難病や重い慢性疾患、脳卒中のあとの後遺症など、家族の誰かが重い病気と向き合う経験は、決して特別なものではありません。そして、病気の本人と同じように、支える家族もまた、大きな心の揺れの中にいます。

約2人に1人
日本人が一生のうちにがんと診断される確率。支える家族の心のケアも、多くの人に関わるテーマ
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「最新がん統計」公的統計

告知を受けたあと、「泣けなかった」「何も感じなかった」と自分を責める方は少なくありません。けれど、心が止まったように感じることは、感情がなくなったのではなく、感情を感じる余裕を一時的に閉じている状態です。この記事では、支える側に起きるこうした心の動きを、心理学の視点から見ていきます。

感情迷子さんとは|支える側が感じなくなる理由

心理学にはアレキシサイミア(失感情症)という言葉があります。自分の感情に気づき、ほかの感情と見分け、言葉にすることが難しい状態のことです。感情がないのではなく、感じてはいるけれど、それをつかまえて言葉にするところで流れが細くなっている状態を指します。一般の人の約10〜16%に強い傾向があるとされ、病名ではなく、誰もが持つ特性の濃淡と考えられています。DSM-5やICD-11でも独立した診断名にはなっていません。詳しくはアレキシサイミア(失感情症)とは|感情に名前がつけられない人の特徴・原因・回復のヒントをご覧ください。

中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』では、感情をうまく認識・表現しにくくなっている状態を「感情迷子さん」と呼んでいます。迷子という言葉には、帰る場所があるという前提が含まれています。

強いストレスで起きる「2次性」の感情の鈍り

アレキシサイミアの研究では、もともとの特性としてのもの(1次性)と、大きな病気や喪失、強いストレスなど、あとからの出来事によって起きるもの(2次性)が区別されることがあります。重い病気の家族を支える日々は、まさに強いストレスが長く続く状況です。

  • 通院の付き添い、治療の選択、お金の手配など、決めることが次々に来る
  • 本人の前では不安を見せないよう、気を張り続けている
  • 仕事や家事、ほかの家族の世話も、これまでどおり続けている
  • 自分の体調や気持ちを気にかける時間がない
  • 「本人のほうがつらいのだから」と、自分のつらさを打ち消している

こうした状態が続くと、感情は「今は感じている場合ではない」と、少しずつ奥へしまいこまれていきます。支える役割に集中するために、感じることを後回しにする。それは心の防衛として理にかなっていますが、長く続くと、自分が何を感じているのかがわからなくなっていきます。

何も感じないのは、冷たいからではない。
支えるために、心が一時的に
感じることを後回しにしているだけ。

本人の前では明るく、帰り道で崩れそうになる

病気の家族を支える人の多くが、本人の前では明るくふるまうことを選びます。「暗い顔をしたら、本人が不安になる」「励まさなければ」。その気づかいは、本人を思うやさしさから来ています。

よくある相談の典型例
「母の前では笑えるのに、
帰りの電車で涙が止まらなくなるんです」
場面難病で入退院をくり返す70代の母親を支える、50代の娘。週に2回、仕事帰りに病院へ寄り、母の前では職場の面白い話をして笑わせている。ところが帰りの電車に乗ると、理由もわからず涙があふれてくる。家に帰れば夫と子どもの夕食の支度が待っている。泣いている時間はない、と目元を押さえる。
病室で抑えていた気持ちは、ひとりになった瞬間に出口を探してあふれてきます。理由がわからない涙は、言葉にされなかった気持ちが、体を通って出てきたものなのかもしれません。

本人の前で明るくふるまうことは、悪いことではありません。ただ、その明るさが自分の気持ちにふたをするためのものになっていると、心の負担はどんどん大きくなります。「大丈夫」と笑うたびに、言えなかった言葉が心の中にたまっていきます。

病院の待合室、帰り道という「すきま」

病院の待合室で検査結果を待つ時間。診察のあとの帰り道。こうした「すきま」の時間は、支える人にとって、こらえていた感情が顔を出しやすい時間です。そこで湧いてくる気持ちを「こんなことで動揺してはいけない」と押し戻すのではなく、「今、私は怖いと感じている」と、そっと名前をつけてあげることが大切です。

神経科学者リーバーマン(Lieberman)らの2007年の研究では、感情に言葉でラベルをつけると、不安や恐れに関わる脳の扁桃体の活動が落ち着くことが示されています。名前をつけることは、気持ちに振りまわされるのではなく、気持ちと一緒にいられるようになるための一歩です。

中島輝より一言

私は幼いころ、感情を出すことをやめて育ちました。それでも小学生のころ、理由もわからないまま、ふいに涙が流れてくることがありました。当時の私には、その涙が何なのかわかりませんでした。今ならわかります。感じないようにしていた気持ちは、消えていたのではなく、ずっとそこにあったのです。帰り道にこぼれる涙も、同じではないでしょうか。それはあなたが弱いからではなく、大切な人を本気で思っている証です。涙が出たら、「よく頑張ってるね」と自分に声をかけてあげてください。

予期悲嘆|失う前から始まる悲しみ

重い病気の家族を支える人が抱える気持ちの中に、予期悲嘆と呼ばれるものがあります。大切な人を失うかもしれないという予感から、まだ失う前から始まる悲しみのことです。精神科医リンデマン(Lindemann)が1944年に記述して以来、多くの研究者がこの心の動きに注目してきました。

予期悲嘆は、悲しみだけでできているわけではありません。

まざり合いやすい気持ちたとえば、こんな形で
悲しみ・さみしさ元気だったころの姿を思い出して胸が苦しくなる
不安・恐れこの先どうなるのか、夜になると考えが止まらない
怒り・いらだち「なぜうちの家族が」という思い、病院や周りへのいらだち
罪悪感「もっと早く気づいていれば」「疲れたと思ってしまう自分がいやだ」
疲れ・解放への思い「早く楽になりたい」とふと思い、そんな自分を責める

とくに、怒りや「楽になりたい」という気持ちは、「こんなことを思ってはいけない」と打ち消されやすい感情です。けれど、長く支える日々の中で、こうした気持ちが湧くのはとても自然なことです。打ち消された気持ちは、行き場を失って、ますます言葉にしにくくなります。

予期悲嘆は「ひとつの気持ち」ではない まざり合った気持ちを、一つずつほどいて名前をつける 予期悲嘆 失う前の悲しみ 悲しみ さみしさ 不安 恐れ 怒り いらだち 罪悪感 自分を責める 疲れ・解放への思い 「楽になりたい」も自然な気持ち
▲ 予期悲嘆の中には、悲しみ、不安、怒り、罪悪感、疲れなど、いくつもの気持ちがまざり合っています。「なんだかつらい」というかたまりを一つずつほどき、「今いちばん大きいのは不安かな」と名前をつけていくことで、気持ちは少し扱いやすくなります。

まざり合った気持ちは、そのままだと「なんだかつらい」「よくわからない」というかたまりとして感じられます。このかたまりを無理に一度に整理する必要はありません。「今いちばん大きいのは、不安かな」「怒りも少しある」と、一つずつ取り出して名前をつけていく。それだけで、気持ちの重さが少し変わってくることがあります。どの気持ちも、正しい・間違っているはありません。浮かんできた順に、そっと名前をつけていけばいいのです。

予期悲嘆を感じることは、本人をあきらめることではありません。大切な人とのつながりの深さが、悲しみという形で表れているのです。自己肯定感ラボにはグリーフケアのカテゴリもありますが、ここでは、支える日々の中で生まれる気持ちに名前をつけて受けとめる、ということをお伝えしたいと思います。

家族のあいだの温度差

重い病気は、家族の関係にも影響を与えます。とくに多いのが、家族のあいだの「温度差」です。

  • 毎日付き添う人と、ときどき見舞いに来る人とで、見えている状況が違う
  • きょうだいの一人が「もっと治療を」と言い、別の一人は「本人の希望を」と言う
  • 遠くに住む家族が、電話で楽観的なことを言う
  • 夫(妻)は仕事に没頭し、病気の話題を避けている
  • 子どもが病気の家族に会いたがらない

こうした温度差は、気持ちの感じ方や表し方が人によって違うことから生まれます。仕事に没頭している家族は、何も感じていないのではなく、不安を感じないようにするために忙しくしているのかもしれません。楽観的なことを言う家族は、怖さを言葉にできないのかもしれません。

子どもや孫が病気の家族に会いたがらないときも、同じです。冷たいのではなく、弱っていく姿を見るのが怖い、どう声をかければいいかわからないという気持ちが、言葉にならないまま「行きたくない」という形で出ているのかもしれません。「会うのが少し怖い?」「何を話せばいいか迷うよね」と気持ちを先に言葉にしてあげると、子どもなりの関わり方が見つかることがあります。手紙や絵、短いビデオメッセージなど、会う以外のつながり方もあります。

温度差を責め合いにしないために

温度差があると、「どうしてわかってくれないの」と相手を責めたくなります。そんなときは、相手の言動を批判する前に、自分の気持ちを主語にして伝えることを試してみてください。

責める言い方気持ちを主語にした言い方
「あなたは何もしてくれない」「私、毎日の付き添いで、正直すごく疲れてる。週に一回、代わってもらえると助かる」
「お兄ちゃんは現実を見ていない」「お母さんの様子を毎日見ていて、私は不安なの。一度、一緒に先生の話を聞いてほしい」
「なんで見舞いに来ないの」「お父さん、あなたの顔を見るとうれしそうなんだ。会えたら私もほっとする」

『感情迷子さんの本』の「3段階温度計」を使って、「ちょっと疲れた」ではなく「すごく疲れている」と強さまで伝えると、相手にも状況が伝わりやすくなります。治療の方針など医療の判断に関わることは、家族だけで抱えず、主治医や看護師に相談し、判断は主治医に委ねてかまいません。家族の役割は、医療の判断を背負うことではなく、本人と自分たちの気持ちを伝えることです。

待合室・帰り道でできる小さなワーク

病気の家族を支える毎日は、自分のための時間をつくるのが難しいものです。そこで、『感情迷子さんの本』第4章のワークから、待合室や帰り道の数秒から数分でできるものを紹介します。

ワーク1|3秒|心の体温チェック
待合室の椅子で、胸に手を当てる

手のひらを胸に当てて、「今、自分の体は温かい?冷たい?」と3秒だけ聞きます。「よくわからない」でもかまいません。検査結果を待つ時間、診察室に入る前など、緊張する場面ほど、体は気持ちのサインを出しています。体に聞くことで、言葉にならない気持ちの入口が見つかります。

ワーク2|1分|比喩レッスン
「今の気持ちは、○○みたい」

帰り道、今の気持ちを何かにたとえてみます。「霧の中を歩いているみたい」「重たいリュックを背負っているみたい」「嵐のあとの静けさみたい」。悲しい、怖いとはっきり言えなくても、たとえなら言えることがあります。比喩は、気持ちを言葉にするための足場になります。

ワーク3|2分|感情だけ日記
病院の出来事ではなく、気持ちだけを書く

看病の記録には、検査の数値や薬のこと、医師の説明を書き留める方も多いでしょう。その記録とは別に、自分の気持ちだけを書くノートを一冊用意してみてください。「先生の説明を聞いて、すごく怖かった」「母が笑ってくれて、少しほっとした」「弟の電話に、そこそこイライラした」。アメリカの社会心理学者ペネベーカー(Pennebaker)らの研究で知られるエクスプレッシブ・ライティングのように、気持ちを書き出すことは心の整理に役立ちます。

ワーク4|随時|感情ことば帳
「わかる」と思った言葉をメモする

本や歌詞、患者会の会報、ほかの家族の体験記などで、「この気持ち、わかる」と感じた言葉を見つけたら、スマホにメモします。自分で言葉を作る必要はありません。誰かの言葉を借りるだけで、言えなかった気持ちに輪郭ができていきます。

病室の外に、気持ちを置ける場所をつくる 本人の前の「大丈夫」と、自分の本音を両方大切にする 病室 本人の前では「大丈夫」 待合室・帰り道 心の体温チェック 比喩レッスン 自宅のノート 感情だけ日記 感情ことば帳 話せる相手 がん相談支援センター 家族会・訪問看護 気持ちの出口が複数あると、支える日々を長く続けられる
▲ 本人の前で明るくふるまうことは悪いことではありません。そのぶん、待合室や帰り道、自宅のノート、話せる相手など、病室の外に気持ちを置ける場所を意識してつくっておくことが、支える人の心を守ります。

本人と気持ちを分かち合うとき

支える側が自分の気持ちに少しずつ気づけるようになると、本人とのあいだでも、気持ちを分かち合える瞬間が生まれることがあります。とはいえ、無理に深い話をする必要はありません。

「励まし」より「受けとめ」を

本人が「もうだめかもしれない」「怖い」と口にしたとき、多くの家族は反射的に「そんなこと言わないで」「大丈夫、頑張ろう」と励ましたくなります。けれど、本人にとっては、怖いという気持ちを受けとめてもらうことのほうが、支えになることがあります。

『感情迷子さんの本』のワーク「共感の一言」では、正しいことや前向きなことを言いたくなっても、いったんこらえて、共感の一言を先に出すことをすすめています。「怖いよね」「そう思うよね」。それだけで、本人は「この気持ちを持っていてもいいんだ」と感じられます。

「大丈夫だよ」の前に、「怖いよね」。
気持ちを受けとめてもらえた人は、
ひとりではないと感じられる。

家族も、気持ちを少しだけ見せていい

本人の前でずっと笑顔でいなければならない、ということはありません。「私も、ちょっと心配なんだ。でも、一緒にいられてうれしいよ」と、自分の気持ちを短く伝えることで、本人も自分の気持ちを話しやすくなることがあります。お互いに「大丈夫」を演じ合う関係から、少しだけ本音を分け合える関係へ。それは、限られた時間を大切に過ごすことにもつながります。

ただし、本人の体調や気持ちの波は日によって違います。話したくない日もあります。話すか話さないかは本人のペースにまかせ、話してくれたときに受けとめる準備をしておく。それだけで十分です。

支える人を支える地域の資源

重い病気の家族を支える人が、ひとりで抱え込まないための仕組みは、地域にあります。

支えどんなときに
がん相談支援センター全国のがん診療連携拠点病院などに設けられた相談窓口。その病院にかかっていない人や家族も、無料で相談できる。治療や療養生活、お金、仕事、家族の気持ちのことまで
患者会・家族会同じ病気の本人や家族と出会い、経験を分かち合える。「わかってもらえる」場所になる
訪問看護自宅での療養を支える。看護師に、家族の不安や疲れを相談できることも多い
病院の相談室(医療ソーシャルワーカー)制度の利用、転院、在宅への移行、介護サービスとの調整など
地域包括支援センター本人が高齢の場合、介護保険や地域のサービスにつなぐ入口になる

相談するときは、病気の情報だけでなく、「私自身が、すごく疲れています」「夜、眠れなくなっています」と、支える側の気持ちも伝えてください。支える家族の心のケアも、こうした窓口の大切な役割です。治療方針など医療に関わる判断は、主治医に委ねてかまいません。

仕事を続けながら家族を支えている方は、仕事と介護の両立で「何も感じない」あなたへ|ビジネスケアラーのための感情の言語化もあわせて参考にしてください。

ひとりで抱えないで(相談先の例)
がん相談支援センター(がん診療連携拠点病院など・誰でも無料で相談可)
国立がん研究センター「がん情報サービス」で最寄りのセンターを探せます
病院の相談室(医療ソーシャルワーカー)・訪問看護ステーション
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
よりそいホットライン 0120-279-338(24時間)
命の危険が迫っているときは、迷わず119番・110番へ

よくあるご質問

家族の病気を知っても涙が出ませんでした。私は薄情なのでしょうか?
薄情ではありません。大きな知らせを受けたとき、心が一時的に感じることを止め、目の前の対処に集中することはよくあります。気持ちはなくなったのではなく、奥にしまわれているだけです。少し落ち着いたころに、思いがけず涙が出てくることもあります。
本人の前で泣いてしまいそうです。我慢したほうがいいですか?
いつも我慢する必要はありません。涙が出たら「ごめんね、ちょっと心配になっちゃった。でも、一緒にいられてうれしいよ」と短く伝えれば十分です。家族が気持ちを見せることで、本人も気持ちを話しやすくなることがあります。ただ、本人のその日の体調や気持ちにも配慮してください。
「早く楽になりたい」と思ってしまう自分が許せません。
長く支える日々の中で、そうした思いが湧くのはとても自然なことで、多くの家族が経験しています。その気持ちは、あなたがそれだけ疲れているというサインです。自分を責めるより、「今、私はすごく疲れている」と名前をつけて、がん相談支援センターや病院の相談室、信頼できる人に話してみてください。
ほかの家族と治療についての考えが合いません。
家族のあいだで考えが違うのはよくあることです。相手を批判するより、「私は不安」「私はこう願っている」と自分の気持ちを主語にして伝えてみてください。治療の方針については、主治医や看護師、医療ソーシャルワーカーを交えて話し合う場を持つことも助けになります。医療の判断は主治医に委ねてかまいません。
支える側の私が、カウンセリングを受けてもいいのでしょうか?
もちろんです。支える家族の心のケアは、本人のケアと同じくらい大切です。眠れない、食欲がない、何をしても楽しくない状態が続くときは、かかりつけ医や心療内科、病院の相談室などに相談してください。がん相談支援センターでは、家族からの相談も受けています。
「大丈夫」と笑うあなたも、
本当は誰かに支えられていい人。
帰り道の3秒、自分の気持ちに名前を。
何も感じないのは、冷たいからではありません。
支えるために、心が少しだけ気持ちを後回しにしているのです。

自分を大切にしよう

重い病気の家族を支えるとき、告知のあとに心が止まったように感じたり、本人の前では明るくふるまって帰り道に崩れそうになったりするのは、とても自然なことです。強いストレスが続くと、心は支える役割に集中するために、感じることを後回しにすることがあります。失う前から始まる予期悲嘆には、悲しみだけでなく、不安や怒り、罪悪感、疲れもまざり合います。どの気持ちも、大切な人を思うからこそ生まれるものです。

気持ちを取り戻す方法は、小さなことから始められます。待合室で胸に手を当てる心の体温チェック、帰り道の比喩レッスン、自宅での感情だけ日記や感情ことば帳。家族のあいだの温度差には、相手を責める前に、自分の気持ちを主語にして伝える。本人には、励ましの前に「怖いよね」と共感の一言を。そして、がん相談支援センターや患者会・家族会、訪問看護など、支える人を支える場所を頼ってください。医療の判断は主治医に委ね、あなたは自分と本人の気持ちを大切にすることに力を使ってかまいません。

大切な人を支えているあなたも、誰かに支えられていい人です。「大丈夫」と笑う自分の奥にある、「怖い」「疲れた」「さみしい」にも、ていねいに名前をつけてあげてください。自分を大切にしよう。あなたが自分の気持ちを大切にすることは、支える日々を長く続けるための力になり、本人と過ごす時間を、より本音で分かち合えるものにしてくれます。

ひとりで抱えないで
がん相談支援センター(誰でも無料で相談可)
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
よりそいホットライン 0120-279-338(24時間)
いのちSOS 0120-061-338
命の危険が迫っているときは、迷わず119番・110番へ

本記事の参考資料・科学的根拠

  • 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)
  • 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料
  • Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation: Alexithymia in Medical and Psychiatric Illness. Cambridge University Press.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
  • A.N.シン「心身症とアレキシサイミア」(永田勝太郎ほか訳『心身症の診断と治療』所収)。1次性/2次性アレキシサイミアを参照
  • Lindemann, E. (1944). Symptomatology and management of acute grief. American Journal of Psychiatry, 101(2), 141-148.
  • Lieberman, M.D., et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421-428.
  • Pennebaker, J.W. (1997). Writing about emotional experiences as a therapeutic process. Psychological Science, 8(3), 162-166.
  • 国立がん研究センター がん情報サービス「最新がん統計」「がん相談支援センター」
監修|中島 輝
心理カウンセラー・自己肯定感アカデミー会長・「6つの感」理論創始者
著書累計77万部・15,000人臨床・回復率95%
本記事は心理学的知見に基づく一般情報です。医学的診断や治療の代わりにはなりません。心身に不調を感じる場合は、医療機関・専門家へのご相談をおすすめします。

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