「自己分析で何も出てこない」就活生へ
感情の言語化でつくる自分の軸
深夜、エントリーシートの「あなたが大切にしている価値観は?」の欄で、カーソルが点滅したまま止まっている。自己分析の本を買って、モチベーショングラフも書いてみた。でも「何がうれしかった?」と聞かれても、何も出てこない。友だちのガクチカはキラキラして見えるのに、自分には語れることがない気がする。もし思い当たるなら、それはあなたに中身がないのではなく、心が動いた瞬間に、まだ言葉が追いついていないだけかもしれません。感情の言語化から、自分の軸をつくる方法をお伝えします。
エントリーシートの「あなたらしさ」で手が止まる
『何を感じたか』が何も書けないんです」
就職活動では、ふだんの生活ではめったに聞かれない質問を、何度も投げかけられます。あなたの強みは? 大切にしている価値観は? なぜこの会社なのか? そのとき、どう感じましたか?
これらの質問は、どれも形を変えて同じことを聞いています。それは、「あなたの心は、何に動くのか」ということです。何にうれしくなり、何にくやしくなり、何に夢中になるのか。その心の動きのパターンこそが、企業が知りたい「あなたらしさ」であり、あなた自身の「軸」なのです。
だから、自己分析で何も出てこないと感じるとき、足りていないのは経験でも文章力でもなく、心が動いた瞬間をつかまえて、言葉にする力であることが多いのです。そしてそれは、今からでも練習で育てることができます。
自己分析は「感情の棚卸し」|何も出てこないのには理由がある
感情に気づき、見分け、言葉にすることが難しい状態を、心理学ではアレキシサイミア(失感情症)と呼びます。「感情がない」という意味ではありません。感情は確かに生まれているのに、それをつかまえて名前をつけるところで、うまくいかなくなっている状態です。くわしくはアレキシサイミア(失感情症)とは|感情に名前がつけられない人の特徴・原因・回復のヒントで解説しています。
研究によって幅はありますが、一般の人の約10〜16%、およそ10人に1人に強い傾向が見られるといわれます。病名ではなく、誰もが持っている特性の濃い・薄いです。私はこの状態を「感情迷子さん」と呼んでいます。中島輝の近刊『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』で使っている言葉で、感情をうまく認識・表現しにくくなっている状態のことです。迷子という言葉には、帰る場所があるという前提が含まれています。
「やばい」「すごい」「エモい」で止まっていませんか
友だちとのLINEでは、「やばい」「それな」「エモい」とスタンプで、気持ちは十分に通じます。便利な言葉は、日常のコミュニケーションをなめらかにしてくれます。けれど、便利な言葉ばかり使っていると、自分の感情の解像度そのものが粗くなり、本当はどう感じていたのかが自分でもわからなくなっていくことがあります。
文化祭で「やばかった」と感じた瞬間。それは、準備が間に合わないかもしれないという焦りだったのか、当日お客さんが笑ってくれた喜びだったのか、仲間と最後に抱き合ったときの誇らしさだったのか。「やばい」の中には、本当はいくつもの違う感情がしまわれています。自己分析とは、この「やばい」の箱を開けて、中身を一つずつ取り出していく作業なのです。
「正解の気持ち」を探していると、何も出てこない
もう一つ、自己分析で手が止まる大きな理由があります。それは、「企業に評価される気持ち」を探してしまうことです。「チームワークの大切さを学んだ」「成長を実感した」。そうした「正解っぽい感情」を探すうちに、本当に自分が感じたことが、どんどん見えなくなっていきます。
自己分析で最初にすべきことは、正解を探すことではありません。評価されるかどうかは脇に置いて、自分が実際に感じたことを、そのまま棚から出してみることです。「バイトで一番うれしかったのは、売上目標の達成じゃなくて、まかないがおいしかったこと」。それでもかまいません。そこから、あなたらしさが見えてきます。
自己分析で出てこないのは、経験ではない。
経験の中で動いていた、感情の言葉。
感情の棚卸しから、自分の軸は見えてくる。
ガクチカ・志望動機が「借り物の言葉」になる理由
就活の情報サイトや先輩の体験談には、通過したエントリーシートの例がたくさん載っています。それを読むうちに、自分の文章も似た言い回しになっていく。「〇〇の経験を通じて、主体性の大切さを学びました」「貴社の〇〇という理念に共感しました」。
こうした言葉が悪いわけではありません。けれど、面接官は毎日たくさんのエントリーシートを読んでいます。誰にでも書ける言葉は、どれだけ整っていても「あなたの言葉」としては届きにくいのです。
| 借り物の言葉 | 感情を出発点にした言葉 |
|---|---|
| アルバイトの経験を通じて、チームワークの大切さを学びました。 | 新人の子が初めて一人でレジを回せた日、自分のことのようにうれしくて、帰り道に思わずにやけてしまいました。人ができるようになる瞬間に立ち会うのが、私はたまらなく好きなのだと気づきました。 |
| 貴社の「挑戦を楽しむ」という理念に共感しました。 | 説明会で、失敗したプロジェクトの話を笑いながら話す社員の方を見て、肩の力がふっと抜けるのを感じました。失敗を隠さなくていい場所で働きたいと、そのとき強く思いました。 |
右の列の文章には、体の感覚(にやけてしまう、肩の力が抜ける)と、具体的な感情(うれしい、好き)が入っています。だから、読む人の頭の中に場面が浮かびます。そして何より、書いた本人が面接で深掘りされても、自分の体験として話し続けることができます。
借り物の言葉は、入社後のミスマッチにもつながる
自分の感情から出発しない志望動機は、選考を通るための言葉にはなっても、自分自身の判断の軸にはなりません。厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」によると、大学を卒業して就職した人のおよそ3割が、3年以内に最初の会社を離職しています。離職の理由はさまざまで、早く辞めることが悪いわけではありません。ただ、「自分の心が何に動くのか」がわからないまま選んだ会社では、入社後に「なんだか違う」と感じても、その違和感をうまく言葉にできず、ある日突然、心が限界を迎えてしまうことがあります。
入社後に「大丈夫です」と言いながら辞めていく若手社員の心の中については、「大丈夫です」と言って辞めていく社員|人材不足の陰にある感情迷子さん問題でくわしく書いています。就活のうちに感情の言葉を育てておくことは、選考のためだけでなく、働き始めてからの自分を守る力にもなるのです。
ハヤトさんの「別に、何でもないよ」から考える、面接で詰まる心の中
ここで、書籍原稿に登場するハヤトさん(仮名)の話をご紹介します。就活の話ではありませんが、面接で言葉に詰まる人の心の中が、とてもよくわかる事例です。
ハヤトさんのように、何かを感じていることはわかっているのに、それをすくいとる言葉が見つからないタイプを、私は「タイプ2:感情を説明できない」と呼んでいます。まじめで、言葉を大切にする人ほど、このタイプになりやすい傾向があります。「いいかげんな言葉で言いたくない」「間違ったことを言ったらどうしよう」。そう思うほど、口が重くなるのです。
面接の「どう感じましたか?」は、ハヤトさんの場面と同じ
面接で「そのとき、どう感じましたか?」と聞かれる瞬間は、まさにハヤトさんが恋人に詰め寄られた場面と同じ構造です。相手は答えを待っている。何かを感じていたことはわかる。でも、ぴったりの言葉が見つからない。焦れば焦るほど、頭が真っ白になる。そして口から出てくるのは、「えっと、やりがいを感じました」という、どこかで聞いたような言葉です。
さらに、言葉にできなかった感情は、心の中で「未完了のタスク」として残り続けます。やりかけのことのほうが記憶に残りやすいことをツァイガルニク効果といいますが、言葉にならない感情も同じように、頭のメモリを消費し続けます。選考が続く中で、言葉にならないモヤモヤが積み重なると、心はどんどん渋滞していくのです。
「色を塗ってみましょうか」から始める
私はハヤトさんに、「ちゃんとした言葉にならなくていいんですよ。まずはそのカタマリに色を塗ってみましょうか」と伝えました。最初から完璧な言葉を目指すのではなく、色や「モヤモヤ」「ザワザワ」といったオノマトペで、まず感情を外に出してみる。それが、言葉の扉を開く最初の鍵になります。
面接も同じです。最初から「正しい感情の言葉」を言おうとしなくていいのです。「うまく言えないんですが、胸がぎゅっとなるような感じでした」。そんなふうに体の感覚から話し始めると、面接官はむしろ、あなたが本当にその場面を生きていたことを感じとってくれます。
就活版「感情が動いた瞬間日記」で、自分の軸を掘り起こす
では、具体的にどうやって感情の棚卸しをすればいいのでしょうか。ここでは、書籍原稿の第4章で紹介している「感情が動いた瞬間日記」を、就活向けに作り直したワークをご紹介します。
もとのワークは、夜に1日を振り返って「今日、感情が動いた瞬間」を1つだけ書くというものです。ポイントは、感情の名前がわからないときは、体の反応に注目すること。「電話が鳴って、肩が上がった」「家に帰ってソファに座り、全身がふわっとゆるんだ」。感情の名前が書けなくても、体の反応を書くだけで、感情を認識する力は高まっていきます。
「体が反応した瞬間」を書き出す
小学校から今までの思い出の中で、体が反応した瞬間を書き出します。「心臓がバクバクした」「涙が出た」「時間を忘れた」「胃がキリキリした」「思わず声が出た」。感情の名前は、まだつけなくてかまいません。うれしい場面だけでなく、くやしかった場面、腹が立った場面も書いてください。
就活中の「心が動いた瞬間」を1行で
説明会、面接、OB・OG訪問、友だちとの会話。今日の中で心が動いた瞬間を、1行だけスマホのメモに書きます。「社員さんが自社の失敗談を笑って話していて、肩の力が抜けた」。企業を見ているときの自分の体の反応は、その会社が自分に合うかどうかの大切なデータになります。
体の反応に、感情の名前をつけてみる
1週間分のメモを見返して、それぞれの体の反応に感情の名前をつけます。「心臓がバクバク」は緊張? わくわく? 両方? ぴったりの言葉が見つからなければ、「〜みたいな気持ち」とたとえてもかまいません。
「なぜ、そこで心が動いたのか」を考える
感情の名前がついた場面を並べて、共通点を探します。「人が成長する瞬間に立ち会うと、うれしくなる」「理不尽なルールに出会うと、強く腹が立つ」。くり返し心が動くポイントこそが、あなたの価値観であり、就活の軸です。
感情を書き出すことの効果は、心理学者ペネベーカー(Pennebaker)の筆記開示の研究などで、くり返し確かめられてきました。大切なのは、出来事を書くだけでなく、そのときの感情に触れて書くことです。出来事だけを並べた日記は記録にはなっても、感情の言葉を育てる練習にはなりにくいのです。
中島輝より一言
私が小学生の頃、週に一度、家庭教師の先生が来てくれていました。ローマ字の勉強だといって、その日の出来事を1行、感想を1行、ローマ字で書かせてくれたのです。今思えば、あれが私にとって最初の「感情が動いた瞬間日記」でした。出来事と気持ちをセットで書く習慣は、大人になってからも、自分を支える力になります。就活のエントリーシートは、人生で一番真剣に書く日記なのかもしれません。
就活版「感情ことば帳」で、面接の言葉を自分のものにする
感情の棚卸しができても、それを表す言葉の引き出しが少ないと、どうしても「うれしかった」「楽しかった」「やりがいを感じた」に戻ってしまいます。そこで役に立つのが、書籍原稿の第4章で紹介している「感情ことば帳」です。
もとのワークは、歌詞やドラマのセリフ、小説の一節、誰かのSNS投稿などで「この気持ち、わかる」と感じた言葉を見つけたら、スマホにメモしておくというものです。自分で言葉を作る必要はなく、誰かの言葉を借りるだけでいい。これを就活向けに作り直すと、次のようになります。
- スマホのメモに「感情ことば帳」フォルダをつくる
- 社員インタビュー記事や説明会で、社員が自分の気持ちを語った言葉を見つけたらメモする(「悔しくて眠れなかった」「肩の荷が下りた」など)
- 好きな歌詞、マンガ、映画のセリフで「わかる」と思った感情表現もメモする
- 友だちが模擬面接で話した言葉のうち、胸に響いたものをメモする
- 週末に見返して、「自分の体験にも当てはまる言葉」に印をつける
こうして集めた言葉は、面接の答えを丸暗記するためのものではありません。自分の体験を語るときに、「あのとき感じたのは、たしかにこういう気持ちだった」と照らし合わせるための辞書です。借りてきた言葉でも、自分の体験と結びついた瞬間に、それはあなたの言葉になります。
感情を細かく区別できる人ほど、つらい気持ちからの回復が早く、気持ちを整える力も高いという研究もあります。感情の語彙を増やすことは、面接のためだけでなく、選考に落ちたときに立ち直る力にもつながっていくのです。
面接の「そのとき、どう感じましたか?」に答える3段の型
感情の棚卸しと、ことば帳の準備ができたら、面接の場で使える「答えの型」を持っておきましょう。おすすめは、「体→感情→強さ」の3段で答える方法です。
そのときの体の感覚を一言
「お客様からクレームを受けたとき、正直、手が震えていました」。体の感覚は、本当にその場にいた人にしか語れない言葉です。まず体から話し始めると、焦って頭が真っ白になるのを防げます。
感情の名前をつける
「怖かったのと同時に、自分の説明不足が情けなくて、くやしかったんです」。感情は一つでなくてかまいません。「〜と同時に〜」と混ざった気持ちを言えると、話にぐっと深みが出ます。
「ちょっと・そこそこ・すごく」で強さを添える
「そのくやしさは、正直かなり強くて、その夜は眠れませんでした。だから翌日から〜」。書籍原稿の「3段階温度計」というワークを応用したものです。感情の強さを伝えると、そのあとの行動の理由が自然に伝わります。
この型で答えると、面接官は「この人は、自分の心の動きを把握できている人だ」と感じます。それは、入社後に困ったときに自分の状態を正直に伝えられる人だ、という信頼にもつながります。感情を語れることは、社会人としての大切な力の一つなのです。
研究でも、感情に名前をつけると、脳の扁桃体(感情の警報装置のような部位)の活動が落ち着くことがわかっています(Lieberman et al., 2007)。面接の直前に「今、緊張してる。そこそこ」と心の中でつぶやくだけでも、少し落ち着いて話せるようになるはずです。
お祈りメールが続くときの心のケア
選考が進むにつれて、避けて通れないのが不合格の通知、いわゆる「お祈りメール」です。「今後のご活躍をお祈り申し上げます」。この一文を何度も読むうちに、自分そのものを否定されたような気持ちになることがあります。
そして、感情を言葉にするのが苦手な人ほど、このつらさを「別に平気」「次があるし」と飲み込んでしまいがちです。友だちに「どうだった?」と聞かれても、「ダメだった、まあいいや」と笑ってごまかす。けれど、飲み込んだ気持ちはなくなるわけではありません。眠れない、食欲がない、朝起きられない、次のエントリーシートに手がつかない。そんな形で、体や行動に出てくることがあります。
お祈りメールを受け取った日のセルフケア
メールを閉じたら、胸に手を当てる
書籍原稿の「心の体温チェック」です。手のひらを胸に当てて「今、自分の体は温かい? 冷たい?」と3秒だけ聞きます。答えは何でもかまいません。体に意識を戻すだけで、頭の中をぐるぐる回る「どうせ自分なんて」から、少し距離をとることができます。
今の気持ちをオノマトペで
「ずーん」「チクチク」「ぐるぐる」。正確な言葉を探さず、今の気分に一番近い音をスマホにメモします。「ずーん、そこそこ」と強さを添えると、気持ちがはっきり見えてきます。
「不合格」と「自分の価値」を分けて書く
紙を半分に折って、左に「今日起きたこと(〇〇社の選考に通らなかった)」、右に「今感じていること(くやしい、情けない、少しほっとした)」を書きます。選考の結果は、あなたという人間の価値の判定ではありません。書き分けることで、その区別が少しずつ心に入ってきます。
一人で抱えず「うまく言えないけど」と話す
信頼できる友だちや家族、大学のキャリアセンターの職員に、「うまく言えないけど、なんかしんどい」と話してみてください。途中の言葉で話していいのです。言葉は、受けとめてくれる人がいることで、少しずつ形になっていきます。
落ち込みが長く続くとき、とくに眠れない、食べられない、何をしても楽しめない状態が2週間以上続くときは、大学の学生相談室や保健管理センター、心療内科などに相談してください。助けを求めることは、弱さではありません。就活は、自分を大切にしながら進めていいのです。
お祈りメールは、あなたの価値の判定ではない。
「くやしい」と言葉にできたら、
それはもう、次の一歩の準備が始まっている。
就活生の親御さんへ|「どうだった?」の代わりにかける言葉
この記事を、就活中のお子さんを持つ親御さんが読んでくださっているかもしれません。最後に、親御さんにお伝えしたいことがあります。
子どもが面接から帰ってきたとき、つい「どうだった?」「受かりそう?」と聞きたくなるのは自然なことです。けれど、結果が出ていない段階でのこの質問は、子どもにとって「評価の報告」を求められているように感じられることがあります。その結果、「別に」「普通」としか返ってこなくなるのです。
| つい言いがちな言葉 | 言いかえの例 |
|---|---|
| どうだった? 受かりそう? | おつかれさま。緊張したでしょう。 |
| もっと大きい会社も受けたら? | どんな会社に行くと、わくわくしそう? |
| また落ちたの? 何がだめだったの? | くやしかったね。ごはん食べよう。 |
| 早く決めて安心させて。 | あなたのペースで大丈夫だよ。 |
右の列の言葉は、結果ではなく子どもの気持ちに目を向けた言葉です。書籍原稿で「共感の一言」として紹介しているワークでもあります。アドバイスや正論を言う前に、まず気持ちを受けとめる一言を先に出す。それだけで、子どもは家を「評価されない場所」として感じることができます。
そして、親御さん自身の気持ちにも目を向けてみてください。心配、焦り、もどかしさ。「お母さんも、ちょっと心配してる。でも応援してるよ」と、自分の気持ちを短く言葉にして伝える姿は、子どもにとって「気持ちを言葉にしていいんだ」というお手本になります。
自己肯定感の「6つの感」でいえば、自分の将来を自分で選ぶ力は、木の花にあたる自己決定感です。その花は、「どんな結果でも、自分はここにいていい」という根っこ、自尊心≒自己存在感があってこそ咲きます。家庭は、その根を育てる場所です。
よくあるご質問
あなたの心が、本当に動いた瞬間。
今夜、1行だけ書いてみよう。
働き始めてからのあなたも守ってくれます。
自分を大切にしよう
「自己分析で何も出てこない」と感じるとき、足りないのは経験でも文章力でもありません。経験の中で確かに動いていた心を、つかまえて言葉にする力です。「やばい」「すごい」で済ませてきた感情の箱を一つずつ開けていくこと。それが、自己分析という名の「感情の棚卸し」です。借り物の言葉で書いたガクチカや志望動機は、整っていても届きにくく、自分自身の判断の軸にもなりません。
面接で言葉に詰まるのは、ハヤトさんのように、言葉を大切にしようとするあまり感情の出口をふさいでいるからかもしれません。体の反応から始める感情の棚卸し、就活版の感情ことば帳、「体→感情→強さ」の3段の型。どれも、今日から少しずつ練習できます。そして、お祈りメールが続くときは、「平気」と飲み込まずに、「くやしい」「しんどい」と言葉にして、誰かに途中の言葉で話してください。
選考の結果は、あなたという人間の価値の判定ではありません。あなたの心が何に動くのか、その答えは、どの企業の評価よりも先に、あなた自身の中にあります。今夜、心が動いた瞬間を1行だけ書いてみてください。その1行が、あなたの軸の最初の一本になります。自分を大切にしよう。自分の感情を大切にできる人は、どんな場所でも、自分らしく働いていけます。
本記事の参考資料・科学的根拠
- 中島輝『感情を言語化すれば人生はうまくいく 感情迷子さんの本』(近刊)原稿
- 中島輝・自己肯定感アカデミー「アレキシサイミア 感情の鈍麻:失感情」講座資料
- 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」
- Taylor, G.J., Bagby, R.M., & Parker, J.D.A. (1997). Disorders of Affect Regulation: Alexithymia in Medical and Psychiatric Illness. Cambridge University Press.(邦訳『アレキシサイミア―感情制御の障害と精神・身体疾患』星和書店)
- Lieberman, M.D. et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421-428.
- Pennebaker, J.W. (1997). Writing about emotional experiences as a therapeutic process. Psychological Science, 8(3), 162-166.
- Zeigarnik, B. (1927). Das Behalten erledigter und unerledigter Handlungen. Psychologische Forschung, 9, 1-85.

自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。






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