失敗を怖がる子が変わる。
アドラー「不完全である勇気」の育て方
負けそうになると、ゲームを途中でやめる。難しそうだと、最初から「やらない」。間違えると、激しく泣いたり、怒ったり。失敗を極端に怖がるわが子に、「もっとおおらかになってほしい」と願っていませんか。その背景には、「完璧でないと価値がない」という思い込みがあるのかもしれません。自己肯定感アカデミー会長・中島輝が、アドラー心理学の「不完全である勇気」と自己肯定感の「6つの感」で、解き明かします。
失敗を極端に怖がる子に、悩んでいませんか
かるたで負けそうになると、泣いて中断する。少し難しそうなことは「できない」と、やる前からあきらめる。間違いを指摘されると、激しく怒ったり、固まったり。新しいことに、なかなかチャレンジしようとしない——。
「失敗してもいいんだよ」「間違えても大丈夫」と言っているのに、わが子は失敗を極端に怖がる。「どうしてこんなに失敗を恐れるんだろう」「もっと、のびのび挑戦してほしいのに」と、もどかしく、心配に感じていませんか。
その背景には、子どもの心の中の、ある思い込みがあるのかもしれません。それは——「完璧でなければ、価値がない」「失敗したら、ダメな子だと思われる」という思い込み。失敗を怖がるのは、臆病だからでも、わがままだからでもなく、それだけ「ちゃんとやりたい」「認められたい」という気持ちが強いから、とも言えます。この記事では、アドラー心理学の「不完全である勇気」をもとに、失敗を恐れない子の育て方をお伝えします。
こんなこと、ありませんか?
- 負けそうになると、途中でやめる
- 難しそうだと、やる前にあきらめる
- 間違いを指摘されると、激しく怒る・泣く
- 新しいことに、なかなか挑戦しない
- 「失敗してもいい」と言っても、怖がる
一つでも当てはまったら、どうぞ読み進めてください。読み終えるころには、お子さんが「失敗しても大丈夫」と思える、関わりのヒントが見つかっているはずです。
「完璧でないと価値がない」という思い込み
失敗を怖がる子の心の奥には、たいてい「完璧でなければ、価値がない」という思い込みが潜んでいます。100点でなければ意味がない。間違えたら恥ずかしい。負けたら、自分はダメな人間だ——。この思い込みがあると、失敗は「自分の価値が下がる、恐ろしいこと」になってしまいます。
では、なぜこの思い込みが生まれるのでしょうか。一つの大きな要因が、「結果ばかりをほめられ、失敗を責められてきた経験」です。「100点えらい」「勝ってすごい」と結果を評価され、「なんで間違えたの」「どうして負けたの」と失敗を責められると、子どもは学びます。「成功すれば愛される、失敗すれば愛されない」と。だから、失敗を避けるために、挑戦そのものをやめてしまうのです。
つまり、必要なのは「失敗を怖がるな」と励ますことではなく、「失敗しても、あなたの価値は変わらない」という安心を、心の底に育てること。完璧でなくても、間違えても、負けても、あなたは大切な存在だ——。この絶対的な安心感こそが、失敗を恐れず挑戦できる、本当の勇気の源になるのです。
アドラー「不完全である勇気」とは
失敗を怖がる子を救う鍵が、アドラー心理学の流れをくむ「不完全である勇気(Courage to Be Imperfect)」という考え方です。これは、アドラーの弟子が体系化したもので、自分の弱さや欠点、失敗を否定せず、そのまま認める勇気のことを指します。
「完璧でなければ価値がない」という思い込みから自由になり、「不完全なままでも、一歩踏み出していい」と思えること。これが「不完全である勇気」です。完璧を目指して動けなくなるのではなく、不完全なまま、挑戦できる。失敗しても、「そんな自分もOK」と受け止められる。この勇気こそが、挑戦する力の土台になります。
この「不完全である勇気」を、美しく表すメタファーが、日本の伝統技法「金繕い(きんつぎ)」です。割れた器を、金で繕って修復する。すると、割れ目が「傷」ではなく「美」に変わり、世界に一つだけの器になります。人間も同じ。失敗や弱さは、隠すべき欠点ではなく、金で繕うことで、その人だけの唯一無二の魅力になるのです。子どもに伝えたいのは、まさにこのこと。「失敗してもいい。その失敗こそが、あなたを成長させ、あなただけの輝きになるんだよ」と。
「褒める」より「勇気づける」
失敗を怖がる子に、いちばん効くのは何か。アドラー心理学は、はっきり答えます。「褒める」のではなく「勇気づける」こと。この2つは似ているようで、まったく違います。そして、失敗を恐れない子を育てるのは、後者「勇気づけ」なのです。
結果を評価する
「100点すごい」「勝ってえらい」。結果・成果を評価し、成功したときだけ機能する。失敗すると認められない。
プロセスと存在を認める
「最後までがんばったね」「挑戦してくれてありがとう」。過程・努力・存在を認め、失敗したときにこそ力を発揮する。
「褒める」は、結果や成果を評価する言葉です。「100点すごい」「1位えらい」。一見よさそうですが、これは成功したときだけ機能する言葉。裏を返せば、「成功しなければ価値がない」というメッセージを伝えてしまいます。だから、結果を褒められて育った子ほど、失敗を恐れるようになるのです。
一方「勇気づけ」は、結果でなく、プロセス・努力・存在そのものを認める言葉です。「最後までがんばったね」「難しいことに挑戦してくれてありがとう」。これは、失敗したときにこそ力を発揮する言葉。たとえ負けても、間違えても、「挑戦したこと自体が素晴らしい」と認められれば、子どもは「失敗しても、自分には価値がある」と感じられます。アドラーは「すべての神経症の根には、勇気の欠如がある」と述べました。勇気づけこそが、失敗を恐れない心を育てる、最大の栄養なのです。
「100点すごい」より、「挑戦してくれてありがとう」。結果を褒めるより、過程と存在を勇気づけよう。
不完全である勇気で育つ3つの感
勇気づけによって「不完全である勇気」を育てることで、自己肯定感を支える「6つの感」のうち、特に次の3つが育ちます。
「失敗する自分もOK」。不完全さを受け入れられる経験が、ありのままの自分を肯定する、しなやかな心を育てる。
「失敗しても愛される」。失敗を責められない経験が、「何があっても大丈夫」という絶対的な安心の土台をつくる。
「挑戦すればできる」。失敗を恐れず挑戦し、乗り越える経験が、「やればできる」という確かな自信を育てる。
とくに大切なのが自己受容感です。これは「ありのままの自分を受け入れる」感覚で、しなやかに曲がっても折れない「幹」にあたります。自己受容感が育っていれば、失敗しても「そんな自分もOK」「次がんばろう」と立ち直れる。これが、心の回復力(レジリエンス)の源です。逆に、自己受容感が低いと、失敗が「自分の存在の否定」のように感じられ、立ち直れなくなってしまいます。失敗を恐れない子を育てることは、結局、「失敗する自分も受け入れられる」自己受容感を育てることなのです。これは科学的にも、自己受容(セルフ・コンパッション)が高い人ほどストレスに強く、立ち直りやすいと示されています。
図|勇気づけが「失敗しても自分はOK」という自己受容感を育て、失敗を恐れず挑戦できる心になる(中島輝「6つの感」をもとに作成)
中島輝が見た、失敗を怖がる子ケース5選
よくある5つの場面を、「褒める・責める関わり」と「勇気づける関わり」で見ていきましょう。
ゲームで負けそうになると、やめる
つい:「最後までやりなさい」または「勝てなくて残念ね」
勇気づけ:「負けても、最後まで挑戦できたらかっこいいね」と過程を認める。勝ち負けより、挑戦し続けることに価値があると伝えます。
難しそうだと「できない」とあきらめる
つい:「やってみなきゃ分からないでしょ」
勇気づけ:「失敗しても大丈夫だよ。やってみようとするあなたが素敵」と存在を認める。結果でなく、挑戦する姿勢そのものを勇気づけます。
間違いを指摘されると、激しく怒る
つい:「間違えたくらいで怒らないの」
勇気づけ:「間違えて悔しかったね」と気持ちを受け止める。「間違いは、賢くなるチャンスだよ」と、失敗を学びと捉え直す手助けを。
テストや作品の「できばえ」を気にしすぎる
つい:「100点えらい」と結果を褒める
勇気づけ:「コツコツがんばってたもんね」と過程を。結果でなく努力を認めると、点が悪い日も自分を責めず、挑戦を続けられます。
失敗して、ひどく落ち込む
つい:「そんなことで落ち込まないの」と励ます
勇気づけ:「挑戦したから、失敗できたんだよ。挑戦しない人は失敗もできない」と。失敗は挑戦した証だと、誇りに変えてあげましょう。
まず親が「不完全である勇気」を持つ
失敗を恐れない子を育てるうえで、いちばん大切なこと。それは、テクニックではありません。まず、親自身が「不完全である勇気」を持つことです。子どもは、親の言葉以上に、親の「生きる姿」から学ぶからです。
親が完璧を求める
親自身が失敗を恐れ、自分に完璧を求める。失敗に厳しく反応する。その姿勢が、子どもに「失敗は怖いもの」と伝わる。
親が失敗を受け入れる
親が自分の失敗を「まあ、いっか。次がんばろう」と受け止める。その姿が、子どもに「失敗しても大丈夫」を教える。
もし、親自身が失敗を恐れ、完璧主義で、自分にダメ出しばかりしていたら——その姿勢は、言葉にしなくても、子どもに伝わります。逆に、親が自分の失敗を「まあ、いっか。次がんばろう」と、おおらかに受け止める姿を見せれば、それが何よりの手本になります。料理を失敗しても「あはは、焦げちゃった。次は気をつけよう」。道を間違えても「間違えちゃった、でも新しい道を発見だね」。そんな親の姿が、子どもに「失敗は怖くない」と教えるのです。
家庭で楽しく取り入れられるのが、「失敗日記」です。これは、毎日の小さな失敗を書き出し、それを「OK!」と受け止めるワーク。「失敗は終わりじゃなく、新しいスタートの合図」と捉え直すのです。親子で「今日の失敗、なんだった?」と笑いながら話すだけでも、失敗が怖くないものに変わっていきます。失敗を責める家庭から、失敗を歓迎する家庭へ。その空気が、子どもの「不完全である勇気」を育てます。
不完全である勇気×中島輝メソッド4ステップ
失敗を恐れない子を育てる関わりは、中島輝メソッドの「自己認知→自己受容→自己成長→他者貢献」に、深く重なります。とくにSTEP2「自己受容」が、この記事の核心です。
自己認知|「完璧主義の思い込み」に気づく
まず親子が、「完璧でないと価値がない、という思い込みがあるかも」と気づくこと。気づくことが、思い込みから自由になる第一歩です。
自己受容|「不完全な自分もOK」を受け入れる
失敗する自分、不完全な自分を受け入れる。これが自己受容感・安心感を育てる、まさに「不完全である勇気」。金繕いのように、弱さを魅力に変えます。親も自分の不完全さを受け入れて。
自己成長|「勇気づけ」で挑戦を後押し
結果でなくプロセスを勇気づけ、失敗を学びに変える。失敗を恐れず挑戦する経験が、自己効力感を育て、成長へとつながります。
他者貢献|「ありがとう」で存在を認める
「挑戦してくれてありがとう」と存在そのものに感謝を。結果でなく存在を認められる経験が自己有用感を育て、人とつながる勇気になります。
この4ステップで、アドラーの不完全である勇気と、自己肯定感の6つの感が、家庭で一つにつながります。失敗を受け入れられた子は、何度でも挑戦できる子。その勇気は、今日のあなたの「挑戦してくれてありがとう」の一言から育ちます。
中島輝メソッドを体系的に学ぶ
自己肯定感アカデミーでは、アドラー心理学と6つの感を統合した関わりを体系的に学べます。子どもの「不完全である勇気」を、さらに深く育てるために。
自己肯定感アカデミーを見る →センターピン|たった1つだけ覚えて帰ってください
「完璧でないと
価値がない」
という思い込みから。
「100点すごい」より、
「挑戦してくれて
ありがとう」。
今日から始める、たった1つの習慣
よくある質問5問
こころが疲れたときの相談窓口
💙 無理せず、頼れる場所
- 児童相談所相談専用ダイヤル|0120-189-783(24時間・無料)
- 子育て世代包括支援センター|お住まいの市区町村の窓口
- よりそいホットライン|0120-279-338(24時間・無料)
- こころの健康相談統一ダイヤル|0570-064-556
- 厚生労働省 まもろうよこころ|公式サイト
次に読むべき記事|シリーズ予告
モンテッソーリ×自己肯定感シリーズ 第18弾、そしてシリーズD最終回、最後までありがとうございました。失敗を怖がるのは「完璧でないと価値がない」という思い込みから。鍵はアドラーの「不完全である勇気」=失敗や弱さを受け入れる勇気で、金繕いのように失敗はその子の輝きになること。結果を「褒める」より過程と存在を「勇気づける」こと。そしてまず親が失敗を受け入れる姿を見せること。それが自己受容感と挑戦する勇気を育てると、伝わっていたら嬉しいです。今日、「挑戦してくれてありがとう」から始めてみてください。
🔥 モンテッソーリ×自己肯定感シリーズ、好評連載中!
世界が認めるモンテッソーリ教育と、自己肯定感の「6つの感」を統合し、0〜6歳の子育てに徹底的に落とし込む新シリーズ。特別な才能ではなく、どんな子にも育つ「自己肯定感の土台」を、一緒に育てていきましょう。
次回・第19弾予告|いよいよ統合編へ。「0〜6歳の敏感期 完全ガイド|今すべきことの早見表」。これまでの集大成として、0〜6歳の敏感期を一覧で見渡し、年齢別に「今すべきこと」が分かる早見表をお届けします。お楽しみに。
🛡️ 本記事の権威性とトラスト
- 監修者:中島輝(自己肯定感アカデミー会長/心理カウンセラー/一般財団法人自己肯定感学会代表)
- 監修者実績:著書累計76万部/15,000人臨床/回復率95%/1,800人独自統計
- 参照理論:アルフレッド・アドラー「勇気づけ」「不完全である勇気(Courage to Be Imperfect|ゾフィー・ラザースフェルトが体系化)」「横の関係」/中島輝「自己肯定感の6つの感」(特に自己受容感・安心感)
- 参照原典:マリア・モンテッソーリ『子どもの発見』(誤りの自動調節・環境の守り手)
- 関連エビデンス:アドラー心理学に基づく子育てプログラム「Positive Discipline」のメタ分析による有効性、自己受容(セルフ・コンパッション)とコルチゾール低減・レジリエンス向上の研究、心理的安全性(エドモンドソン)と「失敗しても大丈夫」な環境の学習効果
- 政策準拠:文部科学省「生徒指導提要2022年」自己存在感・自己受容の重視
- 掲載実績:東洋経済オンライン・プレジデントオンライン・ダイヤモンド・オンライン・現代ビジネス・日経xwoman他1,000媒体以上
- 所属:自己肯定感アカデミー/一般財団法人自己肯定感学会/トリエ
- 公開日:2026年6月1日(モンテッソーリ×自己肯定感シリーズ 第18弾)
- 編集方針:編集方針はこちら
- 利益相反開示:本記事は中島輝が代表を務める自己肯定感アカデミーの公式記事です。プライバシーポリシー
❗ 重要:専門家への相談について(YMYL:育児・メンタルヘルス情報)
本記事はアドラー心理学、モンテッソーリ教育および中島輝「自己肯定感の6つの感」への深い敬意を込めた解説記事です。本記事の内容は中島輝オリジナルの解説であり、特定の団体・著者の公式見解を示すものではありません。
本記事は医学的診断・治療を提供するものではなく、失敗への強い恐れや不安、落ち込みが続き日常生活に支障が出ている場合は、かかりつけ医・小児科医・地域の子育て支援窓口・公認心理師等の専門家への相談を強く推奨します。緊急時は児童相談所相談専用ダイヤル(0120-189-783)へ。
本記事の内容を実生活に取り入れる際は、お子さまの様子とご自身の判断・責任において行ってください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の状況に対する助言を代替するものではありません。
自己肯定感ラボで、子育ての土台を育てる
自己肯定感ラボでは、モンテッソーリ教育×自己肯定感の子育て記事を多数公開しています。あなたとお子さんの毎日に、失敗を恐れず挑戦できる勇気の土台が育っていきますように。
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自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。





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