先行きが見えない今の世の中、心が漠然とした不安に包まれ、ネガティブな感情に支配されてしまっている方は多いのではないでしょうか。
今回は、そんな不安をすこしでも軽減し、ネガティブな感情と向き合うための方法をご紹介します。
簡単な方法ですので、是非試してみてください。
目次
ネガティブ感情とポジティブ感情の関係性
そもそも私たち人間の感情は、ポジティブとネガティブの間を行ったり来たりしています。
かといって、ネガティブな感情から一気にポジティブな感情に変わることはありません。その間にあるフラットな状態を経由して、変わっていくのです。
そして、どんな状況であっても、自分の感情をフラットな状態に持っていくことができる人は、感情を上手くコントロールする方法を知っているといえます。
ネガティブな感情のコントロール
では、感情をコントロールする方法とは具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
自分の弱さを理解する
ネガティブな感情が自分の中で大きくなってしまったときに大切なことは
「今自分はネガティブな感情が大きくなっているんだ」「イライラして焦っているんだ」
と、そのときの自分の詳細をしっかりと把握することです。
これを行うことで、悲しみや怒り、悔しさや不安などのネガティブな感情によってイライラしても、自分の中でしっかりと咀嚼し、それを外に向けて吐き出したりすることが少なくなっていきます。
感情の数値化
ここで、実際にあった例を紹介しながらネガティブな感情のコントロール方法を説明していきましょう。
バスケットボールで国体に出場したこともあるAさんは、学生時代に培った忍耐力を営業でも活かし、生命保険業界でバリバリ活躍していました。
そんなAさんは、2人の子どもを育てるシングルマザーでもありました。
公私ともに充実した日々を送っていたAさんですが、2人の子どもが高校生になって、子育てがひと段落した頃、急に営業成績が落ち、仕事が思い通りに行かなくなってしまいました。
そんな折、私のコーチングを受けることになりました。
じっくりと話をしていく中で、Aさんは完璧主義の思考が強くあることがわかりました。彼女にとって、負けること、成果を出せないことは許せないことだったのです。
以前はこの完璧主義の思考が良い方向に働いていたのですが、営業成績が落ちたことがきっかけとなり、Aさんの中でイラだたしさやとまどいといったネガティブ感情がどんどん大きくなっていったのです。
その結果、Aさんの強みでもあった完璧主義の思考は弱みへと変わってしまいました。
これは完璧主義の「スキーマ」からくるものでした。
スキーマとは、特定の物事に関する情報が集まると、それら情報に紐づく一般的な知識に紐づけてしまう動きで、”心のクセ”と言い換えることもできます。
例えば、
・開閉が可能なA4サイズのボード
・開くと片方には液晶画面
・もう片方にはたくさんのキー
これらの情報が揃うと、おそらく大多数の人は「ノートパソコンのことを指しているのでは?」と考えるでしょう。
このような特定の情報からノートパソコンという答えを導き出せるのは、ノートパソコンに関する一般的知識を有しているからです。
これがスキーマ(心のクセ)なのです。
Aさんは完璧主義のスキーマによって、仕事以外の面でもつまずき始めていました。
これを解消するため、Aさんに取り組んでいただいたのが、先ほどお伝えしたネガティブな感情を客観的に捉える「感情の数値化」でした。
「今自分が抱いている怒りや悲しみは、過去に経験した怒りや悲しみに比べてどの程度のものなのだろうか」
この思考方法は、自分自身をより高い次元から客観的に認知する「メタ認知」というものです。
決して簡単ではありませんが、数字では表せない感情という定性的なものを、敢えて数値で表し、定量的に捉える試みであり、感情を数値化=”見える化”してコントロールする方法です。
感情を数値化する方法
ではいよいよ感情を数値化する具体的な方法を解説していきましょう。
用意するものは紙とペンだけ。とても簡単です。
そして「自分が今までにで経験してきた、最もネガティブな感情」を、その原因と合わせて紙に書きましょう。
そのときのネガティブな感情が10点満点中10点となり、ネガティブな感情を測るものさしの最大数値となります。
次に「今感じているネガティブな感情」の種類(不安、とまどい、焦りなど)や原因を書き出し、先ほど書き出した過去の最もネガティブだった感情と比べて何点であるか採点してください。
ネガティブな感情を抱えているときは、感情の中枢である脳内の扁桃体と呼ばれる部位が活発に働いており、怒りや不安が爆発寸前といった状況です。
そんな状況下では、何を言われても正常な決断や判断はできませんよね。
ところが、紙とペンで爆発しそうなネガティブ感情を書き出すことで、扁桃体の働きが落ち着いてくるのです。このことは脳科学の研究でも明らかになっています。
心理的・物理的距離を取る
先ほどのAさんの話に戻りますが、彼女は学生時代に自分のミスが原因で、大事な試合に負けてしまった出来事を思い出し、そのときに感じたネガティブな感情を最大値の10点に設定しました。
そしてその点数を基準に、今抱えているネガティブ感情の採点を行っていただきました。
Aさんのように、採点するという行動を通すことで、偏桃体の働きを落ち着けるだけでなく、ネガティブな感情と少し距離を置きながら、自分の心の動きを理解することができるようになります。
これが感情を上手にコントロールするための第一歩です。
もし、あなたがこの方法を試して、自分の中に8点や9点のネガティブ感情を抱いているとしましょう。
その場合は、原因となっている人や事柄から、たった1時間だけでもいいので離れてみることをおすすめします。
つまりは心理的・物理的な「距離」を取るのです。
そして、緑の多い場所に出かけましょう。天気の良い日に木々を眺めながら、太陽の光をたっぷりと浴びることで心が落ち着いてくるでしょう。
これは脳内でセロトニンと呼ばれる神経伝達物質が分泌されているからです。
セロトニンは感情のコントロールに深く関わっており、セロトニンが分泌されることでポジティブな感情が沸き起こります。
反対に、分泌されていない場合はネガティブな感情に陥ってしまうのです。
ネガティブ感情を強みに変える
さて、心がすこし落ち着いたら、感情の数値化をもう一度行いましょう。あなたが抱えていたネガティブな感情の点数はかなり下がっているはずです。
感情の数値化によって、よりネガティブな感情を思い出し「あの苦難を乗り越えてきたんだから、大丈夫だ!」と考えることで、心をフラットな状態にすることができます。
心がフラットになれば、今度はネガティブな感情や弱みと考えていた部分を強みに変えていきましょう。
心のクセである「スキーマ」を武器に変える
Aさんは感情の数値化を通じて、自分の弱みが「負けを認められない完璧主義」にあると気づくことができました。
そこからのAさんは、ストレスがたまると「あ、行き過ぎた完璧主義がまた顔を出した始めた!」と察知して、感情の数値化を行って、感情を見える化する習慣がつきました。
そうした習慣によって「これはそこまで完璧さを求められているものなのかな?」と自問自答し、冷静さを取り戻すことができるだけでなく、Aさんがつまずくきっかけでもあった完璧主義のスキーマをもっと活かす方法はないか、と考えられるまでになりました。
そうすることでAさんは仕事だけでなく、日々の生活や人間関係までもがうまくいくようになったのです。
弱み・ネガティブを変換するアクション
強みと弱みは「隣り合わせ」だと脳科学ではいわれています。
完璧主義なAさんの性格は、実際に物事や仕事に対するモチベーションを上げるのに役立っていました。
状況や環境によって、その人が弱点だと認識しているものは、いとも簡単に強みへと変貌を遂げるものでもあります。もちろんその逆もありますが。
ここでもう一つの例を挙げて説明しましょう。
営業トークが苦手なことに思い悩んでいたKさん。クライアントとの打ち合わせにおいて、プロダクトのプレゼンをする際に話を盛り上げられず、苦労していました。
そんなKさんは非常に物腰が柔らかく、穏やかな性格です。友人と話していても、いつのまにか聞き役に回っているタイプ。
Kさんは「そんな消極的な性格どうにかしたい」とコーチングを受けに来られていました。
そんなKさんに「直さなくていいです。ただその代わり、今まで以上に”聞き役”に徹してください。
プレゼンをうまくなりたいとムキになるより、クライアントに質問を投げかけて、徹底的に相手の悩みや疑問を聞くことに集中することが大事です」と伝えました。
真面目で実直なKさんは、その後営業トークではなく、聞き役に徹することに注力しました。
そうしていると、クライアントの反応がどんどんよくなっていきました。
人間は話を聞くより、話したい生き物です。Kさんがもつ「聞く力」によって、クライアントは気持ちよく話すことができ、結果として満足度が上がったのです。
多くの人が話したい世の中において、Kさんが持つ”聞き役に徹して人の話を聞くことができる力”はとでも貴重なものだったのです。
これは、弱点が実は大きな強みだったという端的な例かもしれませんが、それでも、捉え方や環境によって弱みが強みに変わることは大いにあり得るのです。
まとめ
これを読んでいるあなたは、丁度不安にさいなまれているところかもしれません。ネガティブな感情が心に蓄積されていっているかもしれません。
しかし、それはあなたの感受性が豊かであることに他なりません。そして、人の心を敏感に読み取れる「強み」と表裏一体であるとも言えます。
不安やネガティブな感情は、なくすべきものでもなく、ましてや悪いものでもありません。上手く強みに変えて使うものなのです。
どうか今日から、そんな意識で自分の心と向き合っていただければ、と願っています。
自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。
コメント