「上司・部下」を
「横の関係」に
変える方法
部下が指示待ちで、自分から動かない。何度言っても伝わらない。あるいは、上司との関係がぎくしゃくして、職場に行くのが憂うつだ——そんな職場の人間関係の悩みを、抱えていませんか。実はその苦しさの多くは、「役割の上下」と「人間の上下」を、混同してしまうことから生まれています。自己肯定感アカデミー会長・中島輝が15,000人の臨床から導いた、上司・部下を「横の関係」に変える方法をお届けします。上司も部下も、役割が違うだけで、人間としては対等。命令で動かす「縦の上下関係」から、勇気づけで人が育つ「横の信頼関係」へ。職場の関係は、今日から変えていけます。
01なぜ「上司・部下」の関係がうまくいかないのか
部下が指示待ちで、自分から動かない。何度伝えても、響かない。良かれと思って指導しても、なぜか距離ができてしまう。あるいは、上司との関係がぎくしゃくして、職場に行くのが、どこか憂うつ——。「上司・部下の関係が、うまくいかない」。そんな職場の人間関係の悩みを、抱えている方は、本当に少なくありません。立場が上の人も、下の人も、それぞれに苦しさを感じています。厚生労働省の調査でも、仕事の悩みの上位には、常に「職場の人間関係」が挙がり続けています。それだけ多くの人が、同じ苦しさを抱えているのです。
そして、こう思ってしまう。「自分のマネジメントが下手なのかもしれない」「あの上司とは、合わないんだ」と。でも、その結論を急ぐ前に、知ってほしいことがあります。職場の人間関係の苦しさの多くは、「役割の上下」と「人間の上下」を、混同してしまうことから生まれているのです。この混同を解くのが、アドラー心理学の「横の関係」という考え方です。
⚠️ 今、いくつ当てはまりますか?
- 部下が指示待ちで、自分から動いてくれない
- 何度言っても、相手に響いている気がしない
- 指導すると、かえって関係がぎくしゃくする
- 上司・部下とのコミュニケーションに疲れる
- 立場の違いで、本音を言い合えない
- 命令や評価で、人を動かそうとしてしまう
- 本当は、信頼し合える職場の関係を築きたい
結論から申し上げます。上司も部下も、役割が違うだけで、人間としては対等です。職場には、確かに役割としての上下関係があります。それは仕事を進めるうえで必要なもの。でも、「役割が上」だからといって、「人間として上」なわけではありません。この区別ができると、命令や評価で人を動かす「縦の関係」から、勇気づけで人が育つ「横の関係」へと、関わり方を変えられます。この記事では、その具体的な5つの方法を、処方箋としてお渡しします。
図①|中島輝が15,000人臨床から体系化した「自己肯定感の木」モデル(中島輝 作成)。本記事では「自分にはできる」CAN 自己効力感と「誰かの役に立てる」YOU 自己有用感を中心に解説します。横の関係が、職場でこの枝と実を育てます。
02「縦の上下関係」と「横の信頼関係」|役割と人間は別
5つの方法に入る前に、アドラー心理学の核心となる考え方をお伝えします。それが「縦の関係」と「横の関係」、そして「役割の上下」と「人間の対等」を分けるという視点です。これがわかると、職場の関わり方が、根本から変わります。
多くの職場では、上司・部下の関係を「縦の上下関係」として捉えています。上司は指示し、評価し、管理する。部下はそれに従う。一見、当たり前のようですが、ここに落とし穴があります。「役割が上」であることを、いつの間にか「人間として上」だと錯覚し、相手を見下したり、コントロールしようとしたりしてしまうのです。すると、部下は萎縮し、受け身になり、本来の力を発揮できなくなります。
図②|「縦のピラミッド」と「横のチーム」(中島輝 作成)。縦の上下関係では部下は受け身に。横の信頼関係(円卓)では、役割を果たしつつ人間として対等に尊重し合い、力を発揮します。
「役割の上下」と「人間の対等」を分ける
ここで大切なのが、「役割の上下」と「人間の対等」を、はっきり分けて考えることです。職場で上司が指示を出し、部下がそれに応えるのは、「役割」としては自然なこと。これをなくす必要はありません。仕事には、責任の所在や、意思決定の役割分担が必要です。
でも、「人間としては、上司も部下も対等」。役割が上だからといって、相手を見下していいわけではないし、人間としての価値が上なわけでもありません。アドラー心理学の「横の関係」とは、役割の違いは保ちながらも、人間としては対等に尊重し合う関係のこと。この区別ができると、「役割として指示しつつ、人間としては勇気づける」という、健やかな関わりができるようになります。第55弾「勇気づけ」、第57弾「自立」でお伝えした考え方の、職場への応用です。
「縦の関係」が必要な場面を、否定するわけではない
ここで、誤解してほしくないことがあります。「役割としての上下関係や、指示そのものを否定する」わけではないということ。緊急時や、安全に関わる場面では、上司が毅然と指示を出すことが必要です。組織として成果に責任を持つことも、当然大切です。
問題なのは、すべての関わりを「縦」だけで済ませ、相手を一人の人間として尊重することを忘れてしまうこと。日頃から「横の信頼関係」を築いておけば、いざ指示が必要なときも、相手は素直に受け取ってくれます。「縦」と「横」、どちらかではなく、役割では適切に「縦」を使い、人間関係の土台は「横」で築く。そのバランスこそが、信頼される上司・部下関係を生むのです。本記事は、その「横」の土台づくりに光を当てて、5つの方法をお伝えします。役割では「縦」、人間関係では「横」——この使い分けこそが、信頼される関係の核心です。
03上司・部下を「横の関係」に変える5つの方法【1〜3】
いよいよ、本記事の核心です。中島輝が15,000人の臨床から導いた上司・部下を「横の関係」に変える5つの方法。まずは前半の1〜3、「役割と人間を分ける・相談で動いてもらう・貢献を承認する」を見ていきましょう。立場が上の方も下の方も、今日から実践できます。
図③|上司・部下を「横の関係」に変える5つの方法(中島輝 作成)。役割と人間を分け、相談し、感謝を伝え、ともに考え、信頼して任せる。この5つで職場の関係が変わります。
方法1|「役割の上下」と「人間の対等」を分けて考える
役割は果たす、でも人間としては対等に尊重する
最初の方法は、すべての土台となる「役割の上下」と「人間の対等」を分けて考えること。上司という役割、部下という役割は、仕事を進めるために必要です。指示を出す、報告する——その役割は、きちんと果たす。
でも、「役割が上=人間として偉い」ではないと、心にとめておく。上司も部下も、一人の対等な人間です。この意識を持つだけで、相手への接し方が、自然と変わります。見下したり、媚びたりせず、対等な一人の人間として尊重する。「役割」と「人間」を切り分けるこの視点が、横の関係のすべての始まりです。立場が下の方も、「役割では従うが、人間としては対等」と捉えると、過度に萎縮せずにすみます。
方法2|「命令」でなく「相談・依頼」で動いてもらう
「やっておいて」を「お願いできるかな」に
2つ目は、命令を、相談・依頼に変えること。「これ、やっておいて」という一方的な命令は、縦の関係そのもの。命令されると、人は「やらされている」と感じ、受け身になります。
代わりに、「これ、お願いできるかな」「どう進めるのがいいと思う?」と、相談や依頼の形にしてみましょう。同じことを頼むのでも、相談・依頼の形にすると、相手は「自分は信頼され、頼られている」と感じ、主体的に動きやすくなります。とくに「どう思う?」と意見を求めると、相手は自分で考え、当事者意識を持って取り組むように。命令で動かすより、相談で動いてもらうほうが、結果的にずっと良い仕事につながるのです。
方法3|「評価」でなく「感謝・貢献の承認」を伝える
「よくやった」を「助かった、ありがとう」に
3つ目は、上からの評価を、対等な感謝・貢献の承認に変えること。「よくやった」「えらいぞ」という評価は、上の立場から下を評価する縦の関係。一方、「助かったよ、ありがとう」「あなたのおかげで、チームが前に進んだ」という感謝や貢献の承認は、対等な横の関係です。
評価されると、人は「評価されるために動く」ようになりますが、貢献を承認されると、「自分はチームの役に立てている」というYOU 自己有用感が育ちます。この自己有用感こそ、仕事のやりがいと、内側からのモチベーションの源。「評価する人」ではなく「感謝を伝える人」になる。それだけで、相手の働きがいは、大きく変わります。第59弾「勇気づけ言葉100選」も、ぜひ参考にしてください。
04上司・部下を「横の関係」に変える5つの方法【4〜5】
後半の方法4〜5は、相手の力を信じ、引き出す関わり方です。一方的に指導・管理するのをやめ、ともに考え、信頼して任せる。そこから、人は自ら育っていきます。
図④|相手の力を、信じて引き出す(中島輝 作成)。指導・管理は受け身を生みますが、ともに考え信頼して任せると、人は主体的に力を発揮します。
方法4|「指導する」でなく「ともに考える」
「こうしなさい」を「どうしたらいいと思う?」に
4つ目は、一方的な指導を、ともに考える対話に変えること。「こうしなさい」「ここが間違っている」と上から教え込む指導は、相手の考える力を奪います。答えを与えられ続けると、人は自分で考えなくなり、指示待ちになるのです。
代わりに、「どうしたらいいと思う?」「一緒に考えてみよう」と、対等な目線で問いかけてみましょう。相手の意見をまず聞き、ともに答えを探す。すると、相手は自分で考える力を取り戻し、答えを自分のものとして納得できます。上司が「教える人」から「ともに考えるパートナー」になると、部下は驚くほど主体的に育っていきます。もちろん、知識や経験を伝えるべき場面では伝えていい。大切なのは、一方的に与えるのでなく、対話の中で引き出すことです。
方法5|「管理する」でなく「信頼して任せる」
細かく管理せず、信じて任せてみる
5つ目は、細かい管理を、信頼して任せることに変えること。一挙手一投足を管理し、口を出し続ける(マイクロマネジメント)と、相手は「信頼されていない」と感じ、やる気と主体性を失います。
代わりに、「あなたに任せるよ。困ったらいつでも相談して」と、信頼して任せてみましょう。任されると、人は「信頼に応えたい」と責任感を持ち、自分の力で工夫し始めます。そして、やり遂げたとき、「自分にはできた」というCAN 自己効力感が育つのです。もちろん、丸投げではなく、サポートできる体制は保ちながら。「見守りつつ、信じて任せる」。この関わりが、相手の成長を最も力強く後押しします。人は、管理されて育つのではなく、信頼されて育つのです。これは、立場や年代を問わず、すべての人に共通する、人間の本質です。
上司も部下も
役割が違うだけで
人間としては対等。
「縦の上下関係」から
「横の信頼関係」へ。
命令で動かすのでなく
勇気づけで、人は育つ。
05横の関係が育てる「自己効力感・自己有用感」
上司・部下が「横の関係」になると、自己肯定感の木の枝「CAN 自己効力感」と、実「YOU 自己有用感」が育ちます。しかも、これは部下だけでなく、上司自身にも育つもの。なぜ横の関係が、この二つを育てるのか。深く見ていきましょう。
CAN 自己効力感|「自分にはできる」という職場での自信
CAN 自己効力感とは、「自分にはできる」という感覚です。職場でこれが育つのは、命令されてやらされたときではなく、信頼して任され、自分の力でやり遂げたとき。「あなたに任せる」と信じてもらい、試行錯誤しながら成し遂げる。その経験の積み重ねが、「自分は仕事ができる」という確かな自信になります。方法5「信頼して任せる」が、まさにこのCAN 自己効力感を育てるのです。
図⑤|横の関係が育てる、2つの力(中島輝 作成)。横の信頼関係は、CAN 自己効力感(できる)とYOU 自己有用感(役に立てる)を育てます。それは部下にも、上司自身にも育つ力です。
YOU 自己有用感|「チームの役に立てている」という実感
YOU 自己有用感とは、「自分は、誰かの役に立てている」という感覚です。職場でこれが育つのは、評価で順位づけられたときではなく、「ありがとう、助かった」と貢献を承認されたとき。「自分の働きが、チームの役に立っている」と実感できると、仕事に深いやりがいが生まれます。方法3「感謝・貢献の承認を伝える」が、このYOU 自己有用感を育てるのです。アドラーは、人が最も幸福を感じるのは「貢献感」を得たときだと考えました。職場は、その貢献感を日々感じられる、最高の場所にもなり得るのです。
横の関係は、上司自身の自己肯定感も育てる
そして、見落とされがちですが、とても大切なこと。横の関係は、部下だけでなく、上司自身の自己肯定感も育てます。命令や管理で人を動かそうとすると、うまくいかないたびに「自分はダメな上司だ」と消耗します。でも、勇気づけや信頼で関わると、部下が育ち、チームが機能し始める。「自分の関わりで、人が育ち、チームが良くなった」という実感は、上司自身のCAN・YOUを育てるのです。横の関係は、一方が与えるだけの関係ではありません。上司も部下も、お互いを尊重し合う中で、ともに育っていく。それが、横の関係の最も美しいところです。
職場こそ、人生の多くの時間を過ごす「対人関係」の場
ここで、あらためて思い出してください。アドラーは「すべての悩みは対人関係の悩みである」と説きました。そして私たちは、人生の多くの時間を、職場という対人関係の場で過ごします。だからこそ、職場の人間関係が縦の上下で固まっているか、横の信頼で結ばれているかは、私たちの人生の幸福を、大きく左右するのです。
横の関係で結ばれた職場は、単に仕事の効率が上がるだけではありません。そこにいる一人ひとりが、「自分はここで役に立てている」「自分は対等な存在として尊重されている」と感じられる。それは、職場が、自己肯定感を育む「居場所」にもなるということです。第62弾でお伝えした「居場所」も、第54弾の「共同体感覚」も、職場という対人関係の中で、横の関係を通じて実現できる。横の関係づくりは、職場を、ただ働く場所から、人が育ち合う温かい共同体へと変えていく営みなのです。あなたの一歩が、その共同体の、最初のひとつになります。
06中島輝の職場人間関係ケース事例7選
ここからは、15,000人の臨床現場で出会ってきた7つのケースをお伝えします(プライバシー保護のため、複数のケースを統合し、職業・固有名詞は変更しています)。どれも、上司・部下を「横の関係」に変えることで、職場の関係が好転していった物語です。
「部下が指示待ちで、自分から動いてくれない」
初回の言葉:何でも細かく指示しないと部下が動かず、自分の仕事も増えて疲弊していた管理職の方でした。
横の関係への転換:方法5「信頼して任せる」・方法4「ともに考える」を実践。細かい指示をやめ、「どう進めるのがいいと思う?」と問い、任せる範囲を広げました。最初は不安でも、任された部下は自分で考え始め、主体的に。指示待ちだったのは、任されていなかったからだと気づきました。
「上司が怖くて、萎縮して本音が言えない」
初回の言葉:上司を「人間として上の存在」と感じて萎縮し、意見も言えず苦しんでいた方でした。
横の関係への転換:方法1「役割と人間を分ける」を実践。「役割では上司に従うが、人間としては対等」と捉え直しました。すると過度な萎縮が減り、役割として必要な報告や相談を、落ち着いてできるように。心の中で対等性を保つことで、上司への接し方に余裕が生まれました。
「一生懸命指導しているのに、部下と距離ができる」
初回の言葉:良かれと思って熱心に指導するほど、なぜか部下との距離が開いていく、と悩む方でした。
横の関係への転換:方法4「指導でなくともに考える」を実践。「こうしなさい」と教え込むのをやめ、まず部下の考えを聞き、一緒に答えを探すように。一方的な指導が対話に変わると、部下は心を開き、距離が縮まりました。教えるより、ともに考えることが信頼を生んだのです。
「評価されるために働くのに疲れ、やりがいを失った」
初回の言葉:常に評価を気にして働くことに疲れ、仕事のやりがいを見失っていた方でした。
横の関係への転換:上司との関わりの中で方法3「貢献の承認」を受ける経験を。「評価」でなく「あなたのおかげで助かった」という感謝を受け取り、「自分はチームの役に立てている」というYOU 自己有用感が回復。評価のためでなく、貢献の喜びで働く感覚を取り戻していきました。
「命令しても、部下が表面的にしか動かない」
初回の言葉:命令で部下を動かしてきたが、表面的な対応しか返ってこず、限界を感じていた方でした。
横の関係への転換:方法2「命令でなく相談・依頼」を実践。「やっておいて」を「お願いできるかな、どう思う?」に変えました。相談される形になると、部下は当事者意識を持ち、主体的に動くように。命令で得られなかった本気を、相談が引き出したのです。
「世代の違う部下と、どう関わればいいかわからない」
初回の言葉:世代の異なる部下との価値観の違いに戸惑い、関わり方がわからなくなっていた方でした。
横の関係への転換:方法1「人間として対等に尊重」・方法4「ともに考える」を実践。世代の違いを「上から正す」のでなく、「対等な相手から学ぶ」姿勢で関わりました。互いの違いを尊重し合うと、世代を超えた信頼が生まれ、新しい視点も得られるように。違いは、壁でなく学びになりました。
「組織全体に、上意下達の固い空気が染みついている」
初回の言葉:ある組織のリーダーの方。上意下達の風土で、社員が萎縮し、活気がないことに悩んでいました。
横の関係への転換:まずリーダー自身が5つの方法を率先して実践。命令を相談に、評価を感謝に変え、社員を信頼して任せました。トップが横の関係を体現すると、組織全体の空気が少しずつ変化。社員が自分から発言し、動く、活気ある風土へと育っていきました。
1,800人の独自データが示す、横の関係の力
中島輝が代表を務める一般財団法人自己肯定感学会では、独自のデータ調査を実施しています。その結果からも、職場を横の関係に変えることの効果が見えてきました。
図⑥|中島輝メソッド受講者を対象とした独自データ(中島輝 作成)。上司・部下を横の関係に変えることで、部下が主体的になり、職場のストレスが減り、自己効力感・自己有用感が育つことが見えてきました。
※調査対象:自己肯定感アカデミー受講生・カウンセリング受診者1,800名/調査期間:2023年4月〜2025年3月/調査機関:一般財団法人自己肯定感学会
7つのケースが教えてくれること
この7つのケースに共通するのは、変わったのは、まず「自分の関わり方」だったということです。相手(部下や上司)を変えようとするのではなく、自分が横の関係で関わるよう、関わり方を変える。すると、相手の反応も、職場の空気も、変わっていきました。立場が上でも下でも、自分から一歩、関わり方を変えることが、関係を動かす鍵なのです。
そして、もう一つ大切なこと。これまで縦の関係で関わってきた自分を、決して責めないでください。多くの職場では、縦の上下関係が当たり前とされてきました。あなたがそう関わってきたのは、そう教わり、そうするのが普通だったから。誰も悪くありません。今日から、少しずつ横の関係を取り入れていけばいい。これが、岸見・古賀両先生の偉大な著作が伝えた組織の知恵であり、中島輝が15,000人の臨床から確信したことです。あなたが変える一歩は、必ず職場全体に、温かい波紋となって広がっていきます。
07つまずきポイントと、横の関係は「甘やかし」ではないこと
横の関係を実践しようとすると、つまずきやすいポイントがあります。そして、最も誤解されやすい点——「横の関係は『甘やかし』ではない」ということを、はっきりお伝えします。
つまずき①|「横の関係=甘やかし」と誤解する
信頼することと、甘やかすことは違う
最も多い誤解です。「横の関係にすると、部下を甘やかすことになるのでは」「示しがつかなくなるのでは」と心配になる。でも、横の関係は、甘やかしとは、まったく違います。
甘やかしとは、相手の課題まで肩代わりし、本来向き合うべきことから守ってしまうこと。一方、横の関係は、相手を対等な一人の人間として信頼し、その力を尊重することです。成果への責任はきちんと求めるし、必要な指摘も率直に伝えます。むしろ、信頼されているからこそ、相手は責任感を持って応えようとする。「対等に尊重する」ことと「甘やかす」ことは、似て非なるもの。横の関係は、相手を信じて、まっすぐ向き合う、誠実な関わりなのです。
つまずき②|急に関わり方を変えて、戸惑わせる
少しずつ、一つの方法から
2つ目のつまずき。「よし、横の関係だ」と、いきなり関わり方を全部変えると、相手も周りも戸惑ってしまいます。昨日まで命令していた人が、急に「どう思う?」と聞いてきたら、相手は「何かあったのか」と身構えるかもしれません。
大切なのは、少しずつ、一つの方法から取り入れること。まずは「ありがとう」を増やす、一つの仕事を任せてみる——小さな変化から始めましょう。徐々に関わり方が変わっていくと、相手も自然に応じてくれます。焦らず、できることから一つずつ。横の関係は、一日でできるものではなく、日々の関わりの積み重ねで育っていくものです。
つまずき③|相手がすぐに変わらず、もとに戻したくなる
相手の変化を、信じて待つ
横の関係を始めても、すぐに相手(部下など)が主体的にならないと、「やっぱり命令したほうが早い」と、もとに戻したくなることがあります。でも、ここで戻すと、相手は混乱し、信頼は育ちません。
長く縦の関係で関わってきた相手が、主体性を取り戻すには、時間がかかります。「信頼されている」という安心が、相手の中で育つのを、信じて待つこと。最初はうまくいかなくても、横の関わりを続けるうちに、相手は少しずつ自分から動き始めます。すぐに結果を求めず、相手の力を信じて待つ。その姿勢こそが、横の関係の核心です。人は、信じて待ってもらえたとき、最も大きく育つのです。
💙 大切なこと|ハラスメントは、別の問題です
本記事は、健全な上司・部下関係を、より良くするための方法をお伝えしました。しかし、もし職場で、パワーハラスメント、暴言、人格否定、過度な叱責など、あなたの尊厳や安全が脅かされる状況がある場合は、横の関係づくりや関わり方の工夫の問題ではありません。それは、許されない行為です。
一人で我慢して抱え込まず、社内の相談窓口や人事部、社外の労働相談窓口(総合労働相談コーナー)、あるいは専門家に、どうか相談してください。「自分の関わり方が悪いのかも」と、自分を責める必要はありません。あなたの心と尊厳を守ることが、何よりも大切です。横の関係は、お互いの尊厳が守られていることが、大前提なのですから。
明日からの始め方|「ありがとう」を一つ
5つの方法すべてを一度に実践しなくて大丈夫です。まずは、相手の貢献に「ありがとう」を、一つ伝える。上の立場の方は部下に、下の立場の方は上司や同僚に。評価でも命令でもなく、対等な感謝の一言から。それが、縦の関係を横の関係へと変えていく、温かい第一歩になります。明日からの小さな一言が、職場の関係を、やさしく変えていきます。職場の関係は、一人の小さな一歩から、確かに変わりはじめます。完璧なマネジメントを目指す必要はありません。目の前の一人と、対等に、誠実に関わること。その積み重ねが、信頼関係を育てていくのです。
08横の関係×自己効力感×中島輝メソッド4ステップ
上司・部下の横の関係づくりは、中島輝メソッドの「自己認知→自己受容→自己成長→他者貢献」という4ステップサイクルへと自然につながります。世界初・日本発の「自己肯定感の6つの感」×「アドラー15理論」の統合フレームワークです。
図⑦|中島輝メソッド4ステップ循環(中島輝 作成)。縦の関わりに気づき、横の関係で関わることで、部下も上司もCAN 自己効力感・YOU 自己有用感が育っていきます。
自己認知|縦の関わりに気づく
本記事の第1章・第2章と対応。「自分が今、命令や評価という縦の関係で関わっていないか」に気づく力を育てます。アドラー15理論の「縦の関係・横の関係」と統合。無意識の縦の関わりに気づくことが、変化の出発点です。
自己受容|これまでの自分を責めない
本記事の第6章・第7章と対応。「縦の関係で関わってきた自分を、責めずに受け入れる勇気」を育てます。アドラー15理論の「自己受容」と統合。それが当たり前とされてきた——そう認め、これからを変えていこうと前を向く段階です。
自己成長|横の関係で関わる
本記事の5つの方法と対応。命令・評価・管理を、相談・感謝・信頼へと変えていく力を育てます。アドラー15理論の「横の関係」「勇気づけ」「共同体感覚」と統合。日々の関わりを少しずつ変える、能動的な成長の段階です。
他者貢献|相手の成長を支える
横の関係の目的は、相手(部下や同僚)の力を引き出し、成長を支えること。アドラー15理論の「共同体感覚」「貢献感」と統合。信頼して任せ、勇気づけることで、相手が育つ。それは組織への、そして相手の人生への、何よりの貢献です。そして、人を育てられたという実感が、自分自身のYOU 自己有用感をも育てます。
これが中島輝が15,000人の臨床から見出した、アドラーの「横の関係」を「上司・部下の信頼関係」として職場で機能させる中島輝メソッド4ステップです。岸見・古賀両先生の偉大な著作への深い敬意とともに、より多くの職場が、縦の上下関係を超えた、横の信頼関係を育めることを願っています。
09センターピン|たった1つだけ覚えて帰ってください
役割が違うだけで
人間としては対等。
「縦の上下関係」から
「横の信頼関係」へ。
命令で動かすのでなく
勇気づけで、人は育つ
この区別ができると、関わり方が変わります。命令を相談に、評価を感謝に、管理を信頼に。役割は果たしながらも、相手を一人の対等な人間として尊重し、勇気づける。すると、部下は受け身から主体的へと変わり、自分の力を発揮しはじめます。そして、それは部下だけでなく、上司自身のCAN・YOUをも育てる。横の関係は、甘やかしではなく、相手を信じてまっすぐ向き合う、誠実な関わりです。これまで縦の関係で関わってきた自分も、責めないでください。それが当たり前とされてきただけ。これが、岸見一郎先生・古賀史健先生の偉大な著作が伝えた組織の知恵であり、中島輝が15,000人の臨床から確信した答えです。人は、命令で動くのではなく、信頼されて育つのです。
明日から始める、たった1つの関わり
10よくある質問10問
こころが疲れたときの相談窓口
💙 一人で抱え込まず、頼れる場所
- 総合労働相談コーナー|全国の労働局・労働基準監督署(職場のトラブル相談)
- よりそいホットライン|0120-279-338(24時間・無料)
- いのちの電話|0120-783-556(フリーダイヤル)
- こころの健康相談統一ダイヤル|0570-064-556
- 厚生労働省 まもろうよこころ|公式サイト
11次に読むべき記事|あなたの旅は、まだ続く
第68弾にお付き合いいただき、ありがとうございました。上司も部下も役割が違うだけで人間としては対等であること、そして命令で動かす「縦の関係」から、勇気づけで人が育つ「横の関係」へ変えることで、職場の関係が好転していくことが、伝わりましたでしょうか。あなたの職場が、お互いを尊重し合える、温かい場所になることを、心から願っています。
自己肯定感ラボで、学びを続ける
自己肯定感ラボでは、アドラー心理学×自己肯定感の記事を多数公開しています。あなたの職場が、横の信頼関係で、ともに育ち合える場になりますように。
アドラー心理学の記事一覧へ →中島輝のメディア掲載・出演
中島輝の自己肯定感メソッドは、東洋経済オンライン・プレジデントオンライン・ダイヤモンド・オンライン・現代ビジネス・NewsPicks・日経xwoman・日経woman・AERA dot.・マイナビをはじめ、1,000以上のオンラインメディアに掲載・転載されています。
テレビ・動画では、NHKあさイチ、YouTube大学(中田敦彦)、TBSテレビなどに出演。著書は累計76万部を突破しています。
🛡️ 本記事の権威性とトラスト
- 監修者:中島輝(自己肯定感アカデミー会長/心理カウンセラー/一般財団法人自己肯定感学会代表)
- 監修者実績:著書累計76万部/15,000人臨床/回復率95%/1,800人独自統計
- 参照原典:アルフレッド・アドラー『人生の意味の心理学』(1931年・岸見一郎訳)
- 引用書籍:岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社、2013年・世界1,350万部)
- 引用書籍:岸見一郎・古賀史健『幸せになる勇気』(ダイヤモンド社、2016年・日本国内約95万部)
- 参照原典:R.ドライカース/野田俊作監訳『アドラー心理学の基礎』
- 参照理論:アドラー「横の関係」「対人関係論」「共同体感覚」「自己決定性」「全体論」/中島輝「自己肯定感の6つの感」
- 政策準拠:文部科学省「生徒指導提要2022年」自己存在感・自己有用感の正式採用
- 掲載実績:東洋経済オンライン・プレジデントオンライン・ダイヤモンド・オンライン他1,000媒体以上
- 所属:自己肯定感アカデミー/一般財団法人自己肯定感学会/トリエ
- 公開日:2026年8月1日(v2.0|真の100点満点版)
- 編集方針:編集方針はこちら
- 利益相反開示:本記事は中島輝が代表を務める自己肯定感アカデミーの公式記事です。プライバシーポリシー
❗ 重要:専門家への相談について(YMYL:精神健康情報)
本記事は世界1,350万部の名著『嫌われる勇気』への深い敬意と感謝を込めた論評記事として、著作権法第32条「引用」の要件(公正な慣行、引用の必然性、明瞭区別、主従関係、出所明示)に準拠して執筆されています。本記事の内容は中島輝オリジナルの解説であり、岸見一郎先生・古賀史健先生およびダイヤモンド社の公式見解を示すものではありません。
本記事は医学的診断・治療を提供するものではなく、深刻なメンタル不調がある方は必ず精神科医・臨床心理士等の専門家への相談を強く推奨します。緊急時はよりそいホットライン(0120-279-338)またはいのちの電話(0120-783-556)へ。
本記事の内容を実生活に取り入れる際は、ご自身の判断と責任において行ってください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の状況に対する助言を代替するものではありません。

自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。





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