落ち着きがない子を叱る前に。
動き回るのは「運動の敏感期」という発達の正体
じっとしていられない。常に動き回る。すぐ走り出す。椅子に座っていられない——。「落ち着きがなさすぎる」「うちの子、大丈夫かな」と、心配していませんか。でも、その活発さは、多くの場合「運動の敏感期」という、体を育てるための発達のサイン。叱る前に、知っておきたいことがあります。自己肯定感アカデミー会長・中島輝が、モンテッソーリ教育と自己肯定感の「6つの感」で解き明かします。
「落ち着きがなさすぎる」と悩んでいませんか
食事中も立ち上がる。買い物に行けば走り出す。家の中でも、ソファに登ったり、飛び降りたり、常に動いている。絵本を読もうとしても、すぐどこかへ行ってしまう。「少しはじっとしていて!」と、何度言ったことか——。
周りの子は座っていられるのに、うちの子だけ動き回っている気がして、「落ち着きがなさすぎるんじゃないか」「育て方が悪いのかな」「何か問題があるのかな」と、不安になっていませんか。人目も気になって、外出が憂うつになっている方もいるかもしれません。
でも、まず知っておいてください。幼児期に動き回るのは、多くの場合、ごく自然な発達の姿です。モンテッソーリはこれを「運動の敏感期」と呼びました。子どもは今、自分の体を思いどおりに動かせるようになるために、必死で動いているのです。それは、わがままでも、問題でもなく、体を育てるための、真剣な仕事。この記事では、叱る前にできる関わりを、お伝えします。
こんなこと、ありませんか?
- 食事中も、すぐ立ち上がってしまう
- 外出すると、すぐ走り出す
- 家でも常に動き回り、じっとしない
- 絵本やお絵かきに、集中できない
- 「落ち着きがない」と、人目が気になる
一つでも当てはまったら、どうぞ読み進めてください。読み終えるころには、お子さんの「動き」が、成長のサインに見えてくるはずです。
動き回るのは「運動の敏感期」
モンテッソーリは、子どもには「自分の体を、思いどおりに動かせるようになりたい」という強い欲求が備わっていると発見しました。歩きたい、走りたい、登りたい、跳びたい、運びたい——。この欲求があふれ出す時期を、「運動の敏感期」と呼びます。
生後から4〜5歳ごろにかけて、子どもはさまざまな動きを、飽きることなく繰り返します。階段を何度も上り下りする、同じ場所を行ったり来たりする、重いものを運びたがる——。大人には「無意味な動き」「落ち着きのなさ」に見えても、子どもにとっては、脳と体をつなぎ、自分の体を自在に操れるようになるための、欠かせない練習なのです。
大切なのは、この欲求には「今」という時期があること。運動の敏感期に、十分に体を動かした経験は、体の発達だけでなく、のちの集中力やじっとする力の土台にもなります。たっぷり動いた子ほど、やがて落ち着いていく。今、思い切り動くことが、未来の「落ち着き」を育てているのです。
叱るほど、落ち着かなくなる理由
「落ち着きなさい!」「じっとして!」。動き回る子に、つい言ってしまいますよね。でも、実はこの叱り方が、逆効果になることがあります。なぜなら、子どもの「動きたい」という自然な欲求を、無理に抑えつけているからです。
動きたい欲求が満たされていないと、子どもはかえってそわそわし、落ち着きません。エネルギーが体の中にたまったまま、出口を求めているからです。そこへ「じっとして」と抑えつけると、欲求はますますたまり、抑えれば抑えるほど、落ち着かなくなるという悪循環に陥ります。
動きを抑えつける
「じっとして!」と動きを禁止。動きたい欲求がたまり、かえってそわそわ。叱られて自信も失う悪循環に。
動く機会を満たす
思い切り動ける時間を確保。欲求が満たされると、自然と落ち着いて過ごせる。体も心も健やかに育つ。
もう一つ、叱り続けることの問題があります。「落ち着きがない」「だめな子」と言われ続けた子どもは、「自分はダメな子なんだ」という自己イメージを持ってしまいます。本当は健全な発達の姿なのに、それを否定され続けると、自信を失い、自己肯定感が傷ついてしまうのです。動きを叱ることは、体の発達を妨げるだけでなく、心の育ちにも影響することがあります。
抑えるほど、落ち着かなくなる。動きたい欲求は、満たすことで落ち着く。叱る前に、動ける機会を。
抑えるのでなく「満たす」
では、どうすればいいのか。答えはシンプルです。動きたい欲求を「抑える」のではなく、「満たす」。十分に体を動かす機会を用意してあげれば、子どもは満足し、自然と落ち着いていきます。具体的な工夫を見てみましょう。
とくに効果的なのが、静かにしてほしい場面の「前」に、体を動かしておくこと。たとえば、外食の前に公園で遊ぶ、お絵かきの前に体操をする。あらかじめ欲求を満たしておくと、その後は落ち着いて過ごせます。「じっとさせてから動かす」のではなく、「動かしてから、落ち着かせる」。この順番が、運動の敏感期の子には合っているのです。
そして、モンテッソーリ教育で大切にされるのが、「動き」を意味のある活動につなげること。ただ走り回るだけでなく、「お皿を運ぶ」「重い荷物を持つ」「水を注ぐ」といった、目的のある動きに導いてあげる。すると、動きたい欲求が満たされると同時に、集中力も育ちます。実は、運動の敏感期の子が一つの活動に没頭する「集中現象」が起きると、子どもは驚くほど落ち着くのです。
メタファーで言えば、子どものエネルギーは「水道の水」のようなもの。蛇口を無理にひねって止めようとすると、水圧がたまって、どこかで噴き出します。でも、適切な水路(動ける機会)を用意してあげれば、水は気持ちよく流れていく。エネルギーは、止めるのではなく、流してあげるものなのです。
体を動かすと育つ3つの感
動きたい欲求を満たし、体を思い切り動かすことで、自己肯定感を支える「6つの感」のうち、特に次の3つが育ちます。
「自分の体を動かせた」。できなかった動きができるようになる経験が、「やればできる」という自信を育てる。
「動いても受け入れられる」。動きたい欲求を否定されない経験が、ありのままでいられる安心の土台をつくる。
「動いて役に立てた」。運ぶ・手伝うなど、動きが誰かの役に立つ経験が、貢献の喜びを育てる。
とくに大切なのが自己効力感です。歩けた、走れた、登れた、跳べた——。運動の敏感期に、できなかった動きが少しずつできるようになる経験は、子どもにとって大きな達成です。「自分の体を、思いどおりに動かせた」という実感が、「自分にはできる」という自己効力感の、いちばん基礎の部分を育てます。逆に、動きを抑えつけられ続けると、この大切な達成の機会が奪われ、自分の体や能力への自信が育ちにくくなってしまうのです。
図|動きたい欲求は抑えるとたまり、満たすと落ち着く。運動の敏感期は満たすことが育ちにつながる(中島輝「6つの感」をもとに作成)
中島輝が見た、落ち着きがない子ケース5選
よくある5つの場面を、「抑えつける関わり」と「満たす関わり」で見ていきましょう。
食事中、すぐ立ち上がる
つい:「座って食べなさい!」と何度も叱る
満たす関わり:食前に体を動かす時間を。食事は「ここまで食べたら遊んでいいよ」と短い時間設定に。長時間座る力は、まだ育っている途中です。
家の中で、常に動き回る
つい:「うるさい!じっとして!」
満たす関わり:毎日、公園など思い切り動ける時間を確保。家の中でも、安全に登れる・運べる活動を用意。発散できると落ち着きます。
外出先で走り出す
つい:「危ない!走らないの!」と叱る
満たす関わり:出かける前に体を動かしておく。「手をつなごうね」と具体的に。走ってよい場所では思い切り走らせ、メリハリを。
絵本やお絵かきに集中できない
つい:「ちゃんと座って!」と無理に座らせる
満たす関わり:静かな活動の前に体を動かす。短時間から始め、できたら認める。動きを伴う活動(指で触る絵本など)から入るのも手です。
エネルギーが有り余っている
つい:「少しは落ち着いて!」
満たす関わり:動きをお手伝いに活用。「これ運んでくれる?」「お掃除手伝って」。動きが役に立つ経験になり、自己有用感も育ちます。
気になるときは|専門家に相談する目安
ここまで「動き回るのは自然な発達」とお伝えしてきました。その一方で、「念のため、専門家に相談したほうがいい場合」もあります。大切なお子さんのことだからこそ、知っておいてください。決して不安をあおるためではなく、早めの理解と支援が、お子さんを助けることがあるからです。
運動の敏感期の動き
動ける機会を満たすと落ち着く。年齢とともに、少しずつじっとできる時間が延びていく。発達の範囲内。
気になるサインが続く
年齢が上がっても極端に落ち着かない、危険を顧みない、強いこだわり等が続く。専門家に相談すると安心。
たとえば、年齢が上がっても極端に落ち着きがない、危険を何度も繰り返す、指示がまったく入らない、強いこだわりや感覚の偏りがあるなど、気になるサインが続く場合は、背景に発達の特性が関係していることもあります。そうした場合、早めに理解し、その子に合った関わりや環境を整えることが、お子さんの生きやすさにつながります。
ここで大切なのは、「発達の特性があること」は、決して悪いことでも、親のせいでもないということ。それは、その子の個性の一部であり、適切な理解とサポートがあれば、その子らしく健やかに育っていけます。気になるときは、ひとりで抱え込まず、かかりつけ医、地域の発達相談窓口、保健センター、児童発達支援センターなどに相談してみてください。「相談する」ことは、お子さんを大切にする、立派な一歩です。下記の窓口も、いつでも頼ってください。
運動の敏感期×中島輝メソッド4ステップ
動きたい欲求を満たす関わりは、中島輝メソッドの「自己認知→自己受容→自己成長→他者貢献」に重なります。
自己認知|「動き」の正体に気づく
まず親が、「これは落ち着きのなさでなく、運動の敏感期という発達のサインだ」と気づくこと。見方が変わると、叱る前に動ける機会を用意できます。
自己受容|「動いていい」を受け入れる
動きたい欲求を、否定せず受け入れる。安心感・自己受容感という土台が、「動いても受け入れられる」経験から育ちます。親も「すぐじっとできなくていい」と受け入れて。
自己成長|動く機会を「満たす」
思い切り体を動かす機会を用意し、欲求を満たす。できる動きが増える経験が、自己効力感を育て、自分の体への自信につながります。
他者貢献|動きを「役立つ」に変える
「これ運んでくれる?」と動きをお手伝いに活かす。動きが誰かの役に立つ経験が自己有用感を育て、エネルギーが貢献の喜びに変わります。
この4ステップで、モンテッソーリの運動の敏感期と、自己肯定感の6つの感が、家庭で一つにつながります。思い切り動けた子は、自分の体と力を信じられる子。その自己効力感は、今日のあなたが用意する「動ける時間」から育ちます。
中島輝メソッドを体系的に学ぶ
自己肯定感アカデミーでは、6つの感を育てる関わりを体系的に学べる講座を開催しています。子どものエネルギーを自信に変える、さらに深いヒントを。
自己肯定感アカデミーを見る →センターピン|たった1つだけ覚えて帰ってください
「運動の敏感期」。
体を育てる、真剣な仕事。
「じっとして」と
抑えるより、
思い切り動ける機会を。
満たせば、落ち着く。
今日から始める、たった1つの習慣
よくある質問5問
こころが疲れたときの相談窓口
💙 無理せず、頼れる場所
- 児童相談所相談専用ダイヤル|0120-189-783(24時間・無料)
- 子育て世代包括支援センター|お住まいの市区町村の窓口
- 発達障害者支援センター|お住まいの都道府県の窓口
- 児童発達支援センター|お住まいの市区町村の窓口
- 厚生労働省 まもろうよこころ|公式サイト
次に読むべき記事|シリーズ予告
モンテッソーリ×自己肯定感シリーズ 第17弾、最後までありがとうございました。落ち着きがなく動き回るのは、多くの場合「運動の敏感期」という自然な発達であること。動きたい欲求は「じっとして」と抑えるのでなく、思い切り動ける機会で「満たす」こと。たっぷり動いた子ほどやがて落ち着き、自己効力感も育つこと。そして、気になるサインが続くときは、ひとりで抱えず専門家を頼っていいことが、伝わっていたら嬉しいです。今日、思い切り動ける時間を作ってみてください。
🔥 モンテッソーリ×自己肯定感シリーズ、好評連載中!
世界が認めるモンテッソーリ教育と、自己肯定感の「6つの感」を統合し、0〜6歳の子育てに徹底的に落とし込む新シリーズ。特別な才能ではなく、どんな子にも育つ「自己肯定感の土台」を、一緒に育てていきましょう。
次回・第18弾予告|シリーズD最終回「失敗を怖がる子|アドラー『不完全である勇気』の育て方」。失敗を極端に怖がる子に、アドラー心理学の「不完全である勇気」を。失敗できる子に育てる関わりを解き明かします。お楽しみに。
🛡️ 本記事の権威性とトラスト
- 監修者:中島輝(自己肯定感アカデミー会長/心理カウンセラー/一般財団法人自己肯定感学会代表)
- 監修者実績:著書累計76万部/15,000人臨床/回復率95%/1,800人独自統計
- 参照原典:マリア・モンテッソーリ『子どもの発見』(運動の敏感期・集中現象・正常化・環境の守り手)
- 参照原典:相良敦子『お母さんの「敏感期」』モンテッソーリ教育(文藝春秋)
- 参照理論:モンテッソーリ「運動の敏感期」「集中現象」「正常化」/中島輝「自己肯定感の6つの感」(特に自己効力感)
- 関連エビデンス:幼児期の身体活動・粗大運動の経験が実行機能・自己制御の発達を促すという発達研究の知見
- 政策準拠:文部科学省「幼児期運動指針」/「生徒指導提要2022年」自己存在感の重視
- 掲載実績:東洋経済オンライン・プレジデントオンライン・ダイヤモンド・オンライン・現代ビジネス・日経xwoman他1,000媒体以上
- 所属:自己肯定感アカデミー/一般財団法人自己肯定感学会/トリエ
- 公開日:2026年6月1日(モンテッソーリ×自己肯定感シリーズ 第17弾)
- 編集方針:編集方針はこちら
- 利益相反開示:本記事は中島輝が代表を務める自己肯定感アカデミーの公式記事です。プライバシーポリシー
❗ 重要:専門家への相談について(YMYL:育児・メンタルヘルス情報)
本記事はモンテッソーリ教育および中島輝「自己肯定感の6つの感」への深い敬意を込めた解説記事です。本記事の内容は中島輝オリジナルの解説であり、特定の団体・著者の公式見解を示すものではありません。
本記事は医学的診断・治療を提供するものではありません。落ち着きのなさには発達上自然なものが多くありますが、年齢が上がっても極端に落ち着かない、危険を繰り返す、指示が入らない、強いこだわりがあるなど気になるサインが続く場合は、発達の特性が関係していることもあります。「親のせい」ではありません。かかりつけ医・小児科医・地域の発達相談窓口・児童発達支援センター・公認心理師等の専門家への相談を強く推奨します。緊急時は児童相談所相談専用ダイヤル(0120-189-783)へ。
本記事の内容を実生活に取り入れる際は、お子さまの様子とご自身の判断・責任において行ってください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の状況に対する助言を代替するものではありません。
自己肯定感ラボで、子育ての土台を育てる
自己肯定感ラボでは、モンテッソーリ教育×自己肯定感の子育て記事を多数公開しています。あなたとお子さんの毎日に、のびのびと動ける自信の土台が育っていきますように。
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自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。





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