HSP(=Highly Sensitive Person)という気質から、自分が気になることに対して、周囲の人から共感を得られないなど、生きづらさを抱えている人もいるでしょう。
そこでこの記事では、HSPの人がその気質により他の人よりもストレスを抱えやすいこと、そしてストレスの抱えやすさを改善するコツを紹介します。
今感じている生きづらさを少しでも軽減できるよう、参考にしてください。
目次
HSPの生きづらさの原因は「気質」
HSP(=Highly Sensitive Person)は、「とても繊細な人」という意味を持ち、英語の頭文字をとった名称です。敏感で繊細な人の気質を指します。
提唱者であるエレイン・N.アーロン博士によると、世界の全人口のうち5人に1人つまり人口の約20%がHSPといわれています。HSPそのものは生まれつき持っている気質であり、病気や発達障害とは性質が異なります。病気ではないため、特別な治療法などはありません。
HSPの人は繊細で敏感な気質を持っているがゆえに、周囲の環境に馴染めなかったり、ストレスにより疲れやすかったりする傾向があります。
生きづらさの原因はこの「気質」にあるといえます。10人中8人は繊細でないなかで、たった2人が繊細であるという気質を持っているとしたら、周囲からなかなか共感を得られず苦しくなってしまいますよね。
<h3>HSPの気質を表す4つの特性「DOES」</h3>
HSPの定義は、「DOES(ダズ)」と呼ばれる4つの特性すべてに当てはまることです。そこでこの章では4つそれぞれについて、紹介します。
◆4つの特性「DOES」
- Depth of processing(深く考え込む)
- Overstimulated(刺激に敏感で疲れやすい)
- Emotional reactivity and high Empathy(人の気持ちに反応しやすく、共感性が高い)
- Sensitivity to Subtleties(少しの刺激にも感受性が高い)
まず、さまざまな角度から物事を深く考える特性は、リスク管理などで力を発揮します。一方で、すべての可能性を慎重に考え込むため、何かを始めようとするとき、実行までに時間がかかることも特徴です。
また、過敏で刺激によって疲れを感じやすいため、刺激から自分を守ろうとします。どんなに仲のよい友達と過ごす時間でも刺激になってしまうため、興味のあるイベントでも参加できないことがあるでしょう。
さらに、高い共感力により、人のふとした言動で機嫌や思っていることを察してしまいます。仕事や育児ではその能力が役立つ反面、人が怒られていると自分のことのように感じて傷ついてしまうなど、苦しむこともあるかもしれません。
そのほか、あらゆる感覚が敏感なので、まるで第六感が働いているように直感が当たることもあります。しかしあまりに敏感であるがゆえに、時計の針の音が気になって集中できなかったり、洋服のチクチクする素材が人一倍気になったりと、普段の生活を送っているだけでストレスを抱えてしまいかねません。
より詳しいチェックリストは「hsp 診断」の記事で解説するため、こちらの記事をご覧ください。
HSPは自己診断できる? セルフチェックリストの信頼性は?
HSPの生きづらさを改善する3つのポイント
ここまでで解説したように、HSPそのものは病気や発達障害ではなく「気質」であるため、通院や薬による治療はできません。
そのため生きづらさを改善するには、自分に合った環境を整える工夫が必要です。
例えば、周囲の人に「自分が苦手なこと」を明確かつ具体的に説明すると、案外すんなり受け入れてもらえて過ごしやすくなることもあります。
この章ではそうした、生きづらさを改善するポイントを3つ紹介します。
HSPの辛さをセルフケアで改善
大きな音や人の話し声、強い光、人混みなど、日常生活のなかにはHSPの人にとって疲労や生きづらさの原因となるものが多く存在します。生きづらさを改善する1つの方法として、日常生活で受けた刺激をセルフケアで軽減することが挙げられます。
例えば、照明を落とした部屋でアロマキャンドルをたいてヨガをしてみる、好きな音楽を聴きながら手の込んだ料理をしてみるなど、自分に合ったセルフケアの方法を探してみましょう。
HSPの辛さを自己開示で改善
周囲の人に、自分がHSPという気質を持っていること、それにより辛さを抱えていることを伝えることも方法の一つです。
しかしこのとき、「自分はHSPだから」という言い方は逆効果になります。相手がHSPに関する知識を持っていない場合、相手がどう接してよいかわからず、かえって混乱を招く可能性があるからです。
職場で周りの話し声や電話の音が気になり、仕事に集中できない場合などは、上司に相談してみてください。このときも「同僚の声が大きくて電話が聞き取れない。席替えをしてほしい」など困っていることを具体的に伝えて改善してもらうとよいでしょう。
周囲の人にHSPの特性や悩みを伝えるうえでもっとも大切なことは、伝えたあとに、必ずしも相手が納得して行動を変えてくれるわけではないということです。
相手がHSPの気質を理解してくれることと、行動を変えることは、別のことだとあらかじめ認識しておきましょう。
HSPの辛さを仕事選びで改善
HSPの人にとって、仕事選びは重要なテーマです。例えば、質よりスピードを重視する、ノルマが課せられるような仕事を続けていると、精神的にも肉体的にも追い込まれます。
しかし、精度の高いものを目指す職人的な仕事や、ゼロから何かを生み出すクリエイティブな仕事、危険リスクを予知管理する仕事、人の気持ちに寄り添う仕事においてはその能力がいかんなく発揮されます。
ただし、同じ特性を持つHSP同士でも、特性の強さには個人差があります。そのため、自分の得意あるいは不得意なことを把握し、得意を活かせる仕事選びをしましょう。同時に不得意なことはできる限り避け、苦手なことからは距離がとれる仕事を選ぶことも大切です。
また、同じ仕事でも必ず会社に出勤しなければいけない場合と、在宅勤務が許される場合があります。刺激に敏感なHSPの人にとっては刺激の少ない在宅勤務が望ましく、そうした職場選びや働き方選びも必要となるでしょう。
より詳しい仕事の選び方は、こちらの記事をご覧ください。
HSPの適職ってあるの? 特性を生かせる仕事の選び方を解説
HSPの長所にも目を向けよう
ここまで生きづらさに対する改善策を紹介してきましたが、HSPには長所も短所もあるので、つらい部分だけではなく、HSPだからこそ味わえる感覚を楽しむようにしましょう。
例えば、繊細な感受性を持つ気質により、映画や舞台、小説や絵画などを人一倍豊かに味わうことができます。
仕事や趣味において、細かな部分に目が行き届く特性を活かして、精度の高いものを目指す職人的、芸術的な分野でその能力を発揮することもあるでしょう。
また、共感力が高く常に誠実で、相手が欲する言葉を発信できるので、対人関係において相手から厚い信頼を得ることができます。カウンセラーやコーチングといった職業でその能力が活かせるほか、日常生活での友情関係や恋愛関係にも当てはまります。
HSPの人のなかには、その気質を楽しんで生活している人もいます。また、細かなことが気になりすぎるとき、考えすぎるときには「まぁ、いっか」「なんとかなる」と声に出してみるのもよいでしょう。
つらい面ばかりに目を向けずに、自分自身の捉え方や意識を変えてみることを大切にしてみてください。
自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。
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