「友達が何気なく発した言葉が気になり、眠れない」
「仕事中、電話が鳴る音や人の話し声が気になり、仕事に集中できない」
あなたはこのようなことに、悩んでいませんか?
悩みが積み重なり、「自分だけが周りと違うのだろうか」と孤独感にさいなまれたり、「どうして周りの人にわかってもらえないのだろう」と、ときには生きづらさを抱えていたりすることがないでしょうか?
あなたが抱えるその生きづらさは、HSPという特性によるものかもしれません。
この記事では、HSPの基本的な特徴(特性)と抱えやすい精神的な症状について解説します。
肩の力を抜いて、より楽に過ごすための考え方も紹介するので、参考にしてください。
目次
HSPは5人に1人が持つ「気質」
HSPとは、「Highly Sensitive Person(ハイリー センシティブ パーソン)」の略称です。人の気質を表す言葉で、「とても繊細な人」という意味です。気質であるため、HSPそれ自体は病気や発達障害ではありません。
HSPという名称を考えたのは、米国の心理学者、エレイン・N・アーロン博士です。
アーロン博士によると、世界全人口の5人に1人、つまり全人口の約20%が該当するとされています。
最近では、日本でも関連する書籍や資料が増え、「繊細さん」とも表現されます。
HSPが持つ4つの特徴(特性)DOES
HSPには、「DOES(ダズ)」と呼ばれる4つの特性があると言われています。
【4つの特性 DOES】
- Depth of processing(深く考え込む)
- Overstimulated(刺激に敏感で疲れやすい)
- Emotional reactivity and high Empathy(人の気持ちに反応しやすく、共感性が高い)
- Sensitivity to Subtleties(少しの刺激にも感受性が高い)
HSPに該当するかどうかの基準は、「DOES」の4つの特性すべてにあてはまるかどうかです。
そのため、1つでもあてはまらない項目があれば、別の病気や気質の可能性があります。それでは、4つの特性についてそれぞれ見ていきましょう。
Depth of processing(深く考え込む)
HSPの人は、多角的な視点から物事を深く考えます。
具体的には、次のような傾向があります。
- 1を聞いて、10のことを考える
- 調べ物を始めると没頭し、深く掘り下げる
- お世辞をすぐに見抜き、裏にある真意に気づく
- あれこれ考え、物事を始めるまでに時間がかかる
- その場限りの楽しさよりも、哲学的なことに興味関心があり、浅い人間や話が嫌い
さまざまな観点から物事を考えるため、危険予知やリスク管理に長けています。しかし、情報を読み取りすぎることは、必要以上に疲れてしまう原因にもなります。
Overstimulated(刺激に敏感で疲れやすい)
HSPの人は起きている事象に過度に反応する傾向があります。
具体的には、非HSPの人と比較して、次の例のように感じることが多い傾向にあります。
- 人混みや大きな音が苦手
- 友達との時間は楽しいが、気疲れしてしまい帰宅後にどっと疲れる
- 映画や音楽などの芸術作品に人一倍、感動しやすい
- 人の何気ない言葉に傷つき、いつまでも忘れられない
- 些細なことに、過剰なほど驚く
このほか、相手の感情や周りの雰囲気、気候の変化などに対しても敏感に反応します。そのため、例えば低気圧により体調がすぐれない人もあてはまる可能性があります。
Emotional reactivity and high Empathy(人の気持ちに反応しやすく、共感性が高い)
HSPの人は、人の気持ちに左右されやすく、共感しやすい傾向があります。
例えば、次のような項目が該当します。
- 人が怒られていると、自分のことのように感じ悲しくなったり、お腹が痛くなったりする
- 映画や本の登場人物に感情移入し、号泣する
- 人のふとしたしぐさ、目線、声音などに敏感で、人の機嫌や思っていることがわかる
- 幼児や動物の気持ちも、手にとるように察することができる
家族や友人など、自分の周りの人の感情を読み取り、自分を合わせてしまいがちなことも特徴の一つです。これにより、相手に過剰に同調したり、相手の気分や考えに引きずられたりするなど、何が自分の本音だったのか、見失ってしまうことがあります。
Sensitivity to Subtleties(少しの刺激にも感受性が高い)
HSPの人は、五感で受ける刺激に敏感で感覚が鋭いと言われています。
具体的には、次のような感覚を持ち合わせます。
- 消防車や救急車のサイレンなど激しい音のほか、時計の針の音など小さな音も気になる
- 強い光のまぶしさが苦手
- カフェインに敏感に反応する
- 洋服のタグや、チクチクする素材が気になる
感覚の鋭さにより、周囲が気になり、集中すべきときに注意散漫になってしまうことがあります。また、緊張が長く続き、疲れてしまうことがあります。周囲に対し常にアンテナを張っていて、なかなか気が休まりません。
あなたが「DOES」の4つすべてにあてはまる場合、HSPである可能性がきわめて高いと言えます。そのほか、より詳しいチェックリストはこちらの記事をご覧ください。
→「HSPは自己診断できる? セルフチェックリストの信頼性は?」
HSPが抱えがちな症状
ここまでお伝えをした通り、HSPそれ自体は病気や発達障害ではありません。
ただし、病気や発達障害でない場合でも、「子どものころから敏感で、不安を感じやすい」人は、何らかの精神的な症状を抱えやすい場合があります。例えば、対人的な緊張が強い、生きづらさが強いといった症状です。
しかし、発達障害や適応障害の症状はHSPと似ている部分があり、自己診断が難しいとされています。例えば、以前はなかったのに最近になって敏感さが強まった場合や、落ち込み・不安が一緒に強まった場合は、適応障害・うつ病の可能性もあります。
この場合は、病院で受診したのち、治療が必要です。そのため、気になる症状がある人は、病院で受診してみることも考えましょう。受診することで、いま感じているつらさの原因や対策がわかるので、孤独感や生きづらさが軽減していくでしょう。
HSPの人がより楽に過ごすためには
例えば、うつ病のような病気は治療を受けることで治ります。一方、HSPは病気ではなく気質であるため、治療はできません。HSPの人の中には、その特性によって会社や学校でストレスを抱えながらも治療ができないために、生きづらさを感じる人がいます。
しかし、HSP自体は豊かな感受性を持つ気質で、決して人より劣る・軟弱だというわけではありません。実際、繊細・敏感であることを強みにして、いきいきと働く人もいます。そこで、あなたが肩の力を抜き、より楽に心地よく過ごすためには、自分自身の意識を変えてみることが大切です。
具体的に、3つの方法を紹介します。
1つめは、HSPの持つ性質を理解し、自分の感情や感覚を客観的に受け止めることです。
最近、HSPに関する書籍やWebページなどの情報源が、急激に増えています。
多くの情報源をもとに知識をつけることで、自分の感情や感覚が何に起因しているのかを知ることができます。原因や根拠を知り、自分を客観的に見つめることで緊張や不安を感じることに対策ができたり、それらを感じる状況をあらかじめ回避したりすることもできるようになります。
そして2つめは、自分の生きづらい感覚を、前向きに言い換えて生活に生かすことです。
例えば、「傷つきやすい」ことは「感受性が豊か」であること。そう言い換えられれば、より人生を豊かに味わえるかもしれません。
また、「臆病」であることは「リスク管理が高い」ことと把握できれば、あらかじめリスクを洗い出したうえで、納得のいく選択ができるはずです。
こうして、自分の感覚や思考の傾向を理解することで、その感覚を受け入れたり、思考の先読みができたりするようになり、孤独感から解放されて生きやすくなるでしょう。
最後に3つめは、積極的に休む時間を持つことです。1人で過ごし趣味に没頭する時間やお風呂でリラックスする時間、睡眠など、その選択肢を多く持つことも大切です。
休息時間を自由に過ごすことにより、あなたの心と身体はたっぷりと充電されることでしょう。
自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。
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