すべてを奪われた男が、最後に手放さなかったもの。──フランクルの「態度価値」と、あの夜泣いている人の前で何もできなかった私の話
正直に告白します。私は最初、グリーフケアの「専門家」ではありませんでした。心理学の理論を知っていた。カウンセリングの技法も
正直に告白します。私は最初、グリーフケアの「専門家」ではありませんでした。心理学の理論を知っていた。カウンセリングの技法も
病室の天井を、ずっと見つめている。白い天井。蛍光灯の光。点滴のチューブが、右腕からぶら下がっている。昨日まで、普通に歩けた
掲示板に、自分の番号がなかった。3回確認した。上から下。下から上。もう一度上から。4回目も、なかった。隣で
目覚ましが鳴る。6時30分。体は元気だ。熱はない。頭痛もない。胃も痛くない。昨夜はちゃんと眠れた。なのに、
クローゼットの中に、スーツが5着並んでいる。グレー、ネイビー、チャコール。どれも、もう3カ月袖を通していない。名刺
いつもあの子が座っていた椅子が、今日も空いている。毎週木曜日、誰よりも早く来て、入口のドアの前でぴょんぴょん跳ねていた女の
深夜11時。事務所に、一人。デスクの上に、利用者リストが広がっている。48名の名前。手書きで、一人ひとりの入所日が書き添え
3月になると、体が重くなる。理由はわかっている。わかっているけど、毎年やってくる。テレビをつけると、追悼番組が流れ
左手の薬指に、白い跡が残っていた。12年間つけていた指輪を外したら、そこだけ日焼けしていなかった。細い白い輪っか。
介護ベッドが、空になった。部屋の中に、消毒液の匂いがまだ残っている。ベッドの横に置いてあった吸引器は、もう動かない。