同じ場所に多くの人が集まる職場や学校では、ストレスを感じる機会が多くあると思います。
なかでも、HSP(=Highly Sensitive Person(ハイリー センシティブ パーソン))の可能性がある人にとって、大きな物音や話し声、細かすぎる規則、人間関係など、精神的なストレスを抱える要因となっているのではないでしょうか。
またそのストレスから、つらさや生きづらさを感じている人もいるでしょう。
そこでこの記事では、HSPという気質に関して「ストレスに弱いのは、その気質によるものなのか」「治療で治るのか」「気質と病気との違い」について解説します。
HSPへの理解を深め、今抱えている生きづらさを軽くできるよう参考にしてみてください。
目次
HSPは病気ではない
HSPとは、英語で「とても繊細な人」という意味の言葉の頭文字をとってそう呼ばれています。米国の心理学者であるエレイン・N・アーロン博士によって名付けられ、HSPそのものは病気や発達障害ではありません。
これは人の生まれつき持つ性格や気質のひとつであり、右利き/左利きのようなものです。先天的に持っているものであり、後天的に発症する「病気」とは異なります。
→自分がHSPか調べたい場合は「HSPは自己診断できる? セルフチェックリストの信頼性は?」
HSPの特性・気質とは
HSPには、「DOES(ダズ)」と呼ばれる4つの特性があるとされ、この4つすべてに当てはまる場合、HSPであると言われています。4つの特性はすべて脳神経の過剰な働きに由来するので、HSPの人は、精神的な消耗を感じやすい傾向があります。
◆4つの特性「DOES」
- Depth of processing(深く考え込む)
- Overstimulated(刺激に敏感で疲れやすい)
- Emotional reactivity and high Empathy(人の気持ちに反応しやすく、共感性が高い)
- Sensitivity to Subtleties(少しの刺激にも感受性が高い)
この「DOES」の特性が、ときにHSPである本人にとってネガティブに作用してしまうことがあります。
例えば、さまざまな角度からものごとを深く考え込む気質により、新しくものごとを始める際に深く考え込んでしまい、躊躇し、なかなか始められないことがあります。
また、少しの刺激でも強く反応してしまうため、周囲の音や人の話し声が気になって注意散漫になってしまいます。さらに、広範囲にアンテナを張り巡らせているせいで、気が休まることもなかなかありません。
さらに、人の気持ちへの共感性が高いことから、共感を求める人に悩み相談をされたり、愚痴を聞かされたりすることもあります。その結果、人の苦労や悩みに引っ張られて逆に自分が悩んでしまい、愚痴を聞くことで心がひどく疲弊してしまうケースが見られます。
うつ病・適応障害とHSPの違い
うつ病や適応障害などは、HSPでなくても誰でも発症する可能性がある病気です。しかし、その初期症状は、HSPの特性と誤解しやすいと言われています。
実際、HSPだと思っていたら初期のうつ病だったということもあります。
HSPは生来持っている気質なので、ある時点からその感覚が変わるということはありません。しかし、うつ病や適応障害といった病気は、ある時点から症状を自覚するまたは悪化することがあります。
そのため、「以前」と比較してものごとの捉え方が変わった、心身の調子が悪いと感じるようになった、という人は病院を受診してみることを検討してください。
病院に行くには、勇気が必要と感じる人も少なくないと思います。しかし、病気の場合は治療が必要となります。また、治療することで今感じている心身の辛さが軽減するかもしれません。
なお、うつ病と適応障害の大きな違いは、「ストレッサー」と呼ばれるストレスの原因から離れたときの抑うつ状態、つまり気持ちがふさぎこんだ状態が続くかどうかと言われています。
うつ病の場合は、ストレッサーから離れても抑うつ状態が続きます。しかし、適応障害の場合は、特定のストレッサーから離れると症状が緩和され、ふさぎこんでいた気持ちが解放されるという違いがあります。
これといった特定の原因がなく、「何か調子がおかしい」と不調を感じたり、何をするにも億劫で、悲しい気持ちややる気のなさが2週間以上続いたりする場合は、うつ病の可能性があります。
また適応障害は、引っ越しや就職などある程度まで原因が特定でき、自分のまわりの社会環境にうまく適応できず、ストレスを抱えることによって発症します。
ストレスに弱いHSPはうつ病になりやすい?
ここまでお伝えしたように、HSPそのものは病気ではありません。しかし、HSPの特性ゆえにストレスを抱えやすく、うつ病や適応障害となる人も少なくありません。
HSPはうつ病になるリスクが高い
HSPの人は、免疫力が下がっていることで風邪をひきやすくなるように、うつ病や適応障害を発症しやすい状態にあるといえます。
またその特性から、周囲の人との人間関係などにストレスを感じやすいだけでなく、1人で抱え込んでしまいやすい傾向があります。
さらに、繊細かつ敏感なため、気になったことを眠れないほど引きずってしまったり、自分の1日の言動を振り返って後悔してしまったりすることが多くあります。
そうした行動から、自分を常にストレスにさらすこととなり、気づかないうちに「うつ病」となってしまう人も少なくありません。
また、うつ病や適応障害のほか、人間関係にストレスを感じたり日ごろから苦労を感じたりする人のなかには、HSPだと思っていたものの、発達障害だったという人もいます。
これらのことから、長期間にわたり心身の不調を感じている場合はHSPではなくうつ病などの病気であることも考えられるため、病院での受診を検討してみましょう。病院に行くことで、HSPなのかそうではないのか判別ができるので、今感じている不調やつらさが軽減できるかもしれません。
病院でHSPそのものは治せない
例えば、うつ病は適切な治療を受けることで治ります。しかし、HSPは生まれ持った気質であるため、治すことはできません。
繊細さや敏感さといった、HSPの気質そのものを変えることは難しいです。
HSPの気質を、直すべき短所だと受け止めて、必要以上に自分を追い込んでしまうと、うつ病などに発展することも考えられます。
やるべきことは、HSPの気質を直そう、無くそうとすることではなく、自身の気質に対する考え方や捉え方を変えることです。
例えば、周囲の人にとってはその繊細さ、敏感さが「心配り」「優しさ」として伝わり、それに救われている人も多いはずです。
また、仕事においても、HSPの細やかな心配りが能力を発揮する場面が多くあります。細かなミスにいち早く気づけたり、あらかじめリスク管理ができたりするなどその特性によって危機から守られる職場もあるでしょう。
さらに、広範囲にアンテナを張り巡らし常に多くの情報に触れているため、世の中の流行やニーズにも敏感です。また、人の気持ちへの共感性が高いため、消費者が求めるデザインや機能についても情報をキャッチするため、商品の企画や開発に貢献しやすいとも言われます。
HSPの持つ特性や、自分の考え方のクセを把握し、それをいかせる環境や自分にとってストレスの少ない環境で過ごせるよう変えられることが望まれます。
また、自分に合ったセルフケアをおこなってストレスを減らす工夫して過ごしましょう。
HSPの特性に合わせた対策で悩みを軽くする方法
自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。
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