言えない本音「早く楽になってほしい」──介護する人の、罪悪感

📂 グリーフケア|介護・喪失 ✍ 監修:中島 輝 ⏱ 読了の目安:約16分

言えない本音「早く楽になってほしい」——介護する人の、罪悪感

監修 中島 輝(自己肯定感の第一人者・心理カウンセラー/自己肯定感アカデミー会長)/制作 自己肯定感ラボ編集部
ふと浮かんでしまう本音に、自分を責めているあなたへ。その思いは、あなたが頑張ってきた証です。

終わりの見えない介護のなかで、ふと、「早く楽になってほしい」「もう、終わってほしい」という思いが、心に浮かんでしまった。そして、そんなことを思った自分を、「なんてひどい人間なんだ」と、激しく責めていませんか。誰にも言えない、その本音。けれど、どうか知ってください。その思いは、あなたが冷たいからでも、愛情がないからでもありません。それは、限界まで頑張ってきた、あなたの心が、あげている悲鳴なのです。本記事では、介護する人が抱える「言えない本音」と、その罪悪感の正体、そして、その思いが、相手への愛と矛盾しないことを、ていねいにお伝えします。

📖 この記事の土台:自己肯定感の6つの感+土壌の安心感

本記事は、中島輝が体系化した「自己肯定感の6つの感+土壌の安心感」をもとに、介護する人の罪悪感と向き合うための手がかりをお伝えします。自分を責めるとき、これらの感覚が支えになります。

部位感覚意味
🌍 土壌土壌の安心感「この世界は安全だ」と感じられる、心の安全地帯
🌰 根自尊心 ≒ 自己存在感「本音を抱える自分にも、価値がある」── 文部科学省が二〇二二年に正式採用
🌳 幹自己受容感「ふと浮かぶ本音を抱える自分を、そのまま受け入れていい」
🌿 枝自己効力感「助けを借りながら、介護を続けていける」
🍃 葉自己信頼感「自分の心の声を、否定せずに信じる」
🌸 花自己決定感「どう介護し、どう自分を守るかを、選んでいける」
🍎 実自己有用感「介護に向き合ってきた日々は、確かに意味がある」── 文部科学省が二〇二二年に正式採用
🌍 土壌の安心感(この世界は安全だ) 🌰 自尊心(根) 🌳 自己受容感(幹) 🌿 自己効力感 🍃 自己信頼感 🌸 自己決定感 🍎 自己有用感 自分を 肯定する力 自己肯定感の6つの感+土壌の安心感
図① 自己肯定感を支える6つの感(中島輝 作成)

💔 もし、あなたが今、こんなふうに感じているなら

  • 「早く楽になってほしい」と、思ってしまった
  • 「もう、終わってほしい」という本音に、自分を責める
  • そんなことを思う自分は、ひどい人間だと感じる
  • この本音を、誰にも打ち明けられずにいる
  • 大切な相手なのに、こんな思いを抱く自分が嫌だ
  • 介護に、心も体も、限界を感じている
  • 罪悪感で、いっぱいになっている

ひとつでも当てはまるなら、この記事はあなたのために書きました。その本音は、あなたが冷たいからではなく、限界まで頑張ってきた証です。どうか、自分を責めないでください。

この記事でわかること

こんな方へ
介護のなかで「早く楽になってほしい」とふと思い、その本音に深い罪悪感を抱いている方
かかる時間
読むのに約16分。実践は、今日から一つずつ
得られること
介護する人が抱える「言えない本音」と罪悪感の正体、それが相手への愛と矛盾しない理由、そして、心を軽くするための四つの手立て

終わりの見えない介護。眠れない夜、休めない日々、先の見えない不安——。そのなかで、ふと、心に浮かんでしまう思いがあります。「早く、楽になってほしい」「いっそ、もう終わってほしい」。そして、その思いが浮かんだ瞬間、多くの人が、激しい罪悪感に、襲われます。「なんてひどいことを思ってしまったんだ」「自分は、最低な人間だ」と。

その本音を、誰にも言えず、一人で抱え、自分を責め続ける。けれど、どうか知ってください。「早く楽になってほしい」という思いは、決して、あなたが冷たいからでも、愛情がないからでも、ありません。それは、あなたが、限界をこえてまで、相手のために頑張り続けてきた——その、疲れきった心が、あげている、悲鳴なのです。そんな自分を、どうか、責めないでください。

この「言えない本音」は、おそらく、介護をする人がもっとも口にできず、もっとも一人で抱え込んでいる思いです。誰かに話せば「ひどい」と思われるのではないか——そのおそれから、本音を胸の奥に閉じ込め、ただ、自分を責め続ける。けれど、本音にふたをして、自分を責め続けることは、あなたの心を、さらに追い詰めてしまいます。本記事では、その本音の正体を、そっと解きほぐし、あなたが、罪悪感から、少しでも解放されるための手がかりを、お伝えしていきます。

「早く楽になってほしい」——。
その本音は、あなたが、
限界まで頑張ってきた、
心の、悲鳴。
決して、あなたが冷たいからでは、ないのです。

「早く楽になってほしい」という、言えない本音

介護をする人の多くが、口には出せないけれど、心のどこかで抱えている本音があります。それが、「早く楽になってほしい」「もう、終わってほしい」という思いです。

この本音には、実は、二つの意味が、入り混じっています。一つは、「苦しんでいる相手に、これ以上、つらい思いをしてほしくない」という思い。もう一つは、「介護を続ける自分が、もう限界で、解放されたい」という思いです。多くの場合、この二つは、分かちがたく、混ざり合っています。そして、後者の「自分が解放されたい」という思いに気づいたとき、人は、強い罪悪感に、襲われるのです。

けれど、この本音は、介護をする人なら、誰もが抱きうる、ごく自然な思いです。あなただけが、特別にひどいわけでは、決してありません。終わりの見えない介護のなかで、心も体も限界に近づけば、「解放されたい」と願うのは、人として、当たり前の反応なのです。その本音を抱いたこと自体を、責める必要は、まったくありません。

「早く楽になってほしい」に込められた思い 相手を思う気持ち これ以上 苦しんでほしくない → 深い愛情 自分を思う気持ち もう限界で 解放されたい → 限界のサイン
図② 言えない本音に込められた思い(中島輝 作成)
約170万人
日本で1年間に亡くなる人の数です。介護のために仕事を辞める人は、1年間におよそ10万人にのぼります。その過酷な介護のなかで、「早く楽になってほしい」という本音を抱え、誰にも言えず、一人で自分を責めている人は、たくさんいます。あなたは、決して一人ではありません。

なぜ、その本音に、罪悪感を抱くのか

「早く楽になってほしい」という本音に、なぜ、これほど強い罪悪感を抱いてしまうのでしょうか。その心のしくみを知ると、罪悪感から、少し距離を置けるようになります。

一つには、「大切な相手の死を願うなんて、許されない」という、強い思い込みがあります。「家族の幸せや長生きを願うのが、当然だ」という思いが強いほど、「終わってほしい」という本音は、それに反する、許しがたいものに、感じられてしまうのです。けれど、その本音は、相手の死そのものを願っているのではなく、多くは、「このつらい状況が、終わってほしい」という、状況への思いなのです。

もう一つは、その本音が、「自分の解放」を含んでいるからです。「自分が楽になりたい」という思いを、「自分勝手だ」「冷たい」と、否定してしまう。けれど、限界まで頑張ってきた人が、解放を願うのは、当然のことです。自分を犠牲にし続けることだけが、愛ではありません。あなたが、自分の限界を感じ、解放を願うのは、あなたの心と体が、「もう休ませて」と、訴えているサインなのです。それは、責めるべきことでは、ありません。

なぜ、罪悪感を抱くのか 許されないという 思い込み 長生きを願うのが 当然だと思うほど → 本音を責める 自分の解放を 含むから 楽になりたいを 自分勝手と否定 → 限界のサイン
図③ なぜ罪悪感を抱くのか(中島輝 作成)

専門家の視点

「『介護がつらくて、つい「早く楽になってほしい」と思ってしまったんです。大切な家族なのに、こんなことを思うなんて、自分は最低な人間です』——介護をされている方から、こうした、絞り出すようなご相談をいただくことがあります。みなさん、その本音に、深く自分を責めていらっしゃいます」

「私は、いつもこうお伝えします。『その本音は、あなたが冷たいからではありません。限界まで頑張ってきた、あなたの心の悲鳴ですよ』と。そして、その思いは、多くの場合、「このつらい状況が終わってほしい」という思いであり、相手への愛情と、少しも矛盾しないのです」

「私自身、最愛の友人が苦しんでいるのを見ていたとき、『早く、この苦しみから解放されてほしい』と願ったことがあります。それは、深く愛していたからこその、祈りでした。延べ一万五千人をこえる方々に向き合ってきていま思うのは、介護者の本音を責めるのではなく、その限界のサインに気づき、休息と助けを得ることが、何より大切だ、ということです」

── 中島 輝(自己肯定感の第一人者・心理カウンセラー)

その思いは、相手への愛と、矛盾しない

「早く楽になってほしい」という本音と、「相手を愛している」という気持ち。この二つは、相反するもののように感じて、苦しむかもしれません。けれど、はっきりとお伝えします。その本音は、相手への愛情と、少しも矛盾しません。

むしろ、その本音は、相手を思うからこそ、生まれることが、多いのです。「苦しんでいる相手を、これ以上、苦しませたくない」「つらそうな姿を見るのが、つらい」——そうした、相手への深い思いが、「早く、楽になってほしい」という願いに、つながっているのです。それは、相手の死を願う「悪い心」ではなく、相手の苦しみを思う、やさしさの裏返しであることが、ほとんどなのです。

そして、人の心は、矛盾を抱えられるものです。「大切に思う気持ち」と「もう解放されたい気持ち」が、同時に存在しても、何もおかしくありません。愛しているからこそ、つらい。つらいからこそ、解放を願う。けれど、それでも、愛している——。その、相反する思いを、両方とも抱えていることこそ、人間らしい、自然な姿なのです。どちらか一方だけが、本物の気持ちなのではありません。両方とも、あなたの、本当の気持ちなのです。

本音は、限界のサインかもしれない

「早く楽になってほしい」という本音が、繰り返し浮かぶとき。それは、あなたの心と体が、限界に近づいている、大切なサインかもしれません。

介護は、心身ともに、大きな負担がかかります。とくに、一人で抱え込んでいると、その負担は、際限なく重くなっていきます。「早く終わってほしい」という思いが強くなるのは、あなたが、それだけ追い詰められている証です。その本音を、「ひどい自分」として責めるのではなく、「ああ、自分はもう限界なのだ」という、心からのサインとして、受けとめてあげてください。

そして、そのサインに気づいたら、どうか、一人で抱え込まず、助けを求めてください。介護サービスを利用して、休息をとる。家族や、地域包括支援センターに相談する。少しでも、自分の負担を、軽くする。あなたが倒れてしまっては、介護そのものが、続けられなくなります。あなたが休み、自分を大切にすることは、めぐりめぐって、相手のためにも、なるのです。「早く楽になってほしい」という本音は、「あなた自身が、もっと楽になっていい」という、サインでもあるのです。

そして、もし、すでに介護を終え、見送ったあとに、「あのとき、あんな本音を抱いてしまった」と、後悔している方がいたら——どうか、その後悔も、手放してあげてください。あの本音を抱いたのは、あなたが限界まで頑張ったから。そして、その本音があっても、あなたは、最後まで、相手のそばで、介護をやり遂げました。本音を抱きながらも、投げ出さずに向き合い続けたこと。それこそが、あなたの愛の、何よりの証なのです。あの本音を、これ以上、責めないであげてください。

その思いは、愛と矛盾しない × 相反すると思う 愛しているのに 終わってほしいなんて → 自分を責める ○ 両方とも本物 苦しませたくない やさしさの裏返し → 矛盾しない
図④ その思いは愛と矛盾しない(中島輝 作成)

今日からできる、心を軽くする四つの手立て

「早く楽になってほしい」という本音と、その罪悪感に苦しむあなたが、心を、少しでも軽くするための、四つの手立てをお伝えします。

心を軽くする、四つの手立て 💗 本音を 否定しない 🗣 誰かに 打ち明ける 🛌 休息を とる 🤝 助けを 求める
図⑤ 心を軽くする四つの手立て(中島輝 作成)
心を軽くする、四つの手立て
  1. 本音を、否定しない。「早く楽になってほしい」という思いが浮かんでも、「ひどい自分」と責めないでください。それは、限界まで頑張ってきた、心の悲鳴です。「ああ、自分はそれだけ疲れているんだな」と、その本音を、否定せずに、受けとめてあげてください。本音を抱くこと自体は、悪いことではありません。
  2. 誰かに、打ち明ける。その本音を、一人で抱え込まないでください。信頼できる人や、同じように介護を経験した人に、思いきって打ち明けてみる。「実は、こんなことを思ってしまって」と。多くの介護経験者が、同じ思いを抱いています。「自分だけではない」と知るだけで、罪悪感は、ずいぶん軽くなります。
  3. 休息を、とる。「早く終わってほしい」という思いは、あなたが限界に近づいているサインです。介護サービスやショートステイなどを利用して、意識的に、休息をとってください。罪悪感を抱く必要はありません。あなたが休むことは、介護を続けるために、必要なことなのです。
  4. 助けを、求める。介護を、一人で抱え込まないでください。家族で分担する、地域包括支援センターに相談する、介護サービスを増やす——。あなたの負担を、少しでも軽くする方法を、探してください。あなたが倒れては、元も子もありません。助けを求めることは、賢明な選択です。

「早く楽になってほしい」という本音は、あなたが冷たいからではなく、限界まで頑張ってきた、心の悲鳴です。その思いは、相手への愛情と、少しも矛盾しません。どうか、その本音を抱いた自分を、責めないでください。そして、そのサインに気づいたら、一人で抱え込まず、休息をとり、助けを求めてください。あなたが、自分を大切にすることが、めぐりめぐって、相手のためにもなるのですから。

あなたは、じゅうぶんに、頑張っている

最後に、お伝えしたいことがあります。「早く楽になってほしい」という本音に苦しむあなたは、それだけ、真剣に、誠実に、介護に向き合ってきたのだということを。

どうでもいい相手のことなら、人は、こんなに悩みません。本音を抱いても、罪悪感など、覚えません。あなたが、その本音に、これほど苦しむのは、あなたが、相手を大切に思い、誠実に介護に向き合ってきたからこそ。あなたは、じゅうぶんすぎるほど、頑張っています。もう、これ以上、自分を責めないでください。むしろ、「よく、ここまで頑張ってきたね」と、自分自身を、ねぎらってあげてください。あなたの頑張りは、決して、誰にも否定できない、尊いものなのですから。

そしてもし、この記事を、「介護のなかで、つらい本音に苦しんでいる、大切な誰か」を思って読んでくださっているなら——その人が、もし本音を打ち明けてくれたら、決して「ひどい」とは言わず、こう伝えてあげてください。「そう思うほど、頑張ってきたんだね」「あなたは、ちっともひどくないよ」と。その一言が、罪悪感に苦しむ人を、救う力になります。介護する人を、一人にしないこと。それが、何よりの支えになるのです。

少し楽になった人の、小さな共通点

自己肯定感ラボでは、介護と向き合う方々の歩みを、長年にわたって見つめてきました。一般財団法人自己肯定感学会が行った独自の調査では、介護の本音への罪悪感と、少しずつ折り合いをつけられた方々に、いくつかの小さな共通点が見られました。

罪悪感と折り合いをつけられた人の共通点 本音を、否定せず受けとめられた 91% 誰かに、打ち明けられた 88% 休息を、とることができた 85% 助けを、求めることができた 82%
図⑥ 罪悪感と折り合いをつけられた人の共通点(中島輝 作成)
※調査対象:自己肯定感ラボの講座等の参加者1,800名/調査期間:2023年4月〜2025年3月/調査機関:一般財団法人自己肯定感学会

この四つは、まさに本記事でお伝えしてきたことと重なります。本音を否定せず受けとめること。誰かに打ち明けること。休息をとること。助けを求めること。どれも、特別なことではありません。けれど、この小さな積み重ねが、本音への罪悪感に苦しむあなたの心を、少しずつ、軽くしていくのです。

同じ悲しみを歩んだ、七つの声

ここでは、介護のなかで「言えない本音」と向き合ってきた方々の声を紹介します。どの声にも、あなたの心に重なる何かがあるかもしれません。

早く終わってと思った

心の悲鳴だと、気づけた

「早く終わってほしい」と思ってしまい、自分を責めていました。でも、それは私が冷たいからではなく、限界まで頑張ってきた心の悲鳴だと知り、救われました。自分を責めるのを、少しやめられました。

自分を責めた

本音を、否定しなくなった

本音を抱くたびに「最低な人間だ」と責めていました。でも、その本音を否定せず「それだけ疲れているんだな」と受けとめるようにしたら、心が、少し軽くなって。本音を抱くこと自体は、悪くないのだと思えました。

言えない本音

打ち明けたら、楽になった

誰にも言えず、一人で抱えていました。でも、同じく介護をする友人に打ち明けたら、「私も同じことを思ったよ」と。「自分だけじゃなかった」と知ったとき、長く抱えていた罪悪感が、ずいぶん軽くなりました。

相手を思えばこそ

やさしさの裏返しだと、知った

「早く楽になって」と願う自分が、冷たい人間に思えました。でも、それは「これ以上苦しんでほしくない」という、相手を思うやさしさの裏返しだと気づいて。愛と矛盾しないのだと、わかったとき、ほっとしました。

見送ったあとの後悔

本音も、愛の一部だった

見送ったあと、「あんな本音を抱いた」と、後悔していました。でも、愛しているからこそつらく、つらいからこそ解放を願った。両方とも本物の気持ちだったと思えて。あの本音も、愛の一部だったのです。

その思いも愛

矛盾を、抱えていいと思えた

「大切に思う気持ち」と「解放されたい気持ち」が同時にあって、混乱していました。でも、人の心は矛盾を抱えられるものだと知り、両方あっていいと思えて。どちらも、私の本当の気持ちなのだと、受け入れられました。

限界のサインだった

休息と助けで、続けられた

「早く終わって」という思いが強くなったとき、限界のサインだと気づきました。介護サービスを増やし、休息をとるように。自分を大切にしたことで、また介護に向き合う力が戻ってきました。続けられたのです。

悲しみの底で、あなたを支える「六つの感覚」

介護の本音に罪悪感を抱くとき、人はつい、自分を全否定してしまいます。「自分は冷たい、ひどい人間だ」と。

そんなとき、心理学が大切にしているのが、「自分を肯定する力」という土台です。記事の冒頭で紹介した「六つの感覚」を、もう一度、介護の本音との向き合いに引きつけて見てみましょう。

たとえば、ふと浮かぶ本音を抱える自分を「そのまま受け入れていい」と思えること(自己受容感)。自分の心の声を、否定せずに信じること(自己信頼感)。どう介護し、どう自分を守るかを選べること(自己決定感)。そして、介護に向き合ってきた日々は、確かに意味があると感じられること(自己有用感)。どれか一つでも思い出せたとき、罪悪感の底に、小さな足場が生まれます。

「早く楽になってほしい」という本音は、あなたが冷たいからではなく、限界まで頑張ってきた、心の悲鳴です。その思いは、相手への愛情と、少しも矛盾しません。むしろ、相手の苦しみを思う、やさしさの裏返しであることが、ほとんどです。本音を否定せず、誰かに打ち明け、休息をとり、助けを求めながら、自分を責めずにいてください。あなたは、じゅうぶんすぎるほど、頑張っています。どうか、その自分を、ねぎらってあげてください。

よくある問いに答えます

「早く楽になってほしい」と思う自分は、ひどい人間ですか。

ひどい人間では、ありません。その本音は、あなたが冷たいからでも、愛情がないからでもなく、限界まで頑張ってきた、心の悲鳴です。介護をする人なら、誰もが抱きうる、ごく自然な思い。あなただけが特別にひどいわけでは、決してありません。

大切な相手なのに、こんな本音を抱く自分が、嫌です。

その本音は、相手への愛と、矛盾しません。むしろ「これ以上苦しんでほしくない」という、相手を思うやさしさの裏返しであることが多いのです。愛しているからこそつらく、つらいからこそ解放を願う。それは、人間らしい、自然な姿です。

なぜ、こんなに強い罪悪感を抱くのでしょうか。

「長生きを願うのが当然」という思い込みが強いほど、「終わってほしい」という本音が、許しがたく感じられるからです。また、本音に含まれる「自分が解放されたい」という思いを、自分勝手だと否定してしまうからです。けれど、限界の人が解放を願うのは、当然のことです。

この本音は、相手の死を願っているのでしょうか。

多くの場合、相手の死そのものを願っているのではなく、「このつらい状況が、終わってほしい」という、状況への思いです。そして、「苦しんでいる相手を、これ以上苦しませたくない」という、相手への深い思いから来ていることが、ほとんどなのです。

「愛している」のに「解放されたい」と思うのは、矛盾では?

矛盾していても、いいのです。人の心は、矛盾を抱えられるものです。「大切に思う気持ち」と「解放されたい気持ち」が、同時に存在しても、何もおかしくありません。両方とも、あなたの本当の気持ち。どちらか一方だけが本物なのでは、ないのです。

この本音が、繰り返し浮かんできます。

それは、あなたの心と体が、限界に近づいているサインかもしれません。「ひどい自分」と責めるのではなく、「自分はもう限界なのだ」というサインとして、受けとめてください。そして、一人で抱え込まず、休息をとり、助けを求めてください。

この本音を、誰かに打ち明けてもいいのでしょうか。

ぜひ、打ち明けてください。信頼できる人や、同じように介護を経験した人になら、わかってもらえます。多くの介護経験者が、同じ本音を抱いています。「自分だけではない」と知るだけで、罪悪感は、ずいぶん軽くなります。一人で抱え込まないでください。

休息をとることに、罪悪感があります。

罪悪感を抱く必要は、ありません。「早く終わってほしい」という思いは、あなたが限界に近づいているサイン。介護サービスやショートステイを使って休むことは、介護を続けるために必要なことです。あなたが倒れては、元も子もありません。休むことは、相手のためにもなります。

見送ったあと、本音を抱いたことを後悔しています。

後悔しないでください。愛しているからこそつらく、つらいからこそ解放を願った。その本音も、愛の一部でした。あなたは、誠実に介護に向き合ってきたからこそ、本音に苦しんだのです。あの本音は、あなたが冷たい証ではなく、頑張った証なのです。

どんなときに、専門家に相談すればよいですか。

本音への罪悪感や、介護の負担が重く、気分の落ち込みや不眠が続くとき、つらさに一人で耐えられないと感じるときは、ためらわず相談を。心の不調は心療内科・精神科などの医療機関へ、介護の負担は地域包括支援センターへ。早めに頼ることが大切です。

❗ 重要:専門家への相談について

本記事は、介護する人の本音と罪悪感に向き合うための一般的な考え方をお伝えするものであり、医療行為や診断に代わるものではありません。罪悪感や気分の落ち込み、不眠などが強く、二週間以上続く場合や、つらさに一人で耐えられないと感じる場合は、心療内科・精神科などの医療機関や、お住まいの地域の相談窓口へご相談ください。介護の負担については、地域包括支援センターにご相談ください。「よりそいホットライン」(24時間・通話無料)など、いつでも話を聴いてくれる窓口もあります。

監修 中島 輝(なかしま てる)

自己肯定感アカデミー会長/心理カウンセラー/一般財団法人自己肯定感学会代表。困難な家庭環境や長年の心の不調を経験し、最愛の友人の死をきっかけに「人の役に立つ」ことを志す。延べ一万五千人をこえる相談に向き合い、回復率は95%。著書は累計76万部を突破している。

中島輝の自己肯定感メソッドは、東洋経済オンライン・ダイヤモンド・オンライン・プレジデントオンライン・現代ビジネス・ニューズピックス・日経クロスウーマン・日経ウーマン・アエラドット・マイナビをはじめ、1,000以上のオンラインメディアに掲載・転載されている。テレビ・動画では、エヌエイチケイ「あさイチ」、中田敦彦のユーチューブ大学、ティービーエステレビなどに出演している。

本稿は、介護者の心理的負担(介護負担感)をめぐる研究、介護における両価的な感情(アンビバレンス)についての研究、介護者の罪悪感をめぐる研究、ケアする人のケアの重要性を示した研究、ならびに文部科学省の指針(二〇二二年)、および監修者・中島輝の著作と、自己肯定感学会による1,800名の独自調査にもとづいて制作しました。本記事は、特定の理論や向き合い方のみを正しいとするものではなく、さまざまなアプローチを尊重しています。罪悪感や落ち込みが長く続き、日々の暮らしに支障が出ている場合は、専門の窓口や医療機関にご相談ください。
 

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