「なぜ、あの人は…」が「最高の強み」に変わる。大人の発達障害と二次障害を理解し、自己肯定感を育む職場づくり

  • HSP

「何度教えても、同じミスを繰り返してしまう」
「指示が曖昧だと、フリーズしてしまうようだ」
「雑談が苦手で、チームから孤立していないか心配だ」

もしあなたが、部下の指導やマネジメントにおいて、このような悩みを抱えているとしたら。その背景には、「大人の発達障害」と呼ばれる特性が隠れているかもしれません。

そして、さらに深刻なのは、その特性が職場で理解されず、本人が無理を重ねた結果、うつ病や不安障害などの「二次障害」を発症してしまうケースです。

この記事を読んでくださっているあなたは、部下の様子に心を配り、「何かできることはないか」と模索している、志の高いマネージャーや指導者の方だと思います。

ご安心ください。大人の発達障害は「才能の裏返し」でもあります。そして、二次障害は「予防できる」ものです。

鍵となるのは、本人の「自己肯定感」

この記事では、自己肯定感の専門家の視点から、大人の発達障害の特性と二次障害のメカニズム、そして、部下の自己肯定感を守りながらその才能を開花させるための、具体的なマネジメント術について徹底的に解説します。

「大人の発達障害」とは? 職場で見られる主な特性

「発達障害」とは、生まれつきの脳機能の発達の偏りによるものです。決して本人の「努力不足」や「育て方」が原因ではありません。

多くの場合、その特性は幼少期から見られますが、学生時代までは大きな問題にならず、社会に出て「仕事」という複雑なタスクや「人間関係」に直面して初めて困難を感じ、診断に至るケースが「大人の発達障害」と呼ばれます。

職場で特に課題となりやすい、代表的な2つの特性を見ていきましょう。

ASD(自閉スペクトラム症)の特性

対人関係やコミュニケーション、想像力に特性があります。

  • 職場で見られる例:
  • 言葉の裏や行間を読むのが苦手。「あれ、適当によろしく」といった曖昧な指示が理解できない。
  • 雑談や世間話の意図がわからず、会話に入れない。
  • 相手の気持ちを察するのが難しく、悪気なく率直すぎる発言をしてしまうことがある。
  • 特定の物事へのこだわりが強く、手順やルールが変わると混乱しやすい。
  • 聴覚や視覚などが過敏で、オフィスの雑音や光が非常に苦痛に感じることがある。

ADHD(注意欠如・多動症)の特性

「不注意(集中し続けるのが苦手)」「多動性(じっとしているのが苦手)」「衝動性(思いついたらすぐ行動する)」の3つの特性が主に見られます。

  • 職場で見られる例:
  • (不注意)ケアレスミスが多い。タスクの優先順位付けが苦手。
  • (不注意)話を聞いていても、他の刺激に気が散って内容が頭に入らないことがある。
  • (多動性)会議中じっとしているのが難しく、貧乏ゆすりをしたり、そわそわしてしまう。
  • (衝動性)思ったことをすぐに口にしてしまう。タスクを最後まで終えずに次のことに移ってしまう。

なぜ「大人」になってから気づくのか?

学生時代は、比較的スケジュールが明確で、親や教師のサポートもありました。また、本人が高い知性を持っていた場合、特性を「個性」や「ちょっと変わった子」として周囲も受け入れ、本人の努力でカバーできていたことも多いのです。

しかし、社会に出ると、

  • 複数のタスクを同時に管理する「マルチタスク」
  • 暗黙の了解や社内政治といった「ハイコンテクストな人間関係」
  • 「自分で考えて動く」という主体性

などが一気に求められます。ここで初めて「自分は他の人と何かが違う」「なぜこんなにうまくいかないんだ」と悩み、生きづらさを感じるのです。

最も避けたい「二次障害」とは?

マネージャーとして最も注意すべきは、この「生きづらさ」を放置した結果、本人が精神的な不調をきたす「二次障害」です。

二次障害とは、発達障害の特性そのものではなく、その特性と周囲の環境とのミスマッチによって生じる、後天的な心身の不調を指します。

二次障害の具体的な症状

二次障害として現れる症状は多岐にわたります。

  • 精神疾患: うつ病、不安障害、パニック障害、強迫性障害、適応障害など
  • 身体症状: 頭痛、腹痛、めまい、不眠、食欲不振などの自律神経症状
  • 行動の問題: 依存症(アルコール、買い物など)、引きこもり、自傷行為など

これらは、本人の特性が職場で理解されず、「なぜできないんだ」と叱責されたり、周囲の冷たい視線にさらされたり、あるいは「みんなと同じようにやらなければ」と本人が無理に自分を適応させようと過剰に努力し続けた結果、心が折れてしまった状態です。

なぜ二次障害は起きてしまうのか?

発達障害のある方は、真面目で純粋な方が多いのが特徴です。そのため、職場でうまくいかないことがあると、「自分がダメだからだ」「もっと努力しないと」と、すべて自分一人で抱え込んでしまいます。

  1. 特性による困難(例:指示が理解できない、ミスが多い)
  2. 周囲のネガティブな反応(例:叱責、無理解、「やる気がない」という誤解)
  3. 本人の過剰適応(例:「普通」になろうと必死に努力し、常に緊張状態)
  4. 失敗体験の蓄積(例:「またダメだった」「自分には価値がない」)
  5. 心身のエネルギー枯渇(例:常に不安で、眠れなくなる)
  6. 二次障害の発症(例:うつ病、適応障害)

このように、本人の努力ではどうにもならない特性と、環境のミスマッチが、二次障害という深刻な事態を引き起こすのです。

二次障害の引き金は「自己肯定感の低下」

二次障害のメカニズムの中心にあるもの。それこそが「自己肯定感の低下」です。

自己肯定感とは、「自分はありのままで価値がある」と思える感覚のこと。この感覚は、私たちが前向きに行動し、困難を乗り越えるための「心の土台」となります。

「できない自分」を責め続ける苦しみ

発達障害のある方は、幼少期から「なんでみんなと同じようにできないの?」と注意されたり、浮いてしまったりする経験を積み重ねていることが少なくありません。

そのたびに、「自分は劣っている」「自分はダメな存在だ」という感覚を内面化していきます。

社会人になり、職場でミスを指摘されたり、人間関係で孤立したりすると、その古い傷が再び開きます。「やっぱり自分はダメなんだ」と。

この「自己肯定感の低い状態」こそが、二次障害の温床となります。

職場で起きる「負のスパイラル」

  1. 自己肯定感の低下:「どうせ自分にはできない」
  2. 行動の萎縮:失敗を恐れて新しい仕事に挑戦できない、質問や相談ができない
  3. パフォーマンスの低下:本来の力が発揮できず、ミスが増える
  4. 周囲からのさらなる低評価:「あの人は意欲がない」
  5. さらなる自己肯定感の低下:ますます自信を失い、孤立する

このスパイラルに陥ると、本人は「ここにいてはいけない」「自分は迷惑な存在だ」とまで思い詰め、うつ病や適応障害を発症してしまうのです。

マネージャーであるあなたの役割は、この負のスパイラルを断ち切り、「自己肯定感の正のスパイラル」を生み出すことです。

部下は「発達障害」それとも「HSP」?

マネージャーの方から、「うちの部下は発達障害ではなく、HSPかもしれない」という相談を受けることも増えました。

HSP(とても敏感な人)との違い

HSP(Highly Sensitive Person)は、生まれつき刺激に敏感で、感受性が豊かな気質を持つ人を指します。病気や障害ではなく、あくまで「気質」です。

  • HSPの特徴:
  • 五感(音、光、匂いなど)が鋭敏で、疲れやすい
  • 人の感情や場の空気に強く影響される
  • 物事を深くじっくり考える
  • 良心的で、正義感が強い

発達障害(特にASD)の「感覚過敏」や、ADHDの「刺激への反応性」と、HSPの「敏感さ」は、一見似ている部分があります。

しかし、両者は異なる概念です。発達障害は「脳機能の偏り」であり、HSPは「生まれ持った気質」です。もちろん、両方の特性を併せ持つ方もいます。

▼「HSP」と「発達障害」の違いについて、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

“HSP”と“発達障害”の違いは? もやもやの正体がわかれば、人生はもっと楽になる

どちらであっても大切な「共通の視点」

マネージャーの立場で重要なのは、「診断名」をつけることではありません。

部下が「HSP」であれ「発達障害の特性」であれ、

  • 本人が何に困っているのか?(例:オフィスの電話の音がつらい、曖昧な指示が不安)
  • どのような環境なら安心できるか?
  • どのような強みを持っているか?

という「個」の特性を理解しようとする姿勢です。

どちらのタイプも、周囲の無理解や過度な刺激によって「生きづらさ」を感じやすく、自己肯定感が下がりやすいという点は共通しています。

「敏感すぎる」「気にしすぎ」と否定するのではなく、その繊細さや特性を「才能」として捉え直す視点が、二次障害の予防につながります。

【マネージャー向け】部下の二次障害を防ぐ「関わり方」チェックテスト

部下の自己肯定感を守り、二次障害を防ぐためには、まずご自身の「関わり方」を振り返ってみることが有効です。

以下の項目に、いくつ当てはまるかチェックしてみましょう。

  • 【指示・伝達】
  • □ 「いい感じで」「よしなに」「なるべく早く」など、曖昧な表現を使いがちだ
  • □ 一度にたくさんの指示を口頭で伝えてしまう
  • □ 指示が最後まで伝わっているか、確認(復唱など)をあまりしていない
  • 【フィードバック】
  • □ ミスや欠点を指摘することが中心になっている
  • □ 「なぜできないんだ」と、本人の「人格」や「意欲」を問うような言い方をしてしまう
  • □ うまくいった時、具体的に「何が良かったか」を伝えることが少ない
  • 【環境・姿勢】
  • □ 部下が困っていそうでも、「自分で気づいて相談してくるべきだ」と思っている
  • □ 職場の雑音や照明など、物理的な環境にあまり配慮していない
  • □ 1on1などの面談は、業務の進捗確認がメインになっている
  • □ 部下の「特性」を理解しようとするより、「普通」に合わせさせようとする意識が強い

<診断>

  • 0〜2個: 素晴らしいです。部下は安心して働けている可能性が高いです。
  • 3〜5個: 注意が必要です。あなたの意図しないところで、部下は不安やプレッシャーを感じているかもしれません。
  • 6個以上: 危険信号です。その関わり方が、部下の自己肯定感を削り、二次障害の引き金になっている可能性があります。

このチェックは、優劣をつけるものではありません。「無意識の思い込み」に気づくためのものです。もし当てはまる項目が多ければ、次の章でご紹介する具体的な方法を、一つでも取り入れてみてください。

二次障害を予防する、具体的なマネジメント術

二次障害は、本人と環境のミスマッチから生じます。
裏を返せば、「環境」を調整し、「関わり方」を変えることで、予防は十分に可能です。
明日から実践できる3つのポイントをご紹介します。

(1)環境調整:ミスマッチを防ぐ

本人の「努力」に頼るのではなく、仕組みや環境で「特性をカバー」する発想が重要です。これは「合理的配慮」とも呼ばれます。

  • 業務の工夫:
    • マルチタスクを避け、タスクを細分化し、優先順位を明確にする。
    • 口頭指示が苦手な人には、チャットやメール、チェックリストなど「視覚的」な情報で補う。
    • 可能な限り、本人の得意な業務(例:データ入力、資料作成など集中できる作業)を任せる。
  • 物理的環境の工夫:
    • 聴覚過敏がある場合、電話の音が鳴り響く席から離す、ノイズキャンセリングイヤホンの使用を許可する。
    • 視覚過敏がある場合、パーテーションで仕切る、照明の明るさを調整する。
    • 「静かな場所で集中したい」という本人の申し出を前向きに検討する(空き会議室の利用など)。

(2)指示・伝達:コミュニケーションの「型」を作る

発達障害のある方は、「行間を読む」のが苦手です。彼らにとって「明確で具体的な指示」は、最高のサポートとなります。

  • 「5W1H」を明確に:
    • NG例: 「あの資料、いい感じにまとめといて」
    • OK例: 「【いつ】明日の15時までに、【誰が】Aさんが、【何を】〇〇のデータを、【どうする】グラフ化して、【なぜ】B社への提案資料に使うため、【どこに】共有フォルダに入れてください」
  • 一度に一つずつ: 多くの指示を一度に伝えず、「これが終わったら、次を伝えます」と区切る。
  • 復唱で確認: 「最後に、今お願いしたことを確認してもらえますか?」と、本人の口からタスクを説明してもらう。

(3)フィードバック:「行動」に焦点を当てる

ミスが起きた時、最も自己肯定感を下げるのは「人格否定」です。
「なぜ(やる気がないんだ)」「どうして(考えないんだ)」という言葉は禁物です。

  • NG例: 「またミスしたのか。本当に注意散漫だな」
  • OK例: 「この部分(A)が、元のデータ(B)と異なっているね。次は、入力した後に(C)のリストと照合する、という手順を加えようか」

このように、「起きた事実(行動)」と「具体的な改善策」だけに焦点を当てて伝えます。
そして、それ以上に大切なのが「うまくいっている時」のフィードバックです。

「弱み」を「才能」に変える、自己肯定感を育む関わり

二次障害を防ぐ最も根本的な対策は、本人が「自分はこのままでも大丈夫だ」「自分はチームの役に立てる」という「自己肯定感」を持てるようにサポートすることです。

「できていること」に光を当てる

私たちはつい「できないこと」ばかりに目が行きがちです。しかし、発達障害やHSPの特性を持つ方は、多くの場合「できていること」が9割、「苦手なこと」が1割です。

その「9割」に光を当ててください。

  • 「いつもデータ入力を正確にやってくれて助かるよ」
  • 「あの時、他の人が気づかないような細かいミスに気づいてくれたね」
  • 「〇〇さんの視点はユニークで、会議に新しい風を吹き込んでくれる」

小さなことでも構いません。具体的に「承認」し「感謝」を伝えることで、本人の自己肯定感は育まれます。

「空気が読めない」は才能の裏返し

例えば、ASDの特性である「空気が読めない」は、裏を返せば「同調圧力に屈せず、本質的な意見が言える」という才能です。

ADHDの「衝動性」は、「行動力がある」「アイデアが豊富」という強みになります。

▼「空気が読めない」という特性を「才能」として捉え直すヒントはこちら。

「空気が読ない」は才能の裏返し? 大人のASD・HSPの特性を理解し、自己肯定感を高めて「自分らしく」輝くためのヒント。

部下の才能を開花させる次世代マネジメント

これまでのマネジメントは、「弱みを克服させる」ことが中心でした。しかし、これからの時代に求められるのは、「強みを最大化する」マネジメントです。

発達障害やHSPの特性は、しばしば「平均」からはみ出します。しかし、その「はみ出した部分」にこそ、他の誰にも真似できない「才能」が眠っています。

その才能を開花させる鍵も、やはり「自己肯定感」です。

▼部下の自己肯定感を育み、その才能を「最高の強み」に変える具体的な方法はこちらの記事で詳しく解説しています。

発達障害・HSPの部下の才能を開花させる! 「伝わらない」を「最高の強み」に変える、自己肯定感を育む次世代マネジメント

まとめ:二次障害の予防は「安心感」と「自己肯定感」から

大人の発達障害と、そこから派生する二次障害について解説してきました。

二次障害は、本人の特性と環境のミスマッチ、そして「自己肯定感の低下」によって引き起こされます。

マネージャーであるあなたにできることは、環境を調整し、コミュニケーションを工夫することで、部下が「ここでは安心して働ける」と感じられる場を作ることです。

そして、「あなたはあなたのままで素晴らしい」というメッセージを伝え続け、本人の自己肯定感を育むことです。

それは決して簡単なことではありません。しかし、部下の「生きづらさ」が「働きやすさ」に変わった時、その人はあなたのチームにとって、かけがえのない「強み」を発揮してくれるはずです。


まずは、あなた自身の心の状態を知ることから

部下をサポートするためには、まずマネージャーであるあなた自身の「心の状態」が安定していることが不可欠です。 自分自身の自己肯定感の状態を知ることは、他者への理解を深める第一歩となります。

▼5分でわかる!あなたの心の状態は?▼
あなたの心の状態がわかる「自己肯定感チェックテスト」


もし、あなたがマネージャーとして、あるいは一人の人間として、HSPや発達障害の方の「生きづらさ」に深く共感し、「もっと専門的に学び、人を支えたい」と感じているなら、その「才能」を活かす道があります。

「HSPカウンセラーベーシック資格取得講座」

は、HSPの繊細さを「才能」に変え、自分らしく輝きながら人や社会に貢献するための講座です。

【この講座で得られること】

  • ✅ HSPの基礎知識: 脳科学・心理学に基づいた正しい知識を学び、長年の「もやもや」の正体がわかります。
  • ✅ 自己受容のステップ: まず自分自身の繊細さを受け入れ、自己肯定感を高める方法を体得します。
  • ✅ 傾聴と共感のスキル: 相手の心に寄り添い、安心感を与えるプロのカウンセリング技術を学びます。
  • ✅ 才能を活かす方法: 自身のHSP気質を弱点ではなく「強み」として活かし、仕事や人間関係に役立てる具体的な方法がわかります。

【受講生の声】

  • 「長年の生きづらさの正体がわかり、心が軽くなりました。HSPは弱点だと思っていましたが、最高の才能だと確信できました」(40代・女性)
  • 「職場で部下とのコミュニケーションに活かせています。相手の立場に立った具体的な声かけができるようになり、チームの雰囲気が良くなりました」(50代・男性・管理職)
  • 「自分を深く理解できたことで、他者への理解も深まりました。学んだことを活かして、カウンセラーとしての一歩を踏み出します」(30代・女性)

【最新日程】

  • 2025年11月11日(土)10:00〜17:00
  • 2025年12月14日(水)10:00〜17:00
  • ※最新の日程はリンク先でご確認ください。

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