自己肯定感が高いと、「何が起きても大丈夫!」「何でもできる!」「私の未来は明るい!」というポジティブなエネルギーが湧いてきて、人生を楽しむためのアイデアがたくさん生まれる。自己肯定感は、前向きに生きるためのエネルギーの源泉だ。ただ、自己肯定感の第一人者・中島輝氏は、自己肯定感が高い人とは、「ブレない自分らしさ」や「強い芯」を持っている人のことではないと言う。
※本稿は、中島輝著『自己肯定感を味方にするレッスン』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
目次
幸せを選ぶと、人生はもっと楽しくなる
こんなエピソードがあります。とらわれの身である二人の男が、鉄格子から外を見ていた。一人は下を向いて地面の泥を眺めながら絶望感を抱き、一人は上を向いて空に輝く星を眺めて希望を抱いていた。
つらいことがあったときに、星を眺めていた男のように、ふと美しいものに気がついて気持ちが晴れた経験はありませんか?
私たちは、下を向くか上を向くかを、すべて自分で選んでいます。「今日はいろいろあって最悪だった」と泥を眺めるのも自分だし、「今日はいろいろあったけど、こんないいこともあったし、ここは成長できた」と星を眺めるのも自分です。
何を見て、何を大切にするか、どちらの方向に進むかを自分で選ぶことができるということは、自分で自分を幸せにする選択ができるということです。選んだ結果、下を向くことになってしまっても、それが自分で選んだことならば後悔は少なくなり、納得のいく人生を歩むことができます。
そんなふうに自分で選びながら生きていくと、誰かと自分を比較したり、誰かの真似をしたり、自分を取り繕ったりすることが減っていき、自分の信念に基づいて生きていくことができるようになります。
さらには、鉄格子から空を見上げた男が希望を見出したように、自分の身に起きることをポジティブに捉えられるようになり、絶えず自分の内側からポジティブなエネルギーがあふれていきます。
迷ったりブレたり回り道したほうが、毎日は輝く
「自己肯定感が高い人」と聞くと、「ブレない自分らしさ」や「強い芯」を持つ人が思い浮かぶかもしれません。自分に自信を持っていて、どんなときも堂々と自己主張ができる人を見ると、「あの人は自己肯定感が高いんだろうなぁ」なんて思いませんか?
確かに、それは自己肯定感が高い人の一つの特徴ではありますが、すべてではありません。自己肯定感が高い人の最大の特徴は、柔軟性があるということです。
柔軟性がある人の心には「あそび」があります。あそびがあると、考えるときや感じるとき、自己表現をするときに「絶対にこれ!」と一つに執着することがありません。
「あれもいいし、これもいいし、どっちでもいい気がする。でも今はこれにしておこうかな」と、選択肢にやわらかさとゆとりがあるのです。「私はこれがいい」と思っていても、周りの状況や他社の意見しだいでは「それもいいよね」とゆるやかに考えを変えていけます。
自己肯定感が高い人は、頭と心がとてもやわらかく、いいことも悪いこともすべて笑顔で受け入れられる人なのです。
思い通りにならなくても、実はたくさんある楽しみ
もう少し、あそびについて考えてみましょう。あそびとは、自分の内側にある、まっさらで自由な空間です。そのまっさらな空間があると、自分の身に起きるすべてのことを受け入れることができます。
たとえ他者の異なる意見が飛び込んできても、思い通りに物事が進まなくてもあそびがあれば、「そういうこともあるよね」と広い心で受け入れることができるのです。
その空間は、誰の心の中にもあります。ただ、人によってその空間が大きかったり小さかったりするので、自己肯定感を高める方法を取り入れていけば、どんどん広げていくことができます。
右に行ってもいいし、左に行ってもいい、上でも下でもいいと、自由自在に変化していける姿勢が持てるようになると、人生はさらに楽しいものになっていきます。
ところで、多くの人が憧れる「ブレない自分らしさ」や「強い芯」ですが、次々に変わりゆく時代の波に乗っていくには、それらはかえって邪魔になってしまうことがあります。
明日何が起こるかわからないのに、「昨日はこれでうまくいったから、今日も絶対にこれでうまくいくに違いない!」という保証はどこにもないからです。
そればかりか「ブレない自分らしさ」に従って、うまくいった過去のやり方を貫こうとした結果、失敗してポキッと心が折れてしまう可能性だってあります。
それに、これが好き、嫌い、これが絶対いい、絶対ダメと白黒はっきりつけてしまうと、社会にたくさんある、豊かで複雑で素晴らしい「多様性」という光が見えなくなってしまいます。
自己肯定感が高く、しなやかな心を育てるために必要なのは、絶対的で強固な自分軸ではなく、風が吹けば自然と揺れる、野に咲く花のような気ままで透明感のある柔軟性です。
生まれたばかりの赤ちゃんを思い浮かべてみてください。いかなる価値観や思想にも染まらず、純粋無垢に世界を楽しんでいます。その生きる姿には、まさに柔軟性があります。
大人になるにつれ、さまざまな思い込みや決めつけによってそのしなやかさはすり減ってしまいがちですが、私にも、あなたの中にも、柔軟性は必ずあります!自己肯定感が高く、幸せに包まれているのが、私たちの本来の姿だからです。思い出してみましょう。
「生きているだけで楽しい」
「人と出会うだけで楽しい」
「何をしていても楽しい」
そんな柔軟な心は、すでにあなたの中にもあるのです。
「しなやかさ」はあなたの心の中に
とは言え、人生に歓迎すべきことばかりが起こるわけではありません。しなやかに受け入れようと思っても、すぽっと落とし穴にはまったかのように、一つの考えに執着して、受け入れたくても受け入れられないもどかしさに苦しむことがあります。
そんなときは自分の意思とは関係なく、人は絶えず前向きに成長し続けているんだ!ということを思い出してください。
人は、死ぬまで変容を続けています。生まれたばかりの赤ちゃんから比べれば、今の自分は成長が止まっているかのように見えるかもしれません。しかし、人は生きている限り、常に成長を続けています!
過去を振り返ってみてください。人から嫌なことを言われたとき、何とか自分で対応して、その経験を生きるエネルギーに変えてきませんでしたか?
つらいことがあっても、少しでもラクになればと、小さな工夫を重ねて乗り越えたこともあったのではないでしょうか。進んだり、休んだり、たまには後ろに下がったりしながらでも、みなさんは前を向いて一歩一歩生きてきたはずです。
それは、生きるためにしなやかに成長し続けてきたからこそできたことです。すでにあなたは、十分しなやかに生きてきたのです!これからも、その柔軟性をさらにピカピカに育てていきましょう。それだけで、日々はさらに輝きを増していきます。
チャンスの翼はどこまでも自由に広げていい
私は自己肯定感とは「私が私であることに満足でき、自分を価値ある存在だと受け入れられること」だと考えています。「私が私であることに満足できている」とは、どういう状態なのでしょう?
満足とは、地位やお金、物、人間関係などの目に見えるもの、つまり「この仕事をしている私」や、「あの人とつきあっている私」「こんな肩書きを持って、これだけのお金を得ている私」に満足しているということではありません。
「私は何を大切に生きていきたいの?」
「私はどんな人間になりたいの?」
その小さな問いかけをいつも持ち続け、そのときどきで最適だと思う答えを導き出し、自信を持って生きている自分に満足するということです。満足は、いったんそれを感じたらおしまいというものではありません。
時の流れと共に、「自分は何を大切に生きているのか?」「自分はどんな人間になりたいのか?」という問いへの答えが少しずつ変化していくように、満足感も、絶えず形を変え、変化していきます。この「変化」が、人生に彩りを与えてくれます。
そしてその変化に柔軟に対応できたとき、人は自分という存在に満足感を覚え、「自分は価値がある存在だ」と受け入れることができるのです。変化に柔軟に対応するのは、難しいことでも、大変なことでもありません。とても楽しいことです!
何が起きても身軽に受け入れ、チャンスの翼をどこまでも自由に広げ、既存の枠組みをひょいっと飛び越えて、次から次へと新しい発想、新しい行動を生み出していくのは、まるで夢中になってあそぶ子どものような感覚です。
そのあそび心が、自己肯定感というものの正体なのかもしれません。素直に、無邪気に、純粋に、何が起きてもまっさらな心で受け止めていきましょう。そこから柔軟性が生まれ、心はもっと前向きになります。
2021-05-01 THE 21ONLINEに掲載された記事を加筆修正したものです。
自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。
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