「なぜか人付き合いが苦手…」
「仕事で同じミスを繰り返してしまう」
「周りの人には理解されないけれど、特定のことに強いこだわりがある」
そんな風に、日々の生活の中で「生きづらさ」を感じていませんか? もしかしたら、その原因はあなたの性格や努力不足ではなく、生まれ持った脳の特性にあるのかもしれません。
近年、テレビや書籍で特集されることが増え、耳にする機会も多くなった「大人の発達障害」。中でも、対人関係の難しさやこだわりの強さを特徴とする「ASD(自閉スペクトラム症)」の特性に、ご自身の悩みを重ね合わせる方が増えています。
この記事では、長年多くの方の自己肯定感を育むサポートをしてきた専門家として、大人のASDの特性によって生きづらさを感じているあなたへ、その苦しみの正体を解き明かし、自分らしく楽に生きるための具体的な方法をお伝えします。
この記事を読み終える頃には、漠然とした不安が和らぎ、「私だけじゃなかったんだ」「こうすれば良かったんだ」と、未来へ向かうための確かな一歩を踏み出せるはずです。
「普通」になれない苦しみ。もしかして、私も大人のASD?
多くの大人が抱える「生きづらさ」の正体
「空気が読めない」「真面目すぎる」「融通が利かない」
これまで、周りからそんな風に言われて、傷ついた経験はありませんか?
自分では一生懸命やっているつもりなのに、なぜかうまくいかない。職場や友人関係で孤立感を深め、いつしか「自分が悪いんだ」「私が普通じゃないからだ」と、ご自身を責めるようになってしまった方も少なくないでしょう。
特に女性の場合、子どもの頃はその特性が「おとなしい」「真面目」といった個性として見過ごされやすく、困難に気づかれないまま大人になるケースが多くあります。その結果、社会に出てから急に人間関係の壁にぶつかり、うつや不安障害などの二次障害に苦しんでしまうことも少なくありません。
もしあなたが、長年にわたって原因不明の生きづらさを抱えているのなら、それはASD(自閉スペクトラム症)の特性が関係している可能性があります。
ASD(自閉スペクトラム症)の3つの主な特性
ASD(自閉スペクトラム症)とは、生まれつきの脳機能の発達のかたよりによって生じる発達障害の一つです。「スペクトラム」という言葉が示す通り、その特性の現れ方は人それぞれで、虹のように多様で幅広いのが特徴です。
一般的に、ASDには大きく分けて以下の3つの特性があると言われています。
① 対人関係・社会性の困難
- 相手の表情や声のトーンから気持ちを読み取るのが苦手
- その場の空気を読む、暗黙のルールを理解するのが難しい
- 冗談や皮肉が通じず、言葉を文字通りに受け取ってしまう
- 人と視線を合わせるのが苦手
- 集団行動や雑談が苦痛に感じる
例えば、職場の同僚が「何か手伝おうか?」と声をかけてくれた時、言葉通りに受け取って「大丈夫です」と断ってしまい、相手をがっかりさせてしまった、という経験はないでしょうか。相手は親切心から言ってくれたのに、その裏にある「大変そうだね」「手伝うよ」というニュアンスを汲み取ることが難しいのです。
② コミュニケーションの困難
- 一方的に自分の話したいことだけを話してしまう
- 曖昧な表現が理解できず、具体的な指示がないと動けない
- 会話のキャッチボールが苦手
- 思ったことをストレートに口にしてしまい、相手を傷つけるつもりはないのに誤解されやすい
「あれ、やっといて」「適当にお願い」といった指示に困惑したり、自分が納得するまで質問を繰り返して「しつこい」と思われたり。コミュニケーションにおけるこうしたすれ違いが、人間関係のストレスにつながっていきます。
③ 限定的な興味・こだわり
- 特定のこと(特定の分野、手順、ルールなど)に強い興味やこだわりがある
- 興味のあることには驚異的な集中力と記憶力を発揮する
- 急な予定変更や、いつもと違う状況が極端に苦手
- 自分なりの手順やルールがあり、それを崩されると混乱したり、パニックになったりする
- 光、音、匂い、肌触りなどの感覚が非常に敏感(感覚過敏)、または鈍感(感覚鈍麻)
この特性は、時に素晴らしい才能として開花することもあります。特定の分野の研究者やプログラマー、職人など、そのこだわりと集中力を活かして活躍している方は大勢います。しかし、日常生活においては、そのこだわりの強さが「わがまま」「融通が利かない」と捉えられ、周囲との摩擦を生む原因にもなり得ます。
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ASDと診断されていなくても。「グレーゾーン」という考え方
ここまで読んで、「いくつか当てはまるけれど、すべてではないな…」と感じた方もいるかもしれません。
発達障害の特性は、はっきりと「ある」「ない」で分けられるものではなく、誰もがそのスペクトラム(連続体)のどこかに位置していると考えられています。診断基準をすべて満たすほどではないけれど、明らかに特性の傾向があり、それによって生活に困難を感じている状態を、一般的に「グレーゾーン」と呼びます。
大切なのは、診断名がつくかどうかではありません。あなた自身が「なぜこんなに生きづらいんだろう?」と感じているのなら、その原因となっている特性を理解し、適切に対処していくことが、楽に生きるための第一歩となるのです。

HSPとの違いは?あなたの「敏感さ」の根っこを探る
刺激に敏感な「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)」とは
ASDについて調べていると、よく似た概念として「HSP」という言葉を目にすることがあるかもしれません。どちらも「敏感さ」が共通点として挙げられるため、混同されやすいのですが、その根本は異なります。
HSPは、生まれつき刺激に敏感で、感受性が非常に豊かな気質を持つ人のことを指します。病気や障害ではなく、あくまで気質です。人口の約5人に1人がHSPだと言われています。
- 人の感情に深く共感し、影響を受けやすい
- 物事を深く考え、本質を追求する
- 光や音、匂いなどの些細な刺激にも気づきやすい
- 芸術的なものに心惹かれ、感動しやすい
といった特徴があります。人の気持ちを察する能力が高く、思いやりが深い一方で、刺激を受けすぎて疲れ果ててしまう、という側面も持っています。
似ているようで異なる、特性の根本的な違い
ASDの「感覚過敏」とHSPの「敏感さ」は、一見すると同じように見えるかもしれません。しかし、その背景にあるものが異なります。
- ASDの困難さの根っこ → 「共感性の質の違い」
相手の気持ちを「推測する」のが苦手。HSPのように、相手の感情が流れ込んでくる感覚とは異なります。「なぜそう思うのか?」を論理的に理解しようとします。 - HSPの困難さの根っこ → 「過剰な共感性」
相手の気持ちが、まるで自分のことのように流れ込んできてしまう。共感しすぎてしまい、相手との心の境界線が曖昧になりがちです。
ASDの人が人間関係で疲弊するのは「相手の意図がわからず、どう振る舞うべきか悩み、エネルギーを消耗してしまう」ことが大きな原因です。一方、HSPの人が疲弊するのは「相手の感情に振り回され、気遣いすぎてエネルギーを消耗してしまう」ことが原因と言えるでしょう。
もちろん、ASDとHSPの両方の特性を併せ持つ人もいます。大切なのは、自分の「生きづらさ」や「敏感さ」の正体はどちらに近いのかを理解することです。それによって、対処法も変わってきます。
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なぜ、ASD傾向の人は自己肯定感が低くなりやすいのか?
ASDの特性を持つ人が抱える「生きづらさ」の核心には、多くの場合、「自己肯定感の低さ」という問題が横たわっています。なぜ、特性を持つだけで、こんなにも自分を好きになれなくなってしまうのでしょうか。
「なんでできないの?」繰り返される失敗体験と叱責
子どもの頃から、他の子たちが当たり前にできていることが、自分にはうまくできない。
- みんなの輪に入って楽しくおしゃべりができない
- 先生の曖昧な指示がわからず、一人だけ違う行動をしてしまう
- 忘れ物や失くし物が多く、何度も注意される
こうした小さな失敗体験が積み重なり、その度に親や先生から「どうしてできないの?」「もっとちゃんとしなさい」と叱責され続けると、子どもの心には「自分はダメな子なんだ」という思いが深く刻み込まれてしまいます。
本人は悪気があるわけでも、怠けているわけでもありません。ただ、特性によって「できない」だけなのです。しかし、その背景を理解してもらえないまま否定的な言葉を浴び続けることで、自己肯定感はどんどん削られていきます。
周囲とのズレから生まれる「自分はダメだ」という思い込み
大人になっても、状況は変わりません。むしろ、求められる社会性やコミュニケーション能力が高くなる分、困難さは増していきます。
職場で孤立したり、恋愛関係がうまくいかなかったり、友人との些細な会話で傷ついたり。周囲との「ズレ」を常に感じながら生きることは、大きなストレスです。
「みんなが笑っているところで、自分だけ笑えない」
「お世辞や社交辞令が言えず、いつも本音を言って場を白けさせてしまう」
こうした経験を通じて、「普通にできない自分は欠陥品だ」という強固な思い込みが形成され、自分自身を価値のない存在だと感じてしまうのです。
完璧主義が自分を追い詰める
ASDの特性の一つに、物事を0か100か、白か黒かで判断する「完璧主義」の傾向があります。少しでもミスをすると「すべてが台無しだ」と感じてしまい、自分を激しく責め立てます。
この完璧主義は、仕事のクオリティを高める上では強みになることもありますが、自分自身に向かうと、非常に厄介なものになります。常に「完璧な自分でなければならない」という高いハードルを自身に課し、達成できないと自己嫌悪に陥る、という悪循環を繰り返してしまうのです。
こうした負のスパイラルから抜け出さない限り、自己肯定感を育むことは非常に困難です。
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※この記事はADHDのお子さんに関するテーマですが、発達障害を持つ人がなぜ自己肯定感が低くなりやすいのか、そのメカニズムを理解する上で非常に参考になります。
【簡単ワーク】見方を変えれば「短所」は「長所」になる!リフレーミング思考
自己肯定感を高めるための第一歩は、自分自身に対する見方を変えることです。あなたが「短所」だと思い込んでいるその特性は、見方を変えれば、他に誰も真似できない素晴らしい「長所」や「才能」になり得ます。
この、物事の枠組み(フレーム)を変えて、別の視点で捉え直すことを「リフレーミング」と呼びます。
あなたの「苦手」に隠された「才能」を見つけよう
例えば、こんな風に言い換えることができます。
- 空気が読めない → 周りに流されず、自分の信念を貫ける
- こだわりが強い → 探究心が強く、専門性を極められる
- 融通が利かない → ルールや決まりをきちんと守れる誠実さ
- 一つのことに集中しすぎる → 驚異的な集中力を持っている
- 思ったことをすぐ口にする → 嘘がつけない、裏表のない正直者
- 話が一方的になる → 自分の好きなことを情熱的に語れる
いかがでしょうか? ネガティブに感じていた特性が、ポジティブな魅力に見えてきませんか。
リフレーミング・ワークシート
さあ、今度はあなたの番です。紙とペンを用意して、あなたが「自分の嫌いなところ」「短所だと思っているところ」を書き出し、それをポジティブな言葉に言い換えてみましょう。

私の短所・苦手なこと→ポジティブな言い換え(私の長所・才能)
人の気持ちを察するのが苦手→論理的思考力が高く、物事を客観的に判断できる
すぐに思いつかなくても大丈夫です。時間をかけて、ゆっくりと自分自身と向き合ってみてください。このワークは、あなたが無意識に自分に貼っていた「ダメな私」というレッテルを剥がし、「ありのままの自分でいいんだ」と受け入れるための、とても大切なプロセスです。
もう自分を責めない。自己肯定感を育む5つのステップ
自分の特性を少しポジティブに捉えられるようになったら、次はいよいよ、自己肯定感を具体的に育んでいくための行動ステップに移りましょう。大切なのは、大きな変化を目指すのではなく、日々の生活の中でできることから、少しずつ試していくことです。
STEP1:自分の「トリセツ」を作る
まずは、敵を知り、己を知ることから。あなたがどんな時にストレスを感じ、どんな時に安心するのか。何が得意で、何が苦手なのか。自分自身の「取扱説明書」を作成してみましょう。
- 得意なこと・好きなこと: (例:一人で黙々と作業すること、データを分析すること)
- 苦手なこと・嫌いなこと: (例:騒がしい場所、雑談、急な予定変更)
- 心が落ち着くこと: (例:好きな音楽を聴く、アロマを焚く、ペットと触れ合う)
- パニックになりそうな時の対処法: (例:その場を離れて一人になる、深呼吸をする)
- 周りの人へのお願い: (例:指示は具体的にお願いします、一度に多くのことを頼まないでください)
これを書き出すことで、自分を客観的に理解することができます。そして、周りの人に自分の特性を説明し、配慮をお願いする際にも役立ちます。
STEP2:刺激を減らし、安心できる環境を整える
感覚過敏がある場合、日常生活は常にストレスとの戦いです。自分がどんな刺激に弱いのかを把握し、できる限りそれを避ける工夫をしましょう。
- 聴覚過敏: ノイズキャンセリングイヤホンや耳栓を活用する。
- 視覚過敏: サングラスやブルーライトカットメガネをかける。部屋の照明を調整する。
- 嗅覚過敏: マスクをする。無香料の洗剤や化粧品を選ぶ。
- 触覚過敏: 肌触りの良い、締め付けの少ない衣服を選ぶ。服のタグは切る。
すべてを完璧にする必要はありません。「これならできそう」ということから一つでも試してみることで、心身の負担は驚くほど軽くなります。自分にとっての「安全基地」となる環境を整えることが、心の安定につながります。
STEP3:ハードルは低く。小さな「できた!」を積み重ねる
自己肯定感が低い人は、自分に対する目標設定が高すぎる傾向があります。まずは、「これなら絶対にできる」というレベルまでハードルを下げてみましょう。
- 朝、決まった時間に起きられた
- 一駅分だけ歩いてみた
- 寝る前に5分だけストレッチをした
どんなに些細なことでも構いません。「できた!」という事実を自分で認め、褒めてあげる。この小さな成功体験の積み重ねが、「自分はできるんだ」という自信の土台を築いていきます。日記や手帳に「できたことリスト」を作るのもおすすめです。
STEP4:上手な「NO」の伝え方を身につける
頼み事をされると断れず、キャパオーバーになっていませんか? 自分の心と体を守るためには、上手な断り方を身につけることが不可欠です。
ポイントは、「相手も尊重し、自分の気持ちも正直に伝える」アサーティブなコミュニケーションです。
(断る時の例文)
「お誘いありがとうございます。とても嬉しいのですが、あいにくその日は先約がありまして…。また別の機会にぜひお願いします」
「そのお仕事、お引き受けしたい気持ちは山々なのですが、今抱えている業務で手一杯でして。ご期待に応えられないと申し訳ないので、今回はご遠慮させてください」
ただ断るだけでなく、「ありがとう(感謝)」「でも、できません(拒否)」「またの機会に(代替案)」をセットで伝えることで、相手との関係性を損なわずに、自分の意思を伝えることができます。
STEP5:一人で抱えない。理解者を見つけ、頼る勇気を持つ
ここまで様々なセルフケアの方法をお伝えしてきましたが、最も大切なことは、一人で抱え込まないことです。
- 信頼できる家族や友人に話す: 自分の特性について、理解してくれそうな人に話してみましょう。すべてを分かってもらえなくても、「そうだったんだね」と受け止めてもらえるだけで、心は軽くなります。
- 当事者会や自助グループに参加する: 同じ特性や悩みを抱える仲間と繋がることは、何よりの支えになります。「自分だけじゃなかった」という安心感は、自己肯定感を大きく回復させてくれます。
- 専門家を頼る: 発達障害者支援センターや、発達障害に詳しいカウンセラー、クリニックなど、専門的な知識を持つ第三者に相談することも非常に有効です。客観的なアドバイスや、具体的な対処法を教えてもらうことができます。
誰かに頼ることは、弱いことではありません。むしろ、自分の困難を乗り越えるために他者の力を借りられる、賢明で勇気ある行動なのです。
まとめ:あなたのままで、あなたらしく輝ける場所は必ずある
大人のASDの特性によって生きづらさを抱えることは、決して楽な道のりではありません。周りから理解されず、自分を責め、孤独を感じることも多いでしょう。
しかし、どうか忘れないでください。あなたのその特性は、決して欠点ではありません。
人とは違う視点で物事を捉えることができる独創性。
興味のあることにとことん打ち込める集中力。
嘘がつけない、誠実でまっすぐな心。
それらはすべて、あなただけが持つ、かけがえのないギフト(才能)です。
大切なのは、その特性を無理に変えようとするのではなく、まず「これが私なんだ」と受け入れること。そして、その特性を活かせる環境を自分で選び、作っていくことです。
この記事でお伝えしたワークやステップが、あなたが自分自身を理解し、自己肯定感を育み、あなたらしく輝ける未来へと進むための、ささやかな光となることを心から願っています。
あなたのままで、大丈夫。
あなたは、あなたのままで素晴らしいのですから。


自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。





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