3月になると、体が重くなる。
理由はわかっている。
わかっているけど、毎年やってくる。
テレビをつけると、追悼番組が流れている。
あの日の映像。あの日の音。あの日の、叫び声。
見ると、動悸がする。
でも見ないと、「忘れてしまいそう」で怖い。
忘れたくない。でも思い出すと苦しい。
この矛盾を、15年間、繰り返してきた。
「もう15年も経つんだから、そろそろ前を向かないと」
──自分にそう言い聞かせてきた。
周りにも、そう言われてきた。
でも、前を向こうとするたびに、
体が後ろを向く。
足が動かない。
3月の朝は、いつもそうだ。
──中島輝です。
今夜は、2011年3月11日から15年経った、東北の方へ向けて書きます。
そして、東北に限らず、災害で大切なものを失ったすべての方へ。
「もう15年」ではない。「まだ15年」かもしれない。
世間は言います。
「もう15年」。
街は復興した。建物は建った。道路は通った。
数字の上では、復興率は95%を超えている。
でも──
大切な人を失った方にとっては「まだ15年」かもしれない。
あるいは「15年間ずっと」かもしれない。
街の復興と、心の復興は、同じ速度では進みません。
建物は3年で建つ。でも心の傷は15年経っても疼くことがある。
「もう15年でしょ?いつまで引きずってるの」
「前を向いて。亡くなった人もそれを望んでいるよ」
「復興したじゃない。よかったね」
──言われるたびに、心が少しずつ閉じていく。
「まだ悲しんでいる自分がおかしいんだ」と思ってしまう。
おかしくありません。
15年経っても体が反応するのは、あなたの愛が15年間続いている証拠です。
そしてその反応には、科学的な名前があります。
「記念日反応」と「あいまいな喪失」──科学が名づけた2つの痛み

3月になると体が重くなる──これは「記念日反応(Anniversary Reaction)」と呼ばれる、
トラウマ研究で広く確認されている現象です。
特定の日付や季節が近づくと、意識とは無関係に、
体が当時の状態を再現する。動悸。不眠。倦怠感。過呼吸。
「気のせい」でも「弱さ」でもなく、脳と体の正常な防衛反応です。
そしてもうひとつ、震災グリーフに特有の、深刻な概念があります。
📊 「あいまいな喪失」理論(Ambiguous Loss)
──Pauline Boss(1999) Harvard University Press
ミネソタ大学のポーリン・ボス教授が提唱。
「あいまいな喪失」とは──
「失ったのかどうかが確定しない喪失」のこと。
行方不明者の家族がこれに該当する。
死亡が確認されない。でも帰ってくる保証もない。
悲しんでいいのか。まだ待つべきなのか。
「わからない」が、何年も何十年も続く。
ボスの研究では──
あいまいな喪失は、通常の死別よりも
心理的影響が深刻で、回復が困難であることが示されている。
なぜなら──
通常の死別には「区切り」がある。葬儀。納骨。法要。
あいまいな喪失には、その「区切り」がない。
だから悲嘆のプロセスが始められない。
始められないまま、時間だけが過ぎていく。
東日本大震災の行方不明者は、2,520人(2025年3月時点)。
15年経った今も、帰りを待ち続けている家族がいる。
その方々にとって「もう15年」は、残酷な言葉です。
「15年間、ずっと宙に浮いたまま」──それがあいまいな喪失の正体。
「自分だけ助かった。あの人を助けられなかった」
「なぜ自分は生き残ったのか。あの人の方が生きるべきだった」
「幸せを感じるたびに、罪悪感が襲ってくる」
──これは「サバイバーズ・ギルト(生存者の罪悪感)」と呼ばれる、
災害や事故の生存者に広く見られる心理反応です。
あなたが「弱い」のではない。
極限の経験をした人間の、正常な反応です。
あなたが生き残ったことに、意味がある。
その意味は、今すぐわからなくていい。
でも、いつか必ず見つかる日が来ます。
「心の居場所」が足りていない
📊 こども家庭庁 令和4年度調査
「安心できる居場所」の数が多いほど、
自己肯定感・幸福感が高い(正の相関)。
被災地の物理的な復興は進んだ。
家は建った。道路は通った。商店街は再開した。
でも──
「安心して悲しみを語れる場所」は、まだ足りていない。
「もう15年でしょ」と言われない場所。
「まだ悲しくてもいいんだよ」と言ってもらえる場所。
物理的な居場所は再建された。
心の居場所は、まだ再建の途中。
悲しみを語る場がないと、人は悲しみに蓋をする。
蓋をすると、体が代わりに叫ぶ。3月の朝の重さ。動悸。不眠。
心の居場所があれば──
蓋を外せる。泣ける。語れる。
語ることで、少しずつ、悲しみと「共に生きる」道が見えてくる。
なぜ、仙台で開催するのか

ここから先は、私自身の話をさせてください。
正直に言うと、東京で開催する方が楽です。
受講生も集まりやすい。運営もスムーズ。
でも、どうしても仙台で開きたかった。
理由は1つ。
東北に、「心の居場所」をつくりたいからです。
私は10年間、外に出られない闘病生活を送りました。
あの10年間で失ったもの。孤独。絶望。「生きている意味がわからない」という日々。
震災で大切なものを失った方の痛みと、私の痛みは同じではありません。
比較するつもりもありません。
でも──
「もう終わりにしたい」と何度も思った夜の感覚は、
少しだけ、わかるつもりです。
そして、そこから回復する道があることも知っています。
一人では見つけられなかった道を、
誰かの存在のおかげで見つけられることも。
その「誰か」を、東北に増やしたい。
悲しみに寄り添える人。悲しみのプロセスを知っている人。
「もう15年でしょ」ではなく「まだ悲しくてもいいんだよ」と言える人。
「一家にひとり、グリーフケア心理カウンセラーがいたら」
──それが、私たちのビジョンです。
その最初の一歩を、仙台から始めたい。
悲しみに、期限はない
3月になると体が重くなるあなたへ。
15年経っても泣いていい。
何年経っても、思い出して涙が出るのは、おかしいことではない。
それは、あなたの愛が続いている証です。
「もう15年」と言われても、
あなたのペースで、あなたの速度で、
悲しみと共に歩いていい。
そしてもし──
「この悲しみを、誰かのために使いたい」と感じる日が来たら。
「同じ痛みを知っている人のそばにいたい」と思えたら。
その日が、あなたの新しい始まりです。
5月10日、仙台でお待ちしています。
東北のこの街から、心の復興を始めましょう。
仙台講座にもお申込みが続いています。
ピンときた方は、考えるより先に動いてみてくださいね。
迷っているうちに席がなくなったら、もったいないので。
グリーフケア心理カウンセラー ベーシック資格取得講座【仙台】
日程:2026年5月10日(日)
開場:9:45/開始:10:00/終了:17:00
講師:中島輝(特別登壇)/受講料:28,000円(税込)
懇親会(参加自由)17:30〜
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オンラインでも行います!お越しくださいね❣️
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自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。





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