謙虚さと強さは両立できる【中島輝監修】|第五水準の心理学と自己受容感

謙虚さと強さは両立できる【中島輝監修】|第五水準の心理学と自己受容感

謙虚さと強さは
両立できる

「謙虚な人は、損をする」「強くなりたいなら、押しが大事」。そう信じてきた人ほど、実は遠回りをしています。本当に飛躍する人は、謙虚さと強さの両方を持っている。心理学はそれを「逆説の力」と呼びます。

中島 輝
心理カウンセラー・自己肯定感アカデミー会長・「6つの感と安心感」理論創始者

「謙虚=弱い」という思い込みの正体

こんな悩みを抱えていませんか。

読者の声
「謙虚にしてたら、なめられる気がする」
場面30代・会社員。新しいリーダー職に就いたが、強く出ることに抵抗がある。一方で、謙虚にしていると舐められそうで、どう振る舞えばいいか分からない。
この迷いは、「謙虚さと強さは両立できない」という古い思い込みから生まれています。実は、両方を持っている人こそ、最も力強く見えるのです。

「謙虚な人は損をする」「人を押しのける強さがないと、出世できない」。私たちは知らず知らずのうちに、こうした考えを身につけてきました。でも、よく見渡すと、本当に尊敬される人はどちらか一方だけの人ではないことに気づきます。

世界の研究が示した意外な事実

米国の経営研究者ジム・コリンズは、5年間で1,435社を調査し、平均的な会社から偉大な会社に飛躍したリーダーを分析しました。結論は、こうでした。

偉大に飛躍した会社のリーダーは、
「個人としての謙虚さ」と
「職業人としての意思の強さ」を
同時に持っていた

カリスマでも、強引な性格でもありません。むしろ静かで控えめ、けれど内側に揺るがない芯を持つ人たちでした。コリンズは、これを「第五水準のリーダー」と呼びました。

11社
1,435社のうち、偉大に飛躍した会社の数。そのすべてに第五水準のリーダーがいた
出典:『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』(ジム・コリンズ著)5年間の大規模調査

中島輝より一言

私が15,000人の相談を受けてきて気づいたことがあります。本当に魅力的な人は、声が大きいわけでも、押しが強いわけでもありません。静かに自分を信じている人です。謙虚さは弱さではなく、自分を分かっている強さの表れです。そして、その奥には「私は私でいい」という揺るがない自己受容感があります。

第五水準の人がもつ二つの顔

第五水準の人は、矛盾した二つの顔を持っています。けれど、実は矛盾ではなく、同じ根から生まれた二つの枝です。

顔①|個人としての謙虚さ

第五水準の特徴普通のリーダーとの違い
成功した時は他人や運のおかげと考える自分の手柄にしたがる
失敗した時は鏡を見て自分を省みる窓を見て他人や環境のせいにする
自分について多くを語らない自分の話で場を支配したがる
派手さより静かな確かさを選ぶ注目を集めることを好む

顔②|職業人としての強い意志

第五水準の特徴普通のリーダーとの違い
必要なら厳しい決断を下す嫌われたくないので避ける
長期の目標に揺るがず向き合う短期の称賛に流される
自分より大きな目的に身を捧げる自分の利益を中心に考える
結果が出るまで諦めないうまくいかないと方向転換する

この二つは、外から見ると正反対です。けれど、本人の中では一つです。「自分を分かっているから、誇示する必要がない」「大切な目的があるから、簡単に諦めない」。どちらも、自分の根っこと向き合えている人だけが持てる姿勢です。

★土壌|安心感 OK ★根|自尊心≒存在感 謙虚さ (左の枝) 強い意志 (右の枝) 第五水準の人の心の木 謙虚さと強い意志は、同じ幹(OK)から伸びる二本の枝
▲ 第五水準の人の心は、幹に自己受容感があり、そこから「謙虚さ」と「強い意志」という二本の枝が伸びます。同じ根から生まれた、表裏一体の姿。

自己受容感が両立を支える

謙虚さと強さを両立できる人と、できない人。違いはどこにあるのでしょうか。答えは、自己受容感の有無です。

自己受容感とは

「自分には良いところも悪いところもある。それを丸ごと、私のものとして引き受ける」。この感覚が、自己受容感です。木でいえば幹の部分。根を地中で支え、枝葉を空に向けて伸ばすための、芯となる部分です。

自己受容感が育っている人育っていない人
自分の弱さを認められる弱さを隠そうとする
失敗を素直に受け止められる失敗を誰かのせいにする
褒められても舞い上がらない褒められると有頂天になる
批判されても折れない批判で自己価値が崩れる
自分と他人を比べない常に他人と比べている

なぜ自己受容感が両立を生むのか

自己受容感が育っている人は、自分の弱さを認めているから、人前で偉ぶる必要がありません。これが謙虚さです。同時に、自分の価値を信じているから、必要な時に強く意志を貫けます。これが意志の強さです。

謙虚さは、自分の弱さを認めた人だけが持てる強さ。
意志の強さは、自分の価値を信じた人だけが持てる柔らかさ。

中島輝より一言

謙虚さと強さを両立できない人の多くは、自己受容感が育っていません。「自分はまだダメだ」と思っていると、人前では強がってしまう。「自分は完璧でなければ」と思っていると、批判に過剰反応してしまう。「自分にはダメな部分もある。それでいい」と心から思えた時、初めて謙虚さと強さは同居できます。

今日からできる5つの一歩

自己受容感を育て、謙虚さと強さを両立する。30秒から始められる5つの一歩です。

STEP 1|30秒
「弱い部分」を一つ書く

朝、紙に「私の弱い部分は◯◯」と一つだけ書きます。隠したい部分でも、構いません。書き出すこと自体が、認める第一歩です。誰にも見せる必要はありません。

STEP 2|1分
「それでも私は」を続ける

書いた弱さの後ろに「それでも、私は」と続け、自分の良いところを一つ書きます。例:「私は人前で緊張する。それでも、私は誠実だ」。「ダメな自分も含めて、私」という感覚を育てます。

STEP 3|3分
「ありがとう」を素直に受け取る

誰かに褒められたり感謝されたら、「いえいえ」と否定せず、3秒だけ間を取って「ありがとうございます」とだけ言います。謙虚に受け取ることが、本当の謙虚さです。否定は謙虚さではなく、自己受容感の不足です。

STEP 4|5分
「私の意見」を一回だけ言う

1日に1回、自分の意見を周りに伝えます。会議でも家庭でも構いません。長く話す必要はなく、「私はこう思う」と一言。意見を言う筋肉は、使わないと衰えます。少しずつ強くなります。

STEP 5|2週間
「自分OK」を毎晩記録する

寝る前に手帳に「今日の自分にOK」と書きます。何があってもOK。続けるうちに、自分への許可が習慣になります。これが、自己受容感を根づかせる最も確実な方法です。

謙虚さと強さは、敵ではない。
自己受容感という同じ幹から伸びる、
二本の大切な枝。

よくあるご質問

謙虚にしているのに損ばかりしている気がします
それは謙虚さではなく、自己卑下かもしれません。本当の謙虚さは、自分を低く見ることではなく、自分を正確に見ることです。自分の良いところも認めた上で、「ありがとう」と受け取れる人が、本当の謙虚な人です。
強く出ると、後で罪悪感を感じます
罪悪感は、相手を傷つけた時に感じるのが自然です。けれど、自分の意見を言っただけで罪悪感を感じるなら、それは自己受容感が低いサインです。意見を言うことは攻撃ではない、と自分に言い聞かせてください。
どちらもバランスよくと言われても難しいです
バランスは、頭で考えるものではなく、幹(自己受容感)が育つと自然に取れるものです。STEP1から5を続けるうちに、無理なく両方を持てるようになります。バランスを目指すのではなく、幹を育てることに集中してください。
人前で意見を言うのが怖いです
怖さは自然な反応です。完璧に言おうとせず、「不器用でもいいから一言だけ」を目標にしてください。回数を重ねるうちに、怖さは薄れます。怖さがゼロになる必要はなく、怖さがあっても言える状態を目指します。
自分の弱さを認めると、もっと弱くなる気がします
逆です。弱さを隠している間は、その弱さに支配されます。認めた瞬間、弱さは自分の一部に戻り、コントロールできるものになります。心理学では、これを「セルフ・コンパッション」と呼びます。研究でも、弱さを認める人ほど立ち直りが早いと示されています。
謙虚な人ほど、強い。
強い人ほど、謙虚でいられる
両立は矛盾ではなく、成熟の証。
自己受容感という幹が、
二本の枝を空へと伸ばす。

自分を大切にしよう

謙虚さと強さは、両立できないもの——これは、世間がつくった思い込みです。本当に飛躍する人は、謙虚さも強さも、両方を内側に持っています。けれど、それは特別な才能ではなく、自己受容感という幹を育てた結果として、自然と現れるものです。

自分のダメな部分を否定せず、丸ごと引き受ける。良いところも素直に認める。誰かに「ありがとう」と言われたら、3秒の間を取って受け取る。自分の意見を、一日一回だけ言う。こうした小さな習慣が、幹を太くし、根を深く張らせていきます。

あなたは、謙虚であってもいい。同時に、強くあってもいい。どちらか一方を選ぶ必要は、もうありません。自分を大切にしよう。あなたの中には、すでに二本の枝の両方が眠っています。あとは、幹に水をあげるだけです。

本記事の科学的根拠

  • 『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』(ジム・コリンズ著):第五水準のリーダーシップ原典
  • Neff, K. (2003):セルフ・コンパッション研究・自己受容と心理的健康
  • Bandura, A. (1997):自己効力感理論・行動と信念の研究
  • Kabat-Zinn, J. (1994):マインドフルネスと自己認識の研究
  • 中島輝(SBクリエイティブ)『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる自己肯定感の教科書』
監修|中島 輝
心理カウンセラー・自己肯定感アカデミー会長・「6つの感と安心感」理論創始者
著書累計77万部・15,000人臨床・回復率95%
本記事は心理学的知見に基づく一般情報です。医学的診断や治療の代わりにはなりません。心身に不調を感じる場合は、医療機関・専門家へのご相談をおすすめします。

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