なんでも触る子を叱る前に。
脳科学が示す“今しかない3年間”
なんでも触りたがる、口に入れる、引き出しを次々開ける——。「やめて!」「ダメ!」の連続で、一日が終わっていませんか。でも、その行動は、いたずらでも困った性格でもありません。「感覚の敏感期」という、今しかない3年間のサインです。自己肯定感アカデミー会長・中島輝が、モンテッソーリ教育の「感覚の敏感期」と自己肯定感の「6つの感」で、触りたがる子への接し方を解き明かします。
「やめて!」の連続に、疲れていませんか
ティッシュを次々引き出す。引き出しを全部開ける。テーブルの上のものに手を伸ばす。何でも口に入れる。目を離したすきに、また何かを触っている——。
「やめて!」「ダメ!」「触らないで!」。一日に何十回、言っているでしょうか。叱っても叱っても、また同じことをする。もう、どうしたらいいの。そんなふうに、心がすり減っていませんか。あなたの関わり方が悪いわけでは、決してありません。
実は、その「触りたがる」行動には、はっきりとした理由があります。それは——子どもが今、手や口を使って、世界そのものを学んでいるから。モンテッソーリはこの時期を「感覚の敏感期」と呼び、一生に一度の特別な3年間だと考えました。この記事で、その正体と、叱らずにすむ関わり方をお伝えします。
こんなこと、ありませんか?
- なんでも触る、引き出しを開ける、口に入れる
- 「ダメ」と言っても、何度も同じことをする
- 目を離すと、すぐ何かを触っている
- 一日中「やめて」を言い続けて疲れる
- 触らせるべきか、止めるべきか分からない
一つでも当てはまったら、どうぞ読み進めてください。読み終えるころには、「触る」行動が、ちょっと頼もしく見えてくるはずです。
触りたがるのは「感覚の敏感期」だった
モンテッソーリは、子どもが生まれてから3歳、4歳になるまでの間に、周囲の世界から無数の印象を、無意識のうちに吸収していることを発見しました。見る、聞く、触る、なめる——あらゆる感覚を総動員して、子どもは「世界とはどういうものか」を、全身で学んでいるのです。
この、感覚をフルに使って学ぶ時期を、モンテッソーリは「感覚の敏感期」と名づけました。つまり、なんでも触りたがるのは、子どもにとっての「勉強」。大人が本を読んで学ぶように、子どもは手と口で触れて学ぶのです。
そして大切なのは、この感覚の敏感期には「今」という期限があること。0〜3歳に集中するこの時期に、たっぷり感覚を使った経験は、のちの集中力・思考力・観察力の土台になります。今しかない3年間だからこそ、安全な範囲で、思う存分触らせてあげたいのです。
叱る前に、環境を変える
「触ってほしくないものを触る」。この悩みの答えは、実はとてもシンプルです。叱るのではなく、環境を変える。これだけで、ほとんどの問題は解決します。
考えてみてください。子どもの手が届く場所に、触ってほしくないものがあるから、触ってしまう。なら、それを手の届かない場所に移せばいい。叱る必要も、我慢させる必要もありません。これがモンテッソーリのいう「環境を整える」という考え方です。
その場で「ダメ」と止める
触るたびに「ダメ」「やめて」。子どもは理由が分からず混乱し、好奇心が否定される。親も一日中叱り続けて疲弊する。
環境を整えて、触れる場をつくる
危険・大切なものは届かない場所へ。触ってよいものを用意する。叱る回数が激減し、好奇心を満たしながら安全も守れる。
さらに一歩進めて、「触ってもよいもの」を積極的に用意するのがおすすめです。たとえば、子ども専用の引き出しを一つ決めて、布やおもちゃ、安全な道具を入れておく。「ここは開けていいよ」という場所があると、子どもは満足して、ほかを触らなくなることも多いのです。
叱る前に、まず環境を。「ダメ」を100回言うより、危ないものを1回片づけるほうが、ずっと効きます。
「触れる」ことが、脳と心を育てる
「触る」という行為を、軽く見てはいけません。モンテッソーリ教育では、感覚を使った経験こそが、のちの知的な思考のすべての土台になると考えます。手で触れて「つるつる」「ざらざら」「重い」「軽い」を区別する経験が、ものを比べ、分類し、考える力へとつながっていくのです。
ここで大切なメタファーを。子どもの脳は、「白いキャンバス」のようなもの。触れる、なめる、握る——一つひとつの感覚の経験が、そのキャンバスに色を加えていきます。たくさんの感覚を経験した子どもほど、豊かな色のキャンバスを手に入れる。逆に、「ダメ」ばかりで経験を奪われると、キャンバスは白いまま残ってしまうのです。
つまり、なんでも触りたがる子は、未来の思考力を、今せっせと貯金しているのです。それを叱って止めるのは、もったいないこと。もちろん危険は別ですが、安全なものなら、「どうぞ、好きなだけ学んでね」という気持ちで見守ってあげてください。
触る経験で育つ3つの感
子どもの「触りたい」を安全な範囲で満たすことで、自己肯定感を支える「6つの感」のうち、特に次の3つが育ちます。
「触っても大丈夫」。好奇心を否定されず受け止められる経験が、「ここでは自分らしくいていい」という安心の土を耕す。
「自分で確かめられた」。触って、確かめて、分かった経験が、「自分にはできる」という感覚を育てる。
「自分で選んで触れた」。何を触るか自分で選ぶ経験が、決める力と好奇心を育てる。
とくに大切なのが安心感です。「触りたい」という好奇心は、子どもの心のいちばん素直な部分。それを「ダメ」と否定され続けると、子どもは「自分の興味は、いけないものなんだ」と感じてしまいます。逆に、安全な範囲で「どうぞ」と受け止められると、「自分の好奇心は、歓迎されている」という安心感が育つ。この安心感こそ、自己肯定感の木を支える、いちばん大切な土壌なのです。
図|安全な範囲で触れる経験が、区別・集中・思考の力を育て、安心感という土台を耕す(モンテッソーリの感覚教育をもとに作成)
中島輝が見た、触りたがるケース5選
よくある5つの場面を、「叱る関わり」と「育てる関わり」で見ていきましょう。
ティッシュを次々引き出す
つい:「もったいない!やめて!」
育てる関わり:引き出す感触が楽しい時期。布やハンカチを箱に入れた「引き出し放題ボックス」を用意すれば、満足して本物のティッシュは触らなくなることも。
引き出しや戸棚を全部開ける
つい:「開けないで!」と何度も閉める
育てる関わり:危険なものが入った場所はロックし、一つだけ「開けていい引き出し」を決める。中に安全なものを入れておけば、好奇心を満たせます。
なんでも口に入れる
つい:「汚い!出して!」
育てる関わり:誤飲の危険があるもの(小物・電池・薬)は徹底的に手の届かない場所へ。安全を確保すれば、口で確かめる行動は成長とともに自然に減ります。
料理中、キッチンのものを触りたがる
つい:「危ないからあっち行って!」
育てる関わり:低い棚に、触ってよい道具(木べら・ボウルなど)を用意。「これはどうぞ」と渡せば、一緒にいられて、危険なものから自然と離れます。
外で石・砂・葉っぱを触る・拾う
つい:「汚いから触らないの!」
育てる関わり:自然物は最高の感覚教材。手を洗える環境を用意して、思う存分触らせる。「冷たいね」「ざらざらだね」と言葉を添えれば、感覚と言葉がつながります。
危険は別|守るべき線引き
ここまで「触らせよう」とお伝えしてきましたが、もちろん何でもかんでも触らせるわけではありません。子どもの安全を守ることは、何より優先されます。守るべき線引きを、はっきりさせておきましょう。
危険も放置する
刃物・薬・電池・洗剤・コンセントも「敏感期だから」と触らせる。これは見守りではなく、危険の放置です。
危険を取り除き、安全を満たす
危険なものは届かない場所へ。安全なものは存分に。危険を取り除いた環境で、安心して見守る。
大切なのは、「叱る」のではなく「環境で守る」という発想です。危険なものを子どもの手の届く場所に置いたまま「ダメ」と言い続けるより、最初に危険を取り除いてしまうほうが、はるかに安全で、お互いに穏やかでいられます。これがモンテッソーリの「環境の守り手」という親の役割です。
具体的には、誤飲の危険がある小さなもの、刃物、薬、洗剤、電池、たばこ、加熱した調理器具、コンセントなどは、必ず子どもの手の届かない場所へ。一度しっかり環境を整えれば、「ダメ」と言う回数が驚くほど減り、あなたの心にも余裕が生まれます。なお、誤飲やケガが起きたとき、また気になる症状があるときは、ためらわず医療機関や中毒110番などにご相談ください。
感覚を育てる関わり×中島輝メソッド4ステップ
「触りたい」を安全に満たす関わりは、中島輝メソッドの「自己認知→自己受容→自己成長→他者貢献」に重なります。
自己認知|「触る」の意味に気づく
まず親が、「これはいたずらではなく、感覚の敏感期の学びなんだ」と気づくこと。見方が変わると、叱る前に環境を整えられるようになります。
自己受容|「好奇心はいいこと」と受け入れる
触りたがる好奇心を、否定せず受け入れる。安心感・自己受容感という土台が、「好奇心を歓迎される」経験から育ちます。親も「全部は防げなくていい」と、自分を受け入れて。
自己成長|「自分で確かめた」を積み重ねる
環境を整え、安全な範囲で触らせる。自分で触って確かめた経験が、自己効力感・自己決定感を育て、好奇心旺盛な学ぶ力につながります。
他者貢献|「見せてくれてありがとう」を伝える
子どもが見つけたもの、触ったものに「すごいね、見せてくれてありがとう」と関心を寄せる。発見を喜び合うことで自己有用感が育ち、また次の探究へと向かいます。
この4ステップで、モンテッソーリの感覚教育と、自己肯定感の6つの感が、家庭で一つにつながります。たくさん触れた子は、たくさん学んだ子。その土台は、今日のあなたの「環境を整える一手」から始まります。
中島輝メソッドを体系的に学ぶ
自己肯定感アカデミーでは、6つの感を育てる関わりを体系的に学べる講座を開催しています。子どもの好奇心と安心の土台を、さらに深く育てるために。
自己肯定感アカデミーを見る →センターピン|たった1つだけ覚えて帰ってください
いたずらじゃない。
今しかない、
感覚の敏感期。
叱る前に、
危ないものを片づけて、
安全に触らせよう。
今日から始める、たった1つの習慣
よくある質問5問
こころが疲れたときの相談窓口
💙 無理せず、頼れる場所
- 児童相談所相談専用ダイヤル|0120-189-783(24時間・無料)
- 子育て世代包括支援センター|お住まいの市区町村の窓口
- 中毒110番(誤飲時)|大阪072-727-2499/つくば029-852-9999
- よりそいホットライン|0120-279-338(24時間・無料)
- 厚生労働省 まもろうよこころ|公式サイト
次に読むべき記事|シリーズ予告
モンテッソーリ×自己肯定感シリーズ 第4弾、最後までありがとうございました。なんでも触るのは、いたずらではなく「感覚の敏感期」。叱る前に危険なものを片づけ、安全な範囲で触らせること。それが好奇心と安心感という心の土台を育てること。「ダメ」を100回言うより、危ないものを1回片づけるほうがずっと効くこと。今日からできることだと伝わっていたら嬉しいです。今しかない3年間を、どうか楽しんでください。
🔥 モンテッソーリ×自己肯定感シリーズ、好評連載中!
世界が認めるモンテッソーリ教育と、自己肯定感の「6つの感」を統合し、0〜6歳の子育てに徹底的に落とし込む新シリーズ。特別な才能ではなく、どんな子にも育つ「自己肯定感の土台」を、一緒に育てていきましょう。
次回・第5弾予告|「物の置き場所にこだわる子|実は将来を決められる力」。いつもの場所、いつもの順番にこだわって泣く——。一見やっかいな「こだわり」の正体「秩序の敏感期」と、それが将来の決める力につながる理由を解き明かします。お楽しみに。
🛡️ 本記事の権威性とトラスト
- 監修者:中島輝(自己肯定感アカデミー会長/心理カウンセラー/一般財団法人自己肯定感学会代表)
- 監修者実績:著書累計76万部/15,000人臨床/回復率95%/1,800人独自統計
- 参照原典:マリア・モンテッソーリ『子どもの発見』(感覚の敏感期・感覚教育・環境の守り手)
- 参照原典:相良敦子『お母さんの「敏感期」』モンテッソーリ教育(文藝春秋)
- 参照理論:モンテッソーリ「感覚の敏感期」「吸収する精神」「環境の守り手」/中島輝「自己肯定感の6つの感」(特に安心感)
- 関連エビデンス:乳幼児期の豊かな感覚・探索経験と脳神経回路(シナプス形成)の発達に関する知見
- 政策準拠:文部科学省「生徒指導提要2022年」自己存在感・安全な環境づくりの重視
- 掲載実績:東洋経済オンライン・プレジデントオンライン・ダイヤモンド・オンライン・現代ビジネス・日経xwoman他1,000媒体以上
- 所属:自己肯定感アカデミー/一般財団法人自己肯定感学会/トリエ
- 公開日:2026年6月1日(モンテッソーリ×自己肯定感シリーズ 第4弾)
- 編集方針:編集方針はこちら
- 利益相反開示:本記事は中島輝が代表を務める自己肯定感アカデミーの公式記事です。プライバシーポリシー
❗ 重要:専門家への相談について(YMYL:育児・メンタルヘルス情報)
本記事はモンテッソーリ教育および中島輝「自己肯定感の6つの感」への深い敬意を込めた解説記事です。本記事の内容は中島輝オリジナルの解説であり、特定の団体・著者の公式見解を示すものではありません。
本記事は医学的診断・治療を提供するものではなく、お子さまの発達に気になる点がある方、対応に強く悩む方は、必ずかかりつけ医・小児科医・地域の子育て支援窓口・公認心理師等の専門家への相談を強く推奨します。誤飲・ケガなどの緊急時は医療機関や中毒110番へ、育児の緊急時は児童相談所相談専用ダイヤル(0120-189-783)へ。
本記事の内容を実生活に取り入れる際は、お子さまの安全とご自身の判断・責任において行ってください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の状況に対する助言を代替するものではありません。
自己肯定感ラボで、子育ての土台を育てる
自己肯定感ラボでは、モンテッソーリ教育×自己肯定感の子育て記事を多数公開しています。あなたとお子さんの毎日に、好奇心と安心の土台が育っていきますように。
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自己肯定感の第一人者である中島 輝と共に、自己肯定感の重要性を多くの人に伝えるために活動中。講師としての登壇経験が多く、自己肯定感をはじめとするセラピー・カウンセリング・コーチングの知識が豊富。メディアサイト「自己肯定感ラボ」を通じ、誰もが輝いて生きていくための情報を発信中。





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