「来なくなった子」のことが、頭から離れない。──善意だけでは続かない理由と、あなた自身を守りながら寄り添う技術

いつもあの子が座っていた椅子が、今日も空いている。

毎週木曜日、誰よりも早く来て、

入口のドアの前でぴょんぴょん跳ねていた女の子。

「今日のごはん何?」が口グセだった。

カレーの日は「やったー!」と叫んで、

おかわりを3回した。

2カ月前から、来なくなった。

連絡先は知らない。

学校に聞いても「個人情報ですので」と返される。

最後に見たとき──

腕に、アザがあった。

「どうしたの?」と聞いたら、

「転んだ」と言って笑った。

いつもの笑顔だった。

あのとき、もっと聞くべきだったのか。

誰かに相談すべきだったのか。

通報すべきだったのか。

「でも証拠がない」「勘違いかもしれない」「大げさに騒いだら迷惑がかかる」

あの子は今、どこにいるんだろう。

あのアザは、本当に転んだだけなんだろうか。

──こども食堂や子どもの居場所を運営している方。

こんな夜を過ごしたことがありませんか。

中島輝です。

今夜は「善意で始めた人が、善意で壊れていく」という話をします。

少し辛い話です。でも、最後に「壊れない方法」をお伝えします。

こども食堂は「善意」だけで回っている

2024年時点で、全国のこども食堂は9,000カ所を超えました。

2016年の約300カ所から、8年で30倍。

でも──その9割が、ボランティアベースで運営されている。

運営者個人の善意と、時間と、資金と、体力で成り立っている。

食材の調達。場所の確保。衛生管理。

来る子どもたちの対応。保護者との関係。

行政との連携。助成金の申請。

すべてを少人数のスタッフ──いや、多くの場合「一人」でこなしている。

そして、来なくなった子のことが、頭から離れない。

アザのこと。あの笑顔のこと。

「もっとできたことがあったのでは」という自責が、夜になると襲ってくる。

これが、全国9,000カ所で起きていること。

善意で始めた人が、善意で壊れていく。

「来なくなった子のことが、ずっと頭にある」

「あの子を助けられなかった。自分のせいかもしれない」

「でも自分にできることなんて限られている」

「こんなことで悩んでいる暇があったら、来ている子のためにもっと動くべき」

──最後の一行が、あなたを壊しています。

「自分のことは後回し」が習慣になっている人ほど、

ある日突然、糸が切れる。

他者貢献は「力」になる。でも「自己犠牲」は壊れる。

まず、希望のデータからお見せします。

📊 他者貢献と幸福の科学(Dunn et al., 2008, Science

他者のための行動は、自分のための行動より、

幸福度が有意に高かった。被引用2,000超。

さらにMoll et al.(2006, PNAS)の脳科学研究──

向社会的行動(誰かのための行動)をしているとき、

脳の側坐核(報酬系の中枢)が活性化する。

「ヘルパーズハイ」と呼ばれるこの現象は、

ドーパミンとエンドルフィンの同時放出で起きる。

つまり──誰かのために動くことは、科学的に「幸福」を生む。

こども食堂を運営していて「子どもたちの笑顔で元気が出る」

という感覚は、気のせいではなく脳の報酬系の反応。

ただし──ここに落とし穴がある。

📊 ProQOLProfessional Quality of Life──Stamm(2010)

支援者の生活の質を測る国際的な尺度。

この尺度が明らかにした重要な発見──

「共感満足(やりがい)」と「共感疲労(消耗)」は、

同じ人の中に共存する。

子どもたちの笑顔でやりがいを感じている「同じ心」が、

来なくなった子のことで消耗している。

やりがいがあるから「自分はまだ大丈夫」と思い込む。

でも裏側で共感疲労は確実に蓄積している。

さらに危険なのは──

「自分の限界を超えた利他行動」は、

うつリスクを有意に増加させるという報告もある。

つまり──貢献は力になる。

でも「自分を犠牲にする貢献」は、壊れる。

やりがいと消耗は、同じコインの裏表。

「子どもたちの笑顔」だけを見て「自分は大丈夫」と思っている間に、

裏側の「共感疲労」が静かに蓄積していく。

ある日突然、「もう何も感じない」になる。それが限界のサイン。

F.Kさんの「眠れない夜」

F.Kさん、47歳。

地域でこども食堂を運営して5年目。

本業は別にあり、こども食堂は週1回、ボランティアで続けている。

始めたきっかけは、近所のスーパーで万引きをしていた小学生を見かけたこと。

「おなかが空いていたんだろうな」と思った。

翌月、自宅の1階を改装して、こども食堂を始めた。

最初は3人だった子どもが、半年で20人を超えた。

「やってよかった」と思えた。子どもたちの笑顔がエネルギーだった。

でも──3年目のある日。

冒頭の、あの子が来なくなった。

腕のアザ。「転んだ」の笑顔。

F.Kさんは、夜眠れなくなった。

目を閉じると、あの子の顔が浮かぶ。

「もっと聞けばよかった」「通報すべきだった」

ぐるぐると同じ思考が回り続ける。

朝になると、残りの19人の子どもたちが待っている。

笑顔をつくって、カレーをよそう。

「おかわりある?」「あるよ、たくさんあるよ」

でも心の中では、空っぽの椅子ばかり見ていた。

「善意だけでは続かないと気づいてしまった」

「でもやめたら、残りの19人はどうなる?」

「自分が弱いからこんなことで悩むんだ」

「もっと強くならなきゃ。もっと頑張らなきゃ」

──「もっと頑張る」は、この場合、答えではありません。

すでに十分頑張っている人が「もっと」と言うとき、

それは壊れる一歩手前のサインです。

必要なのは「もっと頑張る」ではなく、「守りながら続ける」技術です。

「自分を守りながら寄り添う」は、技術で身につく

グリーフケア講座で、F.Kさんは2つのことを学びました。

1つ目:「課題の分離」

あの子に起きていることは、あの子と家庭の課題。

F.Kさんにできるのは「安全な場所を提供する」こと。

「救う」のではなく「場をつくる」のが、こども食堂の本質。

「救えなかった」のではない。

「来られる場所をつくり続けた」──それが、あなたにできた最善。

2つ目:「セルフコンパッション」

自分を責め続けている間、共感疲労は加速する。

「もっとできたのに」「自分のせいだ」──この自責がコルチゾールを上げ、

心身を消耗させ、残りの19人への対応力を下げる。

自分に「よくやっているよ」と言えること。

それが、19人の子どもたちを守り続けるためのエネルギーになる。

F.Kさんは講座後、毎晩寝る前にひとつだけ習慣を加えました。

「今日も場を開けてよかった」と自分に言う。それだけ。

3カ月後、F.Kさんはこう言いました。

「眠れるようになりました。

あの子のことは、まだ考えます。頭から消えたわけじゃない。

でも、考え方が変わったんです。

『あの子を救えなかった自分はダメだ』じゃなくて、

『あの子が来られる場所を、5年間つくり続けた。

それは無駄じゃなかった。

そしてこれからも、次のあの子が来られるように、この場を守り続ける』。

課題の分離が、自分を救いました。

『救う』のは私の課題じゃなかった。

『場をつくる』が私の課題だった。

それがわかっただけで、呼吸が楽になった」

善意を「技術」で守る

こども食堂、フードバンク、学習支援、子どもの居場所づくり──

善意で活動しているすべての方へ。

あなたの善意は、本物です。

子どもたちの笑顔が、あなたのエネルギーであることも知っています。

でも──

善意だけでは、心は守れません。

エネルギーだけでは、10年は続きません。

「自分を犠牲にする貢献」ではなく、

「自分を守りながら続ける貢献」へ。

その転換に必要なのは「気合い」ではなく「技術」です。

課題の分離。セルフコンパッション。悲しみのプロセスの理解。

あなたが壊れたら、あの椅子に座る次の子どもたちを迎える人がいなくなる。

だから、まずあなた自身を守ってください。

それが、子どもたちを守ることになる。

もし「自分を守りながら寄り添う技術」を学びたいなら──

仙台の講座でお待ちしています。

同じ想いを持つ人が、きっとそこにいます。

仙台講座にもお申込みが続いています。

ピンときた方は、考えるより先に動いてみてくださいね。

迷っているうちに席がなくなったら、もったいないので。

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日程:2026年5月10日(日)

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